米国関連

本当にF-15EXを買えるのか? 米空軍、議会が「F-15EX」調達を妨害していると訴える

米空軍は、現在の継続予算決議案が維持され続けるとF-15EXの調達に遅れが生じると米国議会に訴えた。

参考:ongress could put f-15ex production at risk

ボーイングの宿願「F-15EX受注」を阻む最後の敵は米国議会?

米国では会計年度最終日である9月30日までに2020会計年度予算が成立せず、このままでは連邦政府機関の閉鎖に繋がるため「つなぎ予算」として継続予算決議案を可決し、連邦政府機関の閉鎖を回避した。

今回可決された「つなぎ予算」は11月21日分までだが、トランプ大統領が主張して譲らない米国とメキシコとの間の「国境の壁」建設費問題や、下院議会で始まったトランプ大統領に対する弾劾調査などで、期日までに予算が可決される可能性は非常に低い。

そのため、もし議会が新たに「6ヶ月」または「12ヶ月」の継続予算決議案を可決した場合、予算の支出は前年度と同じレベルに固定されるため、米軍は2020会計年度で確保した「新規プロジェクト」に関する資金に手を付けることが出来なくなる。

出典:ボーイング

米空軍によれば、このまま「新規プロジェクト」の資金が得られなければ、F-15EXの正式な発注が行えず、F-22が搭載するセンサーのアップグレードも行えず、F-35の問題の修正作業に影響を及ぼし、F-35、KC-46、T-7等の開発プログラムにも遅延が発生するだろうと議会に訴えた。

とにかく資金が得られなければ、2020会計年度に予定されていた契約が行えず、最悪、パイロットの育成費用まで削減されることになり、米空軍のパイロット不足問題を悪化させるのは目に見えている。

これはF-15EXを製造するボーイングにとっては悪夢でしか無い。

ボーイングは、米空軍へのF-15EX売り込みに並々ならぬ熱意で望んでおり、発注を受ければ2020年初頭にもF-15EXを納入できるとアピールし、正式発注前にも関わらず、自発的にミズーリ州セントルイスにあるF-15生産工場の生産ラインを拡張するための準備を始めた。

現在、カタール空軍向けのF-15QAを36機生産するため、セントルイス工場の生産ラインは月産1機の体制を維持しているが、これを月産3機まで拡張するとボーイングは言っている。

このようにF-15EX受注に向けて「万全の準備」をしているにも関わらず、議会の継続予算決議案のせいで、いつまで経っても米空軍から受注が確定せず、旅客機「737MAX8」の欠陥発覚で業績は悪化し、まさしくボーイングにとっては「泣きっ面に蜂」だ。

果たして何時になれば、2020会計年度予算が可決されるのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:ボーイング

今度は有線誘導にも対応!韓国、ウェイクホーミング対応の新型魚雷を2020年までに配備前のページ

インドに最適な戦闘機は「グリペンE」? 技術移転が可能でコストは「ラファール」の半分次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米空軍、 貨物100トンをあらゆる地点に1時間以内で届けるロケット開発に予算を要求

    C-17が輸送可能な同じ貨物量を1時間で地球上のあらゆる地点に運搬可能…

  2. 米国関連

    トイレが詰まって使えない? 空母「ジェラルド・R・フォード」に新たな欠陥が見つかる

    米国の政府説明責任局(日本の会計検査院に相当)が発表した3月24日の報…

  3. 米国関連

    米海兵隊、水陸両用戦闘車や無人水上艇にイスラエル製のカミカゼドローンを統合

    米海兵隊はイスラエル製の徘徊型UAV「Hero-120」を調達すること…

  4. 米国関連

    南シナ海に展開中の米空母でF-35Cが着艦に失敗、機体が海中に転落した可能性も

    南シナ海に展開中の空母カール・ヴィンソンでF-35Cが着艦に失敗、パイ…

  5. 米国関連

    事故が集中する空母カール・ヴィンソン、F-35Cは台湾海峡の南海域に沈んだ?

    米軍は事故発生後からP-8Aなど少なくとも6機のISR戦力を派遣して台…

  6. 米国関連

    米空軍、超音速で飛行するF-35Aが戦術核兵器B61の投下に初成功

    米軍の核兵器開発を行っているサンディア国立研究所は23日、F-35Aの…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 10月 26日

    1つの工場で月に1機しか作れないのか。
    やはり最先端の戦闘機は作るのが大変なのね。高いのも判るわ。

    • 匿名
    • 2019年 10月 26日

    FMSでの部品が届かないとかのグダグダは、やはりこの辺にも原因が有るのだろうな
    やはり極力可能な限り国産化したほうが良い。とはいえ予算や国内リソースにも限りが有るから、どうしても選択が必要だが

    • 匿名
    • 2019年 10月 26日

    X-32がJSFの要件を満たせなかったのはボーイングの設計の問題だし、737MAXについては完全に自業自得でしょ。
    737NGの時点で地上とのクリアランスに余裕がなくて下側がひしゃげたような形にしてたのに、それより大口径のエンジンを積もうとして重心が偏って、何もしなくても機首上げするからそれをオートプログラムで補正させるって……新規設計でA320と対抗すべきだったよ

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 26日

    F15みたいよぉおおお

    • 匿名
    • 2019年 10月 26日

    米空軍主流派はF-35を最優先で調達すべきという見解なので当然EX調達は最後まで妨害するでしょうね。

    • 匿名
    • 2019年 10月 26日

    稼働中のF15も多いから部品用のためにもラインは維持すべきというのはわかるけどね

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP