米国関連

トーネード後継機問題、米国務省が推定84億ドルでドイツへのF-35A売却を承認

米国務省は「ドイツへのF-35A売却に関する推定84億ドルの対外有償軍事援助を承認、これを議会に通知した」と28日に発表して注目を集めている。

参考:GERMANY – F-35 AIRCRAFT AND MUNITIONS

米国務省がドイツへのF-35A売却を推定84億ドルで承認、NS体制はF/A-18E/FではなくF-35Aで維持される見込み

ドイツのメルケル政権は米国との核兵器共有協定(ニュークリア・シェアリング/NS)を維持するため核兵器の運搬能力を統合されたトーネードの後継機にF/A-18E/Fを導入(トーネードECRの後継機にはEA-18G、トーネード IDSの後継機にはタイフーンを導入)すると決断したが、この決定に反対する国内勢力との調整に手間取っている内に米国家核安全保障局が戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外してしまい、後任のショルツ政権はF-35AとタイフーンECR/SEADの導入を行うよう1月に指示したと報じられていた。

出典:public domain ドイツ空軍のトーネード

次期戦闘機を共同で開発するフランスは「ドイツはBuy Europeanを語る一方で米国からF-35Aを購入するよう圧力を受けている。1,000億ユーロの投資(ショルツ政権が創設したドイツ軍再生基金のこと)を宣言した我々のパートナーはFCASに投資するのか、F-35Aに投資するのか注目している」と述べてショルツ政権を牽制していたが、米国務省は「ドイツへのF-35A売却に関する推定84億ドルの対外有償軍事援助(FMS)を承認、これを議会に通知した」と28日に発表して注目を集めている。

国務省が発表したFMSの内容はF-35A×35機に加え、相当量の弾薬(AIM-120C-8、AIM-9XBlockII、JASSM-ER、SDB-II、JDAMキット及び対応爆弾など)、各種スペアパーツ、保守サービス、訓練サポートなどが含まれており、1機あたりの導入コストは2.4億ドル(機体単価ではないので注意)になる計算だ。

出典:Lockheed Martin

因みに国務省は今回の契約について「オフセットは購入国と請負業者間の交渉で定義される」と通知しており、オフセットを要求しない国(ほぼ日本以外の国は大型契約でオフセットを要求する)の場合「この契約でオフセットは発生しない」と明確に通知するので、ドイツは今回の取引にオフセットを要求している可能性が高い。

関連記事:ドイツ、核兵器に対応したトーネードの後継機にF-35Aを35機購入か

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Kevin Long

米空軍がRQ-4の運用終了を発表、Block30に続きBlock40も2027年に退役前のページ

ポーランド空軍の+α需要、産業協力を提示してタイフーン導入を提案か次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米政府関係者、数週間内にロシアのウクライナ侵攻が開始される可能性がある

    米国の政府関係者は米メディアの取材に対して「天候にも左右されるが、西側…

  2. 米国関連

    米中央軍の最高司令官、UAV接近を検出するのは困難で完全な制空権を失ったと告白

    中東や中央アジア等を担当する米中央軍のケネス・マッケンジー海兵隊大将は…

  3. 米国関連

    トランプ大統領、ドイツが支払いに応じない限り駐独米軍削減実行を明言

    米国がドイツに駐留する米軍を削減するという報道が先週出たが、トランプ大…

  4. 米国関連

    米政治学者のフクヤマ氏、ウクライナの戦いはロシア完敗と予想

    著名な米政治学者のフランシス・フクヤマ氏(スタンフォード大学上級研究員…

  5. 米国関連

    米陸軍のブラッドレー後継車輌、GD案とラインメタル案で競争試作

    米陸軍のブラッドレー後継プログラムには5チームが参加しており、予備設計…

  6. 米国関連

    米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表

    バイデン政権は3日に総額21億7,500万ドルのウクライナ支援を発表、…

コメント

    • ナニガシ(ラファール信者)
    • 2022年 7月 29日

    そろそろ、またドイツ議会がヤンチャなこと始めるんじゃないかと。
    やっぱりタイフーン買え!
    どうせなら、ラファールを買ってご機嫌を取ればいいのに。
    FCASなんか空中分解に決まってるし?
    飾っとくだけなら、ぜひラファールを!

    4
      • 匿名
      • 2022年 7月 29日

      >米国家核安全保障局が戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外してしまい、

      当然の事ながら、ラファールはこの中に含まれないので候補にすら上がりませぬ
      御愁傷様です…😅

      6
        • ナニガシ(ラファール信者)
        • 2022年 7月 29日

        ニュークリアシェアリングを無視して、核兵器の運用が出来ないタイフーンを、トーネードの代わりに買おうとしてたじゃないか!?前政権だけど。
        国防予算の割に、いろいろ悲惨なドイツならワンチャンイケる!
        たぶん!

