日本関連

日本にとって朗報、インドが防衛装備品の輸入に課していたオフセットを停止

インド政府は海外製防衛装備品の輸入に課していたオフセット条項を停止することを決定、インドへの防衛装備品輸出を狙っている日本にとっては朗報かもしれない。

参考:Rafale deal: CAG pulls up MBDA and Dassault for violating offset clause

防衛装備品の輸入に課していたオフセット条項が履行されない問題、海外企業が悪いのか制度自体に欠陥があるのか

インドは法律によって300億ルピー(約430億円)を超える防衛装備品の輸入には契約金額の30%をインドに再投資することを義務付けており、再投資の手段はインドへの直接投資、無償による技術移転、インド企業が製造した製品の購入など複数容易されている。

出典:Jagan Pillariseti / CC BY 3.0 GTX-35VSカヴェリ

そのためフランスはインドに輸出している戦闘機ラファール36機、契約総額78.7億ユーロ(約9,800億円)の30%をインドに再投資しなければならず、この義務を相殺するため機体を製造するダッソーや搭載兵器を製造するMBDAはインドと国産戦闘機「テジャス」に搭載するため開発中の国産エンジン「GTX-35VSカヴェリ」に必要な先進技術を提供することで合意(※)したが、印会計監査局(CAG)が最近発表した報告書によれば約束していた技術をインド側は今だに受け取っていないと指摘している。

補足:エンジン技術の移転以外にもダッソーが製造する航空機に使用する部品をインド企業と共同生産してダッソーに輸出輸出する内容も含まれているが、こちらの内容は履行済み

さらに印会計監査局は、インドからの受注を獲得するため海外企業は再投資義務を果たす様々な約束を提案したが実際に約束が果たされることは稀で「契約前は真剣に約束を履行することをアピールするが、契約後は約束の履行に真剣に取り組まない」と報告書の中で指摘した。

出典:Indian Air Force / GODL-India

しかも2005年から2018年までに締結されたオフセット契約の価値は6,642億ルピー(約9,544億円)で、2018年12月までに1,924億ルピー(約2,763億円)相当の価値を持つオフセット契約が履行される予定だったが実際に海外企業が履行しようとしたオフセット契約は59%(1,140億ルピー相当)に過ぎず、海外企業が履行しようとしたオフセット契約の内容の62%は契約条件やインド国内の手続きに準拠していなかっため実行されていないらしい。

要するに2018年12月までに実行されるはずのオフセット契約の価値は1,924億ルピーあったのに、実際に実行まで漕ぎ着けられたのは546億ルピーに過ぎないと言う意味だ。

インド政府は印会計監査局の指摘を受けて法律で定められていたオフセット条項の停止を決断、これにより海外企業がオフセットを実行するため要求していたコスト(契約総額の8%~10%)をインドは支払わずに済むため、より低コストで海外から防衛装備品を調達することができると説明している。

防衛装備品の購入にオフセットを要求するのは一般的でフランスだけでなく米国もオフセット契約の要求には基本的に応じており、ここま酷い内容は今のところインド以外では聞いたことがない。

恐らく海外企業側にも問題があるとは思うが、インドへのオフセット履行は海外企業が直接行うことは禁じられているため必ずインド企業を経由して行わなければならず、このパートナー企業探しが足かせになっていると米国が指摘している。

出典:Indian Navy / GODL-India P-8I ネプチューン

ボーイングはインドへの対潜哨戒機P-8輸出に関連してインドと締結したオフセット契約(6億1,420万ドル相当)を7年以内に実施する義務が課せられていたが期限を守ることが出来ず印会計監査局から非難されたが、このとき問題になったのはインド国内で基準を満たしたパートナー企業が見つからなかったためだと説明してしたことがある。

オフセットの内容やインド国内の手続き等に関しては詳しく述べられていないので確たることは言えないが、インドへのオフセット履行率が極端に低いのはインドのオフセット制度自体にも欠陥があるのではないだろうか?

