米国防総省内部の部局で軍事利用可能な最先端技術の開発を行っている国防高等研究計画局(DARPA)は今月8日、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型の無人航空機(UAV)開発「LongShot Program」を開始すると発表した。
参考:DARPA Initiates Design of LongShot Unmanned Air Vehicle
空対空ミサイルの交戦範囲と有効性を拡張するLongShot UAV
航空戦術の基本概念である航空優勢=つまり自軍の戦闘機が敵の戦闘機を交戦区域から排除することで制空権を確保することが重要で、戦闘機と呼ばれるプラットフォームに最も求められるは能力は「敵航空戦力を攻撃する武器を効果的に運搬する能力」の一言に尽きる。
誘導式の空対空ミサイルが実用化される以前や空対空ミサイルの命中率が思わしくなかった時代は「ドックファイト」と呼ばれる戦闘機同士の直接交戦が主流だったが、テクノロジーが進化して空対空ミサイルの命中率向上、ノーエスケープゾーン(回避不能ゾーン)拡張、戦場のネットワーク化によって空中戦は戦闘機単体の性能やパイロットの技量に左右されることが少なくなったと考えられており、総合的なシステムがより効率的で効果的な方が「先に敵を発見して先に敵を撃つ」ことができるというのが一般的だ。
要するに戦場のネットワーク化によって敵航空戦力を攻撃する武器を効果的に運搬するプラットフォームは必ずしも高度で高価な有人ステルス機である必要はないという意味で、米国防総省内部の部局で軍事利用可能な最先端技術の開発を行っている国防高等研究計画局(DARPA)は今月8日、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型の無人航空機(UAV)開発「LongShot Program」を開始すると発表した。
このLongShotプログラムとは航空優勢を獲得するのに必要な武器運搬を高度で高価な有人ステルス機で行うのではなく無人航空機(UAV)で行うというコンセプトで、各国が開発を競っている戦闘機随伴型の無人戦闘機とは異なるので注意が必要だ。
DARPAが発表したイメージCGを見るとLongShotは航空機に搭載して交戦空域に運ばれ空中発射されるタイプのUAVなので主翼は折りたたみ式になっており、爆撃機が使用する空中発射型の巡航ミサイルに似た形状で最低3発以上の空対空ミサイルを本体内に搭載していると思われる。
つまりLongShot UAVを実用化できれば爆撃機や輸送機によって航空優勢を確保するのに必要な戦闘機の数を削減することが可能になるという意味なのだろう。
因みにDARPAはジェネラル・アトミックス、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの3社にLongShot UAVの予備設計作業を行うための契約を授与したとプレスリリースの中で明かしており、プログラムが順調に進捗すれば実物大の検証機を製造して実際にテストを行うらしい。
あくまで管理人の予想だとLongShot UAVは戦闘機随伴型の無人戦闘機よりも技術的難易度が低いと思うのでLongShot UAVだけなら数年以内に完成するかもしれないが、LongShot UAVを活かすには戦場のネットワーク化=米空軍が開発している「アドバンスバトル・マネージメントシステム(Advanced Battle Management System:ABMS)」や、その上位レイヤーに当たる「統合全ドメイン指揮統制(Joint All Domain Command and Control:JADC2)」が完全稼働する必要があるのではないかと思っている。
そのため兵器として実用化するにはABMSやJADC2の完成を待つ必要があり、この手のシステムを他国が直ぐに真似るのも簡単ではないだろう。
関連記事:海中を泳ぐマンタ? 米軍が開発に取り組むステルス機のような無人海中ドローン
追記:LongShot UAVは戦闘機にも搭載して活用する予定らしい。
※アイキャッチ画像が出典:DARPA LongShot UAV
これは使い捨てなのか、母機に回収可能なのか
離着陸装置があるならばわざわざ
飛行機から発進させる必然性はないよな
回収はハードルが高そう。
墜落させるのでは?
