米陸軍はUH-60の後継機にベル/ロッキード・マーティンのV-280 Valorを選択したが、Defiant Xを提案したシコルスキー/ボーイングは抗議文書を政府説明責任局(GAO)に提出、2023年4月までに決定を見直すよう要求した。
参考:Sikorsky challenges US Army’s helicopter award
シコルスキー/ボーイングは陸軍、兵士、納税者に最高の価値を提供する提案が正当に評価されなかったと信じている
米陸軍は回転翼機(AH-64/OH-58/UH-60/CH-47など)の後継機開発をバラバラに行うのではなく、センサー、アビオニクス、エンジン等のコンポーネントを共通化=ファミリー化することでコスト削減や開発期間の短縮を狙い「FVL(Future Vertical Lift:将来型垂直離着陸機計画)プログラム」を立ち上げ、UH-60の後継機プログラム=FLRAA(Future Long-Range Assault Aircraft:将来型長距離強襲機)の座をV-280 ValorとDefiant Xが争っていた。
しかし米陸軍はFLRAAの勝者としてV-280 Valorを選択したためベル/ロッキード・マーティンがUH-60の更新需要(1対1で交換した場合の需要は約2,000機)を手に入れた格好となり、米ディフェンスメディアは「最終的にFLRAAベースの回転翼機はAH-64など約1,200機のレガシーなプラットフォームも置き換えることになる」と述べ、米陸軍関係者も「FMS経由による海外輸出の可能性を含めたFLRAAの推定価値は700億ドル=約9.3兆円に達する」と予想している。
ただ両社が参加した競争入札は「最終決定への抗議(2週間以内)」を行う権利が保障されており、Defiant Xを提案したシコルスキー/ボーイングは権利を行使して今月11日に抗議文書を政府説明責任局(GAO)に提出、同社は抗議文書の中で「陸軍が提供した情報を徹底的に検討した結果、陸軍、兵士、納税者に最高の価値を提供する我々の提案が正当に評価されなかったと信じている」と主張、2023年4月までに決定を見直すようGAOに要求した。
米陸軍は抗議が来ることを予期して「(今後のFLRAAの)スケジュールに余裕を保たせてある。今回の決定に変更が起こらないよう務める」と述べているが、シコルスキー/ボーイングが提出した抗議内容に正当性があるとGAOが判断すれば「選定の見直し」を勧告することになり、V-280 Valorの実用化に向けた開発作業が止まることになるためGAOが「抗議に正当性はない」と判断を下すのがベストだ。
果たしてGAOはFLRAAの結果(評価プロセスの公平性や評価基準など)にどのような判断を下すか注目されるが、欧米では競争入札の結果に抗議や訴訟が日常的に発生しているため「今回の抗議(訴訟ではない)」も特に珍しいものではない。
因みにシコルスキーは将来型垂直離着陸機計画プログラムの途中=2015年11月にロッキード・マーティンが買収して子会社しているため、今回の結果に左右されることなくロッキード・マーティンはUH-60の更新=FLRAAプログラムに関与できる。
関連記事:米陸軍、UH-60の後継機にティルトローター機のV-280を選択
※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin DEFIANT X
>因みにシコルスキーは将来型垂直離着陸機計画プログラムの途中=2015年11月にロッキード・マーティンが買収して子会社しているため、今回の結果に左右されることなくロッキード・マーティンはUH-60の更新=FLRAAプログラムに関与できる
え~と、つまり今回の選定の勝者で有るV-280 Valorを手掛けるロッキード・マーティンの子会社が親会社に楯突いていると言う事になりますよね…(宇宙猫状態)
これって、意外と前例の無い事態なのでは?
みんな考えているとは思いますが、海外顧客が一番欲しがるヘリは縦にも横にもデカくない、UH-1やUH-60みたいなヘリでしょう。
ダクトファンやノーターにして欲しいという希望はあるでしょうけどね。
なので下手すると、このまま行くと海外顧客をエアバスヘリコプターズあたりに取られかねないかも。
まあその時はその時で米国ヘリメーカーも、その手のヘリをラインナップに加えるとは思いますが。
離着陸や格納の場所が広い陸軍、空軍、海兵隊にはいいのでしょうけど、
艦艇に載せる海軍だと、V-280のサイズは厳しそう。
SH-60系の後継はどうなっていくんでしょうね。
米陸軍が等価交換か多少削減して導入する言う前提で行くならばと前置きした上で話をする。
よく考えれば分かるけど米陸軍のヘリ需要のパイは海外顧客の全てを含めた数より規模が大きく、その一番の大口顧客の需要を逃してまで海外顧客に配慮すべきかって話。そして海外顧客全てとは言わないが一部にV-280の需要は確実にあるはずなので海外に全く売れない機体では無いと思う。
2000機の需要のうち導入数が2/3になろうとも世界中で使われるUH-60系だけ(派生型を除く)の総数を超える導入数である事は間違いの無い事実。
ダクトファンやノーターに関して言うなら導入された実績見れば分かる通り大口需要が無いのでどこまでお金になるか大いに疑問、ノーターなんてMDヘリコプターズ以外にあっただろうか。
今後上手くいくなら韓国もインドも同クラスのヘリ作っている可能性もあるから、そこで似たような性能のヘリで勝負してもうまみは無いと感じても不思議は無い。
アメリカちゅうとこは、年の瀬ギリまで面倒臭いとこですな
クリスマス休暇が終わってるんじゃないの?
