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X-68A LongShotが年内に初飛行、空中戦を変革する空中発射型無人機

米国防高等研究計画局は17日、GA-ASIと共同で進めているLongShot計画=空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型無人機について「空中戦を根本から変革するために設計され、X-68Aと命名された空中発射型無人機は飛行試験の実施に向けて大きく前進した」と発表した。

参考:Not such a long shot
参考:X-68A LongShot Air-To-Air Missile-Carrying Drone Moves Closer To F-15 Launch

LongShotは絶対的な正解ではないにしても「火力投射」を特性の異なるアプローチで多重化することに意味があるのだろう

米国防高等研究計画局(DARPA)は複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型無人機=LongShotプログラムを2021年2月に開始、ゼネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンの3社に予備設計=フェーズ1契約を授与、GA-ASIは2023年3月「詳細設計と地上試験で構成されるフェーズ2の契約が授与された」と、2023年9月「競争を制してDARPAのコンセプト開発=フェーズ3契約を獲得した」と明かし、GA-ASIは謎に包まれていたLongShotのコンセプトについて「第4世代戦闘機と空対空ミサイルの交戦範囲とミッション効果を大幅に向上させる」と説明していた。

出典:Northrop Grumman

さらにGA-ASIは2025年9月「LongShotは無人迎撃機として敵対空域に突入し、空対空兵器を使用する能力で航空戦闘に革命をもたらす。LongShotは標準兵器のステーションから展開可能なため、あらゆる空軍のプラットフォームが制空権獲得に貢献できる。LongShotは手頃な選択肢であり、比類なき接近攻撃能力と遠隔攻撃能力を提供して航空戦力の概念を再定義する」と主張し、LongShotが何なのかを具体的に示すイメージを公開。

GA-ASIが公開したイメージは「LongShotがAIM-120を運用できること」「F-15E/EXのAIM-9XやAIM-120の携行能力を維持したままLongShotを2基搭載できること」「C-17がRapid Dragonパレットシステムを通じて大量のLongShotを展開できること」「B-52からもLongShotを展開できること」を示唆しており、DARPAは爆撃機の爆弾倉からLongShotを投射する可能性にも言及しているため、折りたたみ式の主翼とカナード翼を備えるLongShotは爆弾倉に搭載する回転式ランチャーにも対応しているだろう。

DARPAもLongShotについて17日「かつては概念の域を出なかったものが、今、着実に現実へと近づいている」と発表し、大変興味深いことに言及して注目を集めている。

“GA-ASIと共同で推進しているLongShot計画は一連の技術的マイルストーンを成功裏に完了した。これにより「X-68A」と命名された空中発射型無人機は飛行試験の実施に向けて大きく前進した。実物大風洞試験の完了、機体のパラシュート回収システム、兵装投下システムの試験成功を含む成果は、この次世代能力の開発における顕著な進展を裏付けるものだ。LongShot計画は空中戦のオペレーションを根本から変革することを目的に設計されている”

出典:DARPA

“そのコンセプトの根幹は大型の母機から射出され、後続部隊に先行して飛行し、自機に搭載した空対空ミサイルで敵標的を交戦・排除する無人航空機にある。この運用形態は従来の有人戦闘機を増強するものであり、戦闘機を前線から遠ざけることでパイロットの安全性を劇的に向上させ、戦力パッケージ全体の射程距離と任務の有効性を拡張する。また、LongShotは特定のホストプラットフォームに依存しない設計を意図しており、将来的な運用バリエーションとして戦闘機や爆撃機への統合、あるいは輸送機からパレット化弾薬=palletized munitionとして投下・運用する道を開くものだ”

“DARPAのジョン・ケイシー大佐は「LongShotは重大な技術的リスクを解消し、無人・空中発射型プラットフォームを通じて各軍が空戦の到達圏と有効性を向上させるための実行可能な道筋を提示するものだ。各所の協力により統合飛行試験キャンペーンに必要な重要マイルストーンを完了した。これにより機体性能を検証し、効率的な後続開発の基礎を築くことになる」と述べた。LongShotは現在、地上試験および統合試験が進行中で、早ければ2026年末にも飛行試験キャンペーンを開始する予定だ。F-15からのX-68Aの安全かつ有効な運用を証明し、機体の飛行能力を確認し、搭載兵器を安全に射出する能力を実証する”

出典:GA-ASI

DARPAが言及した機体のパラシュート回収システムは「LongShotのコンセプトモデル=X-68Aを飛行テスト後に回収するためのもの」で、GA-ASIは「LongShotは実戦での運用を想定しており、実戦シナリオにおいて機体の回収は現実的ではなくコスト面から見てもその必要はない」「ただし試験や訓練においては回収可能で、我々はそのためのオプションも備えている」と明かしており、LongShotは空対空兵器を自律飛行で運搬する使い捨ての徘徊型ランチャーだ。

