欧州関連

イタリアメディア、トランプ大統領のクビ宣告でメローニ首相は救われた

トランプ大統領はメローニ首相に対して「もはや以前と同じ関係ではない」と批判を繰り返しており、イタリアメディアも反米論調が一気に高まって「ホワイトハウスと誰が最も親密であるかを競うチキンレースは終わった」「もはや誰にとってもその競争に意味はない」と辛辣に指摘した。

参考:Quel “You are fired” che aiuta la premier
参考:Ft: “L’Iran ha usato un satellite spia cinese per attaccare basi Usa”. Trump ancora contro Meloni

トランプ政権はイタリアとハンガリーを失い、欧州やEUに対するトランプ政権の影響力は大きく後退した

イタリアのメローニ首相はトランプ大統領のレオ教皇批判や対イラン作戦への協力拒否批判を受けて「2006年に承認されたイスラエルとの防衛協力合意を自動更新しない」と発表し、トランプ大統領はFox Newsの取材に「NATOは我々のために存在しなかった」「つまり今存在しないなら将来も存在しないということだ」「では、なぜ我々はそこにいるのか?NATOが我々を支援しないのなら、なぜ我々は毎年何千億ドルもNATOに費やしているのか」「イラン問題で我々を支援しないなら、イランよりもはるかに重要な問題でも支援しないだろう」と言及。

出典:Truth Social

さらにトランプ大統領はメローニ首相についても「もはや以前と同じ関係ではない」「はっきりさせておきたいが、イタリアはホルムズ海峡経由で大量の石油を輸入している」と、ヴァンス副大統領もレオ14世教皇の批判に対して「米国がナチスからフランスを解放した時、神は米国人の側にいたのか?私は間違いなくそうだと信じている」と述べ、イタリアメディアもCorriere della Sera紙の報道以来、反米論調が一気に高まっており、La Stampa紙も社説の中で「ホワイトハウスと誰が最も親密であるかを競うチキンレースは終わった」「もはや誰にとってもその競争に意味はない」と指摘した。

“メローニは一つの問題を解決した。トランプの侮蔑的な発言は耐え難い重荷となり、支持率への脅威が増していたトランプ大統領に対する属人的な関係を断ち切った。これは青天の霹靂ではない。おそらく首相はトランプによる教皇への攻撃から政府が反応するまでの9時間の間、この種の反応を事前に評価して予測していたはずだ。そして最終的に自身のため、自党のため、ひいては中道右派全体にとってレオ教皇の道徳的権威を擁護する声明を発表し、ホワイトハウスとの関係を白紙に戻すことが最も有益であると判断したのである”

出典:Giorgia Meloni

“この決裂は突如として表面化したものだが、少なくともローマにおいては長い時間をかけて醸成されていたものだ。国民投票やハンガリーでの選挙結果を見ても分かる通り、MAGA陣営への政治的な接近はもはや利益をもたらしていなかった。同調はしないが非難もしないという綱渡りの外交姿勢では国益の防衛というナラティブを支えきれなくなっていたのだ。戦争や燃料危機に怯える国民に対してシゴネラ基地の使用拒否やイスラエルとの覚書凍結といった措置で明確な立場を示したものの、怒りに満ちた書簡の応酬がこの問題を解決した”

“メローニは関税問題、ガザ情勢、ミネアポリス事件、平和委員会の対応などで失われてしまった「毅然とした指導者」としてのイメージを取り戻す機会となった。トランプにとっては、お気に入りのセリフである「お前はクビだ(You’re fired)」を繰り返し、自身を批判する者がいかなるリスクを負うかを誇示する機会となったのだ。この事態の制度的・実務的な次元はさておき、イタリアの右派陣営は全く新しい領域に突入した。彼らは自らのメッセージ、関係性、欧州および国際舞台における自らの地位を再構築し、さらには政敵からの公然たる連帯にも適応しなければならなくなる”

出典:Orbán Viktor

“下院では野党のシュラインが「いかなる外国の国家元首であっても、我が国と我が政府を攻撃し、脅迫し、敬意を欠くような態度は許されない」と声を張り上げた。ブリュッセルにおいてメローニはオルバンとの仲介役であったが、そのオルバンはもはや権力の座にない。世界に向けては「EUと米国の架け橋である」と自負していたが、その橋も崩落した。もうMAGAというイデオロギー的な拠り所は霧の中に消え去りつつある。メローニは「いかに困難であろうとも私の見据える地平が西側であることに変わりはない」と述べていたが、トランプの反教皇的な介入によって政教分離の境界線が吹き飛ばされたため「西側」という表現は意味をなくした”

“大西洋の対岸においても新たな時代への対応が迫られている。トランプが欧州に持っていた2つの主要な拠点を失った。オルバンは権力を失い、メローニはブラックリストに入れられたのだ。スティーブ・バノンのような戦略家たちが20年にわたって育んできたブダペストとローマを中心とする主権至上主義的国際的ネットワークの構築というプロジェクトは白紙に戻った。MAGA文化は西欧州の根源、すなわちギリシャのポリス、ローマ法、そして人権や個人の尊厳という概念を伴うユダヤ・キリスト教の伝統と衝突する道を辿っている。ミュンヘン安全保障会議でヴァンスが「新たな保安官」と呼んだ男は、この18ヶ月の間に自身のあらゆる友人や同調者を街から追い出してしまったのだ”

出典:The White House

“もしこの決裂に質の高い戦略的フォローアップが伴えば興味深い視点の転換を生み出す可能性がある。それは世界的な混沌の中で欧州が主要な拠り所として再発見されるフェーズ2への移行であり、連立政権内のさらなる結束を生み出す可能性すらあり得る。マッテオ・サルヴィーニですら方針をとっくに転換しており、トランプについて「人間の忍耐にも限界がある」と語っている。そしてこの問題は解決されたのだ。ホワイトハウスと誰が最も親密であるかを競うチキンレースは終わった。もはや誰にとってもその競争に意味はない”

トランプ政権はオルバンの代わりに権力を手にしたペーテル・マジャルとの関係構築を望んでいるが「欧州の一員でありたい」と述べており、ホワイトハウスに復帰してから約14ヶ月間でイタリアとハンガリーを失い、トランプ政権の欧州やEUに対する影響力は大きく後退した格好で、特にシチリア島のシゴネラ基地を対イラン作戦で使用できないのは軍事的に極めて重大で作戦上の柔軟性を大きく損なっている。

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※アイキャッチ画像の出典:Palazzo Chigi-Presidenza del Consiglio dei Ministri

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コメント

  • コメント (8)

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    • 無印
    • 2026年 4月 15日

    このトランプの冒涜的な肖像画は誰が描いたんでしょう、AIにやらせたんでしょうか?

    2
    • たむごん
    • 2026年 4月 15日

    王に続いて、キリストですか…。

    さすがに露骨すぎるので、白衣かプロレスラーの姿にでもしとけばよかったのになあと。

    2
      • たむごん
      • 2026年 4月 16日

      追記です。
      またやったみたいですね…。

      4月15日キリストとトランプ大統領が、並んだ画像また投稿したようでして、もう止めとけばいいのに…。

    • YF
    • 2026年 4月 15日

    これは今年のフランスサミット、トランプ来ない(来れない)かもしれませんね。
    話し合わないといけない事沢山あるんですが…

    2
    • イーロンマスク
    • 2026年 4月 15日

    日本はいつまで耐えられるのかな
    関税問題からこっちよく怒りが爆発しないものだ
    石油製品の現物がなくなってから怒るのだろうか
    その時にはもう遅いのだが

    3
    • 2026年 4月 15日

    ???「トランプはEU(信頼関係)にとっての殺人者だ、ヤツはすごい」

    • SB
    • 2026年 4月 15日

    欧州も大変やね、トランプ大統領がなんか言えばなんか言い返さないと国民が黙っちゃいないし
    アメリカと手を切るのはいいけど、多分トランプ政権が終わっても米国はそのままだと思うけどどうするんだろうね

    2
    • せい
    • 2026年 4月 16日

    日本は欧州と違って周りに味方がいないから、米国から離れようがないんだよなぁ
    取りあえず中間選挙まではのらりくらりやってくしかないね
    もし中間選挙でもアメリカ国民がトランプを選ぶのであれば、腹をくくって中東への自衛隊派遣も視野に入れるしか無いと思う
    トランプと敵対したところで、欧州が大陸を越えて助けてくれるわけでもないし

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