それに年の瀬と言っても年度会計はこの時期は執行にしろ、議会の予算の討議は年明けからでまだだし、軍隊、政府は通常営業で正月は関係ないだろう。
知らんけど。
アメリカは会計検査院が予算の執行後だけでなく執行前に口出しできるシステムなのか、ややこしいなぁ
結果的にボーイングの一人負けの構図に。
お得意のロビー活動で挽回しようとしてくるだろうが、給油機の件で信頼感ダダ下がりの現状、助けてもらえるんだろうか。まあインディペンデンス級とフリーダム級みたく両方とも作ってみようとなるかもしれないが。
そういえば、JAXAの複合ヘリってどうなったんだ?
誰か知ってたら教えて。
どうなってるかはしらんけど、メインに加えて側部2つに尾部にもひとつ駆動部があるヘリなんざ現場の整備部に死ぬほど嫌がられるだろうなってデザインだ。
正直jaxaの雀の涙しかない予算でやり繰りするなら、さっさとポシャってくれたほうがいいな
尾部推進ペラは通常ヘリ尾部ローター機構の変形と見てかまいません。
両翼端のトルク打消し用ペラは小型電動モーター(回転数制御)で整備性が極端に悪化するほどの機構ではないですよ。
現時点では概念模型を制作しての技術実証段階を出ていません。
将来的に共同研究を行っている航空機メーカーに技術移転する予定ですので、実機試作はそれからでしょう。
UH-2売り込むチャンスととらえましょう。
ティルトローター機って結局メンテナンスコストを低減する目途って立ったんだろうか
ブラックホークって俺のイメージだと安価に飛ばせるタクシーって感じなんだけどV-280だと高級車って感じにならない?
V-280の量産型のエンジンはV-22と同じになるとかいう話ですし、そうなると尚更高級化して気軽に飛ばせる存在じゃなくなると思うんですがね……
結局、米軍ですらハイ・ロ-ミックスやハイ・ミドル・ローミックスになりそうな予感が……
安価なタクシーならUH-72ラコタだと思うブラックホークは高性能汎用ヘリ。
安全圏をちょっとしたタクシーとして使うなら確かに無駄に高級だろうが、的勢力圏内での長距離任務で考えるとトータルではコスパは良いと思う。過去の作戦でブラックホーク使って起きた事の苦い経験がそうさせている感じだと思う。
スピードが1.9倍くらい、航続距離が2倍以上なら護衛や給油リスクの低減、自力での展開とかもし易いならトータルで見たら十分ペイ出来るんじゃないの。
しかしこのプログラムに抗議できるプロセス、多段階チェックはいいなぁ
独裁を許さない民主主義国家の気概を感じる
日本だとお上には逆らわず黙ってろの風潮が強すぎて好かんわ
その上「防衛産業は儲からないのでもうやめます」で逃げられてはなぁ・・・
何をやっているんだ?ってなりますよ
KC-135のリプレース計画では
KC-767ATをリース提案
→ 議会のチェックと汚職判明で競争入札に移行
→ノースロップ・グラマンが提案したA330 MRTTのアメリカ空軍型であるKC-30T(KC-45)を採用
→ ボーイングがGAOに異議申し立て、ノースロップ・グラマンが入札から降りる
→ ボーイングがKC-46Aを受注
→ 現在もトラブル継続中
という事例もあるので因果応報ではあるのですが、議会や政府の監査機関がキッチリ動いてるのは羨ましいですね。
これができるのも「理解できる人」が政治家になっている恩恵だと思います。
これ自分も聞いてびっくりしたんですけど、Defiant Xって見た目から想像できるより一回り背が高いんですよね。キャビン自体がそもそも大きいし、その上に大出力のエンジンとギアシャフト区画、そしてローターという多段構造の結果地上高はV-280を越えています。陸軍の輸送ヘリコプターなら強襲揚陸艦のエレベーターや駆逐艦の格納庫ドアに入る必要も殆どないのでこういう構造になっているんじゃないかと思いますが、本当に陸軍向け一本足という感じの仕様策定だと感じます。
水上艦での運用に支障があるのはV-280もそうですが、そもそもティルトローターと推進ヘリでは航空機としての特性が全然違うので、どっちか一つ選べよと言われたらそりゃあV-280なるでしょって話だと思うんですよね。ただ、VTOL機としての利便性という事を言うのであればヘリ譲りの器用さが見込めるDefiant Xにも利点はあるし、何だかんだ特殊用途では採用する事になるんじゃないかなあ。ティルトローターで救難機作るのってダウンフォッシュの関係で想像より難しいらしいですし、市街地のビル屋上や路地のギリギリの場所に人を下ろしたり回収する能力もDefiant Xに分がありますからね。