欧州関連

アルメニア、アゼル軍による首都攻撃を集団安全保障条約機構に報告か

アルメニア国防省は2日、集団安全保障条約機構(CSTO)に全ての事実を提出すると明らかにして注目を集めている。

参考:Armenia will present everything to CSTO

アルメニアが集団安全保障条約機構に提出する「全ての事実」とは何なのか?

ロシアが主導して設立された旧ソ連構成共和国による集団安全保障条約機構(Collective Security Treaty Organisation:CSTO)は条約加盟国(ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)の安全保障や領土保全を目的にした組織で、加盟国が攻撃を受けると他の加盟国は軍事援助を含むあらゆる支援を提供する義務を有している。

出典:kremlin.ru / CC BY 4.0 CSTO集団安全保障評議会

アルメニア軍とアゼルバイジャン軍の戦いはアゼルバイジャン領から独立したナゴルノ・カラバフ地域(国際的な承認は得られていないがアルツァフ共和国もしくはナゴルノ・カラバフ共和国を名乗っている)を巡る戦いだったため、ロシアを含めたCSTOの対応は曖昧だったと言える。

しかしアルメニア国防省は2日、CSTOに全ての事実を提出すると明らかにして注目を集めており、恐らくアルメニア国防省がCSTOに提出する「全ての事実」とはアルメニアの首都エレバンもしくは西へ約30kmの地点にあるメツァモール原子力発電所方向に向けてアゼルバイジャン軍が発射した弾道ミサイルのこと(まだ事実なのかは未確認だがタイミングが一致する)を指しているのかもしれない。

もしそうならアゼルバイジャン軍の攻撃は完全に集団安全保障条約の第4条に抵触するため、ロシアを含む条約加盟国はアルメニアに対する軍事援助を行わなければならなくなる=アゼルバイジャン軍との戦いに介入することになり、両国の戦いは新しい展開を見せることになるはずだが最大の問題はアルメニアに支援をどのように届けるかだろう。

アルメニアは海に面しておらず周辺をアゼルバイジャン、トルコ、ジョージア(旧グルジア)、イランに囲まれており、ジョージアかイランを経由しない限りアルメニアにアクセスする方法がないのだ。

もっと手っ取り早いのはジョージアがCSTO加盟国の軍や装備の通過を認めてくれることなのだが、ソ連崩壊後に独立したジョージア政府は一貫して反露親欧米政策を採っているため中々難しく、イラン政府も軍事衝突を助長するアルメニアへの武器移送を基本的に認めていない。ただイラン政府はアルメニアへの武器移送をある程度黙認している疑いがあるため、このルートを使ってCSTO加盟国の軍や装備を送り込めれば何とかなるかもしれない。

ただロシアがアルメニアに入るのではなく、国境を接しているアゼルバイジャンを直接叩く場合は非常に話が早い。

果たしてアルメニアが集団安全保障条約機構に提出する「全ての事実」とは何なのか?仮に集団安全保障条約の第4条に抵触する事実を提出された際にロシアや集団安全保障条約機構は動くのか?非常に注目される。

追記:アルメニアのアルメン・サルキシャン大統領がロシアのセルゲイ・コピルキン大使と会談、アルメニア国境及びナゴルノ・カラバフ地域の緊迫した状況を訴えた模様

 

※アイキャッチ画像の出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 ロシア軍の空挺部隊

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    「何が始まるんです?」
    「第三次世界大戦だ」
    が現実になる…?

    11
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      war never changes

      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      NATOは動かないでしょうねぇ

      6
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        トルコがやられたんなら出てくるしかないけど、トルコは茶々入れてるだけですからねえ。
        メリットがない。

        3
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        アメリカか動けば良いのだけれどトランプ大統領がコロナ感染しちゃってるから…。

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    うかつに動けないんのもあるだろうけど
    このままアルメニアが見殺しにされたらロシアや集団安全保障条約機構への信頼性や実効性に不信が付くのでは

    13
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      実際問題、地政学的にアルメニアはロシアから
      陸路でも海路でも援助出来ない立地だから

      やれるとしたら空路での軍事物質輸送と
      兵員輸送と空中管制機と戦闘機、爆撃機
      弾道ミサイルでの航空支援位かな

      5
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        ロシアからアゼルバイジャン侵攻がルートとしてはいけるけど
        ロvsア になるから うーん・・・って感じか

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    いよいよロシアが介入するのか
    物資の支援に留まらず、正規軍が出てきて空爆、みたいな可能性もあるのだろうか?

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    ロシアは今頃、ジョージアのどこを通っていくかサイコロ振っているんじゃないか?
    ロキトンネルから南オセチアからのアハルカラキ侵攻ルート、
    テレク川沿い南下して堂々と首都ティビリ侵攻シルート
    どちらにしろ陸軍投入ならジョージア荒されるの巻
    まぁ、無難に陸軍なしの少数の特殊部隊だけで空爆になるんかな?

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      ジョージアとまーた喧嘩するのか。流石のロシアでもないでしょう。多分。

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    これで何もしなかったら強いロシアの復活なんぞ夢のまた夢だろう。兵器の信用や国家のメンツも丸つぶれやで。

    14
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      でもクリミアで取りに行くスタイルを示して、
      アゼアルで子分救う姿勢も示したら第二次冷戦がほぼ確定になっちゃう気がする

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    どっちが先に手を出したかによって印象変わるな。両陣営とも相手側に攻撃されたと主張してるから真偽の程はわからないけど。
    アゼル側が侵攻してきたなら一定の理解も得られるだろうが、アルメニア側が侵攻して今更助けを求めてるならダサいにも程がある。
    ただ、バックにトルコがいるあたりアゼルバイジャンが先に攻撃してそう(偏見)

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      実はアゼルに隠れて入り込んだトルコ軍の特殊部隊が撃っていたりしてw

      2
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      経緯をも見れば明らかにアゼルバイジャン&トルコが用意周到に準備して仕掛けてる
      煽って撃たせて 「先制された!っ反撃だ!!」っていう茶番だったかもしれんけどね

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    原発を攻撃するのはリスク高過ぎませんかね…
    アルメニアだけの問題じゃなくなるだろう

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      アルメニアのメツァモール原発はトルコ国境から16キロしかない為、アゼル軍が攻撃しようとすればトルコが全力で阻止すると思います。たぶん…

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    係争地は国際的にはアゼルバイジャン領
    なのは事実だし

    クリミア併合したロシアとしては
    自国領奪回の言い分言われたら
    反論できんし筋通らんだろう

    これで本格的にアルメニア領に
    アゼルバイジャンが進軍すれば
    条約機構の防衛義務発生する訳だが

    親ロのアゼルバイジャンを攻撃したくないのは
    本音だろ

    4
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      あと、追加でもしロシアがアルメニア側に
      完全に回ってアゼルバイジャン攻撃すれば

      親イスラエルのアゼルバイジャンが
      イスラエルを仲介してアメリカに
      オイルマネー土産に接近する可能性がある

      ジョージアやウクライナみたいに

      2
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        枯れかけの油田にそんな価値ありますかね

          • 匿名
          • 2020年 10月 03日

          大戦前後開発された油田は貯蔵量減ったが
          カスピ海沿岸の新油田と天然ガスは
          まだまだじゃぶじゃぶでるぞ

          10
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      プーチンが筋を通したことなんかありましたか?

      7
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    ロシア参戦なら、空軍によるアゼルバイジャン領土への航空攻撃と予想します。カスピ海艦隊も出てくるかな…

    5
    • HY
    • 2020年 10月 03日

    「南コーカサス戦争」に発展か。

    これだけ動きが激しく、大胆になっていったのは米軍が中東から引いたことと関係があるかもしれません。遠くない未来、北東アジアからも米軍が引いた場合似たような状況になるでしょう。決して対岸の火事ではありません。

    17
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    小さな戦争が、ロシアvsトルコの代理戦争に発展するのか? ロシアは面子をかけてアルメニアを援助する?
    トルコは反アルメニアの同胞のために直接介入する(もうしてる)?

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    とりあえずは、ジョージアがロシアの動きに緊張してるのは間違いない
    アゼルバイジャン成敗の巻き添えを食らう怖れもあるし

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    ロシアがやれることで最も効果的なのは、ロシア―アゼルバイジャン国境に陸軍を集結させることじゃないですかね。
    これ以上のアルメニアへの攻撃は許さないという威嚇ですね。
    アゼルバイジャンは対応を迫られて、まずは停戦交渉に応じざるを得ないでしょう。
    トルコもロシアとの直接的戦闘状態は望んでいないかと。

    5
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      それでアゼルバイジャンが引くとは思えんがね
      だってそれやってもロシアは戦端開けないでしょ、開いたらトルコ参戦の可能性大だもの、脅しの意味がないよ
      で、新露のアゼルバイジャンが反露国家になっちゃうよ
      そしてトルコ・イスラエルとより深く繋がろうとするだろうね、ロシアにとって最悪の事態になる

      3
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        国際情勢的にトルコがロシアと戦闘になってもその他のNATO諸国は参戦しないでしょ。
        それはトルコも認識しているはず。トルコが後押しして勝手に始めた局地戦です。
        アゼルバイジャンにすれば、自国領から独立したナゴルノ・カラバフ地域の領土回復が認められれば終る紛争ですから、ロシアもトルコも本気で戦う気はありませんよ。
        ロシアはCSTOの盟主としてアゼル側の攻撃継続は見過ごすわけにはいきません。
        ロシアは停戦仲介に乗り出すでしょうが、アゼル側が応じなければ立場上実力行使は已む無しかと。

        3
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    とはいえアゼルバイジャンもロシアの友好国だから、ロシアとしては勘弁してくれという心境だろう。
    ストレスでプーチンがハゲなきゃいいが、ってもうハゲてたかw

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    ロシア軍側の動きが殆ど伝わってこないから攻撃準備を進めている可能性が高い。アメリカなら事前に艦隊や航空隊の移動情報がメディアに伝わり牽制になるけど、今も秘密主義のロシアだと意図的に情報を閉ざしているとしか思えない。
    弾道ミサイルで電力網が寸断され事前に集めた情報を頼りに各軍事標的を爆撃。占領を前提とする場合は発電所や電力設備を攻撃せずメディア中枢を麻痺させるか占拠してしまうのが合理的だけど、どこまで攻めるのかはプーチン次第としか言えない。

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      責めるかしらんけどアルメニアは1日千秋の思いで待ってるだろうな。  

      いや・・まだ来なくて激怒してるか・・・・

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    だからこそアベ政権の戦争法案に反対したんだ。戦争は市民を殺す愚かな行いだ。日本がこのような戦争を率先して行う国にしたくない。絶対に戦争法案に反対だ。

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    なんのかんのいっても、ロシアの国際的影響力はでかいね
    逆にいうと、ここで動かないならプーチンはなめられる

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    ロシアとその同盟国の動きにかかっているかと。
    タゲスタン共和国から南下して、アルメニアまでの回廊を作るのでは⁉️
    アゼルバイジャン→トルコへのパイプラインあるけど地下だし。
    勘だけどカスピ海の艦隊と空軍だけではバックにトルコとカタール、パキスタンもいるし打撃にならないかも⁉️

    • 匿名
    • 2020年 10月 04日

    「えっえ~!」
    「おい、ションベンががかる」
    でしたっけ?

      • 匿名
      • 2020年 10月 04日

      このコメは一番最初のコメに対してのものです。
      何故か後ろに来ちゃった。

    • 匿名
    • 2020年 10月 04日

    っとことはアゼルに侵攻するってこととですね?
    それは最後の手段ではないでしょうか。
    まずはイランからの援助(見公認ですが)、アゼルやトルコの情報提供、巡行ミサイルによるインフラ破壊あたりでしょう。
    ロシアは知らんぷりを決め込みながら。

    • 匿名
    • 2020年 10月 04日

    逆にこれはこのままタイマンだと負けるということの表れでは?

    • 匿名
    • 2020年 10月 04日

    トルコは、ギリシャ・シリア・リビアで紛争中、さらにアルメニアもか。
    ギリシャの件でヨーロッパはギリシャに肩入れし、反トルコに傾いている。
    リビアではエジプトと敵対してる。
    ロシアから対空防衛兵器を購入し、アメリカと対峙したことでF-35生産から外される。
    シリアでは泥沼、イスラエルとも友好的とは言えない。
    今回アルメニアとぶつかれば、ロシアとの関係も危ぶまれる。

    トルコは、反アメリカ・反イスラエル・反フランス・反ギリシャ・反イタリア・反エジプト・反アルメニア。そして今回、反ロシアが追加になるのかな?

    • 匿名
    • 2020年 10月 04日

    トルコってなにやりたいんだろう?

      • 匿名
      • 2020年 10月 04日

      アゼルバイジャンへの友好的影響力を強めるためでは。
      ギリシアと直接対立している関係上背後は固めておきたいでしょ。ロシアが軍事介入しない自信があるのかと。
      アゼルの目的はアルメニアの後押しで独立した元自国領ナゴルノ・カラバフ地域の武力併合です。
      深読みすればロシアも了承しているかもしれません。アゼルもロシアの友好国ですし。
      アルメニア国土への侵攻が無ければロシアは立場上のポーズをとるだけかも。

        • 匿名
        • 2020年 10月 04日

        ご教授ありがとうございました。
        ロシアの了承はあり得ますね。
        浅知恵ですがアゼルのカスピ海対岸のトルクメニスタンも民族・言語てはトルコに近いようです。
        トルコ-アゼルバイジャン-トルクメニスタンのラインでロシアの南下を抑えたいのかなと。

    • 匿名
    • 2020年 10月 05日

    アゼルバイジャンがクラスター爆弾でアルツァフの首都を攻撃したそうです・・・

    • 匿名
    • 2020年 10月 05日

    首都空爆やアルメニア領内への弾道弾攻撃は戦略的な目的なのかと思います。
    戦線後方の要地に対する攻撃能力を持っていて今後も継続する意志があるという威嚇かと。
    要は抵抗を止めろという脅しで、アゼル側は予想以上の損害を受け侵攻が捗っていないのかも。

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