ライトニングキャリアに適していたアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」設計の最終艦「トリポリ(LHA-7)」が、米海軍へ正式に引き渡されたとハンティントン・インガルス・インダストリーズが発表した。
参考:Huntington Ingalls Industries Delivers Amphibious Assault Ship Tripoli (LHA 7)
ライトニングキャリア編成を運用するのに最も適しているアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」
米国の造船企業ハンティントン・インガルス・インダストリーズは28日、艤装中だったアメリカ級強襲揚陸艦2番艦「トリポリ(LHA-7)」を米海軍に引き渡したと発表した。今後、海軍でチェックを受け今年の夏頃には正式に就役するものと見られている。
トリポリはウェルドック非搭載のアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」として建造される最後の艦となり、建造中の3番艦「ブーゲンヴィル(LHA-8)」からはウェルドックが復活した「Flight I」タイプに切り替わる。
なぜ3番艦から一度廃止したウェルドックを復活させたのかについては「海兵隊からの強い要望」となっているが、結果的に見るとウェルドック非搭載の「Flight 0」を建造し続けていたほうが時代のニーズに合っていた可能性が高い。
現在、米海軍は空母戦力を補うため強襲揚陸艦に搭載する戦闘機F-35Bの数を通常編成の6機から12機以上に増やし、簡易的な空母として運用する「ライトニングキャリア」構想を実行に移しているため、航空機運用能力が格段に拡充されているアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」は「ライトニングキャリア」に都合が良い設計だった。
ワスプ級強襲揚陸艦の「マキン・アイランド(最終艦)」とアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」を比較すると、どれだけ航空機運用能力(艦内の航空機格納スペースや航空機に対する補給品を貯蔵スペースのこと)が高いかひと目で分かる。
マキン・アイランド | アメリカ(Flight 0) | ブーゲンヴィル(Flight Ⅰ) | |
航空機支援スペース | 2931.92㎡ | 4392.82㎡ | 3534.86㎡ |
航空機用燃料貯蔵量 | 2,214,400L | 5,345,000L | 2,214,400L |
ウェルドックのLCAC収納能力 | 3隻 | 0隻 | 2隻 |
車両(上陸用物資)格納スペース | 2661.20㎡ | 1756.88㎡ | 1487.47㎡ |
航空機格納スペース | 1741,46㎡ | 2614.47㎡ | 2614.47㎡ |
ウェルドックを思い切って廃止したおかげで、アメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」の航空機運用能力はワスプ級強襲揚陸艦の約2倍まで強化されており、これは無補給でF-35Bを運用継続できる期間や一度にF-35Bを搭載して運用する能力に影響を与える重要な項目だ。
ウェルドックを復活させたアメリカ級強襲揚陸艦「Flight Ⅰ」は航空機運用能力を損なうことなくウェルドックを復活させ、しかも艦の大きさは現状を維持せよと言う海兵隊の要求を実現させるため、航空機用燃料貯蔵量をワスプ級強襲揚陸艦並まで減らしており強襲揚陸作戦で使用する分には問題ないが、燃料消費の多いF-35Bを多用するライトニングキャリア編成では問題になるかもしれない。
あくまで単純計算だが、F-35Bの機内燃料タンクを満タンにするには約6,000リットルの燃料が必要で、アメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」では約890回分の燃料を補給できるが、「Flight Ⅰ」やワスプ級強襲揚陸艦では370回分しか燃料を補給できない。
ライトニングキャリア編成では12機以上のF-35Bを運用するため燃料の消費が早く、全機(12機)出撃させると「Flight 0」では74回、「Flight Ⅰ」やワスプ級強襲揚陸艦では30回で燃料が底をつくことになる。もちろん海上補給という手段もあるため実際に燃料が底をつくことはないが、それだけ補給の手間がかかることを意味している。
