欧州関連

ドイツがウクライナにパトリオット迎撃ミサイルを600発以上供給、ドローン共同生産も

ウクライナとドイツは二国間関係を戦略的パートナーシップに格上げすることで合意し、ドイツはウクライナ支援としてパトリオット迎撃ミサイル×数百発(推定600発以上)、IRIS-Tランチャー×36基、ウクライナ独自の長距離攻撃能力開発、中距離ドローンの共同生産に40億ユーロを投資する。

参考:Сотні ракет для Patriot, deep-strike та mid-strike дрони — узгодили новий масштабний пакет співпраці з Німеччиною на €4 млрд 
参考:Україна та Німеччина розпочинають обмін даними з поля бою
参考:RTX’s Raytheon to deliver Patriot interceptors to Ukraine
参考:Auterion and Airlogix Launch German-Ukrainian Joint Venture to Scale Autonomous Drone Production for Ukraine and NATO Allies

参考:Auterion Airlogix Joint Venture Receives First Contract from Germany for Thousands of Autonomous Strike Systems
参考:Ukraine and Norway Took the First Step Toward a Drone Deal: Volodymyr Zelenskyy and Jonas Gahr Støre Signed the Joint Declaration on Enhanced Defense and Security Cooperation

ドイツはウクライナ支援国が一番欲しがっている宝の山=戦場データの入手に成功した

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、メルツ首相とベルリンで会談して二国間関係を戦略的パートナーシップに格上げすること、ドイツがウクライナ支援としてパトリオットシステムで使用する迎撃ミサイル×数百発、IRIS-Tランチャー×36基、ウクライナ独自の長距離攻撃能力開発、AIを活用した中距離ドローンの共同生産に40億ユーロを供給すること、ウクライナにとって初となる防衛データの交換協定で合意した。

出典:NATO Support and Procurement Agency (NSPA)

MBDAはRaytheon(現在のRTX)と1987年に共同でCOMLOGを設立、 同社はパトリオットシステムで使用するPAC-2弾のメンテナンス(5,000発以上)を請け負ってきたが、2022年11月にGEM-T弾(PAC-2形態で使用する最新の迎撃弾で弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機との交戦能力が向上したタイプ)のドイツ生産で合意、NATO支援調達庁は2024年1月「加盟国が運用するパトリオットシステムの迎撃弾=GEM-T弾調達を一本化して1,000発の供給契約を締結した」と発表し、RTXは2027年までにGEM-T弾の生産能力を年420発にする予定だ。

RTXも14日「ウクライナ向けGEM-T弾を供給する37億ドルの契約を締結した」「今回の直接販売契約(対外有償軍事援助ではない)はドイツのシュローベンハウゼンに新設された工場で生産される」と発表し、GEM-T弾の調達コストは推定400万ドル~600万ドルと言われており、NATO支援調達庁が契約したGEM-T弾×1,000発の契約も関連費用込みで55億ドル、つまり1発あたりの取得コストは550万ドルなので今回の契約=37億ドルで調達するGEM-T弾の数は推定672発となる。

AIを活用した中距離ドローンの共同生産についてはドイツのAuterionとウクライナのAirlogixによる合弁企業=Auterion Airlogix Joint Venture GmbHが中距離ドローン(見た目はShahedによく似たデザイン)の共同生産を担当し、初期発注の生産量は5,000機で納入も2026年を予定しているらしい。

さらに防衛データの交換協定には「ウクライナ軍が使用したドイツ製兵器(PzH2000、RCH155、IRIS-Tなど)の戦闘データに基づく共同分析」「ウクライナ軍が使用するDELTAやその他のデジタルシステムからAIや分析ソリューションの開発・改善に必要な戦場データの提供」が含まれ、単純に言えば「ドイツは兵器の自律性を獲得するAIの訓練に必要な戦場データ(実際のドローンがロシア軍と交戦した際の映像)を手に入れる」という意味で、この戦場データは各国が一番欲しがっている宝の山だ。

出典:President of Ukraine

ちなみに、ゼレンスキー大統領はオスロも訪問して安全保障協力強化に関する共同宣言に署名し、ウクライナはノルウェーでのドローン生産を開始する予定だ。ブルガリアもウクライナとの安全保障協定(10年間)を締結し、ウクライナの防空システムに対する資金援助と兵器の共同生産を行うこと約束した。

スペインとベルギーもウクライナに対して計20億ユーロの軍事支援を約束し、EUのウクライナ支援もハンガリーのオルバン首相が失脚したことで今後スムーズに実施される可能性が高い。

追記:ゼレンスキー大統領は13日の演説の中で新型の対空ミサイルらしきものを公開した。サイズから推測できるのは「中距離用の対空ミサイルではないか」というぐらいしかない。

関連記事:ウクライナの迎撃ドローンはGeran-3の速度に対応、Geran-5も時間の問題
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関連記事:NATO、欧州のパトリオット運用国向けに1,000発の迎撃弾を一括発注

 

※アイキャッチ画像の出典:Auterion

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コメント

  • コメント (15)

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    • たむごん
    • 2026年 4月 15日

    ドイツは、ドンドン防衛力を強化していきますね。
    ドイツ企業が、情報入手により兵器の競争力が強化されていくのか興味深いです。

    ドイツ=ロシア、本国が国境を接していないわけですから、今後どうなっていきますかね?
    10年後の対ロシア外交、ドイツが欧州の盟主として欧州防衛を引っ張っているのか、ガス原油などの取引を拡大して融和に戻っているのか見守りたいと思います。

    4
    • ソロブロマイド
    • 2026年 4月 15日

    我が日本もそろそろ5類型が撤廃されるだろうから、どんどんウクライナに恩を売ってデータを手に入れて欲しい。特に必須なのはゲランのような一方通行ドローンの迎撃データだ。これだけでも欲しい。
    もし対中戦ともなればロシアの比では無いくらいの一方通行自爆ドローンが日本中に降り注ぐ。これの対策を練ったり、迎撃ドローンを開発したりするためにはなくてはならない。旧式の改良ホークやモスボール予定のMLRSなどは全部くれてやろう。なんなら03式中SAMを供与してもいいかもしれない。
    そもそも岸田政権の頃から目玉の飛び出るような民政支援をしてやってるのだから、このくらい御礼でほしい。出来るかも怪しい戦後の復興需要なんていらないから戦闘データを寄越せ

    25
      • ななし
      • 2026年 4月 15日

      >旧式の改良ホーク
      弾薬備蓄規模では未だ主力SAMと推定されるので論外
      >モスボール予定のMLRS
      代替品がないし手放すと再調達困難だから論外
      >なんなら03式中SAMを
      不足してるのだから論外

      8
        • ソブロマイド
        • 2026年 4月 15日

        それを踏まえてもなお迎撃ドローンのデータの重要性が上回りますよ
        ホークも03式もハイエンドの巡航ミサイルや航空機を撃ち落とすためのもので、安価な片道自爆ドローン迎撃には全く適していないのは明らか
        そして中国による日本本土攻撃はどう考えても片道自爆ドローンとハイエンド弾道/巡航ミサイルを組み合わせたものになるのは確実で、後者の守りを重視しすぎて前者への備えを怠っていればイラン戦争の米軍の二の舞を演じることになる。
        日本の国防力が一時的に弱体化する危険は百も承知で、その上でなお片道自爆ドローン対策のデータを得るために、こちらのハイエンド迎撃アセットの一部を差し出す価値はあるとみる。

        11
        • 病まんと
        • 2026年 4月 15日

        どうせ今の日本だとモスボールじゃなくて二束三文でスクラップしてるものの方が多いでしょうしホークやマルス辺りは全部じゃなくても幾らか提供した方が……漸く最近モスボールするらしいってもどうせ倉庫や予算から数が知れてますし
        まぁそれよりも国挙げてウクライナのドローン産業に大金投資するのが確実ですけど

        7
        • バーナーキング
        • 2026年 4月 16日

        改良ホークの廃止は決定して順次進捗中です。
        「在庫が多いからこそ輸出もし易い、意味がある」のに何を持って論外としているのか不明ですね。

        12
        • 特盛
        • 2026年 4月 17日

        いやホークなんて用廃が決まっている骨董品なのでそんなものより実践データの方が遥かに貴重でしょ。

        3
      • シーキャットワン
      • 2026年 4月 15日

      一番可能性としてありえるのは、フィリピンに販売実績のあるJ/FPS-3ではないでしょうか。

      1
    • イーロンマスク
    • 2026年 4月 15日

    もう明確に欧州vsロシアの戦争になってしまった
    米国はイランとの戦争でかかりきり
    肝心の中国はフリーハンドという恐ろしい状態

    20
    • せい
    • 2026年 4月 15日

    無いと思ってたが、ウクライナのEU、NATO入りも実は近い?

    2
    • アンゴラ
    • 2026年 4月 15日

    いくらなんでも気前が良すぎる気がします
    世界中で在庫カツカツのPAC-3迎撃弾を600発なんて、一介の首脳がポンと渡せるような代物じゃない
    見せ金か空手形なのでは?

      • 航空万能論GF管理人
      • 2026年 4月 15日

      PAC-3迎撃弾じゃなくてGEM-T弾

      19
      • バーナーキング
      • 2026年 4月 16日

      輸入国が手持ちの備蓄を売る話と生産国が将来の生産分を売る話は完全に分けて考えた方がいいかと。
      生産国・企業にとっては消費国への輸出は生産体制増強するためにぜひとも欲しいんですよ。特にミサイル等の弾薬類は非戦闘国では備蓄分を作ったらハイおしまいになってしまうので、備蓄可能な量の2割3割やそれ以上を年産できる体制にはなかなか出来ない、ので更新が遅々として進まない、なんてやってる間に陳腐化…、という負のループが普通に発生しますし。

      5
    • あるまじろ
    • 2026年 4月 15日

    数年前に記事になってたドイツで生産するって奴だっけ?
    結局戦争に間に合ってしまったか。いい話ではあるが複雑だ。

    7
    • のーねーむ
    • 2026年 4月 16日

    >ウクライナにとって初となる防衛データの交換協定で合意した。

    え?今までってNATO諸国はウクライナからの実践データ提供無しで兵器類の援助してたの?
    新型ミサイル設計とかもてっきり設計開発自体はNATO加盟国内でやってると思ってたけど、
    ウクライナ国内の研究開発施設まだ生きてんだ…。

    5

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