米CNNは13日、政府関係者の話を引用して「バイデン政権が今週中にパトリオットシステムのウクライナ提供を発表する可能性がある」と報じており、ウクライナで起こっている現実が兵站上の課題を抱えるパトリオットの提供を決断させたらしい。
参考:Exclusive: US finalizing plans to send Patriot missile defense system to Ukraine
操作をマスターするには最低でも6ヶ月かかると言われているため事前訓練が行われていない限り「冬場の戦い」には間に合わない
ウクライナのエネルギーインフラはロシア軍のミサイル攻撃に晒されており、ゼレンスキー大統領は「ミサイル防衛対応の防空システムを提供してほしい」とNATOに再三要請してきたが、ロシアのメドヴェージェフ元大統領などは「もしパトリオットを提供すればNATOは我が軍隊の正当な標的になる」と警告しており、フランスとイタリアが共同提供すると噂されていたSAMP/Tも実行されるか不明瞭で、ドイツ軍のパトリオット部隊をウクライナに派遣したらどうかというポーランドの提案も拒否されている。
さらに問題なのはパトリオットシステムのPAC-3形態で使用される迎撃弾の製造量が限られている点だ。
PAC-3MSEの年間製造量は約300発に過ぎず、ロッキード・マーティンは「2022年末にアーカンソー州の新工場が稼働すれば2024年までに年間製造量は約500発に増加する」と述べているが、これも既に買い手=米陸軍(毎年122発~240発)や既存の導入国向け、新たに導入したポーランド、ルーマニア、スウェーデン(3ヶ国の当初発注だけでも576発)で埋まっており、仮にパトリオットシステムをウクライナに提供して迎撃弾の消耗が始まれば155mm砲弾やGMLRS弾と同じように米軍備蓄に深刻の問題を引き起こすかもしれない。
PAC-3MSEを補完するPAC-2GEM弾(PAC-2形態で使用)の新規調達を米国は行っておらず、既存のGEM弾をGEM-T弾(迎撃弾で弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機との交戦能力が向上したタイプ)にアップグレードを行っている程度で、ドイツがレイセオンと共同でGEM-T弾の生産を開始する予定だが量産弾が登場するのは当分先の話になる。
つまり「ウクライナで起こっている現実が兵站上の課題を抱えるパトリオットの提供を決断させた」というのは「バイデン政権が備蓄分を取り崩す覚悟を決めた」という意味で、備蓄への影響を最小限に留めるため提供数は最小限(標準的なシステムは8基のランチャーで構成されるためPAC-3形態なら128発/PAC-2形態なら64発の迎撃弾を装填)になると思うが、仮に消耗量が激しく米軍備蓄量を圧迫するようなことになれば同盟国向けのPAC-3MSE納入に影響を及ぼす=日本のPAC-3弾調達も無関係ではいられない。
因みにパトリオットシステムのウクライナ提供を実行に移すためには国防長官と大統領の署名が必要で、米CNNは「計画にGOサインが出ればドイツでウクライナ人の訓練が始まる」と報じており、一般的にパトリオットの操作をマスターするには最低でも6ヶ月かかると言われているため事前訓練が行われていない限り「冬場の戦い」には間に合わないだろう。
追記:ウクライナ軍は迎撃率を高めるためミサイル1発に迎撃弾2発を使用しているため、仮にロシア軍が50発のミサイルを使用するとウクライナ軍は100発の迎撃弾を消耗している計算(大雑把な計算)になる。
追記:ウクライナのシュミハリ首相は13日「経済規模の縮小は35%~40%と見積もられているが、このままインフラ攻撃が続けば更に10%縮小する、つまりGDPの50%が失われる可能性がある」と明かした。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin
PAC-2を供与するしかないな。
日本も自国産のミサイルを増産するしかないが、できるのか?
ソースは忘れたんですが、
米国防省が米国政府による提供の可否関係なく、
将来提供が予想される装備をピックアップして、先行してウクライナ兵への訓練やっているなんて話があったような。
無誘導のダミーを1万発出してきたらどうするのだろう。
回収して弾頭付けて送り返すのがよろしいかと
今のロシアにそんな事出来るのかね?ウクライナ情報局だかがロシアが侵攻後に巡航ミサイルKh-101を240、カリブルを約120作ったと言ったらしいけど直近の米軍トマホーク契約量の2倍行っているから戦時体制とは言え大量のダミーも作るとなると限界レベルじゃないかな。
精密部品を使わなくてもミサイルを構成するコンポーネント・運用する部隊・運搬する車両や航空機が必要でそこまで大規模なダミー運用出来るのかね。
ウクライナだと地対地、地対空の消費が激しく
東シナ海、南シナ海などの対中国有事だと空対地、空対空、空対艦、艦対地、艦対空、艦対艦、地対空あたりが大量に必要になりそうだけど
地対空に関してはどちらも重要になるから備蓄管理が難しいところ
ウクライナが求めてもエスカレートを理由に提供を拒んでた兵器で、
対中国の備蓄に影響を出さないという意味でなら
A-10(中国の防空網に飛ばせるか分からん)やM1エイブラムスあたりのほうが備蓄への悪影響無いと思う
パトリオットなどの本格的な防空装備は台湾だけでも相当量消費するだろうから備蓄使うのは危うい
エスカレーションとかそういう問題じゃなく他への備えに影響が出てくる
米陸軍にはTHAADミサイルもあるから。
いざとなれば、THAADミサイルを展開するのでは。
中共を相手にするときは、おそらく地上戦は島嶼部でしょう。
主に海軍の仕事となるので、イージスシステムをあてにできるのでは。
大陸で作戦することはないでしょうし、またするべきではないでしょう。
中共がインドシナや朝鮮半島に押し出してくるなら、それぞれ、
ベトナムと韓国(?)に相手をしてもらう形でしょう。
それまでに、ウクライナ戦争が終了していれば、ロシアと共闘も可かと。
よって、PAK3の備蓄を食い潰しても、当面は良いのでは。
もちろん、自国や同盟国向けに増産をすべきですが。
PAC-3、THAAD、SM-3はそれぞれカバーする範囲が異なるので、PAC-3が担当する下層域のミサイル防衛を他の2つで代替するのは不可能なのだよ。
同じ車でも農機具を運ぶのにフェラーリが向かないと同じ
日本のPAC3は三菱重工のライセンス生産かとMSEもライセンス予定だったはず
まあパーツで影響は避けられないだろうけど
今も三菱がライセンス生産をしているなら、韓国の砲弾トコロテン方式の応用で日本にも弾体供与の打診が来るかもしれませんね。
特に防空ミサイルは純粋に防御用途(しかも民間人防護)なので、心理的ハードルはかなり下がりそう。
リンク
8年前の時点でPAC-2のラインがない米国に日本が部品を輸出しているが、まだ米本国の再生産立ち上がってなかったんだな
日本製のパーツを組み込んだPAC-2がウクライナに行く可能性は高そう
かねてより精密誘導兵器の追加生産に時間が必要なことはいわれてきましたが、西側の継戦能力がここまで低下しているとは思いませんでしたね。
もちろん今回は、アメリカ自身やNATO加盟国が攻撃を受けているわけではないので、戦時体制に移行できないというのもありますが。
この上さらに徘徊型弾薬やUAV等のロボット兵器が投入されるとなると、どこの国も瞬く間に戦争継続が不可能になるかも知れませんね。
もしくは一周回って、独裁国家の大量動員肉壁部隊が最強と言うことになりかねない。
兵器の調達性について一考すべき時期なのかも知れません。
これ、アメリカがそこそこちゃんとやってるから良かったけど、欧州だけだったら詰んでるね。
まさにロシアや中国のやりたい放題になってたかも。
「ウクライナで起こっている現実が兵站上の課題を抱えるパトリオットの提供は決断させた」
転載防止のためかも知れないが、どうしてもこの日本語の意味がわからない・・。
バカ正直にいつまで露助のミサイル&ドローン攻撃に付き合うのか。
敵国内の軍事施設限定でもいいから壊滅させて終わらせるしかないのは
えらいさんには分かってるんだからやりゃいいだけ。
エスカレーションとかビビッてるが、露助連中にそんな肝っ玉はありゃせんわ。