米空軍が開発中の「Advanced Battle Management System(ABMS)」は対AWACSキラーと言われる露中の超長距離空対空ミサイルを無力化する可能性があるのだが、どうも雲行きが怪しい。
※本記事は2020年4月19日に公開した記事の再掲載です。
参考:What’s Wrong With the Air Force’s ‘Connect Everything’ Project
米空軍のアドバンスバトル・マネージメントシステムは果たして完成するのか?それとも大金をドブに捨てることになるのか?
米空軍が開発している「アドバンスバトル・マネージメントシステム(Advanced Battle Management System:ABMS)」とは陸海空の戦力に加え宇宙空間に配備された軍事衛星までが接続されるクラウドベースの戦闘管理システムで、個々のセンサーが収集した情報を瞬時に統合することで戦場の状況認識力を拡大させるのが目的だ。
もっと簡単に言うなら、早期警戒管制機「E-3 セントリー」が搭載している大型レーダーの役割を分散させることで抗堪性を高め、収集した情報をネットワークを通じて統合して活用すると考えれば良いだろう。
このABMSは米空軍にとって戦闘のネットワーク化を実現させるための土台になる重要なプログラムで、ロシアや中国が実用化を進める対AWACS用超長距離空対空ミサイルへの回答だ。実際、米空軍はABMSが完成すればE-3やE-8と置き換えることを予定しているらしい。
この話を鵜呑みにすれば近い将来、対AWACSキラーと言われるロシアや中国の超長距離空対空ミサイルは存在意義を大方失うことになり対米空軍に対する戦略を練り直さなければならなくなるだろう。
だがABMSの開発はとても上手く言っているとは言えない。
米国の政府説明責任局(日本の会計検査院に相当)は16日、米空軍が進めている「Advanced Battle Management System」プログラムは開発にどれだけ予算が必要になるのか、サービスが上手く統合され機能するのか「誰にも分からない」と強烈に批判する報告書を公開した。
ABMS開発を受注している企業の関係者は「米空軍はABMSのコンセプトを実用化するのに何を構築すれば良いのか、どのような技術が必要になるのか、データはどのようにあるべきなのか、異なるプラットホーム間の相互運用性をどのように確保するのか、開発のゴールはどこなのか、無いも分かっていない」と指摘するほど米空軍はABMSの開発をコントロール出来ておらず、もっと辛辣に言えばABMS開発はソフトウェアの開発であり発注者である米空軍の担当者は理解できずコンセプトだけ作って逃亡したのだ。
さらに米空軍はABMS開発を小さく分割して発注するという不可解なアプローチを採用して数ヶ月おきにデモを行いながら開発を進めており、建前上は複数の企業を短期間で何度も競わせることでイノベーションを高めると説明しているが、米空軍側の誰が契約や開発要件を決定して誰がデモを評価するのか明確になっておらずABMSの効率的な開発を妨げる可能性があると政府説明責任局に警告されている。
結局、政府説明責任局はABMS開発について米空軍は何も分かっておらず、詳細な計画や開発コストの見積もり提出を義務付けられている国防総省の「主要な防衛獲得プログラム」に指定されれば困ったことになるため、それを回避する手段として契約を分割し1つの契約額を小さくみせることで「主要な防衛獲得プログラム」指定を回避しただけに過ぎないと糾弾したいのだろう。
米空軍は2021会計年度にABMS開発の予算として約3億ドル(約320億円)を要求しており、将来的には爆撃機B-1Bや攻撃機A-10などを早期退役(※1)させて浮いた予算の一部をABMS開発に突っ込むことを予定している。
※1補足:米空軍は爆撃機B-1Bランサーを17機、攻撃機A-10サンダーボルトIIを44機を退役させ、無人偵察機RQ-4は最新のBlock40のみを残し旧型の24機と3機の無人戦域通信中継機EQ-4を退役させる。空中給油機KC-135を13機、KC-10を16機退役させる代わりにKC-46Aを15機調達して穴埋めし、無人偵察機MQ-9リーパーは10機削減、輸送機C-130Hは24機を退役させる予定。但し、議会の許可が下りていないため実際に実現するかは未知数。
関連記事:米空軍、正式に「B-1Bランサー」や「A-10サンダーボルトII」など7機種の退役計画を発表
政府説明責任局は米空軍に対して、指摘した問題を早急に解決しなければ320億ドル(約3兆4,000億円)をドブに捨てた陸軍の「未来戦闘システム」の二の舞になると警告している。
ABMSのコンセプトだけ聞けば明るい未来が見えるのだが、どうもドロ舟のような気がしてならない。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. John Winn
米空軍が日本のHPMに興味を示した理由はこれかね
新早期警戒システムの開発が難航しそうだからとりあえず既存AWACSを狙う敵ミサイルを安価かつ大量、高速に無力化できる装備を調達しようと
もういっそスタンドアローンでかつ圧倒的な質を持った戦闘機なり艦艇を開発した方が安上がりなんじゃないだろうか
話を聞く限り、ABMSは“IT業界のサグラダファミリア”と揶揄されたみずほ銀行の勘定系システムの刷新と統合プロジェクトを遥かに上回る難事業と言って良いと思う。
因みに、みずほ銀行のプロジェクトは2019年7月に完成したが、それまでに19年の歳月と推定4000億円以上の開発費を要したとされており、その期間中に2度の大規模なシステム障害(2002年4月と2011年3月。2度目は東日本大震災に伴う義援金の大量振り込み処理の結果)を起こし、システム刷新に伴うATMの停止を何度もやっているのでご記憶の方も多いと思うが、ABMSはそれよりも遥かに困難な事をやろうとしているとしか思えない。
個人的な意見だが、米空軍の担当者に日経BPから出ている『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』を読ませたら、ABMSをあっさり中止させるかもね(苦笑)。
普通に偽データが紛れ込んで存在しない目標にミサイルが大量に叩き込まれる未来が見える
米海軍にはウェイン・マイヤーという優れたプログラム・マネージャーがいたのでイージスシステムを完成できましたが、今の超大規模開発を率いることができるビジョナリストやマネージャーは中々出ないでしょうね。
IT屋なら規模を分割して複雑度を下げたり段階的に開発することで方向性を修正しながら順次リリースするなどの手段はよく使われますが、軍事システムは複雑度が高すぎるので不向きなのかもしれません
アメリカさんが手こずってるのなら、
EU、イギリスのE-3、E737を廃止して・・・ってのは画餅にもほどがあるってことかな?
