NBC Newsは先月8日「国防総省が東欧から最大1万人の兵力削減を検討している」と報じたが、米国のウィテカーNATO大使は欧州軍削減の噂について16日「まだ何も決まっていないが何れNATOと協議することになる」「6月のNATO首脳会談後か、今年後半には必ず協議が始まるだろう」と述べた。
参考:Pentagon considering proposal to cut thousands of troops from Europe, officials say
参考:US to start European troop withdrawal discussions later this year, US NATO ambassador says
欧州からプレゼンスを縮小すると脅しながら「欧州諸国が増額する国防予算で米国製武器システムを買え」と言い出した
トランプ大統領はNATO加盟国に「欧州防衛に対する米軍のプレゼンス縮小=米欧州軍撤退」をチラつかせる一方で、国防予算増額や米国製武器システムを積極的に購入する国=特にロシアと国境を接するポーランドなどには「駐留する米軍を撤退させない」と約束していたが、NBC Newsは先月8日「国防総省が東欧から最大1万人の兵力削減を検討している」「検討されている兵力削減はウクライナ侵攻を受けてバイデン政権が増派した2万人の一部」「削減の規模については議論が続いている」と報じため、ポーランドとルーマニアに駐留する部隊が削減対象になっているという意味だ。

出典:U.S. Army photo by Sgt. James Lefty Larimer
米国のウィテカーNATO大使は欧州軍削減の噂について16日「まだ何も決まっていないが何れNATOと協議することになる」「6月のNATO首脳会談後か、今年後半には必ず協議が始まるだろう」「同盟国は欧州軍削減に向けた準備が出来ている」と述べ、さらに「欧州軍削減は我々が30年以上も望んできたことだ」「トランプ大統領も『もう十分だ、今直ぐ削減を実行しよう。秩序ある形で行おう』と言ったばかりだ」「この状況で削減を先延ばしすることには耐えられない」「我々は現実的な結果に対処する必要があるだけ」「米国は完全には撤退しない」「我々は同盟に留まり続けて偉大なパートナー、偉大な同盟国であり続ける」と付け加えた。
トランプ政権が削減する欧州軍の規模は「増派した2万人の一部」なのか「欧州軍本体(約10万人)なのか」は良くわからないが、ウィテカーNATO大使は「欧州が防衛装備品の共同購入先から非EU企業を除外すればNATOの相互運用性が失われ、欧州の再軍備が遅れ、コストが上昇し、技術革新が阻害される」とも警告しており、欧州からプレゼンスを縮小すると脅しながら「欧州諸国が増額する国防予算で米国製武器システムを買え」と言っている。

出典:Elbit Systems
EUは加盟国の再軍備を加速させるため共同調達を奨励し、これを財政支援策や融資で強力に後押しする予定だが、この支援を受けるためには域内調達が条件となっており、最大8,000億ユーロと見積もられている加盟国の投資が欧州防衛産業の強化・拡張に役立つことを希望しているため非EU企業の参加を認めておらず、Breaking Defenseは「トランプ政権が自立した欧防衛産業の発展を容認すれば、収益悪化を懸念する米防衛産業界、この種の企業を選挙区にもつ議員からの反発に直面するだろう。それでもトランプ政権は譲歩すべきではない。どれだけ欧州の自立にコストがかかったとしても戦略的利点がそれを上回る」と指摘した。
“トランプ政権はロシアではなく中国を潜在的な敵だと考え、出来るだけ多くの資金を米軍とアジアの同盟国に集中させたいと希望している。陸上戦主体の欧州と海上戦主体の太平洋では軍備に対する要求要件が異なり、欧州の再軍備に米防衛産業の生産力を割けば割くほど太平洋の強化が遅れることになる。逆に欧州が自立すれば太平洋で必要になる艦艇、潜水艦、長距離攻撃兵器に資金を集中させることが出来るだろう”

出典:Photo by Petty Officer 1st Class Ryan Seelbach
“欧州の自立は長期的に見てビジネス機会の喪失を意味するが、米防衛産業界は能力を超える需要に直面しているため、一夜にして窮地に陥るということはない。欧州も米国製システムへの依存を完全に止めるわけではなく、一部の先端システムについては欧州への供給が続くかもしれない。さらに安全保障環境の不安定さを考えると欧州の顧客が去っても、新たな顧客が登場して米防衛産業界の受注は伸び続ける可能性が高い。欧州も米国に見捨てられたと憤慨するのではなく、自立によってもたらされる新しい自由を擁護すべきだ”
要するに「防衛産業界や議員の要請に応えて欧州の自立を邪魔すれば産業能力的に太平洋戦略が台無しになる」という意味で、欧州の資金は欧防衛産業に投資されてこそ戦略的利点を生むと言いたいのだが、現実的にはBreaking Defenseが指摘した通り、防衛装備品の共同購入先に米企業を参入させろ言い始めたわけだ。

