米陸軍は開発中の次期攻撃/偵察ヘリ「FARA」が、空軍が担っている敵防空網破壊任務を肩代わりすることが出来ると主張している。
参考:US Army to exploit crucial weakness in Russian, Chinese air defences
現代の防空網で最も脆弱なのは下層防空、ルックダウン/シュートダウン能力は幻想か?
米陸軍は観測/攻撃ヘリ「OH-58カイオワ」の正当な後継機を見つけられないまま退役してしまい、現在この任務には暫定的な措置として攻撃機ヘリ「AH-64E」と無人航空機「RQ-7」を使用しているが、正当な後継機開発「Future Attack Reconaissance Aircraft:FARA(将来攻撃偵察航空機)」が進めらており、複数の企業が提案した案の中からベル案とシコルスキー案が選ばれ2022年に実機による飛行テストが行われる予定だ。
FARAプログラム等を担当しているFLV(Future Vertical Lift, 将来型垂直離着陸機計画)チームを率いるウォルター・リューゲン准将は最近、FARA(ナイフファイターと呼ばれている)について「新しい回転翼機の技術は敵防空網破壊において空軍が失いかけている優位性をカバーすることが出来る」と主張を行っており、彼の話をまとめると以下の通りになる。
現代の防空網は多層式に構築されており最も重要視されているのが中層~高層で、その代表例がF-35等のステルス機を遠方で捕捉可能だといわれるロシアの防空システム「S-400」だ。特にS-400に統合されている迎撃ミサイルの最大射程は250kmもあり、将来アップグレードされれば300km以上離れた目標も迎撃可能になるため開戦直後の敵防空網破壊を担当する空軍の優位性は怪しくなっていると指摘、しかし現代の防空網で最も脆弱な部分は下層だとリューゲン准将は指摘した。
過去に米空軍はソ連への核攻撃を行うため高高度を高速で飛行して防空網を突破する爆撃機「B-1A」を開発したが、地対空ミサイルの高性能化に伴い超低空飛行による防空網突破へと戦術が変更され開発されたのがB-1Bだが、これもレーダーのルックダウン/シュートダウン性能が向上するに伴い通用しなくなると、今度はF-117のようなステルス機が登場して敵防空網破壊の先陣を担当している。
しかしリューゲン准将はルックダウン/シュートダウン能力による下層迎撃は幻想レベルの話で、実際にルックダウン/シュートダウン能力が有効だったという報告を見たことがなく、中層~高層での迎撃事件は頻繁に実施される実験で有効性が実証されているのに、ルックダウン/シュートダウン能力による下層迎撃実験を見たことがないと語り、ここのある種のギャプが生じているらしい。
要するに下層防空は、標的が地表に近い高度を飛行する=水平線下に隠れて接近してくるため地上配備のレーダーで捕捉したときには懐に入り込まれた後になるので、上空から早期警戒機や戦闘機などで警戒して迎撃するのが最も有効的だと言われるが、実際に超低空を飛行する航空機を見下ろす形で捕捉して有効な攻撃を仕掛けるのは依然と技術的困難が伴うため、そうなると下層防空最後の砦はパーンツィリS1等の近距離防空システム(射程距離十数km)だけになり、中層と下層の迎撃手段には射程距離において大きな差が生じると言いたいのだろう。
この下層防空の脆弱性を最大化するためナイフファイターには、レーダーに影を作り出す地形の利用と限りなく地表に近い高度を高速で飛行するための高度な自動操縦システム、敵近距離防空システムの射程圏外から攻撃可能な長射程の精密誘導兵器が必要になるとリューゲン准将は説明しており、敵を撹乱するため空中発射型の超小型無人航空機も必要になるだろうと言っている。
果たしてリューゲン准将の主張は的を得ているのかは不明だが、中々興味深い主張でることには間違いなく、ロシアも攻撃ヘリKa-52のアップグレードバージョン「Ka-52M」を現在開発中で、射程距離100kmの新型巡航ミサイル「item305」を統合すると言っており、もしかしたら米国もロシアも下層防空の脆弱性を突く戦術を開発しているのかもしれない。
