ウクライナ戦況

ウクライナメディア、クリミア大橋の道路橋損傷は戦場に影響を与えない

ウクライナメディアは17日、複数の専門家の意見として「ロシア軍は鉄道輸送で人員や装備をクリミアに移動させているため、クリミア大橋の道路橋損傷は軍事的な現在の状況に大きな影響を及ぼすとは考えにくい」と報じている。

参考:Кримський міст знову “втомився”. Головне про нові вибухи та чи порушили вони логістику РФ
参考:В Кремле заявили об остановке “зерновой сделки”

流石に「穀物協定の延長協議妨害のため自らクリミア大橋の道路橋を破壊した」というのは、、、ちょっと信じられない

ロシア領クラスノダール地方とクリミア半島の間のケルチ海峡では17日、複数の爆発音が鳴り響きクリミア大橋の道路橋が損傷、詳細な損傷具合は不明なものの2面ある橋桁の内に鉄道橋側の橋桁が崩落しかかっており、反対側の橋桁は大きな損傷が見当たらないものの「爆発の影響で橋桁が横にズレている」と報告されている。

つまり現在のクリミア大橋は車輌通行が出来ないという意味なのだが、軍事アナリストのオレクサンドル・コヴァレンコ氏は「道路橋の被害はかなり深刻だ。この影響で物流の流れは減少するか通常よりも時間がかかるようになるだろう。しかしこれは道路網を使用した物流の話で、人員や装備をクリミアに移動させる兵站の主要要素は鉄道輸送だ。そしてクリミア大橋を通過する列車は現在も動いている。道路橋の損傷で10%~15%の軍事物資輸送が影響を受けると思うが、この程度は鉄道輸送で何とか出来る範囲だろう」と指摘。

2014年から2017年までウクライナ軍参謀本部の報道官を務め、現在は軍事アナリストとして活躍するウラジスラフ・セレズニョフ元大佐も「敵の軍需物資の大部分は鉄道輸送によって賄われている。そのため(損傷したクリミア大橋が及ぼす影響について)大きな期待は抱いておらず、恐らく占領地を通過する陸路とフェリー輸送が民間物流の問題を解消するだろう。従って道路橋の損傷は軍事的な現在の状況に大きな影響を及ぼすととは考えにくい」と述べたが、南部司令部のナタリア・グメニュク報道官は攻撃に関する別の視点を提供した。

出典:管理人作成

ウクライナメディアは「情報筋がクリミア大橋に対する夜間攻撃は海軍と保安庁による特別作戦だったと明かした」と報じているが、ウクライナ政府や軍はこれを公式に認めておらず、南部司令部のナタリア・グメニュク報道官も「穀物協定延長を妨害するためロシア側が仕掛けた自作自演の可能性もある」と主張している。

実際、ロシアのペスコフ大統領報道官は17日「穀物協定の破棄=期限が17日に切れる協定延長に同意しないという意味」を発表したが、流石に「穀物協定の延長協議妨害のため自らクリミア大橋の道路橋を破壊した」というのは、、、ちょっと信じられない話だ。

関連記事:水上無人艇の夜間攻撃で損傷したクリミア大橋、道路橋の一部橋桁が崩落
関連記事:17日にクリミア大橋で2回の爆発音、橋桁が落下した可能性が高い
関連記事:ウクライナが破壊を再三予告していたクリミア大橋で爆発が発生
関連記事:鉄道輸送に依存するロシア軍、クリミア大橋の損傷がもたらす影響

 

※アイキャッチ画像の出典:CC BY 4.0/Rosavtodor.ru

水上無人艇の夜間攻撃で損傷したクリミア大橋、道路橋の一部橋桁が崩落前のページ

プロトタイプから改良されたSu-75、正面方向のステルス性能が向上次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    キーウ州ホストーメリ、ロシア軍のスナイパーが民間人を標的にして訓練か

    キーウ州ブチャの隣町ホストーメリで民間人11人の遺体が見つかり、地元住…

  2. ウクライナ戦況

    英首相、経済的な問題で停戦を急ぐ茶番を演じればロシアが勝利する

    英国のジョンソン首相は「経済的な問題で停戦を急ぐような茶番を演じれば侵…

  3. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍の自爆型ドローン、ロシア軍設置のネットを回避して攻撃