まだきちんとした代替え案が無いのにE737レーダー管制機を廃止を決定するのは話が早くないか?
E737のような大型レーダー管制機からE2のような小型の機種を量産して、
相互連携ネットワーク化するのはどうなんだろう?
E2だったら空母艦載機として運用出来て便利だし、自衛隊も運用しているから、自衛隊でも似たような構想は出来る
現に相互連携ネットワーク化出来る機種はF35とレーダー管制機だけだから
他の戦闘機をバージョンアップするか新規製造しないといけないから予算と時間がきついと思う
?
E737って豪州、UKと
韓国(仕様は上の2国とは違うらしい)だけが採用
アメリカ空軍は採用してないけど?
日本はE-3とほぼ同等のE767
それは抗堪性を多少上げる事が出来る可能性はあるけど、E-2を増やしてもAAMのマトが増えるだけで終わってしまう。
ネットワーク端末化するなら無人機のような低価格化は必須だけど、E-2じゃ人的、価格的損耗に耐えられないし、無人機等新開発するにしても、高価な電子機器の搭載は必須だから、そんなものを消耗前提ではとても使えない
F-35を増やして電子機器もさらに強化して相互ネットワークで管制機いらずの状態に持っていった方がまだマシかも
これ、つまるところは監視カメラネットワークのクラウド版をレーダーでやろうってことだろ。
無線封止中とか、ジャミングがかかると旧式機は使えないし、リアルタイムじゃないと意味ないし、想定が広くなりすぎて結局穴が出来る気がする。
スターウォーズ計画を思い出したわ。
しかも、導入しようとすれば、全航空機のレーダー機器を刷新、その処理系の規格を統一して、そのうえで極論すれば輸送機とか救難機とか、戦闘能力のない有人機まで鳴子にするシステムだから、兵士の危険は上がるよね。
しかも、ハッキングされたら一斉に全部がパー。冗長性が無さ過ぎる。
管制空域の増大や機器の発達に伴って、機体につめるコンピューターじゃ処理に問題が出来てるのかもしれないが、AWACSのコンピューターを高性能化して、レーダー中継の無人機をたくさん随伴したほうが確実な気がする。
もしくはAWACSにミサイル防衛用レーザーを搭載するか、そっちのほうが案外実現できそう。
中国企業に発注しよう!
アメリカって、ホント軍事技術開発には大金をかけて、トライ&エラーしている
しかも、その開発システムを運用するためにも、莫大なカネをかけている
アメリカは、先進技術で他国を圧倒すれば、アメリカが望む未来が手に入ると理解している
方や中共は、アメリカ技術の窃盗がアメリカの”虎の尾”であることを理解していたし
うまく手に入れれば”世界覇権への近道”であることも理解していた
だからこそ、両国が衝突しないわけはない
中共は、確かに”虎の尾”を踏んだわけだ
ロシアや中国もAWACS持っているが
米国が長距離空対空ミサイルという手段に出た時の対策を考えているんだろうか。
>小さく分割して発注するという不可解なアプローチ
アジャイル開発のことを良くまあここまで馬鹿にする表現ができますね・・・
民間企業のIT開発でもありがちな、何を作れば良いのかわからないまま金と人だけが動いていく、という状態になってる気がする。
その計画うまくいけば、相当な戦力になりそうだな
でも話を聞く限りいつものように莫大な予算と時間を費やして開発中止するのが落ちだな
人的ソースとシステムが大量に必要になりそうだから現行AWACS同士で連帯したら
広大な範囲で監視出来そうだけど、そもそもAWACSを無くそうっていう構想だし、この話は無いね
このチャレンジ精神は素晴らしいと思う
失敗することもあるし実際多いだろうが、長期的に見ればリスクを取ってでも挑戦を続けた方が優位に立つだろう
この手のチャンレンジが10に一つでも成功すればその分野で圧倒的優位に立てるわけだし