欧州関連

ドイツ、核兵器に対応したトーネードの後継機にF-35Aを35機購入か

ドイツの連邦議会筋は14日、核兵器の運搬能力を統合されたトーネードの後継機にF-35Aを最大35機購入する計画だと明かした。

参考:Germany to Buy F-35 Fighter Jets in Military Spending Spree
参考:Bundesregierung will F-35-Tarnkappenjets für Bundeswehr beschaffen

果たしてF-35A導入に踏み切るドイツをフランスはどのような目で見ているのだろうか?

ドイツのメルケル政権は米国との核兵器共有協定(ニュークリア・シェアリング/NS)を維持するため核兵器の運搬能力を統合されたトーネードの後継機にF/A-18E/Fを導入(トーネードECRの後継機にはEA-18G、トーネード IDSの後継機にはタイフーンを導入)すると決断したが、この決定に反対する国内勢力との調整に手間取っている内に米国家核安全保障局が戦術核兵器B61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外してしまい、新たに誕生したショルツ政権はF-35AとタイフーンECR/SEADの導入を行うよう1月に指示したと報じられていた。

出典:public domain ドイツ空軍のトーネード

この問題について連邦議会筋は「最大で35機のF-35Aをドイツは購入する計画で、トーネードECRの後継機としてタイフーンECR/SEADも15機調達すること計画している」と述べたらしい。

もうドイツがNS体制を途切れなく維持するためにはB61/Mod12に対応したF-35A導入する以外選択肢がなく、これは検討の結果というよりも関係各所への根回しが完了したという意味に近いが、FCASプログラムを共同で開発するフランスのトラピエ氏(ダッソーの最高経営責任者)は今月5日「ドイツはBuy Europeanを語る一方で米国からF-35Aを購入するよう圧力を受けている。1,000億ユーロの投資を宣言した我々のパートナーはFCASに投資するのか、F-35Aに投資するのか注目している」と述べている。

出典:AIRBUS

本来FCASプログラムは昨年夏に開発フェーズ1Bに移行してなければならないのに主導権争いのせいで半年以上も計画が遅れ、ドイツが1,000億ユーロの投資先として最初にFCASを選ぶのか、それともF-35Aを選ぶのかで「フランス側はFCASプログラムに対するドイツの本気度を推し量る」とも解釈できる意味深が発言を行なっていたが、果たしてF-35A導入に踏み切るドイツをフランスはどのような目で見ているのだろうか?

もしフランスがドイツのF-35A導入に何も言及しなければ、スペインもフランスに気兼ねすることなくAV-8BハリアーIIとレガシーホーネットの後継機にF-35BとF-35Aを選択するかもしれない。

関連記事:ダッソーとエアバスの主導権争い、どんどん遅れていく次期戦闘機開発
関連記事:独トーネード後継問題は最終的に先祖返り、ショルツ政権がF-35A導入検討を指示
関連記事:ドイツはF-35A導入に傾きつつあり、フランスとボーイングが打撃を受ける
関連記事:F-35導入を否定していたスペイン国防省、F-35A/Bに関する情報提供を米国に要請

 

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

米政治学者のフクヤマ氏、ウクライナの戦いはロシア完敗と予想前のページ

インドは困窮するロシアからの石油購入量を増やす方針、中国を意識か次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ポーランド国防相、実戦で能力が証明された「バイラクタルTB2」24機購入を正式発表

    ポーランドのマリウス・ブラスザック国防相は22日、トルコから武装可能な…

  2. 欧州関連

    不穏な米英関係、自爆テロで米軍に犠牲が出たのは空港ゲート閉鎖に反対した英国の責任?