    ロシア人は「道路を走行する車輌」を無人機の攻撃から保護するため電信柱に…

  4. ウクライナ戦況

    駐英ウクライナ大使、英国から2隻の軍艦を受け取る予定で訓練も行われている

    ウクライナのプリスタイコ駐英大使は1日、国営放送とのインタビューの中で…

  5. ウクライナ戦況

    アウディーイウカ市街戦、市内北東部に侵入したロシア軍が足場を拡大

    タブリア作戦軍のリホワ報道官は8日「戦闘はアウディーイウカ北部の民間エ…

コメント

    • ぷーさん
    • 2023年 7月 17日

    さすがに自作自演ならやり過ぎでしょ…

    14
      • baru
      • 2023年 7月 18日

      同感だが、自分が占領した場所のダム壊す奴らだしなあ…

      13
        •  
        • 2023年 7月 18日

        あれは焦土戦術的メリットがはっきりと存在するけどのちらに関しては大義名分を作り出す以外のメリットがない割に無視できるとはいえそれなりのデメリットがあるので….

        8
        • nachteule
        • 2023年 7月 19日

         ダムが故意かどうかは考えずに効果を考えたら戦場に影響はあるし将来含めウクライナへの嫌がらせとしてもそれなりの物が期待出来たけどクリミア大橋はなぁ、ダム爆破に近いレベルの恩恵考えられないならウクライナの仕業の方がしっくりくる。
         黒海穀物イニシアティブと橋は関係無いってスタンスみたいだし、前回攻撃の報復の理由を得る為ならやりかねないが、そんなの関係無しに攻撃しているからわざわざやる意味が無い。

         橋の攻撃が関係していたなら成り立っていたが裏取り出来なかったけど黒海穀物イニシアティブでトルコ海軍が航行する民間船舶を守る義務があるとか言っている人居たけど、どこの組織もエスコートに関してはやらない話しか無いし、そうなるとちょっと前に揉めたトルコへの嫌がらせにしても微妙になる。

        1
    • gepard
    • 2023年 7月 17日

    鉄道と海運はトラック輸送よりはるかに効率が良い。鉄道橋に損傷がないとすれば軍事的な影響はわずかだ。
    当然だが継続して攻撃に成功すればかなり状況は変わってくるため、今後追加攻撃があるか注視したい。

    ウクライナの攻撃としても実行者がどのプレイヤーになるかでかなり状況が変わってきそうだ。
    膠着した戦況と先のNATOサミットの結果を考えると、そろそろロシアとの停戦交渉に向けた動きが進んでいる可能性があるがクリミア大橋を攻撃することで穀物合意ごと交渉を台無しにしたい勢力が存在することは十分考えられる。

    11
      • 2023年 7月 18日

      穀物合意についてはウクライナ側はトルコ・国連と連携して交渉を希望していれば良いのでロシア側がゴネて延長破棄する分には特に痛手では無いでしょう。このまま「ロシアのせいで世界的な食糧不足に陥る」という状況になればグローバルサウスの心情も揺らいでいくでしょうから結局どこかでロシアが折れて合意再開するしかありませんね。

      13
    •  
    • 2023年 7月 17日

    橋梁の破壊の難しさを改めて実感する戦争ですね

    24
    • ご教示願いたいまい
    • 2023年 7月 17日

    去年の10月の時もそうでしたがなぜウクライナは公式に関与を認めるのが遅いんですか?民間人を狙ったテロという訳でもなく純粋な軍事目標であると思うのですが。

    3
      • Artillery
      • 2023年 7月 18日

      民間インフラでもあり、民間人も死んでいるからだと思いますよ
      民間人が死んでいなければすぐに公表したのかもしれません

      24
    • paxai
    • 2023年 7月 17日

    ロシアならちょっと橋桁がずれたぐらいなら戻してコンクリ流し込んで車走らせそう。

    7
    • はる
    • 2023年 7月 18日

    クリミア大橋爆破の自作自演説はさすがにちょっと…

    24
    • マロリー
    • 2023年 7月 18日

    自爆ボートなんて、ダメでもともとというか、当たったらラッキーくらいな感じで(成功率,到達率が低いのを)日常的に放ってるんじゃないの?

