米国関連

米国防総省、ウクライナ軍はロシア軍よりも多くの戦車を保有している

ワシントン・ポスト紙は国防総省の関係者の話を引用して「ウクライナ軍はロシア軍よりも多くの戦車を保有している」と報じている。

参考:Ukraine has more tanks on the ground than Russia, per Pentagon

ウクライナに東欧諸国が保有するT-72がどれだけ提供されているのだろうか?

英シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)が発行するミリタリー・バランスによればウクライナ軍が保有する戦車の数は858輌、ロシア軍が保有する戦車の数は2,927輌で、これにOryx調べの数字を当てはめるとウクライナ軍936輌(724輌+ロシア軍から鹵獲した243輌)とロシア軍2,469輌(2,396輌+ウクライナ軍から鹵獲した73輌)になるのだが、国防総省の関係者は「ウクライナ軍はロシア軍よりも多くの戦車を保有している」と述べているらしい。

出典:Минобороны России

恐らく国防総省の関係者は「ロシア軍がウクライナに持ち込んだ戦車」と「ウクライナ軍が保有する戦車」を比較して「ウクライナ軍はロシア軍よりも多くの戦車を保有している」と言っている可能性が高く、21日時点でウクライナに投入されているロシア軍の戦術大隊(BTG)は85だ。

標準的なBTGには戦車中隊(10~13輌)が1つ組み込まれているので、ロシア軍はウクライナに850輌~1,105輌の戦車を持ち込んでいることになり、ウクライナ軍が保有する戦車936輌に東欧諸国が提供したT-72を加えると「ロシア軍がウクライナに持ち込んだ戦車の数を上回る」と言いたいのだろう。

出典:OSINTdefender

まぁ上記の計算に用いた数値は全て推定値で、Oryx調べの数字も両軍の損失を全てカバーしていないため管理人が弾き出した数値は全く信頼できないものだが、軍事衛星をもつ国防総省の関係者が「ウクライナ軍はロシア軍よりも多くの戦車を保有している」と主張しているのは中々興味深い。

ウクライナに東欧諸国が保有するT-72がどれだけ提供されているのだろうか?

関連記事:ロシア軍の装備損失が3,000を突破、戦車や装甲車輌の損失は1,461輌

 

約3,000人の人々(兵士約2,000人+民間人約1,000人)が物資の尽きたアゾフスタル製鉄所に閉じ込められている可能性が高い

米CNNはウクライナ軍が立て籠もるアゾフスタル製鉄所について興味深い事実を報じている。

参考:Mariupol steel plant owner says situation there is “close to a catastrophe”

アゾフスタル製鉄所を所有するメトインベストグループは「製鉄所の敷地にある工場や防空壕には2週間~3週間分の食料と水を備蓄していた。この物資のお陰で兵士や民間人は生き延びていることが出来たが、封鎖が始まってから8週間が経過しているため物資は尽きている可能性が高く現地の状況は終焉に近い」と述べており、ウクライナの副首相は「民間人約1,000人が製鉄所に避難している」と主張しているので約3,000人の人々(兵士約2,000人+民間人約1,000人)が物資の尽きた製鉄所の閉じ込められている格好だ。

出典:vadim.tk / CC BY-SA 3.0 アゾフスタル製鉄所

元陸軍中佐のダニエル・デイビス氏は「あの迷宮じみた施設(アゾフスタル製鉄所のこと)を制圧するため兵士を送り込むのは無意味で実行する理由がない。ロシア人は施設のある区画を封鎖するだけで街を手に入れることができる。立て籠もるウクライナ人も外部からの助けがなければ死んでいくだけなので数時間~数日以内に降伏することになる」と米CNNに述べていたが、約3,000人に必要な物資を外部から調達できないのならデイビス氏の言う通り降伏するか餓死するか選ばなければならない。

それともアゾフスタル製鉄所には約3,000人の生命を維持するのに十分な物資が残っているのだろうか?