War Zoneは「LongShotのような使い捨ての無人機を使用してミサイルを推定交戦区域まで進出させ、あわせて一定の滞空能力を提供することが、実戦においてどれほど効率的であるかについては、依然として疑問が残っている。特に、より高度な再利用型無人機や長射程ミサイルの運用と比較した場合、そのコストバランスがどうなるかは不透明だ。それでも空軍、海軍、海兵隊は他の解決策では対応できない『特定の運用上のニーズ』を満たすためにLongShotを不可欠な存在と見なす可能性がある」と述べており、LongShotは絶対的な正解ではないにしても「火力投射」を特性の異なるアプローチで多重化することに意味があるのだろう。

関連記事:GA-ASIが開発を進めるLongShot、制空権獲得に革命をもたらす無人迎撃機
関連記事:GA-ASIがLongShotを受注、第4世代機や空対空ミサイルの交戦範囲を拡張
関連記事:米GA-ASI、複数の空対空ミサイルを運搬可能なLongShotのフェーズ2に選定
関連記事:米軍、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型UAV「LongShot」開発を発表
関連記事:これは無人戦闘機?ノースロップ・グラマンが空中発射型UAV「LongShot」案を公表

 

※アイキャッチ画像の出典:DARPA

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コメント

  • コメント (27)

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    • ブルーピーコック
    • 2026年 2月 18日

    Aしかできないよりも、AもBもCもDも出来て何なら新しいEも用意できるのが理想よな。戦車に対して戦車も地雷も対戦車ミサイルもドローンもA-10もぶつけられるみたいな。
    ただそれを実現するためには経済力も技術力も人材も必要ではあるんだが。

    11
    • Whiskey Dick
    • 2026年 2月 18日

    前進翼+カナードというアメリカにあるまじきデザイン(想像図)
    堅実さが求められる有人機と異なり、無人機では多少の技術的冒険が許される。

    4
      • kitty
      • 2026年 2月 18日

      いや、なんかこれ生成AIに描かせたんじゃないかと思うくらいのクォリティですよ。>DARPA

      8
    • 戦車
    • 2026年 2月 18日

    現代版のパラサイト・ファイター?

    2
      • 七面鳥
      • 2026年 2月 19日

      残念ですが、ブースターには転用出来なさそうです……

        • 七面鳥
        • 2026年 2月 19日

        失礼、コメント先を一段間違えました。申し訳ないです。

    • 名無しさん
    • 2026年 2月 18日

    マクロスプラスで見たやつ

    2
    • YF
    • 2026年 2月 18日

    これ上手く使えば中国の大型空対空ミサイル=PL-17(推定射程400km)とAIM-120との射程ギャップを埋めれるかもしれませんね。
    なによりプラットフォームを限定されるPL-17に比べて戦闘機、爆撃機、輸送機と複数のプラットフォームで運用出来るのが魅力的です。

    8
    • トクメイキボウ=サン
    • 2026年 2月 18日

    そのうち合体するんじゃねえかな

    3
    • 朴秀
    • 2026年 2月 18日

    ゲーマルクのマザーファンネルみたいなものですかね
    色々試せるのはいい感じだと思います

    4
    • SB
    • 2026年 2月 18日

    敵からしたら何が嫌かって母機はスケートしてるのにこいつはバンザイしに来ることだよな
    撃墜出来なくても母機のリスクなしに一方的に回避行動強いれるのは強そうだ

    4
    • T.T
    • 2026年 2月 18日

    使い捨てだから、常用する物じゃ無いね。要するに、交戦区域に居る有人戦闘機に対して後方からミサイルを補給する無人機と捉えればいいわけね。

    1
      • まめ
      • 2026年 2月 18日

      交戦域にドローンを突っ込んで、有人機は後方に居るスタイル。
      ドローンを切り込み隊長にしてる感じ。

      3
    • 無印
    • 2026年 2月 18日

    自分で飛ぶウエポンベイって所でしょうか
    使い捨てなら、搭載ミサイルを撃った後は、敵機に特攻する機能も付けてはどうだろう

    9
    • 黒丸
    • 2026年 2月 18日

    P-1にも1機搭載できると良いですね。
    中華空母艦載機による妨害活動に対して、
    哨戒機の安全を確保するのにいいのでは

    6
    • 中村
    • 2026年 2月 19日

     有人戦闘機って本当に必要なんですかね。私には爆撃機に指令誘導の長距離AAMを積む話だとしか思えません。

     「有人戦闘機との協調」≒「パイロットの雇用維持」って意味では?