出典:Mark Carney
カナダも併合発言や関税問題で米国を信用できなくなっため「欧州の共同調達に参加させてほしい」と交渉中、EUから離脱した英国も共同購入に参加するためスターマー政権が欧州との繋がりを強化中で、防衛装備の調達先も静かに米企業から欧州企業にシフトしていることが最近判明している。
EU加盟国が共同調達以外で購入するものに制限はないため、欧州諸国の武器調達から米企業が完全に排除されることはないものの、非常に攻撃的な態度で安全保障の自立を促しておいて「資金だけよこせ」というのは流石に強欲すぎるだろう。
関連記事:ベルギーのF-35A追加調達、米国ではなくイタリアで生産された機体を希望
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※アイキャッチ画像の出典:NATO
「欧州諸国が増額する国防予算で米国製武器システムを買え」
きましたね・・・
別にそんな事は言って無いと思いますが。
欧州から米国製の兵器が閉め出されるというのはいうのはアメリカにとって不利益でしょうけれど、そこまであからさまには言わずとも、
「アメリカ軍が欧州にこの先も存在し続ける為には『アメリカ軍が充分に活動できるためのアメリカ製の米軍仕様装備と、完全相互性のある米国仕様の兵器は必要不可欠である』つまり欧州にはアメリカ製の兵器が必要なのは理解できるはずだが?」という主張は、別に不可思議でも傲慢でも何でもないはずですよ。
アメリカの撤退を諸手をあげて賛成し、「どうぞお帰り下さい後は自分たちですべてやりますから」とでもいうのなら別ですが、未だに足に縋って「どうか行かないでくださいと哀願している側」の言う事では無いです
太平洋に戦力を集中させるなら日本にすれば良い部分もあるのか……?
???「増額した防衛費で米国産兵器を買え!」
あっハイ
別に買って良いんだがもっと作ってくれとねぇ
ミサイルとかミサイルとかミサイルとか
「増額した防衛費で米国産兵器を買え!」
「ハイ買います、ではこの量を」
「HAHAHA納期は、〇〇年後だ!!」
納期通りに納品してくれればいくらでも買ってやろうじゃあないの。
で、F-35やパトリオット弾薬はいつ頃届くんだい
今のtr3機を100機よこされても困る。
カナダ・デンマークは自国領土に対して武力侵攻の警戒感があるし、ドイツもアメリカに対して強気の姿勢を見せ始めている。
(さすがにそんな事は無いだろうが)アメリカが欧州へのプレゼンス喪失かつNATO離脱となる可能性も存在するだろうか。
太平洋地域の在留米軍も次の韓国政権次第なところも出てくるだろう。そうしたら日本もどうなるだろうか?
オラ、ワクワクすっぞ!
欧州の軍事的自立が整うまではアメリカと完全に縁を切る訳にもいかないので、
うぜーなと思いつつご近所づきあい程度に買うってぐらいならあるんじゃないでしょうか
ただ米国製兵器を軸に国防考えるってことはもう無くなるでしょうし存在感は薄くなる一方でしょうね
米国にしてみれば、”無い袖は振れない”、のでしょうが。
もっと言い方/遣り方はないのでしょうか?。
いずれにせよ、中共方面では、先頭に立ってもらわないといけない?のですが。
言うこと聞かない、やる気も無い欧州に対してアメリカは別に自国兵器を売り続けたいとまでは思っていないのでは?
それが先の中東での商談にも透けて見えます
欧州が軍事的に自立できるならそれでよし、できずにアメリカに泣きついて兵器を買うならそれもよしぐらいの考えでしょう
たぶんヨーロッパと米国の分断はこのまま深まっていって、中長期的にはNATOの解消まで行きつく気はするんだけど
その場合NATO規格も消滅するわけで、それは日本取ってはかなり面倒くさそう…。
データリンク関連とかどうすんだよって…。
そもそもロシアのプレゼンスが欧州と敵対する地域大国くらいで、中国が第一第二を争う世界大国なのに欧州が中国と敵対どころか積極的に関係を築こうとすることも多かったのが米の不満なのでしょうが…NATOの名を冠する北大西洋でないうえ、中国と離れている以上は欧州が対中で本気出すことはあり得ないでしょう。
要するにNATO維持してロシアに圧力かけるしかやる気ないのなら、米にとってのNATOの重要性は著しく低くなっているのですよね米安全保障的に。
だったら太平洋に新たな対中包囲網を作るしかないのですが…相手もBRICSの緩い関係を軸に対立を避けるよう動いてますし、インド・太平洋の対中包囲網形成は結局なかなかうまくいきませんね…
>欧州が中国と敵対どころか積極的に関係を築こうとすることも多かったのが米の不満なのでしょうが
むしろロシアと対決する欧州的には、中国と軍事/経済同盟組んで、東側からロシアに圧力掛けさせるのが最良手でしょう。
あれだけ距離が離れていれば、国家主義なんて、関係ないですし。
業務委託先の中身がオーナー企業かどうかレベルのものですよ。むしろ同盟組んだら、そのへんはお互い無干渉で、というディールすらきく。
ロシアと中国は関係深いし意味ないでしょう。
それに中国を取れば日本からの支持を失うというデメリットも大きい。日欧共同開発や欧州製兵器を日本が買う道は完全に閉ざされるだろう。
>「検討されている兵力削減はウクライナ侵攻を受けてバイデン政権が増派した2万人の一部」
ウクライナ戦争を続けたいなら、米国の資金以外でやってくれということでしょ。
それと、欧州の安全保障は米軍中心のNATOが担っているのに、再軍備にアメリカ企業を締め出すという、欧州の姑息なやり方を咎めてるだけでは?
欧州の政治家は、国防予算増額の支持を取り付けるために、同盟国であるトランプ批判を利用してるのだろうけど、端から見たら、どんぐりの背比べくらいに醜い争いだわ。
中長期的にNATOが無くなったりして?