米メディアのワシントンポスト紙は21日、ドイツはNATOの弱点でありバイデン大統領の評価は正しいと興味深い主張を展開している。
参考:Germany has become a weak link in NATO’s line of defense
プーチン大統領はウクライナ侵攻を実行しても「規模さえ調整すればNATOの足並みを狂わせられる=制裁で被るダメージを最小化できる」と気づいている
バイデン大統領は19日の記者会見で「NATOには何が起こるのかによって各国が何をするのかに違いがある」と認めてしまい、これはロシアのウクライナ侵攻を抑止する努力を損なう重大な「外交的失策」だったが、ある国に関してバイデン大統領の評価は正しいとワシントンポスト紙は述べている。

出典:DoD News photo by EJ Hersom
勿論、ある国とはロシアのウクライナ侵攻を抑止する西側の制裁で役に立ちそうもないドイツのことだ。
今のところ米国と英国はジャベリンやスティンガーといった武器許与でウクライナの防衛力強化を支援しているが、両国とも国境沿いに集結するロシア軍が軍事行動に出た際に直接的な武力介入を行うことを約束しておらず経済制裁で対応するつもりだが、プーチン大統領のウクライナ侵攻を思いとどまらせるにはロシアに十分痛みが伴う制裁でなければ意味がない。
ロシアの主要な輸出国の中で中国の次に大きなウェイトを占めているのがドイツで、特にエネルギー資源の大部分をロシアに依存していることは今週ロシアを訪問したドイツのベーアボック外相も認めており、世界的なエネルギー危機の中で原子力発電を段階的に廃止しているドイツの天然ガス貯蔵量は危険なほど少量なため、仮にウクライナ侵攻が発生して欧米が前例のない規模の経済制裁を発動させたとしてもドイツがロシアとの取引を停止させなければウクライナ侵攻を思いとどまらせるだけの痛みプーチン大統領にもたらすことはないだろう。

出典:Steffen Hebestreit
プーチン大統領は天然ガスの供給がドイツの生命線であることを十分理解しており、欧州向けのガス供給量を減らすことで価格上昇(2020年12月のガス価格は昨年12月と比較して69%上昇)を誘発させ欧州の中で最も高額な電気使用料をドイツに支払わせショルツ政権に政治的な圧力を加えている。
このことはメルケル政権よりも集団安全保障の重荷を背負うことを望んでいないショルツ政権の政治的判断に重要な影響を及ぼし「ウクライナ侵攻に対する制裁発動時にノルドストリームの運用を停止する」と明確に答えることを躊躇させ、ワシントンポスト紙は「欧米で対ロシア制裁の足並みを揃えたい米国との間に緊張間をもたらし同盟に亀裂が入っている」と主張しているのが非常に興味深い。
ブリンケン国務長官はエネルギー危機に直面するドイツを救うため「タンカーを使用して液化天然ガス(LNG)の供給量を増やす方法」を提供するのではないかという噂についてもワシントンポスト紙は「欧州の港湾施設が受け入れ可能なLNGの処理能力は83,000万立方メートルで、170,000万立方メートルの天然ガスを供給しているロシア産ガスの代わりにはならない」と述べており、バイデン大統領が「NATOには何が起こるのかによって各国が何をするのかに違いがある」と評価したのは間違いではないが「世界に向けて発信する必要もなかった」とも付け加えている。

出典:President of Russia
つまりプーチン大統領はウクライナ侵攻を実行しても「規模さえ調整すればNATOの足並みを狂わせられる=制裁で被るダメージを最小化できる」と気づいており、八方塞がりのバイデン大統領はつい「プーチンがウクライナ侵略を小規模に留めるなら壊滅的な制裁を免れることができる」と本音を漏らしてしまったという意味だ。
ウクライナ侵攻が発生するとすればドイツがノルドストリームの運用停止など大規模な対ロシア制裁に踏み切れない規模で行われる可能性が高く、ドイツはNATOの弱点だとワシントンポスト紙は指摘して記事を締めくくっており中々興味深い指摘といえるだろう。
関連記事:英メディア、バイデンの失言はウクライナ問題に対する本音が漏れただけ
※アイキャッチ画像の出典:Jens Stoltenberg
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記事の論旨に間違いは無いんだが、ではアメリカがドイツがロシアに依存するエネルギーを代替え保障してくれるのか?
我が国の中東政策がイスラエルにもアラブにも偏らないのは同じ原理なんだけど、そんなにアメリカだけが正しいのかね?
口先だけの正義は迷惑よ、ウクライナを本気で助ける気のないアメリカが言うか
アメリカはドイツのロシアへのガス・石油依存について再三エネルギー安全保障上の問題だと指摘して来ました。
早い話が、脱炭素を遅らせ火力発電を維持し、何よりも脱原発を諦めるかせめて遅らせろ、という事だったのでしょう。
これらは流石にアメリカが正しいでしょうし、それを拒否したのはドイツ、取り分けメルケル政権です。
無論、アメリカに従わずとも軍備の強化、エネルギー供給冗長化等を行えば良かったのですが、それも怠ったのはドイツ側です。
その上、NATO拡大も行い緩衝国を減らす事も行いました。「他国の主権を尊重するドイツ」「環境先進国ドイツ」という自己陶酔の末の西側崩壊をドイツが招いたのですよ。
アメリカが尻拭いするにも限界があるでしょう。
おそらくアメリカの本音では、ウクライナは諦めたのでしょう。
色々な見方がありますよね。
>アメリカはドイツのロシアへのガス・石油依存について再三エネルギー安全保障上の問題だと指摘して来ました。
>アメリカが尻拭いするにも限界があるでしょう。
ここは、米民主党がロシアと敵対しなければ、エネルギー安全保障の問題など起きなかった。
自分がドイツ人なら、欧州を戦場にしといて、どの口が言ってんだよ。って思いますけど。
>ここは、米民主党がロシアと敵対しなければ、エネルギー安全保障の問題など起きなかった。
米国(特に民主党)がロシアと敵対するのは私も望ましく無いと考えています。
しかし、それが無かったとしてもロシアの脅威が無くなるとは必ずしも思いません。
ウクライナは飽くまで「欧露」の緩衝地域の一カ国であり、「米露」の緩衝地域は欧州と日韓でしょう。
ドイツは欧露の緩衝地域を欧州経済圏に組込みながらも軍事支出を怠ったわけです。
エネルギーも然り。ロシアに頼りつつ原発や火力発電を残し、本記事のガス輸入設備に余裕を持たせる等の対策は出来たのです。
それらの費用を負担せず、経済利益や国際地位のみを享受しようとしたのが失態でしょう。
義務を果たさず利益を追求したのです。
ウクライナはオバマ政権が残した米ロ対決の一部でしょう。
欧州の(ガス)エネルギー供給問題も、私の見解は、シリア内戦・トルコクーデター未遂事件など、オバマ政権が起こした失政のツケが回ってきていると思っています。
欧州のガス供給をロシア産からイラク産・イラン産に変えて、ロシアを弱体化させようとしたのだと思いますが、上記のような失策により、中東での影響力をアメリカは失ってしまった。
その結果、逆に影響力を高めたロシアが、欧州向けガス供給の主導権を握ったのです。
その後の、トランプ政権によるイランへの経済制裁や、アメリカ産シェールガスの減速もあり、アメリカの思い描いたようにならなかった。
ドイツにも非があるでしょうが、だからといって、アメリカが正しいとは全く思いません。
おいおい米国メディアさんよ、記事は正確に書けよ
「ドイツとハンガリーとトルコとバイデンがNATOの弱点」だろ
キングボンビーやんw
「パリは燃えているか」が流れてくる、気がします。
覚悟を示したプーチンに対して、火遊びしていた欧米は皆ヘタれたんですよね。
プーチンにとって最上は、軍事侵攻せずにウクライナのNATO加盟が阻止できることでしょう。
ついでに言うと、彼の目線で考えれば今回の侵攻でウクライナの併合狙ってるなんてとても考えられない。
前線が移動するだけで軍事的負担は変わらない。対ポーランドのシフトを組まなきゃならなくなる。
ウクライナは貧しいのだけども、1.3億人のロシアにに4600万人の選挙権を持ったウクライナが加われば二等国民扱いはできない。とすると手がかかるので財政の重荷にしかならない。要は取ったってぜんぜん美味しくない。
クリミア併合ですら、年金の支給開始年齢が上がって国民の不満が鬱積しています。
最もいいのは、面倒を見る必要はないけど力のない緩衝国として、ウクライナがそこに存在していること。
領土欲で侵攻とか、プーチンはリアリストなんでそんな判断はしないでしょう。
>バイデン大統領が「NATOには何が起こるのかによって各国が何をするのかに違いがある」と評価したのは間違いではないが「世界に向けて発信する必要もなかった」とも付け加えている。
ここは爆笑ポイントでした。w
管理人さん
記事と全く関係ないコメントは、問答無用の削除でいいんじゃないですかね。
ああ、削除済みでしたw
ドイツ人は正しい事を知っている、他の国に環境について啓蒙してやるみたいな勢いですからね笑
こうなることは当然かと…笑
まぁ環境が絶対正義の今のドイツには馬の耳に念仏だと思いますけどね
散々敵国になりうるロシアにエネルギー頼るのやめろって言われてたのに他のエネルギー源もつかうんじゃなくてロシアからの輸入一辺倒にしたドイツがクソなのはどうしようもないよ。
侵攻時の欧米諸国の対応に関連して、日本も経済制裁に同調をという論を聞く機会が増えたように思います。
19年時点での日露間の貿易は日本側の約1兆円赤字で、これはLNGの調達で日本も露に依存しているためです。欧米と足並みを揃えることの意義は否定しませんが、ロシア産LNG購入はオイルショック時代の教訓として液化技術や輸送インフラレベルから日本側が投資して積み上げてきたものであり(湾岸諸国が不安定な現在では特に)欧米との足並みを揃えるという一言だけで停止させていいものではないと個人的には思います。特に国内の原発再稼働目処も立たずにエネルギー資源の確保が難しくなっている現状でロシア産ガスの供給が止まると、結局国民生活を直撃するのは明らかです。
とはいえ露の行為を座視することは後々を考えても日本のためにならないでしょう。そこで経済制裁の代わりに軍事面での対抗措置を取ってはどうかと思っています。現在折よく敵基地攻撃能力の範囲検討が政権と防衛省によって進められており、また間のいいことに米軍は新型準中距離弾道ミサイルLRHW(射程2,700km)の開発最終段階にあり、さらに西太平洋地域の同盟国で配備を受け入れてくれる国を探しています。配備先は九州が有力と言われていますが、例えばこれを米軍ではなく自衛隊も配備したり、あるいはもう少し北側でも分散配備するようにしたら、ロシアにとっては大きな打撃です(九州からでもウラジオやマガダンやカムチャツキーなど沿海州主要都市は狙えるが、三沢の場合ヤクーツクなどの内陸部都市まで=ロシア極東管区軍の戦区全てが射程に入る)。もちろんそんなことせずとも在日米軍へのLRHW配備の名目をロシアのせいにしておけば、それで狙われる中国とロシアの間に楔が入ります。
敵基地攻撃能力の議論を結論するのはまだ時間がかかるでしょうが、中間報告としてこれらの話を出すにはいい時期だと思いますよ。どのみちいつかは言わないといけない話ですし。
エネルギー政策のツケがこうして軍事的オプションに回ってくるのだから本当に大切ですね。日本は京都議定書や脱炭素脱原油なんかに取り組むべきではなかった
原油の中東複数カ国依存より、脱原油した先にあるレアメタルの中国一国依存のほうが遥かにヤバイ
脱原油は素晴らしい脱原発は素晴らしいそんな上辺だけの雰囲気でエネルギー政策を進めているように見える
石油を使うのは発電と車だけではないというのを、知らない奴が考えたんだろうなあ、とは感じますね。あと気温を40〜50年前に留めたところで、得をするのは北半球の人間(主に欧州)なので、地球のためじゃなくて人間のためなんですよね。温室効果ガスの削減って。
いや待てよ。西側諸国に石油製品であるアスファルトを使用させないことで、装輪式の兵器に制限をかける中国の計略なのでは?(陰謀論)
主敵は中国とか言い訳してるけどお前ら中国ともやる気ないよねドイツ?人の足しか引っ張らないコイツらと組んでたから日本の国連改革は頓挫したのでしょう
まあ、でしょうねとしか。
もはやドイツには金と環境イデオロギーしかない。
日本は反面教師として、今のドイツの惨状を目に焼き付けとかないと、小泉とかが返り咲くような事態になったら同じ轍踏むことになるよ。