日本関連

米国が日本にトマホーク納入遅延を通知か、日本発注分を米軍備蓄に転用する可能性

Washington Postは27日「米軍はトマホークを対イラン作戦で850発以上も発射し、中東地域のトマホーク備蓄は弾薬切れに近づいている」と報じていたが、Bloombergは3日「米国は日本にトマホークの納入が遅れると伝えた」「米国はイラン戦争に必要な物資確保を最優先事項としている」と報じた。

参考:Japan – Tomahawk Weapon System 
参考:Japan’s Order For Tomahawk Missiles Delayed by US Use in Iran

米海軍のトマホーク備蓄量を考えれば海自納入分を転用してきても不思議ではない状況

日本は反撃能力を確保するため事実上の国産巡航ミサイル「12式地対艦誘導弾・能力向上型(地発型、艦発型、空発型)」の開発・配備を進めており、地発型に関しては熊本県の健軍駐屯地に所在する第5地対艦ミサイル連隊への配備が始まったが、護衛艦への艦発型配備は2027年度から始まる予定で、小泉進次郎防衛相は3月13日の会見で「海上自衛隊へのトマホーク納入が始まった」と明かしていた。

これは12式地対艦誘導弾・能力向上型の実用化が2026年度以降になると予想されているため、2022年に反撃能力の早期確保を目的としてトマホーク Block Vの400発導入が発表され、2023年に取得するトマホークの種類をBlock IV×200発とBlock V×200発に変更、米国務省も2023年11月「日本に対するトマホークと関連装備の対外有償軍事援助(FMS)による売却を承認した」「トマホークBlock IV×200発、Block V×200発、トマホーク兵器管制システム×14基、関連機器やサポートを含む売却費用は推定23億5,000万ドル」「この売却にオフセットは提案されていない」と発表。

日本と米国はFMSを通じて2026年度~2027年度まで最大400発のトマホーク取得契約を締結したが、Bloombergは3日「米国は対イラン作戦=エピック・フューリー作戦で数百発のトマホークを消耗した」「米国は日本にトマホークの納入が遅れると伝えた」「米国はイラン戦争に必要な物資確保を最優先事項としている」「3月中旬に小泉防衛相とヘグセス国防長官は電話会談を2回行い、公式声明ではイラン情勢について協議を行いトマホーク供給については触れないが、実際には電話会談でトマホーク供給問題が話し合われた」「米国がトマホーク備蓄の補充を優先させれば同盟国やパートナー国は影響を受けるだろう」と報じた。

国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたTomahawk Block Vaの調達数
調達数FY2024FY2025FY2026
Block Va0055+2
FY2026の通常予算で調達するTomahawk Block Vの数は55発、議会が許可した特別予算から調達するTomahawk Block Vの数は2発、米海軍が調達するTomahawk Block V(MK.14キャニスターや関連費用を除く)の推定単価は249万ドル。新造のBlock Vb発注は0。生産ラインを維持するための最低生産率は60発~90発。新規生産のリードタイムは最大24ヶ月。

この報道について国防総省や防衛省はコメントを拒否し、RTXも「日本にトマホーク納入が遅れると通知されたのかどうかは知らない」と述べているが、米国は新規製造のトマホークBlock VをFY2024とFY2025に発注しておらず、FY2026に57発しか発注していない。Block IVからBlock Va/Vbへの転換生産はFY2024にBlock Vaを274発、FY2025にBlock Vaを252発、FY2026にBlock Vaを237発とBlock Vbを23発発注したが、これは保有するBlock IVをBlock Va/Vbにアップグレードするだけなのでトマホーク備蓄が増える訳では無い。

米国のトマホーク推定備蓄数は保管中のBlock III(推定200発)と合わせても3,360発+、約4週間のエピック・フューリー作戦で850発以上(FY2026の発注率換算で14年分)を消耗したため、備蓄数は2,000発台に落ち込んでおり、FMS契約の権利(自国の安全保障に影響を及ぼす事情があれば合意された武器取引の条件から逸脱することができる)を行使して「海自に納入するトマホーク」を「米海軍の備蓄」に転用しても不思議ではなく、既にトランプ政権はスイスに対してFMS契約の権利を行使している。

国防総省のFY2026予算説明資料の中で言及されたTomahawk Block IVからBlock Va/Vbへ改修数
調達数FY2024FY2025FY2026
Block Va274252237
Block Vb0023
Tomahawk Block IVからBlock Va/Vbへ改修は中間寿命再認証とアップグレードの同時実施。FY2026に米海軍が調達するTomahawk Block IVからBlock Vaの推定改修単価は63万ドル、Block Vbの推定改修単価は84万ドル。転換生産のリードタイムは12〜18ヶ月。

ちなみに、FMS契約の権利を行使すると「FMS契約で合意した武器取引の条件変更に関する通知や条件変更に関する説明義務」が発生するが、米国はスイスに対するパトリオットシステム納入遅延の説明義務=変更された納入期日について「3週間後に通知する」「2025年12月までには通知する」「2026年1月までには通知する」と通告したものの、実際に通知したのは納入遅延発表から8ヶ月後の2026年2月で、日本へのトマホーク納入遅延が事実なら同じ目に遭うかもしれない。

関連記事:米軍は対イラン戦でトマホークを850発以上消耗、現在の発注率換算で14年分
関連記事:日本が導入するトマホークは最新のBlockV、調達スケジュールは挑戦的
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jonathan Sunderman/Released

トランプ政権は来年度の国防予算に約239兆円を要求、F-35調達数もほぼ2倍に前のページ

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コメント

  • コメント (18)

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    • 無印
    • 2026年 4月 03日

    トマホークにオールインじゃなく、作っておいて良かった25式SSMと25式滑空弾…

    13
      • 名無し3
      • 2026年 4月 03日

      よかったというか元々国産スタンドオフ兵器が揃うまでの繋ぎっすね

      8
        • 名無し
        • 2026年 4月 03日

        繋ぎのはずが、後追いになってしまいそう!