因みにインド政府が停止したオフセット条項は単一企業もしくは政府間との取引に関するもので、複数企業との取引に関するオフセット条項は残されたままだが、日本もインドへの防衛装備品輸出を狙っているため今回のオフセット条項停止は、ある意味歓迎すべき変更だと言えるのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain インド空軍のラファール

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    日本にとって朗報って何が朗報なんだかな
    例えばK9の様に、コスパも性能も優れている物がある韓国にとっては朗報だろうが、日本には他国が欲しがる様な競争力のある装備品なんか無いだろ

    8
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      >例えばK9の様に、コスパも性能も優れている

      K9のエンジンはMTU社製のライセンス生産、トランスミッションはゼネラルモーターズ社製のライセンス生産、サスペンションはHDS社製のライセンス生産と、ライセンス料を含んだ価格から「契約金額の30%をインドに再投資すること」を義務付けられたら更に利益が減るからね。

      性能については、2017年に江原道で射撃訓練中に爆発事故で死傷者が出ており対策が済むまでは何とも。

      22
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      君はもう出て来なくていいよ。ここは君の居場所じゃないからね。

      19
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        下らない釣りをする奴は北朝鮮の領海に放り出そう。人民軍が銃と燃油で処理してくれる。

        3
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      韓国に負けてる事は意地でも認めたくない酷使様が、見事に発狂してるな

      3
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        何をどう負けてるのか詳しく聞かせてもらおうじゃないのw

        14
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        勘違いしてるみたいなので書いておきます。
        日本は基本的に武器の輸出はしません,今の状態はアメリカとの共同開発に支障が出ないようにしただけなので韓国とは違うのです。日本の兵器が嫌いならSM-3ミサイルやSPY-7レーダー、航空機用AESAレーダーなどは韓国で導入しないように、日本企業が共同開発してるので吐き気がして来るハズです。
        陸軍国な韓国が色々やっているのは知っていますけど開発費をかけられなくてライセンス生産品ばかりなのに自慢しに来ても良いことありませんよ。

        14
          • 匿名
          • 2020年 10月 04日

          >日本の兵器が嫌いならSM-3ミサイルやSPY-7レーダー、航空機用AESAレーダーなどは韓国で導入しないように

          兵器版「No Japan」ですね。全く同感です。

          7
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      ただの願望で草

      5
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      半島へお帰り。
      ここはあなたの住む世界じゃないの。

      13
      • 匿名
      • 2020年 10月 06日

      フルボッコで草
      韓国がコスパよし性能それなりのK9を結構輸出してること自体は事実なのにちょっと可哀想だなw

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    いま中国と揉めてるからとりあえずの焦りもあるんでしょ、
    あと、P8契約のくだり、あれは後からあれこれ言い逃れて契約内容を事実上白紙化する、欧米流の策だろうね
    予め知ってる問題を契約成立後に持ち出す手口、
    日本人がバカ正直を自慢してる限り、世界相手の商売にはならないと勉強になるよ

    24
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      確かになー。今の日本にはもうちょっとダーティさが足りないのかもしれん

      ここではよく、韓国やインドネシアの嘘つきぶりが槍玉に上がるが、どこの国も大なり小なりサギまがいの商売はしてるんだよな

      日本サッカーとかわざと転んでファール貰わないのが最大の弱点とか言われてるのと似てる

      14
        • 匿名
        • 2020年 10月 04日

        企業レベルでは「信用第一」は資本主義の割と根幹であって別にお花畑理論でもなんでもないんですけどね。
        なぜ国家間だと通用しなくなってしまうのか。
        日本は無理にグローバルに走るより「信用に基づくハトゲームの成り立つ空間」を構築してその中での繁栄を目指す方がいいだろうね。
        本当の意味での「ホワイトリスト」の作成が必要だな。

        2
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      インドに関する発言については同感
      早い話が、中国との国境紛争で迅速な兵器購入が求められている為、面倒なオフセット契約を停止しただけ
      中国との紛争が終われば元に戻るだろう
      欧米にしても自分が長年培って来た兵器開発のノウハウをインドにやったら自分の兵器ビジネスの首を絞めるだけなので、事実上「お前の言う事は聞きたくない」と言う事でオフセット契約を踏み倒しているだけだろう