関連記事:元米陸軍中佐、アゾフスタル製鉄所を封鎖した決断は理に適っている

 

ポパスナの状況は急速に悪化、街の約半分を占拠したロシア軍

ルハーンシク州知事のガイダイ氏は20日「ロシア軍はポパスナの一部を占拠することに成功したものの街中心部への進出には失敗した」と明かしていたが、翌日には「ポパスナの約半分を占拠したロシア軍は住民をペルボマイスク(ルガンスク人民共和国の支配領域)へ強制的に移動させている。至るところで戦闘が行われており住民2,500人が避難できずに取り残されている」とFacebookに書き込んでいる。

出典:GoogleMap 大まかなルハーンシク州の戦況/管理人加工

ウクライナ軍はポパスナに進軍してきたロシア軍を本気で阻止するつもりがあるのか、それともロシア軍に出血を強いたら次の防衛ライン(集落)まで後退するつもりなのだろうか?

関連記事:米CNN、ロシア軍がクレミンナに続きルビージュネ中心部を支配した

 

※アイキャッチ画像の出典:36 окрема бригада морської піхоти імені контр-адмірала Михайла Білинського

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

米国、ウクライナ軍に155mm榴弾砲72門と砲弾14.4万発を提供前のページ

ドイツ、M-84をウクライナ提供するためスロベニアに代替装備を提供次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米空母の飛行甲板に衝突したF-35Cは海に落下、現場は中国に近い南シナ海

    米海軍の第7艦隊は25日、F-35Cの事故について「空母カール・ヴィン…

  2. 米国関連

    米陸軍、無人航空機に対する対抗兵器「IM-SHORAD」の評価試験を開始

    ニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場で、いよいよ暫定的な機動…

  3. 米国関連

    生産終了目前か? V-22オスプレイを購入するためのラストチャンス

    ボーイングは、ベル・ヘリコプターと共同開発した垂直離着陸機、V-22オ…

  4. 米国関連

    ホワイトハウス、大統領も政権も首をはねられた子供の写真を見ていない

    バイデン大統領は11日「テロリストが子供の首をはねている写真を見ること…

  5. 米国関連

    米CNN、ロシア軍がクレミンナに続きルビージュネ中心部を支配した

    米CNNは20日、SNS上にアップされた動画を精査して「ロシア軍がルビ…

  6. 米国関連

    バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

    CNNは「バイデン政権はNATO加盟国に対してウクライナへのF-16移…

コメント

    • 幽霊
    • 2022年 4月 22日

    ロシア(プーチン)としてもここで負けるわけにはいかないので本国からより兵力を動員する可能性は有りそうですね。
    アゾフスタル製鉄所は物資の補給ができない以上そう遠く無い内に降伏するしか無くなるでしょうが、少しでも物資が補充できれば籠城を続ける可能性は有るのかな?

    19
    • タコ
    • 2022年 4月 22日

    5月9日はロシアの敗戦記念日に変更します。ープーチン

    5
      • 匿迷
      • 2022年 4月 22日

      5月9日は、ロシア語を介する全ての人類がアセンションのを迎える記念すべき日なのです!🤯(ガンギマリ)

      5
    • タイヤキ
    • 2022年 4月 22日

    テレビでマリウポリで食糧譲りあっている住民とか森に放し飼いのニワトリの卵とか売ってありマリウポリは天然の食糧は豊富らしいから、製鉄所のマリウポリへの森とかの抜け道全て塞げなければ製鉄所の食糧問題だけは解決しそう気がする。
    川の魚とかも外国の舗装していない土地の魚は豊富だからな。
    弾薬は補給出来ないから立てこもるしかないけどな

    5
      • 無無
      • 2022年 4月 22日

      そんなに楽観視はどうかと思うけど、問題は、ソ連時代に建設された地下要塞の見取り図を今のロシアが保有しているか否か
      ロシアの知らないルートでウクライナが補給や退避をやってくれたらいいんだが、期待薄かな

      15
      • 幽霊
      • 2022年 4月 22日

      食料はどうにかなっても飲料水をどするのかが問題ですね
      敵地で有る製鉄所にロシアが水道を供給するとは思えませんし、近くの川から取ってくるにしても浄化しなければ病気になってしまう可能性が高そうです。

      4
        • 月虹
        • 2022年 4月 22日

        飲料水については「製鉄所の工業用水を煮沸してから飲んでいる」とアゾフ大隊の指揮官が話していましたが食事は兵士でもインスタント食品を1日一食との情報もあるので補給は苦しい様です。軍用の戦闘糧食には浄水タブレット(おおよそ1リットルの水に1錠入れることで塩素によって減菌する。ただし泥や不純物の除去はできないので泥水の場合は濾過用のフィルタとセットで使う)が付属している場合もありますが2~3錠程度なので食糧・飲料水の補給が無いと長期戦は厳しいです。