        17
          • にわか
          • 2026年 4月 03日

          それはそれで発注したトマホークキャンセルした方が良い・・・

          5
            • 名無し
            • 2026年 4月 03日

            スイス「それ、オレの顛末を知ってて言ってるの。。。?」

            4
    • 名無し
    • 2026年 4月 03日

    いや、別にそんなの発表せずに、自衛隊にはつつが無く納品しましたって言って、発射筒の中に抱き枕でも詰めておいて頂ければ、抑止力としては機能したのに。。。。。

    16
    • L
    • 2026年 4月 03日

    スイスの記事にもコメントしたけどやっぱりな♂って感じだ
    日米同盟があるからアメリカが助けてくれる神話を信じてる人は目を覚ましたほうが良い
    助けるという言葉を信じて、それは中国とアメリカの全面戦争を許容するという意味に捉えているなら、勘違い

    25
      • SB
      • 2026年 4月 03日

      アメリカがいざという時に同盟国を見捨てる国なら、イスラエルなんてとっくに見捨てて、イランへの攻撃も起きて無いと思うんだよね

      2
        • ななし
        • 2026年 4月 03日

        イスラエルと日本じゃ同盟国としてのレベルがちげーだろ

        24
    • 暇な人
    • 2026年 4月 03日

    ブルームバーグの記事で見たけどやっぱり遅れるのかあ、いやそもそも届くのか?
    金返してもらって国内の地下のミサイル工場作った方がよくないか?

    9
    • SB
    • 2026年 4月 03日

    『FMS契約の権利(自国の安全保障に影響を及ぼす事情があれば合意された武器取引の条件から逸脱することができる)を行使』と書いてるあるけどこれ勘違いしてないかしら?

    他国向けの製品を米軍優先にするのはDPAであって、FMSの逸脱の条項は「手続きの簡略化」とか「納期の延長」だよ

    ちなみにDPAで許されてる米軍への納品優先は、法律上は完成品の取り上げまでOKだけど、実務上は生産スケジュールの後ろ倒しが大半で、ロットの振替は契約の変更や外交説明、完成品の取り上げはほぼ例外中の例外だから、「海自に納入するトマホーク」を「米海軍の備蓄」に転用はまずないと言っていい

    5
      • SB
      • 2026年 4月 03日

      もう少し詳しく説明するとFMSはそもそも全て見込み納期で、最初から遅れる可能性込みで合意している
      だから日本向けのトマホークの生産を後回しにしますとしても何も問題ない、契約の範囲内

      ロット振替は結構問題になる
      なぜかと言うと契約で、数量や調達枠とか価格構造(このロットならこういう理由でこういう価格になります)が決まってるから、ロットを変更すると契約履行の内容そのものが変わる
      これはFMSで認められてないので再度相手国と契約内容を調整しなきゃいけなくて大変

      完成品の取り上げは一番ヤバい。なにせ契約履行そのものの否定だから
      そもそも引き渡し前でも受領権が具体化してるので財産の剥奪に近いし、もう相手国は受領前提で戦力計画を立ててるから外交問題になる

      9
      • L
      • 2026年 4月 03日

      最悪の想定で外交問題になる程度、アメリカは恐れてないように見える。関税で恫喝する国やぞ。
      その日 アメリカの同盟国は思い出した。ヤツらに支配されていた恐怖を⋯ 鳥籠の中に囚われていた屈辱を⋯⋯。
      支配は大げさだけど、同盟っての歴史をみてもわかる通り都合が悪くなったら破棄される程度の決め事でしかない

      1
    • バーナーキング
    • 2026年 4月 03日

    よし分かった、じゃあその金でライセンス生産させてくれ、もちろんライセンス料は格安で…と言いたいとこだが「今トマホーク」だとあんまりありがたくないなぁ。
    その分の設備投資で25式×2増産した方がいい。

    8
    • たむごん
    • 2026年 4月 03日

    国産のミサイル作っといてよかったですよね。

    南西諸島~本州にかけて、各種射程のミサイルを、びっしり配備していってるわけですから。

    5
    • tsr
    • 2026年 4月 03日

    導入を1年でも前倒ししたいから「ブロックⅣでいいから早く売ってくれ!」って話だったのに、それが崩壊するなら今後納入する物は全量ブロックⅤにしてもらいたいもんですね、心象的に…

    1
    • YF
    • 2026年 4月 03日

    現状日本側のトマホークのプラットフォームが限られる為、最初の納入済の数がどれぐらいか分かりませんが、残りの納入の遅延が戦力化に大きな問題にならないとは思います。
    全イージス艦に搭載するといっても、次のこんごう級代替艦6隻も含んでの話でしょうからだいぶ先の話ですよね。
    結局自前で何とかするしかないわけで、日本は粛々と25式地対艦誘導弾の配備、艦載型、空発型の開発を急ぐべきだと思います。

    • 朴秀
    • 2026年 4月 03日

    予想通りと言うかなんと言うか
    国産装備の開発を続ける必要性が分かりますね…

    14

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