      只、日本人は持ち前の馬鹿正直さを「製品の高品質と信頼性」「アフターサービスの丁寧さ」と言う形で実践して来たからこそ日本製品は世界で信頼されて来たのだから、その美徳を捨てる必要は無いと思うぞ
      要は、兵器輸出なんて政治案件であって商売としてはマトモじゃない
      ハッキリ言ってヤクザのシノギみたいな代物だと認識すべき

      7
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    日本側がクソみたいな規制してるからあまり関係ないよな
    紛争当事国には売らねえとか直接攻撃する兵器は売らねえとか
    インドが中国と戦える戦車が必要だからって10式の輸出を要求してきてもどうせ売らねえんだろ

    12
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      兵器なんて紛争で使ってナンボなのにね
      消化器売るのに「火災時には使用禁止」っていうようなもんでしょ?
      まず、日本に対して喧嘩売ってる国にテスト使用してみて効果を証明し
      そのあと紛争国に販売だろう

      21
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        「火災時には使用禁止」って一旦売った物に対する使用制限で、日本にそんな権限も能力も無いから、
        消火器で例えるなら、「火のけのあるところには販売禁止」かな。

        12
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      我が国はどうして自分で自分の手足を縛りたがるのか…

      12
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        負けたからですな

        10
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        防衛省絡みの研究は禁止しながらも、中国の軍事研究には協力容認な日本学術会議とか、ですかね?

        38
          • 赤い巨塔
          • 2020年 10月 03日

          ガースー頑張れ!今こそレッド・パージが必要だ!

          26
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      ドイツもものすごくその編その辺りうるさいから仕方ないね。
      勿論ドルコには売りまくるダブスタしまくりなのもドイツだけど。

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    米国が中国を非難する理由の一つに、技術移転をセットで求めるのが不当、みたいなのがありましたね。
    それに近いものだから、米国陣営に合わせる文脈で中止にした、なんてことはないでしょうかね。

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    単に割高になるだけだと気付いたのと、そこそこの技術はそれなりに自国に蓄えたという話でしょう。そもそも移転しても惜しくないレベルのもんしか移転されないし。
    最先端の兵器が欲しい、また、得られる算段が出来たのかもしれないね。

    何でこのニュースが日本関連なのかがわからないけども。

    11
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      オフセット制約が無くなって、では日本の輸出防衛品目の何がインド需要と噛み合うのかと
      わかんないよな

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    でもインドのグダグダは以前からひどかったし、ホントにインドとこの手のビジネスする必要あるのかなぁ。
    インドネシアもそうだけど、面倒なことになるだけの気がする。

    11
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      インド時空もネシア時空にも巻き込まれたくはありませんな

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    何かここ数週間でコメントの内容が180度変わったなあ

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    兵器って金額はデカいけど相応にコストもかかるので儲けようとするのは何かと大変
    しかも実戦で実績が無いと足元見られまくる
    今イスラエルがドローン売り込みにインドに行ったら
    かなりの好感触得られるだろうな

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 04日

      どこかの兵器みたいに7、8割の開発で済ませて、出荷後に問題があれば延々と改修していくというやり方でコストを抑えている兵器を思い出しました。
      コモディティ化した兵器では他社製の兵器を参考にできるのである程度は有効、しかし、残り2、3割の詰めが甘いため後に致命的な欠陥が発覚するケースがありました。

      日本製の防衛装備ではありません。

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    すると対峙するパキスタンが中国からドローンの大人買いをやらかして、中国が丸儲けする、
    でインドは面白くない
    エンドレスw

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 04日

    この手の記事(話題)だと

    輸出推進派と無理無駄小日本派に分かれてコメ欄が鬱陶しくなるんだよなぁ
    アクセス増えて稼げるから良かったね管理人

    2
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