    これが、今回たまたま上手いこと当たって、ウクライナ側も成功を想定してなくて「うわ、マジか…当たるとは思ってなかったわ」って感じなんじゃね。
    下手な鉄砲数撃ちゃ当たるみたいな。

    7
    • 海苔と削節
    • 2023年 7月 18日

    水中で橋脚に発破孔を削孔してくれる自動ロボットとかがないと、あの鉄道橋を落橋させるのは困難だろうなぁ。

    3
    • 匿名
    • 2023年 7月 18日

    この規模の橋だとガンガン撃ち込める弾数がないと駄目なんだな
    ロシアの無差別爆撃並の頻度で撃ち込みまくれば修理不可能なレベルのダメージを蓄積させれるのかもしれんけど

    3
    • 冬戦争
    • 2023年 7月 18日

    ロシアがわざわざクリミアとロシア本土をつなぐ橋を攻撃してクリミアへの物流や人流を阻害する必要は無い。ウクライナとしては穀物協定延長するようにプレッシャーをかけたつもりかもしれないが逆効果だろう。ロシアとしてはクリミア(クリミア大橋含む)を守るためにウクライナの黒海沿岸部を制圧する必要がある。だからロシアはオデッサ含むウクライナの黒海沿岸部を海上封鎖し、制圧に動くだろう。

    9
      • 2023年 7月 18日

      >ロシアがわざわざクリミアとロシア本土をつなぐ橋を攻撃してクリミアへの物流や人流を阻害する必要は無い。
      ダム破壊と同じ言い訳でしょうか?橋桁外してロシア国民の感情を煽ることが出来るなら今のプーチンなら藁にもすがる思いてやるでしょうね。結局これも誰がやったか?なんて闇の中です。
      まぁ残念ながらヘルソンから撤退したロシアに現状オデッサに対して出来ることと言えばせいぜいシャヘドで民間人を爆殺することくらいです。

      4
        • 名無し
        • 2023年 7月 18日

        カホフカダムの破壊ならロシアにもメリットがあるので分かりますけどクリミア大橋の破壊は前回の攻撃も最近ウクライナ側が公式に認めていますし今回の攻撃も流石にロシア犯行説は厳しいと思いますが…
        ロシア憎しで視野狭窄になっていませんか?どちら側の立場で状況分析するのも個人の自由だと思いますが冷静な視点で多方面からの情報を収集して考察された方が現況の把握には役立つと思います

        34
        • 理想はこの翼では届かない
        • 2023年 7月 18日

        さすがにその主張は無理があるのでは無いでしょうか?
        国民感情を煽る目的で重要な橋を自作自演で破壊するというのは無理があります
        それぐらいなら、国境沿いでロシアの著名人を暗殺した上で「ウクライナ兵が国境を越えて侵入して殺害した!」とかやったほうがまだ効果が見込めると思います

        7
          •  
          • 2023年 7月 18日

          国民感情煽るならベルゴロドやモスクワ攻撃されたときに思い切り煽ってるわな。
          逆に無かったことにして鎮静化させたけど。

          5
    • bbcorn
    • 2023年 7月 18日

    当然のこととして 次は鉄道橋の部分狙ってくるだろ。
    なにしろ的が大きいんだから どこでも当たればいいわけで。
    壊れなくても定期的に攻撃してたら兵站には使えなくなるしね。
    こんなもん 守れないよ。

    6
      • baru
      • 2023年 7月 18日

      記事本文にもあるけど、よほど強力な攻撃でなければ当たったところで大したことないし、どこに来るかわかってる攻撃を防ぐのはそんなに難しくない
      ウクライナは海軍無いから対空迎撃も一方向だけ見張ってればいいしな

      5
    • 魚軍
    • 2023年 7月 18日

    これは、長距離を航行できる魚雷の開発が必要になりますね。
    人間魚雷回天1隻ぐらいの炸薬量でもって橋脚一本の破壊可能でしょう。 長距離航行魚雷の必要性がありますね、ロシアのポセイドンのような魚雷が。

    2
    • パセリ
    • 2023年 7月 18日

    前回と違って鉄道橋が無傷てのは残念やね
    とはいえ、前回より警備が強化されてる中での攻撃成功やし、何より西側メディアが好きな分かりやすい戦果である以上戦略的には成功だろう

