米海兵隊は3月末「FPVドローンの急速な普及に伴い専門部隊を創設した」と発表、海兵隊訓練・教育コマンドの司令官も「海兵隊員はライフルマンでなければならないというスローガンに変化が起きるかもしれない」「兵士1人の交戦距離は500mから20kmに拡張される」と述べて注目を集めている。
参考:Every Marine A Drone Pilot: Individual Lethality To Go From Meters To Kilometers
もはやウクライナで起こっていることは歩兵戦闘の変革で、兵士1人の交戦距離は500mから20kmに拡張される
米海兵隊が訓練中の新兵や毎年の射撃検定で配布するデータブックには「全ての海兵隊員はライフルマンでなければならない」「その他の要件は二の次だ」というグレイ元総司令官(1987年~1991年)の言葉が印刷されており、海兵隊訓練・教育コマンドのワトソン司令官はSea Air Space2025で「このスローガンは『海兵隊員なら最大500mの交戦距離で敵を仕留めることができる』という考えを反映したものだが、もしかしたら変化が生じるかもしれない」「新しい技術を活用すれば海兵隊員の致死性は15km~20km、もしかしたらそれ以上の距離でも致命的な攻撃力を発揮できるかもしれない」と述べて注目を集めている。

出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Joshua Barker N1 Archer
米海兵隊は3月末「戦場で一人称視点のFPVドローンが急速に普及していることに対応するため専門部隊=Marine Corps Attack Drone Team(MCADT)を創設した」「MCADTは迅速にFPVドローンをFMF=艦隊海兵軍に統合し、部隊の攻撃効率を強化し、現在の兵士に欠けている有機的な能力を提供することだ」「FPVドローンは5,000ドル以下で約20kmの範囲に分隊レベルの殺傷力を提供できる」と発表。
ワトソン司令官もMCADTについて「海兵隊訓練・教育コマンドが関与している取り組みの1つがMCADTだ。彼らはFPVドローンを海兵隊に導入するための政策、技術、財政面の課題について道を切り開いている。ライフルマンの交戦距離を500mから15km~20kmに拡張させることが出来るかどうかについてだ」と指摘。

出典:U.S. Army photo by Spc. Casey Brumbach 手榴弾を搭載して空中投下するためのキットを取り付けたRQ-28A
さらにSea Air Space2025に登壇したウッドワース海兵隊少将(海兵隊基地司令部司令官と施設・兵站担当副司令を兼任)も「昔の映画やゲームに登場する兵士の戦闘シーンを思い浮かべて欲しい。彼らは手榴弾を1つか2つ携行し、出来るだけ正確に遠くの敵へ手榴弾を投げることができたが、現在ではドローンを携行して空中から手榴弾を投下できるようになっている」と述べ、WarZoneは「この取り組みは世界的な傾向の高まりを認識しながら、この能力を広範囲に普及させるキャッチアップに追われていることを浮彫りしている」「取り組みの進捗次第でスローガンが進化するかもしれない」と報じている。
米軍はRQ-4、MQ-9、MQ-1、RQ-21、ScanEagleなど多数の無人機を保有・運用しているものの、ウクライナ軍とロシア軍のドローン活用は「歩兵による近距離交戦」「陣地制圧や防御戦」「前線の後方攻撃」の一部をFPVドローンに置き換える=兵士1人の交戦距離を拡張して人的損失の機会を抑制するところまで進化し、光ファイバー制御のFPVドローンが登場したことでEWシステムによる阻止も無効化されたため、もはやウクライナで起こっていることは歩兵戦闘の変革だ。

出典:U.S. Marine Corps Photo by Sgt. Gabrielle Lucido, I Marine Expeditionary Force
小型ドローンは希少条件の影響を受けやす万能ではないものの、実戦で証明された有効性を「不足する対戦車兵器の代替品」「直ぐに対抗システムが開発されて廃れる」「ウクライナ戦争特有のもの」「陸上戦に限ったもの」という言葉で否定するのが難しくなっており、多くの国でもドローンを戦闘教義に組み込む能力開発を進めているため、WarZoneは「米軍もドローンの効果を認識しているもの、これを広く部隊へ導入するための取り組みで先行国=トップティアグループを追いかける立場だ」と言いたいのだろう。
因みに小型のFPVドローンは能力の関係で「外洋では役に立たない」と考えられているが、ロシアや中国は航空機からFPVドローンを投下し、機内の要員がFPVドローンを制御する様子を公開しており、外洋を航行する艦艇に「FPVドローンに群がる」という事態が絶対に起きない保証はどこにもない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Reserve photo by SSG Alex Manne
各歩兵が専用バックパックにFPVドローン・バッテリー・コントローラ・ドローン用砲弾を背負って移動するようになるのでしょうね
そして兵站車両は毎日大量のドローン・交換用バッテリー・予備コントローラ・ドローン用砲弾を前線に供給するようになると
放射性物質を使ったアイトソープ電池なら10年ぐらい取替不要らしいです。
劣化ウラン弾みたいに放射性物質の飛散などかなり問題あるけど。
そんなに単純に行くかって気はするけどね。米国とかフューチャー・コンバット・システムやERCAみたいな既存の物より高性能な兵器をぶち上げたりするけど結局モノになっているのって冒険しすぎない無難な兵器で終わっている感じがする。
歩兵一人一人が遠距離対応するにしても限度が有ると思うしその限界はせいぜい60mm迫撃砲位の範囲までじゃないかと思う。どう考えても航続距離と致死性兼ね備えるとサイズと重量は増えるし隊の中で数人ロケットランチャーの代わりとして持つのが限界。
それと日本の反撃能力と同じで遙か先のターゲットをしっかり確保出来るのかがネックになる、ライフルマンの交戦距離を500mなんて他の協力なくても個人で幾らでもどうなる範囲だが水平線以遠なんてとてもじゃないが自力で何とか出来る範囲内を超えている。
ウクライナのFPVと同じく敵は敵は対策してくるから継続したアップデートは必要で、それを各歩兵単位でカバー出来るのか妨害対策でワイヤードにするなら重量増や操縦が面倒になるから、質にばらつきのある兵士個々人まで装備するってのが想像出来ない。
同意です。
しれっと20kmなんて書いてあるけど、面積にしたらえらい範囲ですけどね。確実にそこに敵がいるならそれもありでしょうが、敵だって隠れてますから。どう索敵するんだと。
そもそも、ドローンだって現在進行形の技術なわけで、まずは戦場全体をどう定義して、兵士に何をさせようとするのかと定めないと、場当たり的に後ろを追っかけるばかりになるかと思われます。
狙撃手と観測手が組むのと同じようにドローンオペレーターとサポーターで組んで活動していますし、
現状の狙撃手のような存在になりそうに思います。専門狙撃手は他の歩兵と違った運用になりますが、専門ではなく普段は突撃銃を使っていてもその射程を超える範囲で攻撃しなくてはならない場合に少し口径が大きな銃に持ち替える選抜された歩兵が小隊に一部配属されるものです。そのような存在になるというなら分かります。そして米海兵隊は任務割り当てが無くても全員がその選抜射手になりうるよう射撃を重視する訓練教義がありますが、射撃を一部ドローン運用に置き換えるというなら分かります。
FPVドローンによる攻撃も現状は歩兵の代替というより砲兵や攻撃ヘリの安価小規模かつ効果的な代替と見ています。
2km程度の狙撃までは条件が整って狙撃銃を使えば可能だそうですが、突撃銃で届かないあるいは無効だがあまり遠くも堅くもない目標に対して狙撃or迫撃砲orヘリやカノンなど歩兵意外への外注という攻撃手段の一つとしてFPVドローンという有力な選択肢が現れたと見る方が新技術に舞い上がっていないでしょう。
それこそ、ドローンに運んでほしい・・・
もしくは、無人運搬ロボット。
交戦距離が延びるのは、非常に大きいですよね。
前線歩兵が、スナイパーよりも長い射程の武器を持っていると考えれば、うんざりする環境だなと。
ウクライナ戦争の戦訓を考えれば、最前線~車輛までの徒歩による数kmの物資運搬も、非常に重要な任務になるかもしれませんね。
最前線まで、車輛で物資を運搬すると、相手の偵察ドローンに発見されて、FPVドローンや砲撃などにより攻撃されるリスクが高いからです。
DJIを擁する中国軍ではどうも完全にはドローンの優位性を確信していないようで、ここ数年スナイパーグレネードランチャーや新型小型迫撃砲などの従来型の強化仕様歩兵火力装備の開発普及行われている模様
ただし、光ファイバー運用ドローンは興味津々で数的劣勢にも関わらずレオパード2戦車を撃破したロシアドローンチームの情報は詳しく聞き出してるとのこと
また、ドローンの脅威自体は認めており、特にインド軍が国境戦争で使う恐れから国境沿いにドローンジャマーを緊急配備しているらしい
やっぱり用途が違うんじゃないかな
一人一台のUAV(操作)は既存の手で投げる手りゅう弾の距離延長バージョンみたいなもので、目視できる距離なら打ちっぱなし型のグレランや迫撃砲で弾をドンドン撃ちこんだほうがせん滅力は高いし
瞬間火力・制圧力のある火器は、魅力的ですよね。
やっぱり用途が違うんじゃないかな
一人一台のUAV(操作)は既存の手で投げる手りゅう弾の距離延長バージョンみたいなもので、目視できる距離なら打ちっぱなし型のグレランや迫撃砲で弾をバンバン撃ちこんだほうがせん滅力は高いだろうし
書き込んだのかどうかわからなくなって(フォームに残ってたので)書き込んだら二重になってましたスミマセン
インド方面の情報ありがとうございます。
歩兵の重要性が見直されたのも、歩兵傾向装備の種類増加・威力増加により、歩兵単独の強さが増しているのもあるのでしょうね。
中国=インドの国境紛争、近々は銃火器を使わない・一定程度抑制された形で、乱闘のようになっていましたね…
インドも対抗するには、光ファイバードローンを保有する必要も出てくると思いますが、どうなるのか見守りたいと思います。
歩兵が運べる重量サイズにどのくらいの数と性能のドローンを持たせてどのぐらいの継戦能力を期待するか、というバランスが今後模索されるわけですね。
よくアフガンとかのゲリラがRPGの弾頭を腹と背中に何本も差したりしてるけどああいう感じか
海兵隊っぽくないね
ドローンでもなんでもいいけど蓋を開けたら全部中国製じゃ意味ないってなんで分からないかな
日本やドイツが負けたのはアメリカの理念でもなければ購買力でもなく生産力ってなぜ気付かないのか戦術とか考えてる場合か
いや、戦術も考えればいいけどさ
結局トランプ大統領も腰砕けだし
マルチコプター程度なら予算が付けば大半の国は量産出来ると思うよ
やろうと思えば作れるってそれ国際市場で電子部品とか入手できればの話でしょ?
本当に中国と戦争したらワッセナーアレンジメントの規制品以外の平時には規制対象になってない汎用品も通商止めてでもアメリカに渡さないようにすると思うけどね
あんまり取り沙汰されないけど電子部品の生産国ってめちゃくちゃ偏ってるからね
ドイツの経済相がEUの中国製電子部品への依存度の高さは許容できないって懸念を示してたくらいには
まあ、今はまだ日本が生産できるけどそもそも電子部品の製造に必要なレアメタルやレアアースのほとんどを供給してるのが中国だし
トランプ大統領は保護主義の上、掘って掘って掘りまくれ!と言っているのでレアアース鉱山を復活させるのでは?流石に125%も関税を掛ければアメリカ産レアアースも中国産に勝てるでしょう
多分日本も貿易赤字解消の為にディールで一定額買わされると思いますが多角化と言う面では悪くない
単に飛ばせるのと、様々な状況で使えて命中するの間には恐ろしい程の差があるのでは
ライフルからドローンへの移行は、弓矢から銃器へのパラダイムシフトと同じぐらいのものだと思うので、ドローンの中でも常に新しいモノを作って使っていくぐらいじゃないと、いざという時にボロ負けしかねないと思うのですよ
こういう戦術が普通になったとしたらってかもうなりそうだけど日本政府はどうするのかな
それでもあくまで原則禁止レベルの規制を続けるのか
今のところ国内で製造企業を本気で育成する気はなさそうだけど
電子部品は強いからやろうと思えばできると思うけどね
防衛省は運用試験のために次の攻撃UAVを購入したとされてますよ。
2026年度に②の小型攻撃用無人機(自爆型)の中から当面310機を導入予定で、①③は2027年度以降に導入の可能性があります。
①(携行型小型攻撃用;対歩兵等)
スイッチブレード300、ポイントブランク、ロテムL、ドローン40
②(携行型小型攻撃用;対軽装甲車両/舟艇等)
ヒーロー120、スカイストライカー、ドローン81、キュースラム40
③(車両運搬型多用途/攻撃用;対軽装甲車両/舟艇等)
ハロップ、バイラクタルTB2、へロンMkⅡ
「無人アセット防衛力」の獲得・活用は「国家防衛戦略」の重視項目なので、国内の開発・製造企業支援/育成は恐らく後半の2028年度当たりから本格化するんでしょうね。
その辺がよく分からないな
本気で育成する気はなさそうというか防衛省に産業政策のノウハウがないからね
ここで求められてるのは明らかにDJIとかが作ってる規模のドローンだし本来なら民生含めた産業政策として経産省がやるべきだと思うけど
ドローン開発事業に活用できる資金援助は経産省が以前から実施しています。
1.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
【補助上限】・通常枠 1,250万円 ・グリーン枠 4,000万円
2.中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)
【補助上限】・成長枠 7,000万円 ・サプライチェーン強靭化枠 5億円
3.成⻑型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)
【補助上限】・通常枠 4,500万円 ・出資獲得枠 1億円/年
4.地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業
【補助上限】・通常型 3,000万円 ・広域型 4,000万円
5.スマート保安導入支援事業
【補助上限】・未定(2023年3月現在)
防衛装備への転用や技術適用は防衛省管轄の事業枠になるのかと思います。
ものづくり補助金がドローン産業振興の産業政策は無理がある
広い意味で製造業振興のための政策なのはたしかだけど
経産省が適用できると言ってますよ。
>【ドローン関連活用イメージ】
・生産性向上に資する革新的なドローン製品やサービス開発のために必要な設備の導入
・ドローン関連部品・システム等開発のための設備導入、生産設備導入
・企業がドローンを使った革新的なビジネス展開をする際、ドローン本体及び付随する専用ソフトウェアの購入費用として活用 等
いや、そうじゃなくて
産業史やったら分かると思うけど普通この手の補助金とかはターゲティングポリシーの範疇には含まれない
広い意味での産業政策ではあるけど
まあ、産業政策という概念自体日本の通商産業省が行う政策と定義されることがあるくらい曖昧な概念だけど
ACSLは?現状は空撮用途ですが。
あと2023年度にFPVドローンを用いた離島防衛の実証実験を実施しましたが。
今になってスイッチブレード300とかバイラクタルTB2とかあたりの役に立たないと有名な兵器を導入しようとしてるのが周回遅れ感半端ない
3号4号やBT-7が走り回ってる時代に多砲塔戦車を導入しようとしてるみたいな
スイッチブレードはハズレでしたけど、バイラクタルTB2は本来の無人偵察機として、今もウクライナで使ってると、ここで何度か言われてましたけど
シャヘドのような徘徊型に運んでもらって
戦場にばらまいて通信は衛星経由とか
低速な分固定目標には最適だよなあ
《小型のFPVドローンは能力の関係で「外洋では役に立たない」と考えられているが(中略)外洋を航行する艦艇に「FPVドローンが群がる」という事態が絶対に起きない保証はどこにもない》
中国には珠海雲のようなドローンを大量に積んだ無人船もあるしな。批判派の念頭にあるのはバイラクタルTB2のような機体なんだろうけど。
外洋でのFPVドローン運用でいつも気になってるのは、護衛艦なんかに標準搭載されてる電子戦装備でのFPVドローンの無力化は可能なんでしょうかね?
電子戦装備とは別に艦載型のマイクロ波照射装置の開発が進んでるあたり効き目が薄いか何か運用上の問題があるのではと個人的には考えてますけど、小型ドローン相手に対艦ミサイル用の電子戦装備が効かないなんて事があるのかと
仮に既存の電子戦装備がFPVドローンのスウォーム攻撃に有効足り得ない場合、13DDX就役前に有事が起きたらかなり不味いのではと感じますね…手榴弾程度の爆発でもレーダーには致命的でしょうし。まあFPVドローンをばら撒く母機を接近させなければいい話ではありますが
第7艦隊所属の艦艇も対ドローン用の電子戦装置を通常の電子戦装置とは分けて搭載してるので既存のじゃ対応できないんでしょうね
ロシア軍もその時その時で電子戦装置の周波数特性を弄りまくってるけどミルブロガーが言うにはそれでも攻撃を仕掛けるドローン側が有利って言ってるし
防衛技術ジャーナルの2023年4月付けnet公開記事「テクノトレンド ドローンの対処手段と対処装備品について」が纏まってて参考になると思います。
リンク
結論として述べられているのは
>従来の防空システムは、主として高速で飛来する大型の物体を検出、追尾、撃墜するために最適化されており、小型、低速の大群のドローンを個別に検出することは困難である。
>市販のドローンの機能も向上してきており(略)電波ジャミングによる対処が困難となりつつある。
>外部との通信が不要な自律飛行を行うドローンが近い将来には出現することとなるが(略)これらには現在の手段では対処が困難であると予想される。
>今後はドローン群を想定した重層的な対処戦略を検討することが求められていくものと思われる。
ハートマン軍曹がドローンオペレーターに置き換わるのか、、、