航空機発進なら簡易な着陸能力、例えば「使い捨てのソリ」とか「パラシュート」でも十分な訳です。
離陸・上昇の装備・性能を捨てればかなりの重量・空間を節約できますので
その分滞空時間・航続距離・搭載量・コスト等に割り振れます。
母機に回収は現代の技術は無理でしょう。飛行機の着陸は、平な草原とかあれば、そりでも補強した胴体でも問題なしです。(ミサイル抱えてるので、不安だけど)
同じ無人機なのに、二つに分離するのは、運搬は時速800km以上で、燃料タンクがでかい方がいい。(米国から発進して、中東で子機を下ろして、米国に帰れるぐらい。)偵察機は時速450km以下で、燃料タンクが小さい方がいいからでしょう。
これはあくまでABMSの領域内での運用に限定されるUAVですよね。
回収先はなにも空中の母機でなくてもよいわけで、使い捨てる必要性は感じないなあ。
鹵獲されて分解されてコピーされる前提で作るのなら分からないでもないですね。
X-61Aグレムリンで空中回収の試験はやってるはずなのでその技術を使えばなんとかなるのでは
空中給油も自動化できる時代だし
使い捨てっぽいね。
1枚目の画像の右側に吹っ飛んでるパネルがあるけど、ミサイルを発射するときにパネルを吹っ飛ばしてから発射する模様。
追記。ザ・ドライブより
機体が過度に複雑で高価であると、それが提供する可能性のある利点を簡単に損なう可能性があるため、コスト要因もLongShotにとって重要です。これらの同じ問題は、群がるドローンや軍需品など、大量に配備されることを目的とした他のシステムの開発にも当てはまります。この場合、大幅なコストの増加により、概念全体を有用な規模で採用することが非現実的になる可能性があります。
DARPAがLongShotをどのような状況でも回復可能および/または再利用可能にすることを意図しているかどうかは、明確ではありません。高度にネットワーク化された設計は、これらのドローンが高価なセンサーを搭載する必要をなくし、代わりにそのターゲティング情報をオフボードプラットフォームに依存することで、コストを低く抑えるのに役立ちます。
「プログラムの後の段階で、LongShotは、運用条件下での兵器放出の前、最中、後の制御飛行が可能な本格的な空中発射デモシステムを構築して飛行する」とDARPAはプレスリリースで述べた。
主翼他に突起物はないし、その主翼も引込めばパラシュート回収しても破損箇所は減らせるんじゃないかな。ついでにエアバッグぐらいつけてやればなおよいし。
単なる長射程の空対空誘導弾では駄目なんだろうか?わざわざ無人機を一段階かまして射程を延ばしても無人機が撃墜される可能性や誤って友軍機に攻撃を仕掛ける可能性を排除できるのだろうか?
ごもっとも。加えて、そのUAV母機こそ敵の長距離ミサイルの的にされそう
だからこその無人機じゃないの?撃墜されてもパイロットが死ぬ訳じゃないんだから
それもあるが使う局面が、無人機を飛ばして、搭載しているミサイルの射程内に複数の目標がいる状況ってかなりの幸運に恵まれる必要があると思う。ミサイルを撃たなかった場合は回収しないともったいないが、その辺はどうやるつもりなのだろう。
「撃っちゃったミサイル」では威嚇も警告もできないでしょ?
攻撃を受けるリスクはもちろんありますが
だからこそ母機がそこまで前進するんじゃなくてUAV飛ばそうって話ですしょう。
この場合「そこに居続ける事」が重要なんだろう
長射程ミサイルは命中率に劣るからこの無人機には短・中射程を積むのかもしれない。有人機を命中率高めのミサイルの射程圏内まで接近するリスクから解放する意図で
それだけなら中距離ミサイルにブースターつけて途中で切り離す方が技術的にもコスト的にもスペース的にもお手軽かと。
「ある程度の時間、前方に滞空していつでも撃てる」というのが重要だと思いますよ。
エースコンバット7にあったステルス形態のミサイルポッドを無人機化する様な物じゃないか(苦笑)
というかアーセナルバードに搭載されてた無人機どもと同じようなコンセプトな気がします
エスコンで例えるなら拡散ミサイルな気もする
ミサイルを発射するミサイル
>航空機に搭載して交戦空域に運ばれ空中発射されるタイプのUAV
これで「敵航空戦力を攻撃する武器を効果的に運搬する能力」ってあがるのかな?
長距離ミサイルを装備したほうが、デメリットが少ない気がする。
UAVの侵出距離+MRAAMの射程の分だけLRAAMの射程を確保するとして、
同じようなテクノロジーを使用して射程を延ばす場合、燃料は 距離比+抵抗増による消費率増 だけ確保する必要があるので、図体が大きくなります。
米国のステルス戦闘機の場合、ウェポンベイの長手方向はMRAAMに対して余り余裕がないので、断面積増の方向で対処することになるでしょうし、それは抵抗係数の悪化をもたらす筈なので、更なる大型化を招くと思います。
そしてAAMの大型化がAAMの装備数の悪化まで繋がった場合、防衛装備庁のNGFに向けたシミュレーションを参考にすると、生存性の悪化に繋がる筈です。
なので、AAMの装備数に影響の無い範囲で大型化を留めて、且つ、UAVの侵出距離+MRAAMの射程分だけ距離を延ばせるかが、
LRAAMの方が良いか否かの判断の分かれ目になると思います。
解説ありがとうございます
P-1に搭載できるといいな、色々役に立ちそうだが
空自と海自という組織の壁でうまくいかない可能性もあるな
こういう時代になるとTu-16くらいの機体が欲しくなるね。
B-52では大き過ぎるしエンジン8発で整備が大変そうだし…
武器の使い勝手も相手次第でしょう。自軍に不利な状況・環境では使えないでしょうし。
いまは猫も杓子もドローン開発ですね。
より実戦的なんだろうけど
構想だけ聞くとTACOMに見えてしまう
B52は2150年まで使いそうだなw
もうちょい伸びたら、ヤマトと共演してた芽も
大型機を大量に持ってるアメリカ限定の装備って感じだな
簡単そうではあるが運用上の制限もあるし、当座しのぎってやつかな
太平洋地域における
F-35の航続距離問題から来た回答だよねこれ多分
>>爆撃機や輸送機によって航空優勢を確保するのに・・・
B52やらB1Bに吊るせるか積めて距離や高度や位置的に安全な空域から発射後多少運んでもらって徘徊滞空できそうなら人員や機材が危険にさらされずに前線に進出した少数のミサイルを積まない機動性が高いステルス機がLinkで中射程ミサイルを撃てるようにしたいのかな いつも問題はタイミングだけど衛星から指示できれば滞空時間の長い爆撃機を使えてそのマージンが生まれるシステムになるよね 空中給油のミサイル版的な運用を考えてそう 戦闘機に積めるならそれもありだし
予想CGに言っても意味ないかもしれないけど、
これ吸気口どこなんだろ。上面後端の二か所ってこたないよね。
>これ吸気口どこなんだろ。上面後端の二か所ってこたないよね。
ん?それでしょ?
飛行中の母機から投射されて定速度で滞空するのが目的なら
低速での高出力とか要らないんだしこんなので十分じゃない?
初戦の航空優勢を確保する対レーダーミサイルを搭載してレーダーを破壊し滞空陣地や滞空車両などの今まで有人のステルス機などが担っていた遠隔地に対する最も危険な作業を無人機で置き換え、ついでに回収の必要が無い様に自爆攻撃もすると予想。
機体のコストは知らんが。。。
こうした兵器が開発されと、これを回避するための兵器や戦術が開発されるでしょうから、近未来の空戦はこれまでと全く違うものになるかもしれませんね。
>爆撃機や輸送機によって航空優勢を確保するのに必要な戦闘機の数を削減することが可能になる
爆撃機から直接、長射程のミサイル射出じゃ駄目なんだろうか。
索敵&照準が出来ないって事かな?AWACS随伴とか。
無人機にその機能持たせたらコストかかりすぎ&使い捨てじゃもったいなすぎ&機密漏洩になるんではないだろうか……