海兵隊からしてみれば「ライトニングキャリア」構想は海軍が言い出したことで強襲揚陸艦本来の目的は水陸両用作戦の遂行であり、ウェルドックがある方が兵力輸送の点で有利なのは間違いない。
しかし、ライトニングキャリアという観点から見た場合、アメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0」建造が2隻で打ち止めになったというのは非常に勿体ない気がしてならない。
※アイキャッチ画像の出典:public domain アメリカ級強襲揚陸艦2番艦「トリポリ(LHA-7)」
車両の代わりにXQ58バルキリーを搭載してf35にバディを組ませて…難しい
ただ、米海兵隊がアメリカ級強襲揚陸艦にウェルドックを求めた気持ちも分かるんだよね。
そうでないと、強襲揚陸艦が“ライトニングキャリア=空母代用艦”と見做されてしまい、海兵隊としては「実質上の揚陸能力が減少してしまうのではないか?」とか「海兵隊の装備であるF-35Bが全部海軍に召し上げられてしまうのではないか?(実際、海軍空母航空団の飛行隊不足を補う為に、F-35Bを装備するはずだった一部の飛行隊がC型に振り替えさせられて空母に乗る予定)」と言う不安が強いんじゃないかと思っている。
なので個人的には、アメリカ級は強襲揚陸艦では無く「空母」と名乗った方が良かった気がする。
本当にライトニングキャリアが欲しいなら、軽空母を新造すべきだ。
強襲揚陸艦に兼業させるなら、本業を阻害しない程度でやらないと。
揚陸艦にもマルチロール化の波が押し寄せているだけでは? 既に巡洋艦~駆逐艦が統合されたように。予算は大正義なのです。
もちろん主従はあるでしょうけれど、任務の幅は減らず、どんがらから兵装迄すべての単価がアップしている環境では「兼任」は不可避と思料
価値はF-35Bの短距離離陸時の最大重量によりますね
たいして燃料やミサイル等を積めないなら軽空母としの価値は有りません
そもそも空母自体が既に時代遅れな兵器かと思いますし
ステルス性を発揮できる機内装備のみなら、強襲揚陸艦からの短距離離陸でも十分すぎるよ
そして、強度の接近拒否環境に飛び込んで目標を捜索できるのがステルス機なら、それを運用できる空母は時代遅れどころか時代の最先端だ
中華のポンコツ空母とそのポンコツ艦載機こそが、時代遅れの象徴だよw
対艦ミサイルの進化で、航続距離取れないと母艦がアボーンされちゃう可能性がね非常に高まってる昨今ですよ
そう言うと空母厨は空中給油とか言い出す訳だけど、それなら陸上機でやりくり出来る訳なのよね
実際米軍は損耗恐れて空母は大規模戦闘には前線には出して来ない
>対艦ミサイルの進化で、航続距離取れないと母艦がアボーンされちゃう可能性がね非常に高まってる昨今ですよ
そこら辺は、WW2でIJNの機動部隊や神風とかとの対峙から続く、矛と盾の話しですよね。
現在だとイージスでどの程度対処出来るのか、対処困難な領域にはどう手当てされるのか、
それも定性的だけでなく定量的な根拠も踏まえた解説が欲しい所です。
>実際米軍は損耗恐れて空母は大規模戦闘には前線には出して来ない
これ、断言出来るような話しでしょうか?
必要性と向き合うリスクとの兼ね合いで、判断は変わってくると思うのですが。
湾岸、イラク戦争と空母は主役じゃ有りません
米軍はF-15Eはもちろん、遥かかなたからF-111とか使ってました
空母は脆弱すぎるし、艦載機の飛行隊も簡単には育成出来ないですからね
それが今やM9とかの対艦ミサイルの時代です
イージスシステムでも防御は無理でしょう
ロシア兵器故実態には疑問ですが、情報だけでも前線に空母を出すのはためらうでしょう
中国の対艦弾道ミサイルにすら危機感を持ってるのが米軍です(予算獲得の為ってのもあるのでしょうけど)
>湾岸、イラク戦争と空母は主役じゃ有りません
これ「前線には出して来ない」の証明にはなっていないかと。
主役か否かと、前線に展開したか否かは別問題ですから。
>それなら陸上機でやりくり出来る訳なのよね
例えば、中国南部(南シナ海方面)で作戦を展開できるアメリカ空軍機って、どこにいるの?
まさか、沖縄から1000km以上飛んでいくのかい?
そんなことは、非現実的だよね。
空母は、位置をその都度変えられる柔軟性があるのに、その価値を放棄するようなドクトリンは無いでしょう。
>そんなことは、非現実的だよね。
あ、爆撃機は別ね。
戦闘機や攻撃機の話です。
F-35Bはハリアーよりも正規空母の仕事をある程度肩代わりできると考えれば十分だと思いますけどね
>>そもそも空母自体が既に時代遅れな兵器かと思いますし
それなら、現在中国とロシアが、空母と艦上戦闘機開発計画を粛々と進めている事実をどう説明すべきなのだろうか?