    カーブル空港での自爆テロについて「英国の責任だ」と非難する国防総省の文…

  3. 欧州関連

    ウクライナ軍、敵が開始した大規模攻勢は質が低く認識するのが難しい

    ウクライナ空軍のイグナト報道官は「ロシア軍が東部戦線で航空攻撃を大幅に…

  4. 欧州関連

    ロシアの武器生産は制裁下でも拡大、巡航ミサイルの生産は月26発から50発に増加

    ウクライナ国防省は「インフラ攻撃に使用される巡航ミサイルをロシアは1ヶ…

  5. 欧州関連

    訓練も通信も敵との交戦も無理? ドイツが手を焼くプーマ歩兵戦闘車の欠陥

    ドイツが導入中のプーマ歩兵戦闘車は欠陥が多すぎて実戦に投入するには危険…

  6. 欧州関連

    スロバキアの選挙結果、EUのウクライナ支援に混乱をもたらす可能性

    スロバキアの総選挙で「ウクライナへの軍事支援停止」を掲げるSMERが勝…

コメント

    • 通りすがり
    • 2022年 3月 14日

    凄い遠回りした挙げ句、落ち着くところに落ち着いた感

    37
    • STIH
    • 2022年 3月 14日

    FCASはテンペストと比べるとまるで進んでいないよう見えます。日本がテンペストに誘われてるから情報が比較的多い、というのもFCASとの差なんでしょうけど。
    イギリスは2度と独仏とは組みたくないでしょうね。

    28
    • 無能
    • 2022年 3月 14日

    次はイタリア抜きでやろうぜが次はドイツ抜きでやろうぜに変わってる…

    9
    • 匿名
    • 2022年 3月 14日

    東欧があの様子なんだし商売より現実優先でFCASも納めて欲しいよね

    3
    • くらうん
    • 2022年 3月 14日

    今からでもフランスは単独開発に切り替えた方がいい気がする。

    23
    • 猫鉈
    • 2022年 3月 14日

    F35導入でうまく確定したとして今から順番待ちの列に並ぶと実際手元に届くのはいつになることやら…
    ロシアの軍事的脅威が現実となったこの状況で今までのようにグダグダやってはいられないでしょうしスムーズにことが進むといいですね

    15
    • 伝説のハムスター☆☆☆
    • 2022年 3月 14日

    フランスも嫌だったら自分の核をドイツNS用に差し出せばいいんじゃないの?
    そうすれば統合問題も解決出来るし欧州での地位も確保出来る
    NATOを通じてアメリカの核とリンクしてるからロシアに対しての核の相互破壊もバッチリ、弱体化もしない
    自分の兵器体制を維持させる為にゴネるんじゃ空中分解するってのは前回で学んだ筈だからもっと柔軟に対応しようよ

    9
    • 無印
    • 2022年 3月 14日

    FCASは本当にこのモックアップに近い形で完成するのだろうか
    異様にペッタンコの機体のどこに対艦ミサイルや巡航ミサイルが入るのかメッチャ気になる…

    1
      • バーナーキング
      • 2022年 3月 15日

      FCASに対艦・巡航ミサイル内装、なんて話あるんです?
      聞き覚え無いし軽く検索したくらいじゃ見つからんかったけど…。

      4
        • 無印
        • 2022年 3月 15日

        よく調べないで書き込みをしてしまいました
        ラファールに載せられる武装は、この機体にも載るだろうと、勝手な脳内連想ゲームを出してしまいました
        対艦ミサイル、巡航ミサイルの機内内装は私の妄想です、すみませんでした

        3
          • バーナーキング
          • 2022年 3月 15日

          継続運用する兵装は基本統合はするんじゃ無いかと思いますが、内装するかどうかはまた別の話かと。
          今後はJSMみたいな「内装し易い長距離対艦/対地ミサイル」も増えてくるでしょうし、無理してデカブツの内装してくる機体は少ないんじゃないかなぁ…。

          1
    • 原点にして頂点
    • 2022年 3月 14日

    FCASのNGFに搭載されるエンジンは12トン以上が目標推力らしいですから、FCASのNGFはテンペストと同じく中型の戦闘機になると推定できますが、これってF-35とキャラが被るような気がします。

    仮にF-35を導入した場合には、FCASなんて必要ないという事態になりかねないように思うのですが、FCASの未来に希望はあるのでしょうかね。

    6
      • 匿名
      • 2022年 3月 14日

      東西ミックスしないなら米国製と国産の併用って割と基本のような?
      同等性能でも更新と改修の時期でかぶる事なければ性能差はあるよ

      1
        • うろ覚え
        • 2022年 3月 15日

        その更新と改修の時期の問題じゃなかったかな?
        FCASの完成時期だとF-35Aはまだまだ現役なのでFCASは採用しにくくなってしまう(よってドイツはFCASから手を引く)とかそんな話だったような

        2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP