Reutersは2023年3月「日本は軍備拡張のため防衛産業界の活性化を望んでいるが、主要な企業は防衛部門の投資拡大に消極的だ」と報じていたが、15日「日本の武器輸出解禁に米国の同盟国から注目が集まっている」「三菱電機と東芝は海外輸出を促進するため人員を増員している」と報じた。
参考:自民党、装備品輸出「5類型」撤廃案を了承 事実上の全面解禁へ
参考:Rattled by Trump, US allies eye Japan’s biggest arms opening since WW2
一つのモデルケースとなるのが隣国の韓国で、世界第4位の経済大国である日本の潜在能力は韓国を上回る可能性を秘めている
自民党は14日の総務会で防衛装備品の輸出規制=5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)撤廃を求める政府案を了承した。これを受けて政府は4月下旬にも防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、ミサイルや護衛艦といった殺傷力をもつ武器を輸出できるようにする。

出典:首相官邸
産経新聞は3月28日「日本政府は防衛装備移転三原則の運用指針を4月下旬にも改定して5類型を撤廃する」「小泉防衛相は4月下旬から始まる大型連休にフィリピンとインドネシアを訪問する予定で、5類型の撤廃後早々にトップセールスを本格化させたい考えだ」「フィリピンとの間では中古護衛艦の輸出に向けて水面下で調整している」「インドネシアは海自の中古潜水艦取得に関心を示している」「5類型が撤廃されれば海外販路を開拓する上で障壁となっていた輸出ハードルが大きく下がる」と報じていたが、Reutersは15日「日本の武器輸出解禁に米国の同盟国から注目が集まっている」と報じた。
“トランプ政権は同盟国に対する安全保障の約束を曖昧にし、米国の武器供給もウクライナとイランとの戦争で圧迫される中、日本がまもなく武器輸出規制を緩和するためワルシャワからマニラまで世界各国から強い関心が寄せられている。日本当局者や外交官の話によれば潜在的な新規顧客の中にはフィリピン軍とポーランド軍が含まれ、高市政権が最初に承認する可能性が高い取引の一つはフィリピンへの中古護衛艦輸出で、ミサイル防衛システム売却の可能性もある”

出典:護衛艦隊司令部
“駐日本ポーランド大使も「ワルシャワと東京は対ドローンシステムや電子戦システムなどの分野で協力することができ、互いの備蓄不足を補うことができる」「日本と協力することで克服できるボトルネックがいくつかある」と述べたが、具体的な取引内容については明らかにしなかった。欧州の外交官は「日本の緩和策は紛争によって逼迫している米国製兵器への過度な依存を軽減する機会になるかもしれない」と述べ、三菱電機防衛事業部の洗井昌彦氏は「あらゆる方面からオファーが来ている」「防衛輸出を促進するためにロンドンとシンガポールで人員を増強している」と語った”
“東芝も今後3年間で約500人を新規雇用する計画で「新たな試験・製造施設を建設中だ」「防衛輸出を専門とする新部署も設立した」と明かした。日本企業の中には「武器輸出が主力事業の顧客離れにつながるのではないか」と懸念しているところもあるが、東芝防衛事業部の小林健児氏は「風評リスクは以前ほど深刻でなくなった」「私たちはそういったことを心配するよりも自分たちの役割を果たすこと、防衛事業を成長させることに集中している」と述べた”

出典:U.S. Army photo by Maj. Trevor Wild
“ただし、武器輸出で国内の防衛産業を育成したい政治的な意向と一部企業の間では依然として隔たりがあり、駐日本ラトビア大使は「ラトビア企業が2023年に軍用車両向けエンジンをトヨタの子会社から購入しようと試みたものの拒否された」と明かし、Reutersの質問に対してトヨタカスタマイザイジング&デベロップメントは「事業範囲と方針に基づき軍用車両の要請には応じられない」と回答した”
“長年にわたり世界の防衛サプライチェーンは米国によって支配されてきた。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が3月に発表した報告書によれば2021年から2025年における各国の防衛装備品輸入のうち、米国製が占める割合は日本で95%、オーストラリアと英国で85%、サウジアラビアで77%に上る。しかし、米政府の対外有償軍事援助制度は納期の遅延やコスト高騰の原因として度々非難の的となっており、さらに米国側による防衛技術の厳格な管理体制も相まって関係当局やアナリストの間では長らく不満の種となってきた”

出典:Philippine Navy
“安全保障政策の立案に携わる与党幹部によれば、今回の制度見直しの目的の一つはアジアにおいて「米国に依存しない独自の防衛サプライチェーン」を構築することにあるという。ここで一つのモデルケースとなるのが隣国の韓国だ。SIPRIのデータが示す通り、韓国はこの5年間で着実な成長を遂げ、現在ではポーランドやフィリピンにとって最大の防衛装備品供給国となっている。世界第4位の経済大国である日本の潜在能力は韓国を上回る可能性を秘めている”
“SIPRIによる2024年の主要防衛企業の収益分析によれば、これまで厳格な輸出制限が課されていたにもかかわらず、日本の防衛産業の規模はすでに韓国、ドイツ、イタリア、イスラエルと肩を並べており、インドの約2倍に達している。ただし米国の防衛産業規模はそのさらに25倍に相当する。東京を拠点とする防衛産業コンサルティング企業=Nexus Pacificのアンドリュー・コック氏は「率直に言えば日本は第二次世界大戦の結果、いわばタイムアウト席に座らされていたような状態だった。それでも彼らが国際政治の中心に戻ってくるのは時間の問題だった」という”

出典:航空自衛隊
Reutersは2023年3月「日本は軍備拡張のため防衛産業界の活性化を望んでいるが、防衛産業に関わる主要な日本企業は防衛部門の投資拡大に消極的だ」「日本政府は縮小が続く防衛産業界を活性化させるため『営業利益を補填する仕組み』や『生産ラインの国有化』などを盛り込んだ法案を準備しているものの、日本企業が本当に心配しているのは『民需部門に対するイメージの毀損』と『5年後も安定した受注が確保できるのか保証がない』という点だ」「元防衛大臣政務官を務めた佐藤正久議員は『これまで防衛省は防衛産業企業の協力を当たり前のものだと思っていた』と指摘した」と報じていた。
“日本にはロッキード・マーティンやBAEのような安全保障分野に特化した企業はなく、三菱重工業もダイキンもスバルも売上の大半は防衛部門ではなく民需部門が稼ぎ出しており、佐藤議員はロイターの取材に「日本の経営者は収益性の高い民需部門に注力する株主に対し『愛国的な義務』という理由だけで防衛部門の事業を正当化できなくなってきた」と述べ、防衛部門への投資拡大は国内の反戦感情、中国における戦時中の記憶と怒りを買うことに利用され「顧客を遠ざける要因になる」と恐れているのだ”

出典:J/FPS-3警戒監視レーダー 防衛省
“外交的な緊張にも関わらず中国は日本にとって最大の貿易相手で、多くの日本企業にとって主要な製造拠点であり、匿名を希望したある日本の防衛産業企業は「(防衛部門の話題は)風評被害を招くのが最も心配されるリスクで、中国の顧客はこの話題が出ると不快感を示したことがある」と述べている”
“日本政府は武器輸出や共同開発を厳しく制限してきた方針を2014年に変更して「防衛装備移転三原則」を閣議決定したが、あるアナリストは「企業の臆病さと官僚の過剰な警戒心から日本は防衛産業の活性化に失敗した」と指摘し、フィリピンへの防衛装備品輸出に唯一成功した三菱電機だけは防衛費増額や防衛産業界を活性化する提案を歓迎し「日本の安全保障に貢献することが有益だと信じている」と語ったが「最大の懸念は43兆5,000億円の支出が終わる5年後で、防衛部門に投資して生産設備や雇用を増やしても(5年後に国防支出が削減されれば)財務リスクになる」と述べていた”

出典:海上自衛隊 潜水艦艦隊
日本の武器輸出を取り巻く制度と環境は3年前と大きく様変わりしようとしており、少なくとも三菱電機と東芝は武器輸出に乗り出す見込みだが、Reutersが挙げているモデルケース=韓国のように武器輸出を武器ビジネスとして成立させられるかが最大の課題だ。
5類型を撤廃することで制度的な輸出ハードルを引き下げることが出来ても「輸出を前提としたパッケージ化」を行わないと輸出市場での競争力が伴わず、この辺りの課題をどのように克服していくのか注目される。
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※アイキャッチ画像の出典:防衛省 海上自衛隊





















5類型の撤廃案、自民党の総務会を通ったので決定ですね。
自民=公明の旧連立政権、公明党がいろいろ止めてたという噂はありましたが、事実だったのでしょうね。
1999年からの連立どれだけ遅らせたのか分かりませんが、これから失敗覚悟でどんどんチャレンジして、武器輸出拡大していく事を期待しています。
民生部門での利益追求と、防衛部門の輸出促進・規模拡大を両立させるなら、各企業の防衛部門をスピンオフして統合し、巨大な防衛専門会社を設立させてしまうのも一つの案でしょうかね?(思考実験としては面白い)
>「ラトビア企業が2023年に軍用車両向けエンジンをトヨタの子会社から購入しようと試みたものの拒否された」
一応軍用に関しては世界的な環境規制対象外(適用除外): 軍用車両や消防車、その他の特殊車両。
特に何かしらの規制に引っ掛る訳でもないので、恐らくだがエンジンだけ都合良く供給なんて出来ませんって話なんだろうな。あんまりディーゼルエンジン供給体制に余裕があるとは思えない。まだランクルをまるっと寄越せとかならすんなり行ったかも。
次期軽装甲機動車にランクルベースの車両が大量に調達されるならエンジンライン拡張とかに政府無資金を投じたりして状況は変る可能性はあるでしょうね。
投稿先間違えちゃった
課題は山積みだろうが、取りあえずスタートを切れたことを喜びたい
実際の輸出時のオフセットなんかは経験を積みながらやってくしかないと思うし、なんだかんだ敗戦国から輸出大国になれた日本企業なら上手くやってくれると思う
東南アジアに日本製の兵器が広まれば連携も取りやすいし、とにかく応援してる
防衛産業に関わっていると知ると、冷たい目や訝しむ人は多い。従業員を言われない誹謗中傷から守るマナーの改善から必要ですね
もっとも防衛産業をビジネスにするなら、外交のやり方も変えるべきだね、利害調整の方針も変わるだろう
ラトビアのトヨタ子会社にエンジン購入打診して断られたってのは時期的にしゃーないって思う。
軍用車両の種類によるだろうけど、兵員輸送の乗用車やトラックか装甲兵員輸送車用のディーゼルエンジンと予想して言うけど、そのクラスのトヨタ系のエンジンってトヨタ日野のディーゼル不正の影響が残ってた時期と重なるから外にまとまった数出せる状況に無かったのでは?
完成品はともかく
素材、装置及び部品単位なら勝負できますかね
>私たちはそういったことを心配するよりも自分たちの役割を果たすこと、防衛事業を成長させることに集中している
こういうマインドが本当にありがたい
F-2の時のような技術を持つ小.零細企業が、経営面からの防衛部門からの撤退や倒産迄多くあったと聞きましたので、軍需部門で長期的展開をするのならそれらの経営面で弱い企業を買収してサプライズチエーンを広げ過ぎない事をしてほしいかなと願望。
中SAMの1個中隊120億円なり170億円で見通し線外処理能力ってのは本当なんだろうか?、ザックリ1億ドル?
その調子で今度は放出品を復活させて欲しい
4月17日にブリュッセルで民間主導の日本とEUの防衛産業対話の初会合がおこなわれるみたいですね。
日本側は、SUBARUやNECなど20社以上、欧州側もサーブなど20社弱が参加予定
日本からは経済産業副大臣も参加する予定で国もバックパックするようです。
5類型撤廃が決まってからいっきに防衛装備品移転について動きだした感ありますね。(準備自体は前から進めてたようですが)名前の上がってる企業見ると10式戦車、P-1、C-2等物自体を売るというよりは、レーダー、センサー、ミサイル技術等の協力がメインになる感じでしょうか。
なにより一番懸念していた企業側のマインドが変わってきてるのは朗報ですね。
後は政府が防衛装備移転基本計画を策定して、2030年代までに移転取引額を幾らまで増やすという具体的な方針を示して欲しいです。
それが日本の防衛産業全体の推進剤になると思います。
訂正
バックパック≠バックアップ
変われるんですねこの国も
テレビなんか顕著ですけど、家電ブランド売り渡し続けてるのだから、今さら中国の不買運動なんて気にするほど残弾残ってないのでは・・・(偏見)
防衛産業の発展に期待したい。トランプ政権は良くも悪くも転機だと思います。
期待されるのは良いことで、ぜひとも頑張るべきですが。
実際に儲けが出るには、10年ぐらいはかかる覚悟が必要ですね。
それまでは投資ばかりで赤字覚悟で続けなくてはなりません。
問題は国家財政ですが、増税は不可避なんでしょうね。
日本も増税してその金を軍備に注ぐ事になるわけですが、増税によって私の財布が軽くなる事は避けられません。そこで国策に売り無しの格言に従って三菱電機の株を買って我が家の財政リスクにヘッジしたいと思います
大した事ではないですが、佐藤正久氏は昨年落選し、
もはや議員ではありません。
前参議院議員というのが適切でしょう