米海軍は議会や国民に「今年の夏までに空母フォードの兵器運搬用エレベーター問題を解消する」と繰り返し約束してきたが、5月時点で11基中7基しか正常に作動していないため再び空母フォードの戦力化に遅れが発生しそうだ。
参考:Despite Promises, USS Ford Heads To Shock Trials With 4 Broken Elevators
結局、ショックトライアルに間に合わなかった空母フォードの兵器運搬用エレベーター
米海軍は空母ジェラルド・R・フォードの兵器運搬用エレベーターについて「2021年夏に実施するショックトライアル(衝撃試験)までに11基全てが正常に作動する」と議会や国民に繰り返し約束してきたが、米国の経済誌「フォーブス」は11基中4基が未だ完成しておらずショックトライアルに間に合わない可能性が高いと報じている。
この問題を簡単に説明すると米海軍のニミッツ級空母は1日(12時間)あたり航空機を120回出撃させ回収する能力を洋上で30日間維持できるのだが、アナログな航空機発着艦支援システムを電磁式航空機発射システム(EMALS)や新型着艦制動装置(AAG)に置き換え艦内の兵器運搬用エレベーター(AWE)を電磁式に変更することで1日あたりの出撃回数を160回まで引き揚げたのがフォード級空母の特徴なに、1番艦のフォードが2017年7月に就役した当時作動していたAWEは11基中2基のみで同艦の航空機運用に深刻な問題を及ぼしている。
要するに不具合が解消されつつある電磁式カタパルトや新型着艦制動装置が設計通り機能しても、AWEが完全に機能しなければ艦の奥深くに収納されているミサイルや弾薬を格納庫や飛行甲板に効率よく運搬することが出来ないので1番艦のフォードの航空機運用能力はニミッツ級の120回にすら及ばないという意味だ。
この問題を解決するため努力を重ねて来たが2020年4月までに正常な作動が確認されたAWEは5基で、米海軍は今月「残り4基のAWEが正常に作動するようになるのはショックトライアルの後になる(未完成のAWE4基の内2基は認証試験段階で残り2基は取り付け工事中)」と明かしたためフォーブスはフォード級空母の戦闘能力を最も実戦に近い形で検証する千載一遇の機会を逃すことになると指摘している。
米海軍が実施するショックトライアルは艦艇の構造や搭載機器が敵の攻撃を受けた際に設計通り機能するのか、どれほどの衝撃耐性を備えているのか航行中の艦艇近くで爆弾を爆発させ検証するテストで、特にフォード級空母にはショックトライアルを受けたことがない新しい装備品が多いので今回のテストは非常に貴重な機会(ショックトライアルは非常にリスクが高く準備にも手間がかかるので米海軍でも各クラスに1回程度しか行っておらず原子力空母に対するショックトライアルは34年ぶり)だ。
特に11基のAWEは設置位置やサイズも異なり艦の水密区画を貫通しているのでショックトライアルで得られるデータは今後の設計に必要不可欠だとフォーブスは主張して「2022年の本格運用開始に間に合わせるためショックトライアルを急げば実戦的な衝撃データの検証機会を逃すことになる」と言っている。
あと興味深いのはフォード級空母に関する情報が未だに不正確でプログラム責任者と海軍上層部の間に問題があるのではないかという指摘だ。
通常大掛かりなプログラムは不確実な情報に溢れているが完成に近づけば近づくほど正確な情報が増して不確実な情報は減少していくはずなのに、フォード級空母に関しては海軍上層部が議会で証言する内容が未だに不正確(最も最近ではインド太平洋軍のトップが議会に正常作動するAWEの数を9基だと報告したが実際には7基しか作動してない)でプログラム責任者が嘘の進捗を報告しているか、責任者自体が部下からの報告をきちんと受け取っていないかのどちらかだろうと言っており「米海軍はこの件を調査して説明責任を果たさなければならない」と主張しているのが興味深い。
果たして米海軍は未完成の空母フォードを使用して34年ぶりに実施するショックトライアルを予定通り実施するのだろうか?
それとも完全な準備が整うまでショックトライアルを延期するのだろうか?
どちらにしてもAWEの信頼性は相当低そうなので技術が成熟するまでフォード級空母の航空機運用能力はカタログ通りとはいかないだろう。
関連記事:米海軍と国防総省で評価が対立、空母ジェラルド・R・フォードは本当にテストをパスしたのか?
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※アイキャッチ画像の出典:public domain 空母ジェラルド・R・フォード
フォークリフトが入らないから荷運びを手作業でやってたのは流石に直ったんだろうか。
さすがに専用の作ったか?
エレベーターにフォークリフトごと乗せるのをあきらめて、各階層にそのエレベーターでの荷物運搬専用フォークリフトを配置したんじゃないかな
必要フォークリフト数は増えるけど専用フォークリフトを作ったりエレベーターを大きくすることと比べたらはるかに安価だろうし
その方が「あれ?フォークどこ行った?」
「いま2Fに行きました!」とかならずにいいかもね
初期の段階で分かってたのにこれって発注キャンセルして設計一部手直しして再発注ってできないんですかね…
戦闘機のA、B、Cとかbloc10、20とか刻んで改善していくのとは規模が違うんでしょうし、最近の米議会だと改修のためにいったん発注キャンセルしたら予算カットのためにそのまま空母定数減勢上等で改修艦船の発注も禁止までしそうだから使えない空母でも数を維持ってのは何となくわかる気はしますが。
でも空母とか超耐久消費財ですから契約の壁で非実用的な物を作り続けて結局使い物にならないとか困るだけだと思うので米軍の弱体化が進むんでしょうね。
トイレが詰まって使えない? 空母「ジェラルド・R・フォード」に新たな欠陥が見つかる
リンク
下水システムや貨物用エレベーターの不具合は空母「ジェラルド・R・フォード」固有の問題ではなく
ジェラルド・R・フォード級空母の設計自体に原因があるため、
現在艤装中の2番艦「ジョン・F・ケネディ」でも同じ問題が発生するだろうと指摘しており・・・
これは解決したんだろうか?攻撃受けた後トイレが使えなくなったらどうするんだろうか。
トイレ問題はニミッツ級でも起こっているので。
どうもアメリカの方では、下水道にいろんなものを捨てる習慣があるので、トイレに日本ではまず流さないものを棄ててしまうそうだ。
台所のディスポーザーのCMが「何を流しても大丈夫!どんなゴミでも粉砕します!フォークやナイフを落としても壊れません」だからなあ
uav以外で順調に何かが進んでる計画とかあまり聞かんな…アメリカ軍大丈夫なのか?
私の認識が間違っていたらご指摘の程よろしくお願いします。
フリーダムくんもインディペンデンスくんもズムウォルトくんもコンセプトはすごい先進的だったから……
先進的なコンセプトに反比例して製造基盤は弱体化してるよな
工場の作業員とか死んだ目で適当に作業してそう
JLTV(ハンヴィー後継)ぐらいかなぁ順調に行ったの
コンペに負けた企業が絶対ちゃぶ台返しするわ、と思ったら割と潔く身を引いたし
艦載機用の大型エレベーターがうまく作動しないなら理解できるが
新機軸の電磁式を採用したとはいえ、兵器運搬用の小型エレベーターが動かせないとはね
しかも、これからショックテストとなると配備はいつになるやらw
滑車とウィンチ付けて上げ下げした方がちゃんと動きそうっていうね
昇降が遅いとか、そういう理由でリニアにしたんだろうけど
このままだとエンタープライズはフォード級ではなく、ミニッツ級になりそうだ
そもそも今後、正規空母に予算が出るかわからんけど
長過ぎるから「フォード級」呼びは仕方ないが
「ミニッツ級」はいただけない。
古いままってのまもなんだけど、
全部新しくしちゃうのも考えもんだね。
中古空母買ってテーマパーク化前に調査し、地上に空母を模したのを何か所も造って、
建造放棄された艦を買って空母に仕上げて、それと同型艦を作ってみて調査して
とステップを進めている中国のほうが手堅く着実に技術開発と拾得をしているような
海上で動かなくなったりしているけどね。
古すぎて、的にしかならないし
ドックや港に引きこもる体質だしなw
ハテEV設置するのに何をそんなに手間取ってるんだ?と思っていたがこれか
>兵器運搬用エレベーター(AWE)を電磁式に変更
>11基のAWEは設置位置やサイズも異なり
設置位置が影響するかは知らんがサイズ異なるのは絶対手間だわこれ
11基全部サイズバラバラなんてカオスな状況でない事を祈る
大日本帝国を圧倒した規格兵器を製造したUSAさんがなんか大日本帝国の兵器っぽい状態になってる。
EVが使えない、カタパルトが使えない時点で空母失格、水密が怪しいで軍艦失格、トイレ使えないで、船失格。なんでこんなことな、、、
トイレは舷側からいたせば何とかなるだろうけど
エレベーターとカタパルトはどう代用すればいいんだろうか?
陸上基地から発進して、航空甲板を中継点として運用する戦法ってやつはどーでしょうか?
たかだかEVだけど、1つ1つ形や耐重量が違うのかな。要は制御系のパラメーターが全部違うとか? まぁそんな設計する方がおかしいと思うんだけど。
ミサイルや爆弾運搬用ならスペースは小さくても耐荷重量は重くなるし、甲板上で運用する車両類運搬用ならそこそこ大型になるし、戦闘機や早期警戒機運搬用なら馬鹿でかくなる
各部署で扱う物の形と大きさと重量が違いすぎるからそこはしょうがない
件の兵器運搬用エレベーターは艦底の弾薬庫から左右に張り出した飛行甲板外周部駐機位置に直通するものです。
場所によって横方向移動量が違い単純な垂直移動じゃないと思われます。
それで1基づつ不具合点を検査し試行錯誤の調整が必要になってるんじゃないですかね。
中国もこのシステムをバグのまま技術を盗んでいて
同じ目に遭ってたら面白い
リニアモーターなんて枯れた技術だと思うのだけど、なんでトラブルになるの?
どの(日本語)記事を読んでも「兵器運搬用エレベータートラブル」だけで、どのようなトラブルなのかの記事はなし。
知っている人、おしえて。
EVのプログラムって何が難しいのでしょうか?
指定された階に行って止まるだけですよね、
重量物載せるからバランスとか加速の調整がって話なんでしょうか?
普通のエレベーターでも程度は小さいとはいえ、
それは普通にあるので未知の設定ってわけでもないはずなんですが
巨艦とはいえ、それなりに上下左右に揺れる環境で重量物兼爆発物を扱うため、安全設定がシビアすぎるとか?地震動でエレベーターが緊急停止するみたいに、チョットした事で停止して現場が「やってられねぇ」とか。
エレベーターの場所×種類×積載物の種類×量×海象で個別パラメーター設定とかしつつ安全性も確保・・・を試行錯誤しているとすれば、時間が掛かるのも理解できる。下層と上層で揺れ幅も違うだろうし。
最も、ソフト面ではなくハード面の問題なのだろうけども。
>艦内の兵器運搬用エレベーター(AWE)を電磁式に変更することで1日あたりの出撃回数を160回まで引き揚げたのがフォード級空母の特徴なに、
エレベータが電磁式ってどんな代物なんだ?
それ以前の問題として,兵装エレベータなんて極めて基本的で「これが故障したら確実に空母の任務に支障を来す」という高い信頼性が求められるものまで,試験艦でなく実戦配備目的の戦闘艦で新しい技術を使った全く経験のない代物にいきなり替えるとはね.
試験艦で長期のテストで信頼性や故障頻度のデータが確立するまでは,ニミッツやその前の空母から半世紀以上にも亘る使用経験で信頼度や故障間隔のデータが確立しているのを継続して使い続ければ良いものを.
EMALSにしてもAAGにしてもそれらの為の大容量の貯電装置にしても,十分な試作やテストをやって信頼性を確立し故障率のデータを得ずに,いきなり実用の戦闘艦で様々な新装備を一斉に搭載するって,いったいどれほどド素人ならそんな発想が出来るんだ?!