米ジェネラル・アトミックスは6日「DARPAに選定され、詳細設計と地上試験で構成されるLongShot Programのフェーズ2に進む」と発表、順調に進めば2024年にプロトタイプ製造や飛行試験で構成されるフェーズ3を開始するらしい。
参考:GA-ASI Continues LongShot Support
こういったモノになる分からないコンセプトに投資できるのが米軍の強みなのだろう
米国防高等研究計画局(DARPA)は2021年2月、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型の無人航空機(UAV)を開発するため「LongShot Program」を開始、ジェネラル・アトミックス(GA-ASI)、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの3社に予備設計(フェーズ1)を行うための契約を授与して作業が進められていたが、GA-ASIは6日「DARPAに選定され、詳細設計と地上試験で構成されるフェーズ2に進む」と発表した。
このLongShot-UAVとは「空対空ミサイルを運搬する空中プラットホーム(DARPAは空中発射型UAVと説明しているが、、、)」というべき存在で、GA-ASIは「有人戦闘機における空対空戦闘のパラダイムを変える」と主張しており、オーストラリア空軍とボーイングが開発を進めている戦闘機随伴型の無人戦闘機「MQ-28A ゴーストバット」や、米空軍研究所のLCAAT (低コスト航空用航空機技術) 計画に基づきクラトスが開発した「XQ-58 ヴァルキリー」とは役割りが異なる。
シンプルに言えば有人戦闘機とミサイルの組み合わせで優位を競う従来の空対空戦闘に、LongShot-UAV=空対空ミサイルを運搬する空中プラットホームを追加することで「先に撃つ(味方に空対空ミサイルを先に発射する機会の獲得)」を実現し、空対空ミサイルの長射程化では実現できないほどの優位性をもたらすのがLongShot-UAVだ。
そのためDARPAがLongShot Programを通じて実証したいのは「飛行中のLongShot-UAVから空対空ミサイルが問題なく分離できるか」であり、フェーズ2ではこの点を風洞試験を重点的にテストして詳細設計に反映させる予定で、2024年にはプロトタイプ製造や飛行試験で構成されるフェーズ3を開始するらしい。
因みにフェーズ2にGA-ASIだけが進んだのか、ロッキード・マーティンやノースロップ・グラマンもフェーズ2に進んだのかは不明で、DARPAが提唱するコンセプトを米空軍が採用するのかも分かっていないが、こういったモノになる分からないコンセプト(プログラムを通じて開発された技術は無駄にならない)に投資できるのが米軍の強みなのだろう。
Gambiも2024年に初飛行予定で、アバロンエアショーではMQ-9BにJSMを追加したイメージを公開
GA-ASIが提案していた共通コアを基づく無人戦闘機「Gambit(ガンビット)」は今年2月「米空軍研究所(AFRL)が主導するOBSSプログラム下でプロトタイプの製造とテストを行うらしい」と報じられていたが、AFRLの関係者は「2024年にGambitの初飛行を計画している」と明かしている。
The @AFResearchLab is projecting first flight of Gambit “in first half of FY24.”
Gambit will prove that an aircraft can be designed, built, & adapted based on a shared core, or chassis, leveraging rapid commercial production techniques. #AFAColorado
https://t.co/hQjs5mHRKE pic.twitter.com/NW8zit0y1D
— GA-ASI (@GenAtomics_ASI) March 6, 2023
Gambit 1 is a nimble sensing platform designed for long endurance. It can accompany other unmanned aircraft or join with human-crewed aircraft on the leading edge of a strike package, serving as the initial eyes and ears for the air group. 2/6 pic.twitter.com/gATK9z9qT1
— GA-ASI (@GenAtomics_ASI) March 7, 2023
Gambit 3 is optimized for a complex adversary role. It will support training exercises against some of the most capable U.S. systems, including integrated air defense systems and current 5th-gen tactical air assets. 4/6 pic.twitter.com/ewbN9Y7Ovp
— GA-ASI (@GenAtomics_ASI) March 7, 2023
Using rapid commercial production techniques, like those seen in the auto industry, each Gambit variant will share a common core, or chassis, to ensure reliability and lower production costs. 6/6
Learn more: https://t.co/JfRVYUzF02 pic.twitter.com/63qQ1DkQxl
— GA-ASI (@GenAtomics_ASI) March 7, 2023
あとメルボルン郊外で開催されているアバロンエアショーでGA-ASIはMQ-9BにJSMを追加したイメージを公開、これは概念的なもので本当にJSMの追加が決まっているという訳では無い(恐らくJSMのセンサー開発にオーストラリアが参加しているため、その辺りを配慮したGA-ASIの演出に近い)が、プラットホームの将来性た発展性を示唆するため注目を集めている。
Securing the Indo-Pacific requires aircraft that do more and go farther.
Learn how #MQ9B goes the distance at #Avalon2023 booth 3M11. pic.twitter.com/NJOYnUbw9s
— GA-ASI (@GenAtomics_ASI) February 28, 2023
関連記事:米軍、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型UAV「LongShot」開発を発表
関連記事:これは無人戦闘機?ノースロップ・グラマンが空中発射型UAV「LongShot」案を公表
※アイキャッチ画像の出典:GA-ASI
これはコンセプト的にレーダーは付いてないのかな?
だとすると旧来通り前進して敵機を捕捉する戦闘機が必要だし、「先に撃つ」を実現できない気がする。
捕捉する前にいそうな所に先に撃っておくのだろうか?
本記事の参考元(ジェネラル・アトミックスHP>ニュース$メディア)で次のように解説されています。
>It is envisioned that LongShot will increase the survivability of manned platforms by allowing them to be at standoff ranges far away from enemy threats, while an air-launched LongShot unmanned aerial vehicle (UAV) efficiently “closes the gap” to take more effective missile shots.
(訳)
LongShotは敵脅威から遠く離れたスタンドオフ範囲にいることを可能にすることで有人機の生存率を高め、空中発射されたLongShot無人機(UAV)が効率的に「間隔を詰める」間により効果的なミサイル発射を行うことが想定されています。
LongShotを戦闘機等の有人機に先行させ、当該有人機が敵戦闘機のミサイル射程に入る前に距離を詰め、有効射程に入った段階でLongShotのAAMを発射し先制攻撃を可能にするというアイデアですね。
一般に レーダー探知距離>>AAM有効射程 ですから、相手がステルス機でなければ母機のレーダーだけでも対応可能ということではないかと。
ありがとうございます。確かに非ステルス機相手には非常に強力な装備になりそうですね。
しかしレーダー探知距離>>AAM有効射程という図式が崩れる対ステルス機の場合、どこまで有効性があるのか疑問です。
AAMの運動エネルギー的には、先行した機体から撃てる分有利ではありますが…。
母機として有人の大型機が必要なことも含め、色々と使いにくそうだなあという感想です。
従来の戦い方をする空軍に対して圧倒的な優位を提供可能、という点でこの手のUAVシステムの登場は必然だと思います。それは例えば機体の機銃や空対空ロケットで爆撃機を迎撃していた時代にサイドワインダーが登場してジェット戦闘機のあり方が変わってしまったことや、同時多目標対処可能なミサイルとレーダーの組み合わせで航空作戦そのものが変わってしまったような変化を将来の空に提供するんじゃないかと思うんです。それが良いことかどうかは別として。
素人個人の考えなのだけれど。
将来の無人機化は必要と思うのだけれども、その前に行うべきことがあるのでは。
今のステルス機の技術を小型機にも適用するべきでは。
今の状況は、F35のような大型機(F4と変わらない)かミサイルかの両極端になっている気がします。
F4現役当時のA 4/6/7に相当する有人の機体がないわけです。
これは、ステルス技術が”いずれ無効化される限定的なもの”と見做されているということでしょうか。
今現在、ステルス機同士の戦闘はまだ起こっていません。つまり前記の”見做し”に対する回答はまだ無いと思えます。
無人機を作るにしても、その前提となる”戦訓”がまだ不足しているように思えます。
これはシュミレーションだけではカバーできないと思うのですが。
ステルス戦闘機同士の戦闘もですが、濃厚に構築された防空網へのステルス爆撃機の攻撃も数えるほどしかありませんよね。
F-117の撃墜はかなりの油断と幸運が重なった結果のようでしたし。
A-6はさておきA-4の単価は20分の1以下、A-7でもほぼ丸一桁下ですからね。
現代の戦場でF-35の20〜10分の1=5億〜10億円かそこらの有人機が生存・活躍出来るとは思えません。
戦闘機1機種を開発するのにかかるコストも当時とは桁違いですし。
強いて言えば運用寿命を犠牲にしてその辺をがっつり絞ってトータルコストを抑制しようというのがデジタルセンチュリー構想だと思いますので、実現すれば何機種目かにはその手の機体(10分の1は無理でも半分か1/3くらいに単価抑えた機体)も出てくるかもしれませんね。
>今のステルス機の技術を小型機にも適用するべきでは。
>今の状況は、F35のような大型機(F4と変わらない)かミサイルかの両極端になっている気がします。
>F4現役当時のA 4/6/7に相当する有人の機体がないわけです。
仮に小型ステルス有人機があったとして、
どのような役割・任務に活かせるのかが、ポイントでしょうね。
開発中の無人機には、それなりにステルス形状のものもありますし、
それらとの役割分担も必要でしょう。
正直、将来的には無人機が主戦力になると思っていますので、
数的に、機体>パイロットとなるでしょうから、
F-35より小型の機体に、貴重なパイロットを乗せる必要性をあまり感じません。
このガンビットがもっとも現実的なUAVコンセプトだと思うから早期に成功してほしい。
ガンビット1が編隊先行用で、爆弾も搭載可能。
ガンビット2が空対空特化。
ガンビット3がアグレッサー。
ガンビット4が長距離長時間滞空偵察機。
といった感じかな。SEAD/DEADもガンビット1でできれば文句なしですね。
昔の話なので今は違うかもですけど、ジョン・ボイドのエネルギー機動性理論によるとミサイルは発射直後に急加速したあとは滑空するものであり、方向転換なんかすると失速します。つまり巴戦状態になるとジェットエンジンで推進し続けられる戦闘機が有利なので、ミサイルを撃たれたら旋回しながら逃げましょうというような話でしたが、このような無人機でミサイルにとって有利な位置(近距離)から攻撃できれば、射程云々はもちろんのこと命中率の向上が期待できそうです。
すいません、失速警察の者です。
>方向転換なんかすると失速します。
仰ってるのはおそらく単なる「減速」あるいは「エネルギーの減少」であって「失速(飛行直線と翼のなす角度が大き過ぎて飛翔状態を保てず翼として機能しなくなる。低速なほど起きやすい)」ではないです。
んで、ご懸念の通り速度・旋回性能の向上した現代の対空ミサイル相手に「巴戦に持ち込む」のはほぼ不可能に近いかと。