    13
    • 58式素人
    • 2023年 7月 18日

    橋の破壊を確実にするには、やっぱり橋脚を折ることと思いますが。
    前にも書きましたが、古いソ連製の艦載SSMはどうかと思います。
    P-15U(SS-N-2Bスティックス):M0.9、射程80km、炸薬量454kg、
    P-35(SSN-3A/Bシャドック):M1.5、射程250〜350km、炸薬量1.0t、
    いずれの場合も誘導は慣性誘導+ARHですが、
    終末のARHをレーザー誘導に変更できれば、
    橋脚の任意の場所にぶち当てられると想像します。
    誘導レーザーの照射は特殊部隊にたのまないと、ですが。
    P-35は炸薬量が1.0tなので能力的に十分かな、と想像します。
    P-15U(SS-N-2Bスティックス)は”エイラート事件の主犯(?)”です。
    いずれのミサイルも1970年頃から装備されていています。
    ウクライナに近い国では、ウクライナ自身とブルガリアにあると思います。

    1
      • Artillery
      • 2023年 7月 18日

      まず射程80kmのP-15Uではどうにもならないし、P-35にしてもレーザー誘導式に改造するのは簡単じゃないと思いますよ。
      さらに陸上発射するなら陸用にFCSも作る必要がある。

      そこまでしてもP-35じゃ射程的に直線的な経路しか取れず、迎撃される可能性が高い。
      そもそもストームシャドウでの攻撃が成功していないことを考えると、空からの攻撃は警戒されていて難しいんじゃないでしょうか。

      6
        • 58式素人
        • 2023年 7月 18日

        おっしゃる通り、陸側からのミサイル攻撃は警戒されていると思います。
        攻撃するならば、海側からと思うのです。
        かつ、橋脚に対し横から命中させないと、ですね。
        通常、水上レーダーの探知範囲は30kmほどです。
        海上にパトロール船を出していなければ、
        陸地から30km以上離れると、水平線の影に隠れられると思います。
        P35の方は資料を見つけられなかったのですが、
        P15Uの巡航高度は35〜50mです。船のマストと変わらないですね。
        おそらく、P15Uは、レーダーの視界に入って2分ほどで着弾するでしょう。
        目標付近にCIWSがなければ、迎撃は追いつかないと思います。
        ストームシャドウの目標到達率は公表されていませんが、
        報道を見ている限り、到達率は低くはないように思えます。
        ウクライナは、嘘か本当か、到達率が100%と言っていますね。
        P15Uの場合、ウクライナはオーサ型ミサイル艇を所有していたと思います。
        P35の場合は、ムィコラーイウで着底状態のフリゲート艦の修理が必要か、と思います

        1
          • 幽霊
          • 2023年 7月 18日

          不可能では?
          仮にP35の最大射程で発射するにしてもクリミア半島にかなり接近してクリミア半島上空を横切るコースかクリミア半島とトルコが最も接近するあたりまで進出しなければいけません
          クリミア半島上空を飛行するコースは流石にロシアが気づかないとは思えませんし、海側から攻撃するのもロシアがパトロール艦もしくは航空機による監視を行っていないのは考えずらいですからそこまで進出するのは難しいでしょう
          可能性としてはルーマニア・ブルガリア・トルコ沿岸を航行して接近しクリミア大橋を攻撃する事も出来ますが、ロシアによる報復を懸念してどの国も許可は出さないでしょう。

          3
            • 58式素人
            • 2023年 7月 19日

            確かに、ロシア海軍による海上パトロールを
            パスするのは課題でしょうね。
            言い直すと、そうした課題を処理できれば良いとも思えます。
            クリミア大橋の攻撃はいずれも海側からでした。
            ロシア側の海上監視には穴がありそうに思えます。

            1
    • ポンポコ
    • 2023年 7月 18日

    軍需物質は、橋は通らずに大部分がトラックでそのまま運ぶところの、陸路輸送でしょうし、さらに、意図的に陸路にしているようです。

    橋を通るのは、主に民間物資と、さらに観光客とかの管理人さんが言われていたような夏のバカンス関連でしょう。爆破で死んだのも、親子連れの一般客だし。

    とにかく、ダムや原発やノルドストリームへの攻撃もそうですが、結果に関係はどちらでもいいので、戦後に徹底的に真相を究明してほしいですね。徹底的に。報道のあり方がどうだったかに関して。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP