アルメニアのパシニャン首相はユーラシア経済連合の首脳会談の中で「アルメニアとアゼルバイジャンは領土の相互承認で合意した」と発表、アゼルバイジャンのアリエフ大統領も「和平協定を締結する可能性がある」と発言して注目を集めている。
参考:Հայաստանն ու Ադրբեջանը պայմանավորվել են տարածքային ամբողջականության փոխադարձ ճանաչման շուրջ. Նիկոլ Փաշինյան
参考:Aliyev announces possibility of signing peace agreement with Armenia
参考:Statement on outcome of negotiations between Ministers of Foreign Affairs of Armenia and Azerbaijan
両国の関係正常化に向けた大きな一歩と言えるが、和平協定締結までパシニャン政権がもつかは不明
パシニャン首相は4月「ナゴルノ・カラバフ民族という概念が存在しないため『民族自決に基いて独立した』という主張は成立せず、我々はこの矛盾に向き合う必要がある。我々はマドリッド原則に基いてナゴルノ・カラバフ地域の地位調整に同意したが、アゼルバイジャン領の一部と認めないなら何を調整するのか?我々はアゼルバイジャン領の一部だと認めているのに交渉内容と公の発言が一致しないのは問題で、我々は認識した事実を口にしないことで自身とナゴルノ・カラバフの人々を欺いたのだ」と議会で演説。
モスクワに向う前にも「現政権が何と言おうと政府はアゼルバイジャンの領土保全を認めており、アルメニアは86,600km²(ナゴルノ・カラバフやヒチェヴァン自治共和国を含む範囲)の土地をアゼルバイジャン領と認める用意がある。アゼルバイジャンも29,800km²(国際的に認知されたアルメニア領と一致する数字)の土地をアルメニア領と認める用意があり、この問題について適切に理解しあえれば領土の相互承認が実現する」と述べて注目を集めていたが、遂に公の場で領土の相互承認を発表した。
25日に開催されたユーラシア経済連合の首脳会談でパシニャン首相は「アルメニアとアゼルバイジャンは領土の一体性を相互承認することで合意した」と発表、会議後の拡大会合に参加したアゼルバイジャンのアリエフ大統領も「領土の一体性の相互承認に基づく両国の関係正常化には深刻な前提条件があるが、アルメニアがナゴルノ・カラバフをアゼルバイジャン領の一部と認識していることを考慮して和平協定を締結する可能性がある」と述べたため注目を集めている。
アリエフ大統領が言及した「深刻な前提条件」とは、ナゴルノ・カラバフの処理を和平協定から切り離すため「領土問題」ではなく「当該地域に住むアルメニア系住民の権利問題」に変更、この問題はステパナケルトとバクーとの話し合いを通じて解決されるべきで「この対話を保証するため国際的な枠組みを作ることが重要だ」とアルメニア側は要求しており、アゼルバイジャンからすれば国内問題の処理に「国際的な監視」がつくのは不本意なので「深刻な前提条件」と表現したのだろう。
しかしパシニャン首相が「ナゴルノ・カラバフ地域をアゼルバイジャン領と認める」と政治的に述べているので「和平協定を締結する可能性がある」と付け加えており、アゼルバイジャンも領土の一体性を相互承認する用意があるという意味だ。
2020年の紛争後も国境地域で武力衝突が度々発生するのは「領土の相互承認」と「国境策定」が行われていないためで、この状況を利用してアゼルバイジャンは「和平協定締結=ナゴルノ・カラバフの放棄」に向け軍事的圧力を加え続けており、この挑発に乗れば軍事的に劣勢なアルメニアは不利なので耐えるしかなく、ナゴルノ・カラバフ放棄に向けた国内調整を進めるしかない状況だったが、遂に国際的な場で領土の相互承認(ナゴルノ・カラバフ地域をアゼルバイジャン領と認めたのと同義)を口にしたので政治的に後戻りすることは出来ない。
両国の関係正常化に向けた大きな一歩と言えるが、和平協定締結までパシニャン政権がもつかは不明だ。
因みにパシニャン首相は2022年9月に初めて「ナゴルノ・カラバフ地域をアゼルバイジャン領の一部だと認める協定への署名」に言及、直ぐに国民が「ナゴルノ・カラバフを敵に売り渡すな」と訴えて首相辞任を要求するため首都に集結したことがある。
ただパシニャン首相は「国民は私のことを裏切り者だと罵るかもしれない文書への署名を考えている。恐らく国民は私を権力の座から引きずり降ろそうとするかもしれないが、29,800km²の国土でアルメニア国民が永続的な平和と安全を享受できなら自分がどうなろうと知ったことではない」と述べており、死ぬ気でアゼルバイジャンとの和平協定締結を進める気だ。
関連記事:アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフをアゼル領土と認める用意がある
関連記事:アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
関連記事:アルメニア政府、アゼルバイジャンとの和平条約に関する詳細を発表
関連記事:ラチン回廊封鎖105日目、ロシア軍が停戦違反のアゼル軍に下がれと要求
関連記事:緊張が高まる南コーカサス、アゼルバジャン、アルメニア、イランは一触即発の状況
関連記事:アルメニア、ナゴルノ・カラバフをアゼル領と認め和平条約に署名する方針
関連記事:ウクライナ侵攻で結束するNATO、ロシアの失墜で空中分解寸前のCSTO
関連記事:アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフがアゼル領だと認める協定に署名か
関連記事:アルメニア、有利な交渉を実現するため戦争を決断したと認める
関連記事:アルメニアで数千人規模の抗議集会、ナゴルノ・カラバフを敵に売り渡すな
※アイキャッチ画像の出典:Президент России
アルツァフのアルメニア人保護が課題ですねぇ
アゼルバイジャン領と認めたからといって双国の憎悪は相当なもんですし普通にジェノサイドが起きても不思議じゃない
国際スポーツ大会でも普通に両国の選手で揉め事起きてるし、アゼルバイジャンでも未だに「南アルメニアはアゼルバイジャンの領土だ」って普通に言ってる人おるし
正直、あのアリエフのことだからナヒチェヴァン問題で今後もアルメニアにちょっかいかけてくると思う
とりあえずエルドアンさんこれ以上アゼルバイジャンを焚き付けるのはヤメテ
正直アルメニアは有史以来ひどい目に会い続けてカワイソ
パシニャン政治家の鑑すぎるでしょ
自分の命と引き換えにしてでも、やるべきことをやり遂げる覚悟がキマってる
今どきこんな指導者が世界に何人いるだろうか?
辞任を求める人たちは、自分が前線に立てばいいのに
国民が事態を俯瞰して見れてないってのは某帝国の開戦前を思い起こさせますなあ
最後までご無事を祈っています。
平和維持にNATO軍を入れるしかないな。
ロシアがウクライナの占領地域から撤退する代わりに元ロシア占領地域の平和維持にCSTO入れろって言うようなものだね、端的に言ってアタマおかしいとしか言えんわ
日本で起きても同じ事言えるのかな
おんなじ事言えるわけないじゃん。当然ブーイングでしょ。
だからこの首相は大変だって話だと思うが
力による現状変更云々みたいなことを声高に叫ぶ連中がアルメニアについては完全なスルー
なんでだろうね
日本に竹島返すような話をしてるからねえ。
アルツァフ共和国ってアルメニアすら承認してないんすよ…
確かに力による現状変更は同様に非難されるべきだとは思いますね。
ただ、ウクライナの戦争が注目を集めてしまうのは、国際法に立脚する秩序を本来担保すべき常任理事国かつ大国であると自認するロシアが、国際法下で認められていたウクライナの領土を一方的にぶん殴りに行ったのはやはりインパクトが大きいですし、
これを認めると北半球でも国際慣習が19世紀まで逆戻りしちゃうので皆血眼になって辞めてくれと言ってるわけじゃないかと。
一方で上の方が仰る通りアルツェフは国際法的に認められていないのがアルメニアにとって苦しいところですね。
アフリカや中東の戦争が忘れられがちなのも大抵が内戦や地域紛争の枠を超えないからだとは思います。近年で国際社会が一丸となって侵略戦争に声を上げたのは、湾岸戦争や国境を幅広く侵犯したISISくらいなのかなとも思います。
自分も国際法規の実態を十分に理解してるとは言えませんし、何より心情としては現地に住む住民たちが気掛かりでなりませんが…。
先に手出したのアルメニアだし。
ソ連時代はすったもんだの末アゼルバイジャン所管だったから、基本的には諸外国的にもアゼルバイジャン領扱いで、そうなると停戦しろとは言うが、現状変更にはあたらないのでアゼルバイジャンだけを非難できないのではと。
自分にとって都合が良いか悪いか。それが全てだから
イスラエル?知らない子ですね…
上にもありますが国際的にはアルメニアがアゼルバイジャンの領土を一方的に不法占拠してたのを武力で取り返しただけなんですよ
力による現状変更を最初にやったのはアルメニアです
Wikipediaですが通読してみて下さい。
「ナゴルノ・カラバフ戦争」
リンク
最後に「各国の反応」の項があり、アルメニア支持及びアゼルバイジャン支持国家が記載されています。
それを見ただけで同問題がどれだけ混沌としているか解ると思います。
これ、おかしくない?
日本もアルツァフ承認なぞしてない上に、外交通じてアルメニア側支持なんぞしてないから色々変だぞ。
ちなみに外務省は、一般的なことを述べてるくらいで↓↓↓、この程度の談話置いてるくらい(テンプレ回答的な)
リンク
その通りです。
日本政府は武力行使によらない平和的解決を支持しているだけです。それが今回のアゼルバイジャンの行動を批判していると取れるんでしょう。
アルメニアが力による現状変更で奪取した地域だからじゃないすかね?
まあこれは最初に手を出したのはアルメニア(しかも政府も認めてない連中)ですからね。