米国関連

ウクライナ軍のトクマク攻略が本格化、温存していた予備戦力を投入

ニューヨーク・タイムズ紙は26日「温存していた予備戦力を投入する反攻作戦の主攻が始まった」と報じており、ウクライナ軍はザポリージャ州オレホボ方面に第10軍団を投入した可能性が高く「トクマクを目指す動き」が本格化した格好だ。

参考:U.S. Says Main Thrust of Ukraine’s Counteroffensive Has Begun

予備戦力を投入したウクライナ軍にとって7月下旬から8月は正念場

ニューヨーク・タイムズ紙は26日「温存していた予備戦力を投入する反攻作戦の主攻が始まった」と報じており、ウクライナ当局者から説明を受けた国防総省の関係者は「ザポリージャ州オレホボ方面に投入された予備戦力(数千人規模)はロボーティネの守りを突破してトクマクに到達することが目標で、これに成功すればウクライナ軍はメリトポリへの前進を試みるだろう」と明かし、反攻作戦の最終的な目標については「占領下のウクライナ領とクリミア半島を接続する陸橋の破壊」もしくは「戦略的に重要なクリミア半島を大砲の射程圏内に収めるのに十分な距離までの前進」だと述べている。

出典:管理人加工(クリックで拡大可能)

軍事アナリストのロブ・リー氏はオレホボ方面への予備戦力投入について「この地域の反攻作戦を第9軍団から第10軍団(第21機械化旅団、第33機械化旅団、第37海兵旅団、第47機械化旅団、第82空中強襲旅団)が引き継ぐことを意味し、既に第10軍団の一部は戦闘に参加している」と指摘、ウクライナ当局者は「一連の作戦には1週間~3週間ほどかかる」と予想、国防総省の関係者はニューヨーク・タイムズ紙に対して「(新たな攻勢を成功させるのは)大きな試練だ」と述べているらしい。

反攻作戦の狙いは「アゾフ海沿いの陸橋=マリウポリ~ベルジャンシク~メリトポリ~ジャンコイ~ケチルを結ぶ兵站ルートの遮断」で、これは「クリミア大橋(道路橋ではなく鉄道橋)の破壊=長距離攻撃による攻撃」と「マリウポリ~ベルジャンシク~メリトポリルートの遮断=ウクライナ軍が物理的にアゾフ海沿いに到達するか砲兵戦力の射程圏内に収めるかの2択」がセットでなければならず、これを達成した暁にはヘルソンの再現=メリトポリよりも西とクリミアに展開するロシア軍の孤立状態が完成する寸法だ。

出典:GoogleMap ザポリージャ州オレホボ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ウクライナ軍の反攻軸はザポリージャ州のカムヤンスキー軸とオレホボ軸、南ドネツクのヴォリカ・ノボシルカ軸の3つがあり、その中でトクマク→メリトポリに進むのが最も効果的で陸橋に近く、反攻作戦が主軸がオレホボ軸であるのは誰の目にも明らかだった部分なので、ここに第10軍団を投入したということは「トクマクを目指す動きが本格化」という意味だろう。

これでロボーティネの守りを突破してトクマクにある程度近づけないと「反攻作戦の期待値」は大幅に下がるため、7月下旬から8月はウクライナ軍にとって正念場と言える。

関連記事:ウクライナメディア、クリミア大橋の道路橋損傷は戦場に影響を与えない

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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