デル・トロ米海軍長官が命じた調査によって「コロンビア級原潜の完成が12ヶ月~16ヶ月ほど遅れる」と判明、議会の公聴会で「ノースロップ・グラマンが製造しているタービン発電機がコロンビア級の納入遅延に大きな影響を与えた」と明かした。
参考:Northrop Grumman-made part ‘significant’ contributor to sub delays: Navy secretary
デル・トロ米海軍長官は追加の「包括的な造船計画の見直し」を命じたため、艦艇調達スケジュールに潜む新たな課題や問題が出てくるかもしれない
デル・トロ米海軍長官は今年1月「パンデミック後の状況が造船業界とサプライヤーに影響を及ぼし続けており、これがコンステレーション級フリゲートやコロンビア級原潜に与える影響を懸念している」と表明し、包括的な造船計画の見直しを命じていたが、この調査によってコンステレーション級の1番艦完成が最大3年、コロンビア級の1番艦完成が12ヶ月~16ヶ月ほど遅れる可能性があると判明した。
海軍はコロンビア級の建造スケジュール遅延について「船体全体の工事と各モジュールの製造に関係している」としか説明していなかったが、デル・トロ米海軍長官は議会の公聴会で「ノースロップ・グラマンが製造しているタービン発電機の納入が遅れている」「これがコロンビア級の遅延に大きな影響を与えた」と明かし、コロンビア級が直面している課題の一部(パンデミックの影響が残る資材調達など)は全ての造船所に共通する問題だと付け加えている。
さらにデル・トロ米海軍長官は「造船所で働く労働者の確保と維持も重大な課題だ」「特定の造船所では労働者の定着率が極端に低く、海軍はその造船所と協力して追加ボーナスの支給による定着率改善を試みている」と指摘したが、特定の造船所とはコンステレーション級フリゲートを建造するFincantieri Marinette Marine(FMM)のことだ。
FMMは沿海域戦闘艦の艤装工事、サウジアラビア向けの多目的水上艦(フリーダム級の改良版)、コンステレーション級建造を同時並行で進めているため、コンステレーション級プログラムの責任者も「FMMはブルーカラーとホワイトカラーの両方で数百人規模の労働者不足に直面している」と、FMMも「我々は特に溶接工の雇用に苦労している」「産業界は特定の技術を持つ労働者を奪い合っている」「我々はブルーカラーの平均賃金を比較して十分な給与を支払うことで状況を打開したいと考えている」と述べている。
要するに「需要の高い特定技術を持つ労働者」は「より高い賃金を提示する企業」にどんどん移って行くため、FMMは新規雇用と定着率の改善を同時に進めなければならず、海軍とFMMはブルーカラーに「2024年1月~12月までFMMで働き続ければ5,000ドルを支給する」「コンステレーション級の建造から進水まで働き続けた労働者には追加で5,000ドルを支給する」と提示して定着率の改善を図っているのだが、設計変更の問題も加わってコンステレーション級1番艦の完成は最大3年遅れる可能性があるらしい。
因みにデル・トロ米海軍長官は追加の「包括的な造船計画の見直し」を命じたため、艦艇調達スケジュールに潜む新たな課題や問題が出てくるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy illustration/released
潜水艦は、搭載兵器・潜航深度・潜航時間に注目が集まりがちですが。
実体は、発電機・プロペラ・ベアリング・バルブなど、製造業の基礎的な製品が、高いレベルで求められますね。
前も言ったけどだから民生工業と軍需工業は切り離すことができないのに自由貿易体制の下でも軍需工業だけを切り離して維持できると思い込んだのが間違い
そもそも新古典派経済学者は自由貿易が行われて誰もが理論上自分の経済厚生を最大化させてる状態になればどこの国も自分からそれを壊そうとはしないから戦争はなくなると本気で信じてるはっきり言って馬鹿だし
そんなのの言う事を信じてたらおかしくもなる
フリードリヒ・リストやアルバート・ハーシュマンは理論経済学者からは馬鹿にされてきたけどアメリカ人は今からでも読んだほうが良いわ
まあ、もう手遅れでしょうけどね
でもマルコ・ルビオみたいにそれをはっきり認識して今までの共和党でも民主党でもない主張する人が出てきたのは少しは希望が持てるかもね
仰る通り、原点に立ち返るべきでしょうね。
ロシアの軍需生産・兵器の分析の中で、工作機械・民生用の各種部品が使われてる事を指摘している事があります。
兵器も、『ものづくり』ですから、基本にに立ち返って欲しいですね。
本当かに大丈夫か?
こうしてる間にも中国は着々と船造ってるぞ
アメリカより圧倒的に安くね
資材調達やパンデミックによる影響は仕方ない面もあるが、溶接工はなあ。
(アメリカの溶接工の各種資格の取得方法が分からないから日本での話を基準にしちゃうけど)資格のいくつかを1ヶ月くらいの短期間で取れたとしても、現場ですぐには馴れないよな。ホームレス対策とかの名目で人を集めたらどうかと素人並感で思ったが「英語ワカリマセン」の人も多いだろうしな。
韓国になんとかしてもらおうとしてますが、韓国人は北&中との対立嫌がって野党が勝ったっぽいので
早速失敗してるのがもはやコント
デル・トロ米海軍長官なんだからイェーガー建造してるんですよ (違)
米軍での原子力ターボ・エレクトリック方式採用はコロンビア級が初めてですが、ノースロップ・グラマンにPWR用タービン発電機開発のノウハウがあるのかよくわからないですね。
原子力艦船を建造できるニューポート・ニューズを一時期所有していたとはいえ、原子炉はウェスティングハウスやGE製ですし、コロンビア級に搭載予定のS1B原子炉はベクテルですが、蒸気発生器はどこが担当しているのか、など調べてみないとわからないことが多いです。
記事を眺めていると。
他所の国のことですが。
餅は餅屋(人事管理も含めて)かな、などと思います。
コロンビア級SSBNが原子力ターボエレクトリック推進とは気がついていませんでした。
タリビーとグレナード・P・リプスコムで懲りたと思っていたのですが、SSBNなら
”アリ” なのでしょうか。
電車なんかを追っていると分かりますが、その後でパワーエレクトロニクス技術が相当進歩してますからね。今ならSiCなんかでMWクラスの電力も捌けるのではないでしょうか?
少しWikipediaとかで調べてみましたが、
グレナード・P・リプスコム:S5W原子炉 78 MWth
オハイオ級:S8G原子炉:220 MWth (タービン出力 25 MW)
バージニア級:S9G原子炉:210 MWth (タービン出力 30 MW)
で、コロンビア級に使うS1B原子炉の熱出力は不明ですが、
ニミッツ級空母:A4W原子炉:550 MWth
フォード級空母のA1B原子炉: 700 MWth
と25%増し性能なのでS1BはS8G/S9Gより熱出力は上がるものと推測されます。
バージニア級でもグレナード・P・リプスコムの熱出力の約3倍はあることと、熱出力の向上でオハイオ級やバージニア級と同等の推力が確保できそうな感じです。
ただ、肝心の発電機がどこでトラブル起こしてるのかわからないので、目標達成できるのか怪しいところではありますが。
お得意の3Dプリンタでジャストインタイムを実現していると思っていたのですが、人が介在する部分の解決にはまったく寄与してないんですね。
艦艇みたいな巨大な構造を自動化することはやればできるでしょうけど、投資回収に合わなそうな印象なので、この分野はまだまだ労働者が汗を流すしかないということなのでしょう。
3Dプリンタは複雑な構造の造形には強いですが、機械的な強度が必要な用途には向いていませんので、タービンや発電機という多大な応力が掛かり続ける部分には使ってないのではないかと思います
フランス原潜は一貫してターボエレクトリック推進を採用し、戦前も客船にターボエレクトリックを使ってましたね(ノルマンディとか)。アメリカはターボエレクトリックが苦手で、フランスはギアードタービンが不得手なんだろうか。
シュフラン級を通常動力化したアタック級が計画された時、馬鹿げてるという意見が多くあったけど、モーターで推進器を回す点は共通なので原子力発電機をディーゼル発電機+バッテリーに換装したと見ることも出来、ギアードタービンの原潜に比べれば難易度は低いでしょう。
穿った見方をすれば、通常潜との共通性を増やし輸出用通常潜を開発することもターボエレクトリック採用理由の一つかも、と思えてしまう。原潜と空母で原子炉を流用してもいるので。
”アメリカはターボエレクトリックが苦手”。
そうでもないですよ。
戦前の主力艦、ニューメキシコ級戦艦、テネシー級戦艦、コロラド級戦艦、
レキシントン級航空母艦、はいずれもターボエレクトリックですし。
潜水艦では、発電用と推進用で電動機を分けて使っています。
たった5000ドルがボーナス足り得る辺り、現場の待遇がマジで悪いのでは。普通引き抜き掛けるなら、年棒1.5倍程度は提示するよね。あの物価なのに年棒5万ドルとして、それでも1割にしかならない。コノザマだとアメリカの工業力の凋落は止まらんぞ…