ドンバスで戦うウクライナ軍兵士達はCBCの取材に「普通の歩兵は大砲の餌でしかなく我々は政府に見捨てられた」と答え、絶望的な戦いの中で死ぬしかないと述べている。
ウクライナに届けられた西側諸国の軍事援助を見たことがない、新しい武器はキーウやハルキウなどの大都市に回される
首都方面の戦いは巧みな戦術と強い意思でウクライナ軍はロシア軍を退けたが、カナダのCBCが現地取材を通じて「ウクライナ軍は圧倒的な砲兵戦力が猛威を振るう東部戦線で限界に達している」と報じており、この地域で戦闘に従事する兵士の中には「中央政府に見捨てられた」と受け止めているものも少なくなく「絶望的な戦いの中で死ぬしかない」とCBCの取材に答えている。
ロシア軍はセベロドネツクやリシチャンシクへの補給遮断を狙いバフムートに向けて前進、これを阻止するためウクライナ軍は必死に抵抗を行っている最中で、バフムートでCBCの取材に応じたウクライナ軍兵士達は「敵がどんどんバフムートに迫って我々は後退するばかりだ」と語り始めた。
この地域で1ヶ月以上も戦い続けバフムートに戻ってきたばかりだと明かした兵士達は「8年前は小銃だけで戦うことが出来たが今はもう無理だ。敵は飛行機、ヘリ、迫撃砲、戦車、大砲、ロケット砲で攻撃してくるので、ただの歩兵は何もできない。大砲や重火器の前では餌に過ぎないんだ」と述べ、ウクライナに届けられた西側諸国の軍事援助=武器についても「ここでは見かけたことがない。我々にあるのは小銃とRPGが1発か2発だけで、これで敵の戦車や装甲車とどうやって戦えばいいんだ?」と訴えている。
兵士達は「新しい武器はキーウやハルキウといった大都市にまわして、東部はロシアと8年間も戦い続けてきたのだから大丈夫だと中央政府の連中は思っているんだろう。この国は2つのカーストが存在して我々は駒に過ぎない。金を手に入れた上流階級の連中は我々に『前に進め』と命令するだけで、中央政府は『如何にウクライナが団結しているか』という美しい物語が欲しいだけ」と付け加えており、武器が届かず苦しい戦いを強いられている不満を強烈に見せつけられた格好だ。
さらにマリウポル方面からバフムートに逃れてきた海軍歩兵部隊所属の兵士達はCBCに「撤退支援のためマリウポルへ派遣された際に支給されたのは小銃、機関銃、数発のNLAWだけで、これで200輌以上のロシア軍部隊と戦うハメになった。数日間は持ちこたえることに成功したものの敵が大砲や重火器を持ち出してくると何も出来なくなり、最終的に闇夜にまぎれて徒歩で逃げるしかなった」と明かしており、CBCはウクライナ国防省に今回の記事に対するコメントを求めたが回答は得られなかったと報じている。
西側が提供した榴弾砲や自走砲の一部が東部戦線で使用されているとウクライナ側は発表しているが「両軍の装備比は1対10だ」と言われており、これまでに供給された重装備を東部戦線に全てドンバスに回せば少しは状況がマシになるかもしれない。
しかしハルキウ方面、ヘルソン方面、ザポリージャ方面にも戦端が開いているので「ドンバス方面に優先して重装備を回せ」というのは不可能な話だ。
ただドンバスで戦う兵士たちはロシア軍の主力を引き受けており、マリウポルと同じように我慢に我慢を重ねて「西側の支援を引き出す貴重な時間を稼いできた」という自負を感じていても不思議ではなく、盛んに報道される「重装備到着」が自分達のところに回ってこない=マリウポルように捨て駒にされるのではないかと危機感を募らせ、危機が去った首都周辺ではアルコール販売の制限が緩和されるなど平時の生活が戻りつつあるので「僻みにも似た憤り」を溜め込んでいるだろう。
本格的な反攻に必要な武器・弾薬の集積、動員した兵士の訓練などに時間が必要なのも理解できるが、その時間を稼いでいる末端の兵士達は参謀本部の勇ましい発表とは異なり「疲労」と「不満」で限界を迎えようとしているため、もし6月下旬頃と噂される反攻が遅れれば東部戦線で戦う兵士の士気は下がるしかなく、遅延戦術が有効だとしても「実行する人間が耐えられなくなっている」というのが現実なのかもしれない。
因みにCBCの取材に応じたウクライナ軍兵士は現在の状況について「一言で言い表すと最悪だ」と述べている。
関連記事:ロシア軍がセベロドネツク市内の90%を確保、ウクライナ軍は工業地区で抵抗
※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。 |
捨て駒にされているんだね。
これが戦争の実態だね。
装備の配備≠即実戦配備です。
練兵過程が必要であり、キチンと運用するには最低でも数週間~普通なら数ヶ月の訓練が必要となります。
時間が必要なのは士官教育を受けていれば誰でも理解できるはずですし、ですので反攻は8月以降という話でしたでしょ。
まぁキツいでしょうし心情はわかりますが、こういうのはいち下級兵士の早とちりでしかないですね。
ただ、それだけ兵力差や装備差があって押し込めないロシアえぇー・・って個人的には思います。
マジでこういう回顧録で出てくるような話がリアルタイムで出てくるというのが
今の戦争の革命的な変化のひとつよな
マジで現場から出てくる生々しい情報は統制なんか到底出来ず
全部出てくるものとして有事のパラメータに入れないといけない時代やなと思う。
特にスターリンクが出来たこれからの時代は
>新しい武器はキーウやハルキウといった大都市にまわして
これ大丈夫なん?
最前線にいる兵士からは兵器が自分の周囲に見えないからそう思っているというだけで、必ずしも事実ではないと思います。
後方の訓練センターにあるでしょうから、機密保持の観点でも前線の兵士には知らされないでしょうね。
元記事を見た感じ、取材は先月末ごろっぽいですね。
こう言った前線の不満が溜まっていたから先日、ゼレンスキー大統領が危険を冒してまで前線を訪問し、
現在のラインを維持することの理由、意義を説明したのでしょう。
それで士気が回復するかね?
手元に武器があっても要請すれば飛んでくる砲弾や航空支援が無ければ現状は変わりませんし。
こればかりは想像できませんね。
私達は戦争で命を懸けて戦った経験はないですし、その場にいる人にしか分からない感情でしょう。
兵士の言うことも理解はできるが供給された兵器を戦線に逐次投入してもすりつぶされるので逐次投入はしたくないところ
というか今前線にいる兵士は西側の兵器の習得まだしていないと思うんですよね
それも含めて西側から供給された兵器はまとまって投入したいのだと思うが
安全な場所でぬくぬくしてるゼレンスキーや特権階級のオリガルヒはどうなってもいいが
こういう最前線で戦う兵士たちはなんとか生き残ってほしい
ゼレンスキー大統領が安全な場所でぬくぬくしてる……?
ゼレンスキー大統領は先日リシチャンシクを訪問しているけど。
ゼレンスキー大統領は自分がいる首都を大量のロシア軍や特殊部隊に攻撃されている真っ最中でさえアメリカから避難援助の申し出をされても断り、明らかに憔悴してなお国を守るために恥も外聞も捨てて援助を求め続けるなど自分ができることを必死でやっているように思えますが、どのあたりを見て安全な場所でぬくぬくしてると思われたのでしょうか?