    1
      • ネコ歩き
      • 2026年 2月 19日

      パイロットの雇用云々は話題になっておらず今のところ恐らく検討外ですね。
      有人戦闘機の生存性と交戦能力の大幅向上に資する戦闘支援アセット/システムとして構想されていますが、LongShot のような使い捨て低コスト機から Ghost Bat のような繰り返し運用を前提とした高生存性/高機能機まで、様々な運用構想の下に多種多様な開発が行われています。
      どの構想がベストというわけではなく、運用環境により使い分けられる性格のものだろうと思います。

      1
        • 中村
        • 2026年 2月 20日

         物凄く単純な疑問です。

         偵察機や爆撃機の活動の為に制空戦闘が必要だという順番なんですから、爆撃機に長射程AAMを積んで制空戦闘が可能なら戦闘機は要らない筈でしよう。

         まして、無人偵察機や無人爆撃機(巡航ミサイル)の護衛に有人戦闘機を使うなんて馬鹿げてます。

         雇用云々は、戦闘機パイロット出身の将軍がトップの組織にソレは提案出来ないだろうという邪推と言うか何というか。

         メーカーと研究機関の本音が聴きたいところです。

          • SB
          • 2026年 2月 20日

          あなたが想像しているミサイルですが、カタログスペックの射程数百kmというのは、発射母機が超音速かつ高高度を飛行してて、かつ敵が何もせずに突っ込んできた時の射程です
          例えばAIM-120Cはカタログスペック上の射程は105kmですが、敵が尻を向けて逃げてるなら射程は20kmくらいに落ち、母機が遷音速や低空なら更に射程は短くなります

          この時点で偵察機や爆撃機が不利なのは分かるでしょう。同じミサイルを積んでても射程が大幅に変わる上に、敵からミサイルを撃たれたら回避の為に敵に尻を向けて逃げたり、空気が濃い低空へ移動しなければいけません

          一度逃げた後に再度、高度や速度を稼ぐのに戦闘機と爆撃機や偵察機、どちらが有利かと考えれば自ずと答えは出るでしょう

          1
            • 中村
            • 2026年 2月 20日

             だから、ターボジェットの射程延伸ブースターを付けるって噺でしょ。コレ(X-68)。

              • SB
              • 2026年 2月 20日

              1発しか積めないっぽいですけど、撃ったあとはどうするんです?
              別にAAMは必中じゃないですよ

              1
          • ネコ歩き
          • 2026年 2月 22日

          まず第一に、極めて脅威度の高い作戦空域における有人作戦機の損失を極限するために、一定の損失又は消耗を許容できる無人機を前方展開させ爆撃や偵察等を行わせるのが構想の眼目でしょう。有人戦闘機の能力を無人機で拡張することで生存性を高めつつ多種多様な任務に対応できるという意味でもあります。

          複数のセンサー無人機を適切に展開させればバイ/マルチスタティックレーダーとして機能させ、敵ステルス機の先制探知も可能になるでしょう。LongShot のような外部ウェポンベイとして機能する無人機は有人戦闘機の攻撃力を弾数・射程両面で拡大することになります。
          無人機を有人機で護衛するという発想は元から無いと思いますよ。

          1
    • 58式素人
    • 2026年 2月 19日

    上の方で書いている方もおられますが。
    当面、敵の長射程AAMに対応する形でも良いのでは、と思います。
    先日、他所の記事で、カナダがレイセオン社と組んで、ターゲットドローンを
    基にしたファルコンUAVを開発中、とありました。
    ”離陸重量450kgで、マッハ1.6(低高度でマッハ1.3まで)まで加速し、
    最大30分間空中にとどまり、最大10kmの高度まで上昇し、最大
    50kgのペイロードを運ぶ”とありました。
    これを発展させて、IR誘導AAM(AIM9など)をちょうど一角クジラみたいに
    先端から発射するように装備すると、これは長射程AAM になるのでは?。
    長射程AAMの空中戦では、AWACSの参加が前提になると思いますから、
    こうしたものがあれば一定の反撃能力は獲得できそうに思います。
    ファルコンUAVの大きさは、長さは5.8メートル、翼幅は2.2メートルとのこと。
    長射程ASMくらいの大きさですね。

    3
    • ras
    • 2026年 2月 19日

    無人機というよりは異なるアプローチの兵装搭載という感じですよね現状
    とはいえ本体性能に縛られない柔軟な活動ができるという意味では、どこまでできるか次第ですが楽しみです。うまくアプグレがいけば一般的な輸送機も空母扱いできるようになりますからね

    1
    • dd4
    • 2026年 2月 19日

    正直に言えば、「良い意味で実にアメリカらしいな」と。
    「とりあえず試してみる;や「まずは使い捨てで」というのは実にアメリカらしい。
    変にこだわらないでチャレンジするアメリカ、そういうのでいいんだよ、頑張ってほしい

    1
    • 荒川の渡り鳥
    • 2026年 2月 24日

    エースコンバット7の、ウエポンUAVぽさもあるなぁ。
    っていうか、最近の計画中や開発中って話、一昔前SF扱いだったものがほんと多い。
    (そのほうが予算が取りやすいとか、あるかもしれないけど。)
    失敗も多いかもしれないけれど、開発陣は頑張ってもらいたいな・・・・

    • 荒川の渡り鳥
    • 2026年 2月 24日

    エースコンバット7の、ウエポンUAVぽさもあるなぁ。
    っていうか、最近の計画中や開発中って話、一昔前SF扱いだったものがほんと多い。
    (そのほうが予算が取りやすいとか、あるかもしれないけど。)
    失敗も多いかもしれないけれど、開発陣は頑張ってもらいたいな・・・・

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