ただ管理人的には、幾ら下層防空に脆弱が存在すると言ってもリューゲン准将の主張のキモは固定翼機では難しい超低空+地形や物陰の利用なので、回転翼機にしか実現不可能(=航続距離が固定翼機より短い)で戦場環境にも左右されるというのが欠点に映る。
しかしルックダウン/シュートダウンによる下層迎撃が幻想レベルというのは非常に衝撃で、恐らく条件(海面か地表、建造物の多い地域、飛行高度、速度等)によって話は変わってくるのだろとは思うが、なぜ戦場で低速の無人航空機を迎撃するのが難しいのかは、この辺りが原因なのかもしれない。
関連記事:防空システムの天敵? 露攻撃ヘリ「Ka-52M」に長射程巡航ミサイルを搭載
※アイキャッチ画像の出典:シコルスキー / ロッキード・マーティン レイダーX
なるほど、ヘリに巡航ミサイルなんてどういうこと?って皆思ってましたからね。
困難が伴い技術の熟成が進まない分野だからこその弱点。
戦闘機のパルスドップラーレーダーは下方の低速な航空機を補足できないという弱点があるからヘリやドローンなら見つからないかもしれない
が、低空をノロノロ飛んでたらSAM以前にgunやMANPADSが怖くないかな
記事に
『過去に米空軍はソ連への核攻撃を行うため高高度を高速で飛行して防空網を突破する爆撃機「B-1A」を開発したが、地対空ミサイルの高性能化に伴い超低空飛行による防空網突破へと戦術が変更され開発されたのがB-1Bだが、これもレーダーのルックダウン/シュートダウン性能が向上するに伴い通用しなくなると、今度はF-117のようなステルス機が登場して敵防空網破壊の先陣を担当している。』
とあるが、B-1BよりF-117の方が古いのでは?F-117ではなくB-2の事かな?
計画開始か初飛行ということなら間違ってないですよ。
B-1の初飛行は1974年12月23日。
研究開始は1961年ですね。
F-117の初飛行は1981年6月18日です。
F-117の研究開始は正確に分かりませんが、1975年に提出されたXSTプランが原型ですね。
実戦配備ならB-1は1986年、F-117は1983年ですね。
ドップラーレーダーの原理を考えると超低空というより超低速の方が重要でしょう
でもそれやるなら別にヘリじゃなくて複葉機でいいよね?そっちの方が騒音少ないし
うるさいエンジンを排して燃料電池と電動モーターにすれば目視以外の捕捉はまず不可能だろう
どこぞの北朝鮮みたいなやり方が案外最適解なのかもな
低速でありさえすれば良いなら軽飛行機でもできるが『超低空』って部分も重要なのよ。
樹上を掠めるようなNOE飛行なんて飛行機にやらせたら戦闘損失より事故損耗で部隊が壊滅しそうだ。
ヘリなら「止まれる」って部分も重要だね。
敵の対空兵器を発見したら前進をやめて物影に隠れてこっそり狙撃するって手が使えるのもヘリの強み。
超低空の重要性って実際どれくらいなんでしょうかね?
仮に5mの高度を飛ぶと見通し距離は約8.5km、50mを飛ぶと約27km
この差をどう見るか
既に敵の位置が割れてるなら27kmも接近すれば十分だろう。
臨機応変に敵を見つけ対処するならヘリが有効なんだろうけどその点ではどうやっても無音で空力を気にせずカモフラージュできる地上の方が有利だ。これは現状攻撃ヘリが廃れつつあるのを見れば明らかだ。
また騒音ってのは結構馬鹿にならないもので、ヘリの騒音は1kmくらいは届くがこれは携帯電話など安上がりで大量に設置可能なマイク付きのIoTデバイスで拾われてしまうので一つ一つの探知距離は小さくとも簡単に捕捉されてしまうのでは…
その超低速こそが大事。固定翼機ではまだ速過ぎる。
その昔、欧州で進行してくるソ連軍ヘリに対応する為にドップラーレーダーの感応速度を150km/hにした処、アウトバーンを疾走するドイツ車を補足してしまいアラートが鳴りっぱなしとなったそうな。
つまりは、車より遅くノタノタと来られると探知は難しくなる。加えて、ECMやステルス、防空システムへのアウトレンジ攻撃や随伴無人機等を組み合わせていけば、超低空域に空中回廊が出現する。と云うのが言わんとする処かと思う。
ニンジャを魔改造!対空ミサイルパックをいっぱいつけて
対空戦闘に特化させる。
サンダーバード6号!
