米国関連

荒れた海で運用不可? 米メディア、米海軍の小型艦による中国対抗策は無意味と警告

米国の経済誌「フォーブス」は小型艦中心の艦隊編成によって355隻体制を確立できたとしても、これは米海軍の活動領域を狭めるだけで無意味だと警告した。

参考:The U.S. Navy’s Future Fleet May Run Aground In Heavy Weather

米海軍が打ち出した小型のフリゲート艦や無人戦闘艦中心の艦隊編成は活動領域を狭めるだけか?

米海軍は2021年からコロンビア級原潜建造が始まるため今後数年間は艦艇建造に割り当てられる予算が逼迫する状況下で、トランプ政権はメキシコとの国境沿いに「壁(通称:トランプウォール)」を建設するための費用を国防予算から捻出するため、海軍はアメリカ級強襲揚陸艦4番艦(LHA-9)建造費用等を削減することを求められ約13.1億ドル(約1,400億円)もの予算を強奪されそうになっている。

関連記事:420隻体制の中国海軍に対抗不可? 自由を奪う「3つの呪い」で自滅する米海軍

それにも関わらずトランプ政権は米海軍に2030年までに355隻体制を確立することを要求し続けているが、コスト高騰が続くアーレイ・バーク級駆逐艦の建造を続けて355隻体制を確立するのは無理だと米海軍は判断し、小型のフリゲートFFG(X)や無人戦闘艦を中心に据えた編成へと方針を変更するつもりだ。

この方針を真っ向から批判しているのが米国の経済誌「フォーブス」だ。

出典:public domain フリゲートFFG(X)に提案されているFREMM

同誌は小型のフリゲートFFG(X)や無人戦闘艦を中心に据えた戦力編成は少ない予算で戦力を増やせるため理にかなっているように見えるが、この方針転換は米海軍の活動領域を更に狭めることに繋がると警告している。

米海軍は冷戦終結後、戦争の形態が大きくかわりテロとの戦争に不必要な「荒れた気象条件下での艦隊運用」を避けてきた結果、米海軍は18ヶ月前の2018年に空母打撃群をノルウェー海へ派遣するまで「荒れた気象条件下での艦隊運用」のノウハウが失われていたことにさえ気がついていなかった。

荒れた気象条件下でも原子炉を搭載した大型艦=原子力空母は安定した運用が可能だが、艦艇が軽く小型になればなるほど運用が難しくなり、1980年代に米海軍がまとめた報告書によればSea State(海況)5の状況下ではスプルーアンス級駆逐艦は80%しか能力が発揮できず、Sea State 6になれば20%しか能力を発揮できないと指摘している。

出典:public domain スプルーアンス級駆逐艦

要するにアーレイ・バーク級駆逐艦と同等の大きさを持っているスプルーアンス級駆逐艦ですら「Sea State 5」以上の荒れた海になれば機能しなくなるのに、米海軍は小型のフリゲートFFG(X)を20隻調達しようと計画し、2,000トンクラスの無人戦闘艦を開発して配備する構想を打ち出したことが問題だと指摘しいるのだ。

米海軍の調査(1982年)によれば、北半球の外洋でSea State(海況)6の状況は27%、Sea State(海況)5の状況は50%の確率で発生することが予測されたため、当時の米海軍はペリー級ミサイルフリゲートを廃止しても後継艦を作らずアーレイ・バーク級駆逐艦に一本化したにも関わらず、この教訓を忘れて米海軍は小型艦中心の編成へ切り替えれば、表面的には中国に数で対抗出来ても活動領域が狭いため、大型中心で整備を進めている中国海軍に押されることになると警告している。

因みに、米海軍はコンデロガ級ミサイル巡洋艦の後継艦開発を2021年から始める予定で決して大型艦の開発や整備を軽視している訳ではないが、中国に数で対抗しようとする方針を維持すれば自ずと大型艦よりも小型艦の整備が中心にならざるを得ず、フォーブスが指摘する問題が将来の米海軍に暗い影を落とすことになるかもしれない。

関連記事:枯れた技術のみで構成? 米海軍、革新的なズムウォルト級とは正反対の次世代巡洋艦を開発

※アイキャッチ画像の出典:public domain アーレイ・バーク級駆逐艦

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    中国相手ならフリゲートでも大方問題無いのでは? 中国海軍も大半はフリゲートとコルベットだし、いったい何処で戦うつもりなんだと
    ロシア相手ならば大型艦中心の方が良いかもだが、あちらもカネが無いせいで、近年はフリゲートしか造れていないからな

    1
      • 匿名
      • 2020年 3月 05日

      人民解放軍は近く浅い第一列島線内を聖域化するためにコルベットやフリゲートの大量建造を重視してるが米軍は本国から遠く離れた海域での戦闘を主眼に置いてるから小型艦はツラい

      対中でも結局西海岸沿岸どころか太平洋遠洋ですらなく第ニ列島線内及び第一列島線内での対峙を考えてるので米軍は小型艦程不利に、人民解放軍は小型艦でも大きな戦力になる

      1
        • 匿名
        • 2020年 3月 05日

        同盟国の港を使用するなどで前進配備が出来れば、条件は同等ですね。
        各種迎撃ミサイルの配備に、中距離ミサイルの配備も出来れば、接近拒否体制でも同等。
        フィリピンも基地化できれば最適なのでしょうが、過去の歴史から困難でしょうね

        1
        • 匿名
        • 2020年 3月 05日

        コンデロガではなくタイコンデロガ級だとおもうけど

        1
    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    そもそもシーステート6を越えるような海況だと、どこの海軍でも相当に作戦遂行が低下してまともに活動できないような気がする

    1
      • 匿名
      • 2020年 3月 05日

      潜水艦でも海上目標相手には辛いところだよね

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    現代の駆逐艦は昔の巡洋艦クラスのデカさになったのは任務の多様性もだけど
    外洋での使い勝手の良さを求めたせいでもあるしな
    アーレイバーク級やこんごう型を駆逐艦じゃなくて巡洋艦にしとけば分かりやすいんだよ
    んで、せっせと駆逐艦作っても外征する時大変だよって当たり前じゃんと言うね
    太平洋戦争で散々駆逐艦乗りは苦労してたんだからさ

    1
      • 匿名
      • 2020年 3月 05日

      世界中で艦隊を同時運用しないといけないアメリカにそこまで求めるのは酷だよ
      金も人手も無い中でやれることをすればどこかにしわ寄せがくる
      そこで妥協としての小型艦運用なのだから

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    なら30FFMとかどーすんべ?

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    米軍は数合わせにこれから海上自衛隊が建造するFFMを導入検討すればいいのに
    小型無人艦構想なんか運営して拿捕される前に、また、開発費高騰して延期後に開発中止になるのがオチ

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    荒れた日本海だとあぶくま型どころか汎用DDですら能力半減以下だし

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    結局、外洋の荒波を突っ切るには最低軽巡クラスの大きさが必要なんだな
    十分訓練された兵員を持ってしても基準6000t以上のフネでないと戦闘力は維持できるかわからない、つまり戦力としては勘定に入れられないということ
    「355隻」という数だけにこだわるトランプが悪い

      • 匿名希望
      • 2020年 3月 18日

      未完成のズムウォルト級駆逐艦を完成させて、フレッチャー級(かつての日刊駆逐艦)の様に、大増産する?
      まぁ……戦時体制でもないと予算が降りないから、米中戦争でも始まらないと無理だけれど。
      ズムウォルト級が高額なのは、研究開発費を、建造数で頭割りして分担負担にした上で、建造数を減らした事に因る分も大きいから……フレッチャー級並みの大増産したら、もしかしたら、1隻辺り単価がアーレイ・バーク級駆逐艦を下回るかも知れないし?
      外洋を航行する為の規模、という点ではズムウォルト級駆逐艦は、かつての巡洋艦クラスの規模があるから……条件は満たしているし。まぁ……アーレイ・バーク級駆逐艦でも、かつての(小さい)巡洋艦クラスの規模は、あるけれど。
      ただ……アーレイ・バーク級駆逐艦は、戦時下でもない……にも関わらず、60隻近い数が造られたベストセラー艦では、あるけれど……もう、設計が古いし……拡張性に難が在るので。ズムウォルト級の開発失敗判定が無ければ、再建造に成らなかった……とは、思う所はある。

    • 匿名
    • 2020年 3月 05日

    中国が大型艦中心ってどんな妄想だよ
    大型艦だけ切り取ったら米海軍の10分の1の建造数でしかないぞ?

    1
      • 匿名
      • 2020年 3月 06日

      最近はってことだと思う

        • oominoomi
        • 2020年 3月 06日

        今現在整備中の艦を見ても、056型コルベット(ゆうばり型とほぼ同大)、054A型フリゲート(あさぎり型とほぼ同大)など、中・小型艦が数的には主力です。

        1
    • 匿名
    • 2020年 3月 06日

    >米海軍は18ヶ月前の2018年に空母打撃群をノルウェー海へ派遣するまで「荒れた気象条件下での艦隊運用」のノウハウが失われていたことにさえ気がついていなかった。

    あれ?
    冬の日本海とか、経験してなかったの?

    • 匿名
    • 2020年 3月 06日

    小型艦でないと諸島や大陸棚での行動制約もある
    だいたい荒天時には大型艦船でもどうするのって話

    • 七面鳥
    • 2020年 3月 06日

    第四艦隊事件なめんな。
    米軍も沖縄戦で痛い目見てるのでそのあたりは戦訓があるはず……だよね?
    むしろ対岸の船は出てこれるのかと。
    まあ、脅威は舐めずに大きめに見ておく方が安全ではある。

      • 匿名
      • 2020年 3月 07日

      それが「既に失われて久しい、なのに小型艦増やしても無駄」と言うのがこの記事の要旨なのでは?

    • 匿名
    • 2020年 3月 09日

    昔6000tクラスのタンカーに乗ってたからわかるけど、このサイズの船に貨物満載にしてても波高が4m位になるとまともに動ける人員なんてほとんどいなくなるぞ。
    潜水艦上がりの同僚でもゲロしながらワッチしてたからな

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