ロシアはドバイ航空ショー2019で、トルコの第5世代戦闘機「TFX」の開発に参加し、技術移転を行う準備が完了したと発表した。
参考:Russia ready to take part in developing Turkish fighter jets
ロシアはトルコの第5世代戦闘機「TFX」開発計画乗っ取りを狙う?
ドバイ航空ショー2019を訪問中のロシア連邦軍事技術協力局、ドミトリー・シュガエフ局長は11月17日、現地記者団に対しロシアはトルコの第5世代戦闘機「TFX」の開発に参加し、技術移転を行う準備が完了したと語った。
トルコは、F-4E 2000(49機)が2025年までに、F-16C/D(250機)が2030年代までに(初期に取得した機体は2020年代前半に)退役予定で、この航空戦力の空白を埋めるため、F-35とは別に、国内で独自の第5世代戦闘機「TFX」開発を進めており、現在のスケジュールでは試作機を2023年までに完成させ、初飛行を2025年までに行い、2032年までに運用を開始する予定だったが、最近このスケジュルールが2年程度遅れるとトルコメディアが報じている。

出典:public domain 米空軍のF-4ファントムⅡ
このスケジュール遅延の直接的な原因は、英国のロールス・ロイスとトルコ企業が共同開発するはずだったTFX用ジェットエンジンが、知的財産権の問題で頓挫したためで、現在はトルコ企業単独で開発が進められている。
補足:TFX用ジェットエンジンの共同開発企業として英国のロールス・ロイスが選ばれ、同社はEJ200の技術を移転し、TFXのための新しいエンジンをトルコと共同で研究・開発を進めていたが知的財産権の問題が発生。 開発されたエンジンの知的財産権を全てトルコ側へ譲渡しろ言い始めたので、ロールス・ロイスがそれを拒否し、その後、交渉でも溝は埋まらず決裂し、ロールス・ロイスはTFXプロジェクトから完全に手を引いた。
トルコは当初、この苦境を乗り切るためF-16C/D用にライセンス生産している米国のGE製エンジン「F110」を使用してTFXの開発を進める予定だったが、F-35プログラムからのトルコ追放により、このBプランも不可能になってしまった。
本命のTFX用ジェットエンジン開発も、海外のジェットエンジン製造企業に対し協力を呼びかけたが、参加条件に「開発するエンジンに対し、輸出に制限がなく、全ての技術がトルコに帰属し、トルコが全ての権利を所有すること」を挙げているため、これも上手くいっていない。

出典:JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 TFXのモックアップ
結局、機体が開発できてもエンジンが調達できなければ意味がなく、トルコは「TFX」の開発スケジュルールを遅らせることになったという訳だ。
ロシアは、この「TFX」開発に参加し、技術移転を行う準備が出来たと言っているのだ。
ロシア連邦軍事技術協力局のドミトリー・シュガエフ局長は以前、トルコのエルドアン大統領が視察に訪れた「MAKS国際航空ショー」の会場でも「ロシアはトルコの第5世代戦闘機「TFX」開発を助ける事ができるかもしれない」と語り、航空機に搭載されるアビオニクスやエンジン開発について支援の可能性を示唆していただけに、今回の発言は前回の発言よりも一歩踏み込んだものになっている。
ここからは推測の話だが、恐らくロシア側はトルコが求めているTFX用ジェットエンジンの開発に参加し、技術を提供・移転を行う代わりに、TFXのアビオニクスをロシア製に変更し「TFX」の搭載兵器にロシア製を採用するよう要求する可能性が高いと管理人は見ており、事実上、これはロシアによる「TFX」開発計画の乗っ取りだ。

引用:TURKISH AEROSPACE トルコが開発中のTFX
現在の「TFX」は、プロジェクト全体の支援に英国のBAEが選ばれ、機体設計やシステム開発をサポートしているため、当然搭載されるアビオニクスは西側製(欧州製)のものになり、これはトルコがNATO加盟国であるため当然の選択だと言っても良く、これをロシア製に変更すれば、ロシア製兵器によるNATO侵食がさらに進むことになるだろう。
トルコにとっては、ロシアの協力は魅力的だが、完全に米国やNATOと切れていない(切れるつもりがない)以上、ロシアの申し出を受ければ完全に「毒まんじゅう」を食うことになり、TFXの完成と、トルコ側が失う外交的損失は釣り合うものではない。
トルコは米国がパトリオットシステムの現地生産や技術移転を拒み続けるので、政治的な駆け引きとしてロシアから「S-400」を導入してみせたが、その代わりに開発に金を出したF-35を失うことになった。
もし、今回のロシアの申し出を受ければ、トルコは完全にNATOから切り離されるかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 TFXのモックアップ
NATOからのトルコ切り離しはロシアの地中海・大西洋進出を意味するのでNATOとしては「やりたくない」のですが、トルコはそれを逆手に取って必要な権利を獲得しようとする姿勢ですよね。
ロシアはモンキーモデルの権利なら売っぱらっても惜しくないでしょうし、トルコをフラつかせるだけでNATOに圧力をかけられるいいチャンスなのでしょう。
トルコにとっては、建国以来の政教分離:世俗主義と現大統領が掲げるイスラム主義との対立こそが要因。
NATOを始めとする欧米との関係も世俗主義が大前提。イスラム主義とするなら大いなる矛盾が生じます。
そのフラつきに乗じたロシアの外交戦略は将に御見事。数年前の両国の紛争が嘘の様です。
トルコが親露となればロシアは黒海の制海権を獲得。ウクライナを始めとする黒海沿岸国も手中に落ちます。
これに中央アジア5カ国、或はイランまで加えた経済圏を確立して、中央ユーラシアの盟主として返り咲く。
プーチン大統領の描く図は、こんな処ではないでしょうかな?
自業自得とはいえ、こうした身の程をわきまえない駆引きがどんな結末をむかえるのか、よく見ておく必要がありますね。
韓国はトルコを兄弟国と言っていたが
あながち間違えではないのかもしれない
でもトルコは、1890年のエルトゥールル号遭難事件で受けた恩を、100年以上後にイラン・イラク戦争での日本人215名救出などといった形で返してくれた国でもあるから。
クルド人問題が、トルコがアメリカ、ロシアの間をさ迷ってる原因でもあるよねえ
トルコにとって一番の問題はクルド人問題・・・他の国がどう見るかは別にして、トルコにとってはね。
クルド人(約3,000万人)は、トルコ(1,500万人/8,000万人 20% クルド人/国の人口 占める% いずれも概略の数字)、イラク(600万人/4,000万人 15%)、イラン(800万人/8000万人 10%)、シリア(180万人/1800万人 10%)に住んでおり、かつ、独立運動がとても旺盛・・・シリアのIS軍(イスラーム)の掃討にはアメリカ(オバマ政権)はクルド人を使った=兵器が渡った。
なお、アメリカはトランプ政権下、IS掃討が終わった時点でクルド人は捨てた。これは正しい判断、元々この民族紛争に手を出したのはリベラルでアホ全開のオバマ政権、クルド人側をサポートした。クルド人問題に手を出した大バカ。このオバマ政権の動きはトルコにとっては許容できなかったでしょう。
現在、トルコによる攻撃でシリア国内のクルド人勢力はシリア軍の支配下に入ってる。 つまり、独立運動を鎮静化できるし、シリアからトルコになだれ込んだ100万人といわれるシリアのクルド人難民(=テロする主導する輩も含まれてる)をシリアに送還できる環境が整うってことになる(トルコのクルド人、1500万人は別よ)
少なくともトルコ・シリアにおけるクルド人問題に関してはアメリカ、トルコ、シリア、そしてロシアは同じゴール(クルド人の独立運動の封じ込め)を目指してるて見える
再開をはじめたヤコブのSTOLVの共同開発にばれば、ロシアは開発費浮くし、トルコはアナドルが無駄にならなくてwinwinかな。中国はまだかかりそうだし、そろそろF-35B以外のSTOLVほしい。
フランスもNATOは脳死してるといってましたし、技術移転自体があるならトルコ的にはそっちはどうでもいいのでは
ロシアにとっても潜在的な敵国なのにいいのかな?
かっての中国が西側の支援で軍備近代化を推し進め、いまじゃ極東で張り合うのは不可能になったケースを忘れちゃおるまいか。
ロシアはカフカス方面でもクリミア方面でも恨みを買っているから、下手をこいたらクリミア戦争の再演ぞ。
多くの国はステルス機製造能力が軍事的にも経済・産業的にも喉から手が出るほど欲しい、しかしそののキモは空力的に不利なステルス機をエンジンパワーと電子制御で無理やり飛ばすことである。
だからステルス機には高出力なジェットエンジンが絶対にである、そのエンジンが作れなければ自前のステルス機は絶対に持つことは出来ない。
ジェットエンジン自体は既に研究しつくされていて革新的な進歩は無い、今後は高温に強く引っ張りに強度の強いブレードを量産できる技術を育てていくしかない。
日本の会社はアメリカの下請けとして鍛えられてきたから十分にその総力を持っている。
エンジンでは日米がトップ2でロシアは耐久性に劣る、英仏も10トン以上のエンジンは弱いし中国はロシアの足元でもがいてる状況、それ以外の国は今後100年は夢のまた夢だろう。
さらに高出力なAESAが無ければ周囲の状況を見ることが出来ない、これについても日米が最先端なので、結果として高性能なステルス機を作れるのは日米だけとなる。
日本が元々下請けでしてたのは低圧部では?
仰るのは、下請けとして鍛えられてきた領域ではなく、地道に独自開発も並行で進めてた成果かと。
アルジェリアのようにSU−57を買えば。トルコに第5世代機の開発は無理。