ミグ25事件ではF-4にルックダウン能力がなく低空飛行するミグ25をロストしてしまった。
だから日本はAESAレーダーを開発した、F-2はルックダウン・シュートダウン能力を持ち低空を飛行する巡航ミサイルも、シーカーにAESAを持つAAM4Bなら撃墜できる。
AESAレーダーもそろそろ普及し始めたが、対空モードは航空機の反射する電波を検出するだけだからそれほど難しいものではないが、グランドクラッターを除去するルックダウン能力を持つAESAを作るのは結構困難。
各国の航空機搭載型のAESAの開発が遅れたのはルックダウンモードの開発が困難だったからだと思っている。
巡航ミサイルで出来るだろ
ヘリが回転するローターを剥き出しにしている限り、本質的なステルス化は困難なので、やはり新世代のレーダー相手には無理なのでは?
要は、周期的に変動する(回転している)反射を検出すれば良いのだから
2011年のビンラディン暗殺作戦に使われたUH60ステルス型はパキスタンのレーダー網を掻い潜っているが、その機体が公表されていないだけに、秘密裏のステルスヘリ技術は凄いのかもと妄想的に考えはする。
仰っている新世代レーダーと当時のパキスタン軍レーダーじゃ性能差で、考察の条件がまず違うんでしょうが。
案外、モーターベースの軍事用ヘリシステムが実用化されているのかも(民間有人ドローンは実現済)
隠密化が期待できそうだし
反射する電波をばらけさして検出を困難にするのがステルスなんだから
コーティングなどを行えば周期的な変動を検知するのは難しいのでは?
レーダーにローターが僅かでも写ってしまうのであれば、レーダーに向かって近付くドップラーシフトと、レーダーから遠ざかるドップラーシフトが同一箇所で検出されるので、それを抽出するようにすれば丸裸でしょう。しかも、ヘリコプターの構造上、ローターが上部に有るので地形に隠すのも困難と
マルチコプター型等の小型ドローンへの対策も急務ですし、回転するローターなんて目立つ物体への対策を大国が疎かにするとは思えませんしね。もしも疎かであるならば、レーダー技術で決定的に劣っているということですし
本当にそうなの?
空軍では低空の迎撃の話は聞かないけれど、海軍の方ではsm-6がアクティブ誘導やe-2dとのcecで下層迎撃を実現してると思う
それとも海上では下層迎撃が可能でも陸上では不可能なのか?
陸上でも砂漠の荒野と都市部で大小の移動体が沢山ある場所では条件が異なるので技術的難易度が高いのでは?それにしてもこの手の話になるとグッとコメント量が減るね。あんまり興味ないのかな?結構面白い話だと思うんだけど
そういや、今回の偵察攻撃ヘリは都市部の道路上を飛べるように、小型であることが求められていましたな
とはいえ、何処に敵が居るかも分からない都市部の中に飛び込むなんて、イラクでアパッチ大隊がボコられた戦訓からするに、とても正気でやれる行為ではない気がしますが
F-2の対艦ミサイル攻撃を連想するな
トム・クランシーは日米開戦で コマンチが高性能な早期警戒管制機を掻い潜る為に
新幹線の線路上空に沿ってヘリを飛ばすという方法を示唆していたが
陸地の低高度を低速で移動する物体をレーダーで上空から車等の他のものと識別するのは
機械的・レーダー員の能力的にも困難ではないかと思う。
そのうちに地上や海上目標に対してAIを利用した画像識別能力が追加されるかも
風船型デコイの再現度が向上する案件だ
ヘリの場合、航続距離は問題にならないのかな?
いくら何でも長距離侵攻は無理でしょうね。
空軍がヘリでやればいいことを、陸軍が出てくる辺りにひっかかりますが
攻撃ヘリは陸軍の管轄で、空軍は持てないから。
陸軍がやりますって感じ。
これからドローンの伸長で余剰してくるヘリパイロットの人材活用と育成維持、そしてロングレンジの3次元戦闘が主流になり、やや影の薄れる陸軍の自己主張に見えるんだけど
空軍独立という過去にわだかまりがあるのかね、いまさらの縄張り争いは言い過ぎか
そういえば陸自が輸送船持ちたいって話あったね
中SAMの捜索&潰しにアパッチ近接させても新短SAMの前に光の速さで全滅した某GA隊がおりましてな
そもそも対AHなら中SAMでも余裕で交戦も可能なんですがそれが
中SAMの捜索&潰しにアパッチ近接させても新短SAMの前に光の速さで全滅した某GA隊がおりましてな
そもそも対AHなら中SAMでも余裕で交戦も可能なんですがそれが
個人的な感想だがロシア製の方がかっこいいよね。