ウクライナ戦況

バフムートの戦い、守勢に転じたウクライナ軍は北側と南側で後退

シルスキー大将は再三「バフムート方面の敵が防御から積極的な作戦に移行した」と主張、11月24日までに登場した視覚的証拠も「ロシア軍が失ったポジションを取り戻そうとしている」と裏付けており、ウクライナ軍は北と南で奪還した土地を失い始めている。

もしロシア軍にクリシェイフカ北の高台陣地を奪われると高低差に基づく優位性が逆転する

クピャンスク方面からバフムート方面までの作戦地域を担当する東部司令部のシルスキー大将は10月末「戦力を大幅に強化したバフムート方面の敵が防御から積極的な作戦に移行した」と、ウクライナ軍戦略広報局のフィチョ氏も12日「新たな戦力を投入したロシア軍は守勢を止めて攻勢を再開した。バフムート南部の状況悪化は先週から始まっていた」と、シルスキー大将は19日「バフムート方面のロシア軍がより積極的になっている。以前失ったポジションを取り戻そうしている」と言及。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

10月末から11月24日までに登場した視覚的証拠も「ロシア軍が失ったポジションを取り戻そうとしている」と裏付けており、ウクライナ軍はクリシェイフカの北や東の線路沿いで確保した土地を失い、ロシア軍は線路の内側と高台陣地に向けてじりじりと前進、ウクライナ軍は一時的にアンドリーフカから線路を越えて支配地域を拡大したものの、ロシア軍の反撃でアンドリーフカの支配を失った可能性がある。

ロシア軍がアンドリーフカの郊外に到達したことを示す視覚的証拠=は「撮影日が古い可能性がある」という指摘もあるが、ウクライナ軍がアンドリーフカ郊外の線路を横断するロシア軍を攻撃する様子=が登場したため、ウクライナ軍がアンドリーフカの線路沿いまで押し戻されたのは確実だ。

ウクライナ軍はバフムート北のベルヒフカ方向でも「1km以上押し戻された可能性=DEEP STATEとRYBARがベルヒフカ方向の土地を失った(獲得した)と報告」が濃厚で、アウディーイウカ方面ほど大規模な攻勢ではないものの、ロシア軍はバフムートの北側で失ったポジションをほぼ取り戻し、南側でもクリシェイフカの高台陣地奪還を目指しているらしい。

ロシア軍が直ぐに決定的な成功(クリシェイフカの奪還やベルヒフカ方向からボダニフカへの突破など)を収めると思わないが、もし高台陣地を奪われると高低差に基づく優位性が逆転するため、クリシェイフカやアンドリーフカの維持に問題が生じるだろう。

因みにアウディーイウカ軍政当局のバラバシュ長官は24日「残念ながらアウディーイウカの状況はマリンカに近づいている」と述べた。マリンカと呼ばれていた拠点は建物が完全に破壊されてしまったため「存在しない町」と呼ばれており、ロシア軍の激しい砲撃や空爆で「アウディーイウカの破壊が進んでいる」という意味だ。

この発言を受けてウクライナメディアは「アウディーイウカはバフムートよりも状況が悪い」と報じている。

関連記事:バフムートの戦い、ロシア軍がベルヒフカ方向で1km以上も前進か
関連記事:ウクライナ軍、バフムート方面の状況悪化は先週から始まっていた
関連記事:バフムート方面でもロシア軍が反撃を開始、戦場の主導権交代が濃厚

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • 理想はこの翼では届かない
    • 2023年 11月 25日

    部隊配置図を見ても、ロシア軍側が大幅に増強したようには見えないのが謎です
    勿論、部隊配置図は各種観測からの推測による図なので正確なものでは無いのは承知していますが「新たな戦力を投入したロシア軍」というのが具体的にどれに対応するのかがわかりませんでした
    部隊の追加ではなく、欠員の補充という形なのかもしれません

    単にウクライナ軍側が弾薬不足などで戦力低下しているだけのような…?

    17
      • NHG
      • 2023年 11月 26日

      部隊配置を変えたというよりは砲弾や装甲車両などの物的資源を最優先で回してる感じでは
      それこそ一つの都市を更地にするほどの砲撃が行われてみたいだし、戦車や装甲車も湯水のごとく投入してるわけだし
      ウクライナ側の砲弾不足と重なったのが運が悪いというか、こうなるのを待っていたロシア軍の読みがかったのかはわからないけどウクライナはこらえる時期ですね

      1
    • 拓也さん
    • 2023年 11月 25日

    マリンカの様相に絶句した。 ステポヴェやロボティネのように小さな集落が全壊するのは見たことがあるが、ここまで大きな居住地が文字通り更地になるのか…。 アウディーイウカも決断一つ間違えると何も残らなくなってしまうかもしれない。

    22
    • ミカ
    • 2023年 11月 25日

    クリシチウカの要塞もウクライナが取り戻した時は市内奪還の足掛かりになると言われてたが、破壊が進みすぎて兵士が定着することが困難になってるのだろう。
    激しい砲撃で建物も森も無くなり塹壕も埋まり新しい塹壕を掘ることもできないくらい砲撃されて。

    8
    • とある経営者
    • 2023年 11月 25日

    ウクライナの総崩れが明らかになっています。ですが主要メディアは全く違うように報じています。なぜですか?

    22
      • ジブリ展
      • 2023年 11月 25日

      総崩れ?ウ軍がいくつかの戦場で押し込まれているのは事実だろうけど、こっから全戦線でウ軍の潰走が始まるようなことは無いだろうし、露軍も無停止進撃でそれを追っかけるような元気は無いだろうね、、、
      これがあと何シーズンか続けば総崩れもあるとは思うが、現時点では適切でないと思うよ。

      41
        •  
        • 2023年 11月 25日

        これがロシア軍だったら「総崩れ」と報道されてただろうけどな

        37
          • MarkⅡ
          • 2023年 11月 25日

          特段そういう予兆がなくても毎週「ロシア軍壊滅か」「ロシア崩壊か」「分裂の危機」言ってる人たちがいるぐらいですからねw

          43
        • 歴史と貧困
        • 2023年 11月 25日

        そうですね。ロシア軍に押し込まれての総崩れのリスクは今はまだ非常に低く、むしろ政府首脳と軍司令部の亀裂のほうが問題になっている印象です。
        厳冬期の長期戦は既に避けられない中で、その後をどうするのかが全く提示されておらず、大統領と総司令官の方針が異なっている。【何を目指すかで反目している】状況では、前線の兵士の士気も上がらないでしょう。

        22
        • 名無し
        • 2023年 11月 25日

        各方面で宇軍の状況が悪化していおり、露軍が僅かながらも前進を続けていることに間違いはないですが、これをもってウクライナの敗北とまでいくと気が早すぎるとは思いますね。
        砲弾を借り受け砲身の返却(売却)を要請し、保管していた戦車を引っ張りだして、黒海艦隊は奥へと下がった。
        現状で、なお健在なのは航空宇宙軍だけではないかと思える状態でもあるのが露軍ですし。
        露軍が補強されて圧が強まったというよりは、他の方も指摘されていますが宇軍内部の状況が悪化し続けているというほうが正しいような気はします。

        開戦当初ですら全土制圧は無理であろうと言われていたわけですし、2年とは言え戦力を大きく減衰させた露軍に大規模な追撃戦を行う余力があるとは想像し難いです。
        ただ、現状の線でも固定できれば併合領土を拡張したという点においては、ロシアの目的の一部は達成されてしまうわけですが…

        12
          • MarkⅡ
          • 2023年 11月 25日

          支援が無くなれば半年も立たないうちにウクライナは敗北し全土掌握されるで
          軍事だけでなく経済も他国からの支援で成り立ってる訳で、常に綱渡りの状態である事はわすれちゃダメでしょ
          ゼレンスキーはハッキリ言ってアホだ、支援だってウクライナの為じゃなくてロシアを削るためにやってる部分が大きい事を完全に忘れてる、クリミアまで奪還とかしょうもない夢追ってないで早めに停戦の道筋つけろと言いたい

          もうすでに現状維持だけでいっぱいっぱいになりつつある、今のうちに講和しちまった方がいい、支援予定のF-16もM1戦車も数が少なすぎて話にならん

          37
      • 拓也さん
      • 2023年 11月 25日

      バルバロッサ作戦とバグラチオン作戦の開始日…。 国の命運が決まりますね。 でも1944年3月のウクライナを見ると大攻勢な攻勢もありえなくはないです。 最もそれは両者の均衡が崩れ落ちた時に生じるもの。1943年のソ連軍には泥濘期の突破はなしえなかったものですからね。 今のウクライナが1944年のドイツ軍でないことを祈ります。

      12
    • fusa
    • 2023年 11月 25日

    一方、私の生え際は前進していた

    12
      • 名無し
      • 2023年 11月 25日

      失礼ですが転進の間違いでは…

      17
        • MAT
        • 2023年 11月 25日

        後ろ向き、もしくは横向きに前進しておりますので大丈夫だと思います(なにが)

        9
      • カワウソ
      • 2023年 11月 25日

      ウクライナ戦争の様に他人事だと思ってはいかんよ
      若い事からのケアが大事、食生活、睡眠、規則正しい生活、これを怠れば明日は我が身だ(1敗)

      防衛も髪もみんながみんな意識をもって備えねばならんのだ

      23
      • ヤギ
      • 2023年 11月 25日

      向かいの人からしたら前進している。
      視点の違いだな?

      7
        • ポンポコ
        • 2023年 11月 25日

        やはり視点の違いですね!。
        それが大事ですね。

        個人的視点では、バフムト南方のクリシチュウカやアンドリフカは無意味な戦いです。バフムト攻略にもあんまり関係ないですしね。なぜ、ウクライナ軍はここに新たな攻勢戦線をつくったのかな?

        だから、今現在は、ウクライナ軍は押されていますので、ここへの兵力をクピャンシク方面やアウディーイウカ方面など重要地点に振り替えています。そのためここではロシア軍が進んでいますが、ロシア軍がクリシチュウカを奪還しても特に影響はないです。

        ちなみに、クリシチュウカも小さな集落です。ロシア軍はザボリージャ方面の拠点でもそうてすが、陣地を作るときには原則、住民を疎開させます。だから、無人です。

        3
      • メルク
      • 2023年 11月 25日

      大切なのは補給線だ!

      スキンケアで路面を整備するのだ!一刻も早く美容液の補給を!!

      5
        • ナナシー
        • 2023年 11月 25日

        砲撃でヒロシマや長崎を彷彿させるレベルまで破壊するとは。ある意味、戦略爆撃ならぬ戦略砲撃ですね。西側諸国の牽引砲は取り回し易さ や展開を重視し軽量化のツケで長時間の持続射撃が苦手になってます。使い方としても短時間バースト射撃して移動なら良いですが本格的な砲戦には向いてないし、ドクトリンとしてそんな相手には空爆するでしょう。ウクライナでの戦いでは大砲のメンテ大変みたいですね。

        2
        • 匿名
        • 2023年 11月 25日

        不毛の地に、今更何を送っても無駄じゃないですかね…

        4
      • たら
      • 2023年 11月 25日

      戦争の前線と違って、生え際戦線は一度後退したら前進はほとんどあり得ないのが残念です。

      7
      • ドローンによる偵察の結果
      • 2023年 11月 25日

      後方の山頂部には危険なほどの空白地帯が確認された模様です

      3
        • gepard
        • 2023年 11月 26日

        グレーゾーンです(迫真)

        1
      • maru
      • 2023年 11月 26日

      最前線に傭兵を部隊配置したか..

      2
    • たむごん
    • 2023年 11月 25日

    ウクライナは本土決戦の為、奪還・防衛しても(土地の面積を確保しても)、荒廃した都市復興という重い課題が残ります。
    ロシアは、緩衝地帯の確保が目的ですから、(極端な話ですが)更地にして都市占領・策源地破壊でも目的達成となります。

    本土決戦かどうかは(戦場がどの国か)、極めて重要であり、時間が経てば経つほど国内基盤が破壊されていきます。

    市街地破壊を考えれば、砲弾とミサイルでは、砲弾が比較できないほどコスパ有利になります。
    砲弾は射程数十kmが限界のため、本土決戦の攻め込まれている側(ウクライナ)が、一方的に国土が荒れ果てていくという事になります。

    8
    • Asa
    • 2023年 11月 25日

    ウクライナも気化爆弾のような範囲が広い弾薬?を大量に生産してロシア占領地域に撃ち込む。これが唯一の解決策だと思います。東部は不毛の土地、西部に移住するんです。

    1
      • kitty
      • 2023年 11月 26日

      ロシア軍支配域上空に航空機飛ばせないのにどうやって落とすんです?

      1
        • Asa
        • 2023年 11月 26日

        素人意見ですが、航空機からではなく大砲から撃ち出すタイプのもはないのでしょうか?
        無いのでしたら、火力を抑え小型化、短射程の物を作るとか..要は航空機を使わない方法で打ち込めればいいのだと思います

          • kitty
          • 2023年 11月 26日

          ありません。
          特性上、威力を上げたければ重量が嵩むので。
          かろうじて想定されているものに近いのはイスカンデルMに搭載されている弾頭でしょう。

          ただし閉所に対してはサーモバリックは抜群の殺傷力を発揮するので攻撃ヘリ搭載のミサイル・ロケット弾やグレネードランチャー・RPGなどに実装されていますが運用がまったく違います。

            • Asa
            • 2023年 11月 27日

            イスカンデルに搭載されているものならウクライナが入手するのは難しいですね。ありがとうございました。

    • ウルフリック
    • 2023年 11月 26日

    ウクライナもロストフやクルスクのような地方都市に気化爆薬やクラスター弾を積んだドローンを打ち込んで更地にしてあげれば良いんじゃないですかね?
    ロシア人にも戦禍の遅わけをしてあげれば良いんじゃないかと思いますな

    それにプーチンがキレて戦術核をウクライナに打ち込んだら、ロシアを含む旧ソ連諸国内に動揺がはしり
    本格的にロシアは政治的にご臨終となるので中々面白い展開になると思います

      • ヒュー
      • 2023年 11月 26日

      それロシア人もウクライナ人も今とは比較にならないレベルで大勢死にますよね。
      そういう願望を垂れ流しさらに面白いと言ってしまうのはさすがに人間として終わってると思いますよ。

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