米国関連

調達打ち切りに怯えるGA-ASI、MQ-9やMQ-1Cから空中発射可能な小型UAVを初公開

米国の無人航空機製造大手のジェネラル・アトミックス(GA-ASI)は今月20日、米空軍が運用するMQ-9リーパーや米陸軍が運用するMQ-1Cグレイ・イーグルが運搬可能な小型UAVのイメージイラストを公開して注目を集めている。

参考:The MQ-9 You Don’t Know

次から次へと新機軸を打ち出すジェネラル・アトミックスの真意は?恐らく2022年度以降の受注を確保するためのプロモーション

ジェネラル・アトミックス(GA-ASI)はMQ-9やMQ-1Cといった無人航空機がハイエンドな大国間同士の争いの中で生き残るため「自己防衛ポッド」を発表、このポッドにはレーダー警戒受信機、指向性赤外線妨害装置AN/AAQ-45、デコイ放出用のディスペンサー(フレア、チャフ、デジタルデコイのBriteCloudに対応)が組み込まれており、赤外線/レーダー誘導ミサイルの脅威からMQ-9やMQ-1Cを保護するのに役立つとGA-ASIは説明している。

出典:GA-ASI 自己防衛ポッド

さらにGA-ASIは高度な防空システムに守れた空域下での作戦に対応するためMQ-9やMQ-1Cから空中発射可能な小型UAVも公開、この小型UAVについてGA-ASIは「当社が水面下で開発を行ってきた未発表のプロトタイプで詳細は明かせない」と説明しているが米軍は小型UAVを航空機で遠方の戦場に運搬して活用することを狙っており、この取り組みに食い込むことでGA-ASIはMQ-9の調達打ち切り回避を画策しているのだろう。

米空軍は2021年~2024年の間にMQ-9を34機調達する計画だったのだが調達コストが高価で運用にも手間のかかるMQ-9に見切りをつけて2021年度で調達を打ち切ることを発表、しかし議会が米空軍の計画を拒否して2021年度予算にMQ-9の調達予算を復活させたためGA-ASIは首の皮が辛うじて繋がっている状況だ。

出典:GS-ASI MQ-Xコンセプトイメージ

MQ-9後継機「MQ-X」についても動きが出てきたが、ノースロップ・グラマンやロッキード・マーティンといった大手が後継機開発に手を挙げているのでMQ-9やMQ-1Cを開発した経験をもつGA-ASIが必ずしも有利という状況でもなく、同機の海外輸出は低コストの競合機に押されて成功しているとは言えない。

対外軍事援助を通じてMQ-9を輸出すると1機1.5億ドル/約163億円(台湾契約に基づく数字)もするため買い手が限られるのが同機最大の問題で、トランプ政権がMQ-9輸出の妨げとなっていたミサイル技術管理レジーム(MTCR)の解釈を変更したため資金力が豊富な中東への輸出が期待されていたが、バイデン政権が中東諸国(特にサウジアラビアやUAE向け)に対する武器販売のポリシーを見直したためGA-ASIはMQ-9を購入してくるれる輸出先を見つけるに苦労している。

出典:public domain MQ-9リーパー

つまりGA-ASIはMQ-9の開発体制や生産ラインの維持をできるだけ長く延命するため最大の顧客である米空軍の調達継続を必要としており、次から次へと新機軸を打ち出すことで興味を惹こうとしているのだろう。

果たしてGA-ASIは思惑通り米空軍から2022年度以降も受注を獲得できるだろうか?

MQ-9やMQ-1Cを小型UAVを母機にするという発想は注目に値するが、調達コストが高価で運用にも手間がかかることを理由にMQ-9に見切りをつけようとした米空軍が再び資金をMQ-9に投入するかは謎だ。

因みに米空軍のMQ-9調達コストは4,940万ドル/51億円(2021年会計年度/地上管制装置などの関連機器が含まれた価格なのかは不明)で2機調達するためのコストは1機分のF-35A調達コスト(8,810万ドル/2021年会計年度)に匹敵する。

関連記事:米空軍の調達打ち切りを免れたMQ-9の余命は1年、後継機は低コスト?ステルス?
関連記事:盛り上がってきた次期MQ-X、米空軍がMQ-9の後継機に関連したRFIを発行
関連記事:米国の危機感、なぜ米国の同盟国は中国から無人航空機を購入するのか?
関連記事:遂にNATO加盟国までバイラクタルTB2を導入、ポーランドがトルコ製UAV導入を表明

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※アイキャッチ画像の出典:GA-ASI

米国やロシアが実用化を狙う運搬可能な小型UAV、フランスが次世代戦闘機による対応を明言前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    中国製の翼龍が圧倒的に安いからね
    何でアメリカ製はこんなにコストパフォーマンスが悪いんだ?って疑問に思うわな

    6
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      軍用機のコストで一番掛かってるのは電子装備だそうだから
      それだけ高度なセンサーや耐ECM性とか情報処理装置を載せてるんじゃないか

      逆に中国製はその辺割り切ってある程度性能落としてるとか

      あるいは、それ単体で利益上げないといけない民間企業に対して
      中国側は政治的な繋がりや実戦経験のフィードバック狙いで採算割れで売ってるとか?

      4
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      単純に性能が違うだろうこと(一般向け資料のスペックに出ない光学センサーの分解能やら、耐ECM性能やらに違いがあるかも?)と
      営利企業vs国営企業の差かな

      中国製だと、何らかの政治的利益になると見れば最悪実質0円でばら撒いても良いわけだし

      15
        • 匿名
        • 2021年 5月 22日

        コストと性能のバランスに関しては、米国は先行している者の不利が出ているかも。
        フォローする立場の方は、前者の様子からバランスを練ることが出来るから。

        2
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    高価なリーパーくん守るために防御装置付けてますます高級品路線でいくのか。興味深いアプローチではある。

    4
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      そもそも人的被害が出ない使い捨て上等のはずが、あれもこれもと付けて本末転倒になってる。

      近年の兵器開発の失敗の根っこだと思われます。

      15
        • 匿名
        • 2021年 5月 22日

        リーパー1機でバイラクタルなら10機買えるのか
        戦争は数だよ兄貴

        6
          • 匿名
          • 2021年 5月 22日

          リーパークラスは高価すぎて逆に雑魚狩りにしか使えないからな・・・
          まあ恐らくそれでも有人機を一々展開するよりは兵站の負担は軽いんだろうけど

          7
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      そして高価すぎて調達数減らされるってパターンを最近の米軍は何回やるんですかねぇ

      4
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    いっそ友人機で運んでも変わらない気がする

      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      そりゃ敵機がわざわざ運んでくれるはずないしな

      7
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    第二次大戦緒戦のメッサーシュミット Bf 110は「戦闘機の護衛が必要な戦闘機」とか「自衛が精一杯で肝心の爆撃機の護衛ができない」とか言われたが、あの悪循環を彷彿させる
    Bf 110はその後、戦闘爆撃機と大型爆撃機迎撃機に転用されて成功を収めたけど、リーパーはどうなんだろ?
    小型UAVキャリアとしての使い方も高い調達コストと維持費が必須ならF-35にやらせた方が合理的な気がする

    5
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    小型UAVを単体で売ればいい。

    2
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    日本が導入を押し付けられそうだ(震え)

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      そもそも押し付けられた装備なんて日本には無いし
      もしそう思ってるなら誤解があるか、キヨタニみたいなアレな記者の記事を真に受けてしまってるか

      2
        • 匿名
        • 2021年 5月 22日

        押し付けられるのは、高額な請求書なのにね。
        そこから何故か、装備の方が押し付けられるに変換されるのが、某氏のクオリティ?

        5
      • 匿名
      • 2021年 5月 23日

      うーん、日本でこれからMQ-9が必要なシチュエーションが思いつかない

      既に海保のシーガーディアンと空自のグロホが確定してるし、陸自は調達中のスキャンイーグルがあるし
      海自は検討してたのがファイアスカウトとアヴェンジャーでしょ、導入中ないしはすでに検討した機種を見ても微妙にMQ-9が入る余地がなさそうなのよね

      なので押し付けようがないと思う

      3
        • 匿名
        • 2021年 5月 23日

        シーガーディアンとMQ-9ってほぼ同一機種ですけど、、、

          • 匿名
          • 2021年 5月 23日

          うん、だからこれからわざわざシーガーディアンとは別でMQ-9を入れる必要性は?って話だよね

          6
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    しかし軍の側から要らないと言ってるのに議会の決定で購入を強制させられるというのは本末転倒というか
    なおかつそれが常態化しているってのはもう
    日本や欧州とは真逆だけど、
    これはこれで、アメリカ本土は絶対に戦争に巻き込まれない、被害を受けないという信仰から来る完全な平和ボケの症状の一種というか
    シビリアンコントロールの末期症状よな
    日本的には羨ましい限りだけど

    7
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      リーパーもこの角度からだとカッコいいな。
      ちょと見直した。

        • 匿名
        • 2021年 5月 22日

        あれ、単独のコメントしたつもりが、返信になってた。
        ごめんなさい。

        3
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      確かにここまで来ると国防のための国防ではなく雇用と経済対策のための国防になっており本来の過程と結果が逆転してしまってますな

      7
        • 匿名
        • 2021年 5月 23日

        手段の目的化は世の習い

    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    戦場での情報収集は戦闘機も偵察機も、使い捨て同然の小さなセンサーを前方にばら蒔きそれをキャリアしてきた無人機が中間で中継し後方の有人機体が管制するようになるな

      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      使い捨て同然=回収しなきゃならんがネックになる。
      小型化すると航続距離は短くなるから、文字通り使い捨てにできればねぇ。
      ノルウェーだったかの時期戦闘機選定でそんな案がありましたね。

      1
        • 匿名
        • 2021年 5月 22日

        自爆機能も欲しい
        そしてポチッと押したくなる

        3
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    リーパーちゃんライトニングちゃんと同じ値段なのかよ…そりゃ売れんわ

    5
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      半額です。
      リーパー2機とF-35の1機分の調達コストが同等。

      2
        • 匿名
        • 2021年 5月 23日

        それにしても高価。一機10億円くらいかと思ってた。

        2
    • 匿名
    • 2021年 5月 22日

    リーパーが打ち切りになったら、海保のシーガーディアンはどうなちゃうの…?

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      グロホの各種費用の上昇の件といいもう自力で作れやって言いたくなるな

      6
        • 匿名
        • 2021年 5月 23日

        日本が開発中の滞空型無人機は、恐らくもっと高額になると思います。
        弾道ミサイル監視用の光学センサーや、高高度﹙15000m﹚から低高度﹙数m﹚の巡航ミサイル﹙RCS0.1㎡﹚を探知するレーダーなどを搭載予定なので。
        リンク

        4
      • 匿名
      • 2021年 5月 23日

      派生のガーディアン/シーガーディアンは広域監視・警戒機として内外に売り込む戦略のようです。
      日本で行ったデモ飛行もセールスの一環でしょうし一定の需要枠があると読んでいるのかと。
      海保の導入が確定すれば試験運用開始までに同種UAV運用関連の法整備が急がれますね。

    • 匿名
    • 2021年 5月 23日

    これが極まってアーセナルバードになるんだろうな

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