>>対艦ミサイルの進化で、航続距離取れないと母艦がアボーンされちゃう可能性がね非常に高まってる昨今ですよ
ミサイルの進化は、航空機搭載用ミサイルも同じだと言う点を無視している。
また、次世代イージス艦の迎撃能力が向上しうる事も無視している。
>>そう言うと空母厨は空中給油とか言い出す訳だけど、それなら陸上機でやりくり出来る訳なのよね
なら何故、米海軍は無人艦上空中給油機MQ-25Aスティングレイを開発しているんだろうね?
アメリカも軍が理性的に調達とかしてる訳では有りません
海軍は海軍の為の要求をする訳です
間違っても自分達が縮小される様な行動をする訳が有りません
なんで米軍がやってる=正しいなんて構図は成り立ちません
中国も最近になって空母調達予定数を減らしました
実際米軍が大規模展開したここ最近の湾岸やイラク戦争では陸上基地を確保しての空軍が主力で有り、空軍打撃艦隊は脇役ですよ
政治的な理由から陸上基地を確保できなかったらどうするのでしょうかね?
>中国も最近になって空母調達予定数を減らしました
でも調達は止めていない、と。
>実際米軍が大規模展開したここ最近の湾岸やイラク戦争では陸上基地を確保しての空軍が主力で有り、空軍打撃艦隊は脇役ですよ
空軍を十分展開出来るなら、空軍の方が主力になるのは自然では?
そして、脇役でもなせ
>中国も最近になって空母調達予定数を減らしました
でも調達は止めていない、と。
>実際米軍が大規模展開したここ最近の湾岸やイラク戦争では陸上基地を確保しての空軍が主力で有り、空軍打撃艦隊は脇役ですよ
空軍を十分展開出来るなら、空軍の方が主力になるのは自然では?
そして、脇役でも何故するのでしょうね?
前線で使えないの論証ならば、脇役にすら成れないと思いますが。
空母は対空母兵器が無い相手には役立つが持ってる相手にはリスクが大き過ぎて使えない。
戦艦だって主力だったが今は無い。
昔は戦車は無敵だったが今は装備によっては歩兵が撃破できる。
時代によっても相手次第でも最適な兵器を最適な場所で使わないと勝てる戦で負けることになる
>戦艦だって主力だったが今は無い。
別に対戦艦兵器の登場が、戦艦の退場を促した訳では無いかよ。
日露戦争で日本の戦艦を沈めたのは機雷だし、魚雷も古くからあるけど、それらの存在と戦艦は共存し得た訳ですから。
>>アメリカも軍が理性的に調達とかしてる訳では有りません
それ自体は事実だが、政治の側が軍の要求を無視して過度な軍縮をした結果、他国との軍事バランスが崩れてしまっては、元も子もない。
冷戦以後の米国やNATO諸国で起きつつあるのは正に上記の状況で、軍の要求を丸呑みする事は論外だが、無視してもロクな事にはならないと思うけどね。
>>中国も最近になって空母調達予定数を減らしました
昨年、5隻目の空母(原子力艦)の建造を中断したとされる件だね?
あれは技術的な困難に加えて、艦上機搭乗員の訓練が間に合わないと言う事情がある為で、必要性が無くなった訳では無いから、問題が解決すれば建造が再開される可能性はある(勿論、されない可能性もある訳だが)。
>>実際米軍が大規模展開したここ最近の湾岸やイラク戦争では陸上基地を確保しての空軍が主力で有り、空軍打撃艦隊は脇役ですよ
実を言うと米海軍の空母は朝鮮戦争以後、ほぼ全ての大規模戦闘において脇役なんだけど、空母の価値は評価され続けた。
むしろ「友好国からの反対で、陸上基地を確保出来なかったらどうなるか?」と言う問題から、空母保有の意義を評価する声すらある(この問題は、イラク戦争の際にトルコが空軍基地提供を拒んだ事で現実化した事がある)。
あと、「空軍打撃艦隊」は「空母打撃艦隊」の誤記だよね?