(イギリスの特殊部隊っぽい)護衛が付いているとはいえ、あの度胸はすごいよな
一国の責任者の鑑でしょうね。
榴弾砲(自走砲を含む)は前線から15km以上後方から発砲するので最前線で見かけないのかもしれませんが、ジャベリンやスティンガー・ミサイルが最前線に供給されてないとしたら問題です。
武器や兵力は軍事的必要性や効率を考慮して民主的な中央政府の軍事部門が公平・公正に配置すべきです。また、分配を固定化すると軍事的に必要な地域に武器や兵力が行き渡らないという非効率が生じるので分配の固定化は避けるべきです。
新兵の大部分は領土防衛隊ではなく陸軍に編入し、中央の意思で必要と効率性を考慮して戦略的・機動的に配置すべきです。兵力が100万人になるとウクライナ政府が言っても、領土防衛隊で訓練も不十分で銃を持って安全な西部の大都市の街角に立ってるだけの兵士を兵力に含めるなら水増し勘定です。
>「実行する人間が耐えられなくなっている」
これは塹壕で戦っている最前線の兵士だけでなく、地下室やシェルターや地下鉄の駅に避難してる住民にも当てはまります。今年のロシア軍の侵攻当初は冬から春に向かう時期で気合も入っていたので冬の寒い地下生活にも耐えれましたが、次の冬は精神的に避難生活に耐えれない人も多く出て来るでしょう。
前線を遠ざけることに成功したウクライナ西部やキエフ周辺と
最前線で土にまみれて戦ってる東部ドンバスでかなり温度差あるね
まあ、それは致し方がない事です。挙国一致なんてありえない。
シリアでも内戦が激しかった時期でも、ダマスカス首都圏や西部のラタキアあたりは日常生活が続いていたわけで、北・南・東部の戦場とは温度差がありました。
日本だって空襲を受けた地域を受けなかった地域では認識がまるで違う。東京の人間ですら、被害を受けた下町と、受けなかった山手では当事者意識に大きな差があった。……それが現実です。
コロナ禍でもそうだったし、戦争という特異な状況でさえも、人間が意思を同じくして一致団結することなんて絶対に不可能なのです。
たとば異星人が地球に攻めてきたとしても、やはり無理でしょうね。
ウクライナですが、今の状況は過去8年間ダラダラ続いて、ただ単に人が死に続けるだけの作業ゲーと化していたドンバスを巡る紛争(とその延長線上)に戻ってしまっているように感じます。その頃からすでに東と西の熱量の差は大きかった。
2022年6月9日19:53現在、ANNのyoutubeライブで
東部でウクライナが劣勢という報道は、市街戦に持ち込んでロシア軍を袋叩きにするための囮情報だ
という見解を伝えてるね
まあそういう側面もあるだろうし前線の兵士からしたら見捨てられたように感じるという側面もあるんだろうけど
気になるのは日本の報道がウクライナの大本営発表をあまりにも好意的に報じていること
戦争の発端は誰の責任かという話と、戦争を仕掛けられた側が報じる情報が真実か、という話は全く別なはずなんだけど、ここらへん混同してる人が多いのは残念なことだ
管理人様、このような記事をよく見つけて来られたと感心しています。
長年海外で働いていましたが友人のカナダ人から聞いて読んだくらいなのでかなり小まめに情報を仕入れていることに
驚いています。素晴らしい記事をありがとうございます。
特に日本国内の報道があまりにあてにならないので余計驚いてしまいました。
原文の英文は戦っている兵士の悲惨さが伝わる記事でした。
“they are feeling abandoned by their leadership — left to die in hopeless conditions.”
指導者に見捨てられ絶望的な状況な状況で死んでいくのを感じている。
戦況の結果がどうなっても悲しい限りです。
西側諸国がイラクやアフガニスタンで、長期間戦い続けられたのも、強固な兵站に裏打ちされた都市と遜色がないFOBを建設し、勤務期間とR&R(休息と回復)のローテーションを徹底管理していたからこそですからね
グロスマンが書いた「戦場における人殺しの心理学」を掘り返し読んだ所、P102にWW2に米軍が調査した戦闘ストレスと戦闘疲労が及ぼす影響の記述があり、「戦闘日数が10日-30日までが最も戦闘効率が高く、それ以降は徐々に効率が下がり、45-60日を過ぎると2%の攻撃的精神病質人格を除いて全員が無気力状態に陥る」という内容でした
この節の最後に、「物理的・兵站的な許容量が増大し人間の精神的許容量を超える長期の戦闘が可能になった」とあるので、現代は更に許容量が増えてるかもしれません
が、100日経過して前線の兵士から、こうした精神的疲労を訴えてきている辺り、既に許容量の限界に陥っているのでしょう
ちなみに無気力状態から更に戦闘日数が続くと、錯乱化・転換ヒステリー・不安状態・性格障害などのPTSDを発症するとあるので、今月中に後方への交代とR&Rを実施される事を願わざるを得ません
開戦から3か月以上経ったので、災害被災者のプロセスと照らしても高揚感が薄れ疲弊していくフェーズに入りつつありますよね。
これからが戦争の本当に苦しい段階なんでしょうね。
■災害直後 英雄期
自分や家族・近隣の人々の命の財産を守るために、危険をかえりみず、勇気ある行動をとる。
■1週間~6ヶ月間 ハネムーン期
劇的な災害の体験を共有し、くぐり抜けてきたことで、被災者同士が強い連帯感で結ばれる。
援助に希望を託しつつ、瓦礫や残骸を片付け、助け合う。被災地全体が暖かいムードに包まれる。
■2ヶ月間~1,2年間 幻滅期
被災者の忍耐が限界に達し、援助の遅れや行政の失策への不満が噴出。
人々はやり場のない怒りにかられ、けんかなどのトラブルも起こりやすい。飲酒問題も出現。
被災者は自分の生活の再建と個人的な問題の解決に追われるため、地域の連帯や共感が失われる。
■数年間 再建期
被災地に「日常」が戻りはじめ、被災者も生活の建て直しへの勇気を得る。
地域づくりに積極的に参加することで、自分への自信が増してくる。
ただし、復興から取り残されたり、精神的支えを失った人には、ストレスの多い生活が続く。
今日の朝日新聞は国外脱出の権利を求めるウクライナ人男性や徴兵を拒否したい人の記事が出てた。
書いてある事はもっともだし、強権的な所や国境を出るのもワイロ次第な所も書かれてた。
別に嘘は書いて無いと思うけど、なんか妙な感じ。
地図を見ながら戦線の長さを考える。とりあえず、キーウ北部から東に向かいドンバス、そこから南西に曲がってハルキウ経由ムコラーィウまで、戦線が入り組んでいる事を加味してたぶん1000㎞かそれ以上になるだろう。それだけの長さでウクライナとロシア両軍が毎日戦闘を続けて兵士の生命と兵器・弾薬を消耗し続けている。実際のところ、今までのNATO各国からの供与兵器も最前線では到底足りていないのではないか、というのが正直な感想。むろん今取り扱い習熟中の西側AFVはまだ未投入なのでしょうけど、そういう次元の問題ではないと思います。端的に言えば、NATO陣営の兵器供与は今後も今のようなペースで半年1年あるいは数年、と続けられるんでしょうか?
また、幾人かの方がコメントに書かれていらっしゃいますが、最前線の兵士は一定期間で後方に下げて休養と再編成と再訓練を行い、ローテーションを行うのが軍事的なセオリーであるはず。そこが最前線での転戦に次ぐ転戦が延々続く…というのは毎日毎日一進一退する地図上の押した押された以上の重大な問題であるはず。
むろんロシア軍も状況は程度はどうあれ厳しいのでしょうが、ウクライナは何かこのままでは非常に深刻な事態に嵌まり込んでしまうような不安が消えません。本当にゼレンスキーはウクライナ全土からのロシア軍完全駆逐・領土完全奪還まで戦争継続する気なのでしょうか。