        2
          • 匿名
          • 2022年 7月 29日

          さ… さすがにそれは…どうかと…
          そもそもラファールはドイツ国内に一切金落としませんし…😰

          3
          • 名無し2
          • 2022年 7月 29日

          何でラファールにそこまでこだわるのか全然わからない

          3
            • ナニガシ(ラファール信者)
            • 2022年 7月 29日

            狂信ですから。
            しゃしゃり出てるだけです。
            正面からの構図がカッコイイ。

            5
    • ウツボ
    • 2022年 7月 29日

    まあ、FCASは2050年までオアズケ状態だし・・・。ドイツは賢明な選択をしたと思う。ていうか、2050年まで第4.5世代戦闘機しか装備できないフランスの航空戦力、大丈夫か?

    11
      • ナニガシ(ラファール信者)
      • 2022年 7月 29日

      10年ぐらいしたら、中古のF35をリース契約とか?
      い、いや、ラファールと根性さえあれば、なんとかなる!

      3
      • 南極1号
      • 2022年 7月 29日

      第2世代のF-8Eを最近まで運用していたんだから大丈夫!

      2
        • 戦略眼
        • 2022年 7月 29日

        そして、F-35C。

          • 全てF-35B
          • 2022年 7月 29日

          空母の予算が足りなくて、ミストラル級用にF-35B。
          無理か。

      • hoge
      • 2022年 7月 29日

      4.75世代のスーパーラファール(仮)でワンちゃん…

      1
      • samo
      • 2022年 7月 29日

      FCASが本当に完成するならまだマシ
      途中で計画自体が空中分解する可能性のほうがよっぽど高いし、フランス国民もできると思ってる人は少ないっぽい

      2
    • 774
    • 2022年 7月 29日

    やはりF-35がNo.1!!

    16
    • zzz
    • 2022年 7月 29日

    戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外

    ニミッツ級空母には核兵器保管庫があると聞いているが、水上艦から核兵器が撤去された後に設計された
    ジェラルド・R・フォード級空母にも核兵器保管庫があるのだろうか?

    2
      • 匿名
      • 2022年 7月 29日

      そのうち方針変わってF-35Cが統合されるのでは…と
      変わらない…??

      1
        • daishi
        • 2022年 7月 29日

        F-35ウェポンシステムのソフトウェアは3タイプ共通なので、F-35Cでの投下試験に合格すれば使えるようになりそうです。
        B61 mod 12はハブられましたが、F/A-18E/FがB61 mod 11を使えるので、スーパーホーネットが現役の期間を考えるとフォード級にはB61やB83の保管庫があってもおかしくはないと思われますが、アメリカ海軍は戦術核を部隊配備していないので核爆弾保管庫は無駄なスペースになってしまいますね

        4
    • AH-X
    • 2022年 7月 29日

    敗戦国ドイツでもオフセット要求できるなら日本もオフセット要求できるような政治力があればいいんですがね。確かに対米貿易赤字はありますがそれはドイツだってあるわけですし。前述のグローバルホークの件もですがアメリカに下出に出る政治はいい加減見直すべきですよ。

    ところでオフセット契約だと妙に単価が高くなる気がしますが気のせいでしょうか?F-35のドイツ向け300億って日本の倍じゃないですかね?確か日本はあれこれ含めて150億くらいなはずですが。管理人さんは機体単価ではないと書いてますが訓練費用や保守が入ってるんでしょうがこれはさすがに!?

    1
      • NHG
      • 2022年 7月 29日

      なんでも無料ってことはないから、普通にオフセット分だけ高くなっただけではないの
      ただ大量の弾薬なども同時購入してるらしいから全部オフセット分とは思わないけど

      3
      • samo
      • 2022年 7月 29日

      日本におけるF-35は、FACOとMRO&Uの誘致が事実上のオフセット契約

      6
    • ひかり355号
    • 2022年 7月 29日

    日本以外の国だって貿易赤字はあるだろうに、なんで日本はオフセットを要求しないんだろうか

    2
      • hiroさん
      • 2022年 7月 29日

      元コメと合せて、貿易黒字ですよね。
      (米国にとっての赤字を黒字国が兵器輸入で補填する)

      2
    • 名無し2
    • 2022年 7月 29日

    今後弱体化確実のロシア相手ならまだしも対中最前線でオフセット要求とは若干悠長な話のように思える。同じく対朝最前線で敗戦国でもない韓国がF-35についてなんらかのオフセット要求してた覚えもない

    1
      • 通りすがり
      • 2022年 7月 29日

      技術移転や軍用の通信衛星をオフセットで要求してるよ。オフセットは現地製造みたいな産業協力だけじゃない。

      6
        • 名無し2
        • 2022年 7月 29日

        へえ、そうなんだ。。。初めて知りました。ありがとうございます。まあ日本は値段でだいぶ負けてもらったからそれもオフセットということでひとつ

    • ザコ
    • 2022年 7月 29日

    >>オフセットを要求しない国(ほぼ日本以外の国は大型契約でオフセットを要求する)

    管理人さんの静かな圧力を感じる…

    5
    • makumaku
    • 2022年 7月 29日

    ドイツが現有のトーネード89機をライトニングII 35機で代替するのであれば、やはり力が抜けてるなぁと感じますね。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  5. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
PAGE TOP