米国関連

宇宙船ではなくステルス機、ボーイングが開発した「バード・オブ・プレイ」は博物館で展示中

ロッキードは1970年代に初めてステルス戦闘機(F-117)の開発を経験したが、ボーイングも実は1990年代にステルス機の開発を通じてステルス技術の習得を行っていた。

スタートレック愛を感じるネーミング、ボーイング バード・オブ・プレイ

バード・オブ・プレイと言えば米国のTVドラマや映画「スタートレック」シリーズに出てくるクリンゴン帝国(※1)の宇宙船が有名だが、実はボーイングがステルス技術検証用に開発した試作機も「バード・オブ・プレイ(Bird of Prey)」と呼ばれているものがあるのをご存知だろうか?

出典:U.S. Air Force photo ボーイング YF-118G Bird of Prey

※1補足:当初、バード・オブ・プレイと呼ばれる宇宙船はクリンゴン帝国ではなくロミュラン帝国の宇宙船として登場したのだが、映画「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!」でクリンゴン帝国の宇宙船としてバード・オブ・プレイが登場して、その後に作られた「新スタートレック」でも何度も登場して活躍(?)したためクリンゴン帝国の宇宙船という認識が強い。

実はボーイングのファントムワークスが開発した技術検証用試作機「YF-118G」が公式に「バード・オブ・プレイ(Bird of Prey)」と呼ばれていると言う話で、これは出来上がったYF-118Gの形状が映画「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!」に登場する翼を広げたクリンゴン帝国の宇宙船に似ていることから名付けられたらしい。

恐らく形状以外にも映画に登場するバード・オブ・プレイが「遮蔽装置」を使用して姿を消すこと機能を備えており、ステルス技術検証用に開発したYF-118Gと被るものがあったからかもしれない。

ボーイングが開発した技術検証用試作機「YF-118G バード・オブ・プレイ」は1996年9月に初飛行を行い、その後3年間に渡りステルス技術の検証のため計38フライトを行って運用が終了したが同機は軍の機密指定を受けていたため公開されることなくボーイングの倉庫に眠っていたのだが、3年後の2002年に機密指定が解除されたためオハイオ州の国立米空軍博物館に寄贈され展示されることになった。

そのため一般人でもオハイオ州デイトンまで行けば実物のバード・オブ・プレイを無料で見学することが出来るのだが、現在は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で閉鎖されているため公式ホームページで開館しているのか良くチェックしてから訪問することをお勧めする。

参考:NATIONAL MUSEUM OF THE UNITED STATES AIR FORCE

因みに、このバード・オブ・プレイはステルス設計のため奇抜な機体形状に目が行きがちだが同機は開発期間や費用を節約するためフライ・バイ・ワイヤ制御を採用しておらず、パイロットによる完全な手動制御で十分安定的に飛ばすことが可能な空力学的安定性を備えているというのだから驚きだ。

さらに本機は本格的なコンピュータによる設計手法やリベット接合構造ではなく一体構造で製造されており後の航空機製造方法にも影響を与えている。さらにレーダー反射が大きいエンジンファンを隠すエアインテーク部分の設計と機体と主翼の接合部分をなめらかに処理する技術は、ボーイングが後に開発した試作戦闘機X-32や試作無人戦闘機X-45にも生かされている。

出典:Public Domain 試作戦闘機 X-32B

結局、どちらも採用されることはなかったが・・・

とにかく管理人が言いたいのは、スタートレックシリーズが米国に与えた影響の大きさについてだ。

今回登場したバード・オブ・プレイもそうだが、NASAはスタートレックシリーズに登場する惑星連邦の宇宙船「エンタープライズ」に因んでスペースシャトル1号機(OV-101)をエンタープライズと命名しており、昨年12月に新しく創設された宇宙軍のロゴは同シリーズに登場する惑星連邦宇宙艦隊のロゴにそっくりで話題になったのは記憶に新しい。

そもそもスタートレックシリーズの主役級宇宙船にエンタープライズとい名前をつけたのは、恐らく第二次世界大戦に空母「エンタープライズ(CV-6)」が大活躍※2して世界初の原子力空母にエンタープライズの名が引き継がれたことが影響しているのかもしれない。同艦は2017年に退役してしまったがジェラルド・R・フォード級空母3番艦(CVN-80)として復活が予定されている。

※2補足:空母「エンタープライズ(CV-6)」は戦前に建造され、太平洋戦争中の主要な海戦にほぼ全て参加して多大な戦果を挙げた。そして第2次世界大戦で最も多く勲章や表彰を受けた艦艇として、日本(大本営)が9回も同艦を撃沈したと報告したことで有名だ。因みにエンタープライズは撃沈されることなく太平洋戦争を乗り切った。

出典:Public Domain 空母エンタープライズ(CV-6)

基本的に1968年以降に建造された米海軍の空母には人名(特に米大統領の名前から採用することが多い)がつけられており、エンタープライズがジェラルド・R・フォード級空母3番艦として復活すれば唯一の例外となり、さらに付け加えればスペースシャトル1号機にエンタープライズと命名することを命じたのはジェラルド・R・フォード級空母に名前を使われているジェラルド・R・フォード大統領で、ここにも米国のスタートレック愛が炸裂している。

本当は悪いニュースばかり続くボーイングの「長寿と繁栄を」を祈ってYF-118Gについてでも書こうと思ったのだが、結局スタートレックについての話が長くなってしまった。

特に狙って書いたのではないが、きっと艦隊の誓い(一般命令第1条)がそうさせたのだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo ボーイング YF-118G Bird of Prey

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    久々にほっこり系の話題で和みました
    YF-118G、FBW無しで飛べるってのは知らなかった
    すごいな

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    管理人トレッキーかよ

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    たまにはこういう話題も良いねえ
    Xプレーンも最近はX-36みたいな縮小番とかスペースプレーン系はともかく今一つロマンに欠ける印象で見てる側としては寂しい

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    あの写真を見た瞬間、一瞬ガーヘル313と思ったのは俺だけだけだろうか?

    エアインテークを期待丈夫に設けるのはステルス爆撃機の常套手段だが、高機動な戦闘機ではXF32のように機体下部に付けるらしい。
    もしF-35の代わりにF-32が採用されていたら日本は全力でF-3の開発に邁進しただろうな。

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      どこかで見たことがあるかと思っていたらガーヘル313…。
      あちらさんの性能はどの位のものなんでしょうね。

        • 匿名
        • 2020年 5月 03日

        確かに駐機状態だと翼端形状から受ける印象が被りますね、ガーヘル
        性能的にはインテイクの位置が高迎え角に不向きそうだったり、レドーム小さかったり、機体サイズ的に機内兵装が制限されてたり、まだまだデザインスタディの範囲で実用性は低いと思うけど形は味があって好きです
        イスタンブールで作ったF-22みたいなTFXよりオリジナリティにあふれてる

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    そういえば、ズムウォルト(DD-1000)の初代艦長もジェームス・カーク(本名です James A. Kirk)大佐だったよね!(本当w)

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    このサイトがだんだん知名度が上がって
    こうやって書き込みが増えてきたからうれしいねぇ~

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    トレッキーとしては堪らないネタですね、
    リアルがフィクションに追いつく時代

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    エースコンバット3で出て来た機体だが、当時は本物が存在するなんて全く知らず「こんな格好の飛行機 飛ばねぇだろww」とかプレイしながら思ったもんでしたな。
    飛んでる姿を見るとちょっと感動的ですらある。

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    スミソニアン博物館の航空宇宙産業関係の展示室には、エンタープライズ号の模型があるそうな。そしてそれは、スミソニアン唯一の「想像の産物」であるとか。
    影響力大き過ぎ。

    • 匿名
    • 2020年 5月 07日

    トランスワールドジャパン発行のポピュラーサイエンス2003年3月号に、「スクープ新ステルス機」の見出しで、この「バード・オブ・プレイ」記事が登場するので、興味のある方は一読を。

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