        アゾフスタル製鉄所の地下シェルターはクリミア危機以降にウクライナが拡張を行って地下通路は総延長が20㎞を超え、マウリポリ市内へと通じる通路も存在するとの情報もありますがロシア軍が市内を占領している以上、仮に市内に出れたとしても補給の確保は難しいと思います。

        17
      • NATTO
      • 2022年 4月 22日

      出す方も大変。

      1
      • 四凶
      • 2022年 4月 22日

       人間一人が1日にどれ位の飲食が必要でどれくらい供給出来ているか分からない事には安心も出来ない。

       ニワトリがストレス関係なくコンスタントに適量生んでくれるか。魚が安定して捕ることが出来るか。自生する食用出来る植物が豊富か。
       水源である川だって劇物なんか流さなくても上流で簡単に泥水に出来たり排泄物流すだけで使用のハードル上がるし。

       移動経路だってデータの蓄積とかして、攻撃無いからと安心させて大量に人が動いたタイミングで殲滅したほうが楽だし、楽観出来る要員はないと思う。

      6
    • 名無しさん
    • 2022年 4月 22日

    ウクライナ東部における両軍の戦力はロシア8~10万、ウクライナ5万程度と言われており
    ロシア優勢であるものの要塞に立てこもるウクライナ軍はそこまで劣勢ではないはず。
    ドンバス地方は8年間も戦い続け、戦線は膠着状態にありました。

    にも関わらず、各地でウクライナ後退の情報が相次いでいるのは、補給が追いつかず苦戦しているのか
    戦力差がそのまま戦況に反映されているのか、後退戦術を取って反撃の機会を伺っているのか
    判断が難しいところです。

    8
      •    
      • 2022年 4月 22日

      5万と言っても開戦時の正規兵の数字だろう
      現在は予備役、民兵も参加してるだろうから兵士の数は上回ってるんじゃないか

      3
      • zerotester
      • 2022年 4月 22日

      防衛側は広い前線を守る必要があるが、攻撃側はどこか選んで戦力を集中させることができるので一時的に突破口を開けることはできます。しかし防御側も突破されたらそこに予備戦力を回すので、そこから戦果を拡大するのは簡単ではありません。今ウクライナはその状態で耐えているので前線が崩壊することにはなっていません。
      ロシアがルビージュネ全体を占領したという話がありましたが、ISWなどはおそらく間違いでまだ戦闘中と言っています。攻勢から4日経ちましたがロシアが前進したのはクレミンナなど限られた場所だけで、イジューム方面も小さな村を1つ取ったくらいですしロシアの目論見よりはだいぶ遅れているのではと思えます。

      11
        • samo
        • 2022年 4月 22日

        ルビージュネの南にはドネツ川が流れているから、ウクライナ側はこの川を中心に防衛線を張るんじゃないかな?
        それにルビージュネは周りは深い森に囲まれていて、土地勘がないロシア軍側は奇襲対策がし辛い。
        キーウ周辺の街でも苦労してたし、ここを維持となると、かなり難儀すると思う。

        そもそも、東部における最重要拠点のスリャビャンスクは、東~北は森林と湿地帯、北西部は小高い丘が連続して、あまり見通しが効かず、機甲戦力のメリットが活かしづらいという地形をしている。

        北は丘、東西が森林と湿地帯に囲まれていたキーウと、都市規模こそ大きな差はあれど、土地の特徴は似ている。
        ロシア側は、このスリャビャンスク攻略には相当の苦戦を強いられることには間違いない

        6
          • zerotester
          • 2022年 4月 22日

          ルビージュネやセベロドネツクの中心部を取ったとしてもドネツ川を越えて進むのは大変なのではと思いますよね。
          イジュームとスリャビャンスクの最短距離の道路は丘に挟まれたまさに隘路になっていて、ロシア軍もここは進みたくないのか西に迂回しようとして苦労しているようですが、どうなるでしょうか。

          4
    • ななし
    • 2022年 4月 22日

    今更だけど食料備蓄たりないよね 民間人に回したのかもしれないけど
    兵士の家族や親戚と立てこもってるのがほんとなのかは分からんけど
    すぐそこの国境沿いに大群が終結してたんだから退避させておくべきだったと思う

    7
      • tofu
      • 2022年 4月 22日

      結果が分かってる今ならそう言うのは簡単だけどねぇ
      客観的に情報を見られる我が国の専門家ですら
      「戦争になる可能性は十分あるが、最後はプーチンの頭の中次第」
      としか言えなかったのに(それこそが誠実な学者の解答ではあるけど)、現地の人に正常性バイアスが働いたからと言ってそれをあげつらうのはどうよ

      23
        • hiroさん
        • 2022年 4月 22日

        あげつらうって言い過ぎじゃないの?
        後知恵かも知れないが、民間人を心配していると思えないのかね。

        1
    • 匿名
    • 2022年 4月 22日

    上手いことダンケルクみたいなのを決めて欲しい

    7
    • zerotester
    • 2022年 4月 22日

    ウクライナ軍は戦車の数はあるけれど、多くが第2.5世代のT-64BV(620両)等なのが残念ですよね。第3世代のT-64BM(100両)などの数は限られる。ロシアはさすがにほとんどが第3世代ではないでしょうか。実際ロシアから鹵獲した戦車はT-72B3など第3世代なので貴重な戦力になりそうです。
    T-64BVの戦闘シーンがありましたが盛大に外していたのでFCSが弱そうです。その不利を地の利でなんとかできるとよいのですが。今のところ戦車対戦車の戦いはそんなに起こっていないと思えますが、今後はどうでしょうね。

    8
      • samo
      • 2022年 4月 22日

      たとえ相手がロシア最新鋭戦車だったとしても、旧式のT-64でも弾避けにはなる
      ジャベリンをもった歩兵を運ぶ装甲車の盾として、動くことはできる
      ジャベリンの射程内まで歩兵を運搬するまでの時間稼ぎさえできれば、ロシア最新鋭戦車相手だって倒せる

      弾避けは多い方が良い

      6
        • zerotester
        • 2022年 4月 22日

        そうですね。あと戦車を隠したり埋めたりして待ち伏せ攻撃できる状況なら旧式戦車でも有利に戦えるので、無いよりはあったほうが断然よいです。

        3
    • タコ
    • 2022年 4月 22日

    よしっ、東部地域を制圧後アゾフスタル製鉄所に突っ込むぞせ。待っていろプーチン

    1
    • あさり
    • 2022年 4月 22日

    まぁ当初の予想通りロシアが結局は押し切るよね
    ウクライナの勝ちは有り得ない
    ロシアはなぜ東部だけでなく欲張ってしまったのか

    1
      • ぺろリスト
      • 2022年 4月 22日

      米戦争研究所分析では既に攻勢が鈍っている地域が多く上手いこと作戦計画が進んでいない可能性があると

      18
    • ブルーピーコック
    • 2022年 4月 22日

    数が増えたら増えたで、維持管理ができなきゃロシア軍の二の舞になってしまう訳だが、彼我の戦力差はそれほどでもないと兵士や民衆への心理負担を軽減するには役立つだろうな。言っているのがワシントンポストでウクライナメディアではないけど。

    籠城戦は守備側有利とは言うけども、小田原城や硫黄島、マサダのように「包囲外からの援軍」が無いと、いつかは物資と抵抗の意志が尽きて堕ちる。ドネツクとヘルソン州でロシア軍を押し戻したと聞いた時は、救援まで漕ぎ着けられるかと思ったが難しいか。

    4
      • 匿名
      • 2022年 4月 22日

      旧ソ装備ならジャンクだろうが部品取りは出来るので絶対に無駄ではないがPZH2000送られても東部には持ってけないだろうし微妙だね
      ならチェコがそれ受け取りダナズザナよこせが本音で西部部隊の西側ナイズにM777は適当でも数がない代物は使い捨てになる可能性が高い
      古今東西供与の個人装備は統制無視で使い捨てでも済むが編成定数もある所要装備がいざ実践でポンコツでは作戦が破綻する恐れもあり怖い

      1
    • zerotester
    • 2022年 4月 23日

    管理人さんが心配されているポナスナの状況ですが、先ほど出たウクライナ軍の発表によれば「ロシア軍はポナスナに深く侵入しようと攻撃をしかけたが成功しなかった」だそうです。
    あと占領されたのではと言っていたルビージェネについては「ロシア軍は足場(占領地?)を広げようとしたが失敗した」だそうです。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP