イランは国境の鼻先で大規模演習を開始、これにアゼルバイジャン側は「なぜイランはアラス川で戦車の渡河を訓練を行うのか?インド洋沿岸やキーシュ島で演習をやれ」と鋭く反発している。
参考:Baku outraged by Iran’s statements and frightened by IRGC military exercises
アルメニアとの国境策定にイランがなぜ干渉するのか?なぜ自転車でも渡れるアラス川で戦車の渡河訓練を行うのか?
ナゴルノ・カラバフ紛争の停戦協定にはアルメニアとナゴルノ・カラバフを結ぶ「ラチンを経由しない新ルートの建設と提供」が盛り込まれており、この新しい回廊には検問が設置されないためアルメニアとナゴルノ・カラバフ間の自由な往来が保障されているのだが、この停戦協定にはザンゲズール回廊の設置も盛り込まれている。
ザンゲズール回廊とはアゼルバイジャン本領と飛び地のナヒチェヴァン自治共和国を結ぶ道路や鉄道のことを指しており、この回廊も検問が設置されないためアゼルバイジャンとトルコはナヒチェヴァン経由で自由に往来が可能になる上、国境に沿って回廊が設置されるとアルメニアとイランの交通が分断される=恐らく回廊の管理権限がアゼルバイジャンに与えられるため「ザンゲズール回廊の設置はアルメニア国境の変更だ」とイランは主張。
最高指導者ハメネイ師も「ザンゲズール回廊が設置されると非友好国のトルコとアゼルバイジャンに囲まれる」と難色を示したため、アルメニアは停戦協定で義務付けられた回廊設置を半ば放棄、停戦協定の履行を保証したロシアも何の措置も講じないため「自力でナヒチェヴァン自治共和国までの道を確保する」とアゼルバイジャンは公言していたが、両国は「領土の相互承認」が含まれる和平条約の締結に向けて動きだしたためザンゲズール回廊の設置が現実味を帯びてきた。
Tensions boiling as Iranian armoured vehicles crossed over a pontoon bridge on the Aras river separating Iran from Azerbaijan during a large-scale military exercise. No border violation occurred as the area that was crossed over is in Iranian territory. Clear show of force. pic.twitter.com/Q4moQNxkqk
— CaucasusWarReport (@Caucasuswar) October 19, 2022
Images from the first day of the Iranian Revolutionary Guards Ground Forces exercise in the general area of Aras.#Iran #IRGC
📸 On Image pic.twitter.com/SF3lmPSJPV
— International Defence Analysis (@Defence_IDA) October 18, 2022
これに危機感を募らせるイランは国境沿いに機械化部隊を展開、さらに今月17日からアゼルバイジャン領から数メートルしか離れていないアラス川周辺で大規模な軍事演習を開始、しかもアゼルバイジャンとイランの国境として機能するアラス川で戦車による渡河訓練まで行っている。
アゼルバイジャン側は「我々とアルメニアはある時代の地図に基いて国境を策定しようと話し合っている。この問題に干渉する権利がイランにあるのか?軽装備の国境警備隊が行う演習ならまだ理解できるが、イランは重装備、大砲、ミサイルを持ち込んで演習を始めており、これは我々に対する力の誇示で容認できない。なぜ自転車でも渡れるアラス川で戦車の渡河訓練を行うのか?インド洋沿岸やキーシュ島で演習をやれ」と鋭く反発しており、両国の国境付近は緊張感が増してきた。
もし和平協定がザンゲズール回廊の設置に踏み込んでくるとイランは今以上に武力を誇示する可能性が高いが、武力行使にまで発展するかは謎だ。
関連記事:イランがアゼルバイジャンとの国境で大規模な軍事演習、焦点はザンゲズール回廊
※アイキャッチ画像の出典:President.az/CC BY 4.0
イランはロシアとアルメニアのお友達だから
なぜイランはそこまでアルメニアの肩を持つんだ?
イラン=アルメニア関係はそんなに良好ではないだろ?
それにイラン国内にはアゼルバイジャン系イラン人もかなりいるし…
意外と知られていませんが、イランとアルメニアは古代パルティアの時代から交流があり、現在でも歴史番組を共同製作できるくらいには宗派や政治体制の壁を越えて良好な関係を有しているそうです。
アゼルバイジャンのアゼリー人はトルコ系、アルメニア人ペルシャ人は印欧系と系統が全く異なる事も理由かもしれません。
ザンゲズール回廊が設置されると、トルコはカスピ海に進軍可能になり、トルコの支援でアゼルバイジャンは強力なカスピ海艦隊の創設も不可能じゃなくなります。
そうなれば友好国のロシアが支配していたカスピ海のパワーバランスが崩れるのは必至。テヘランはカスピ海から近いので、カスピ海のパワーバランスが崩れるのを相当嫌っているのでしょう。
それならイランのこの対応も納得出来ます。
素朴な疑問。今でも船の山越え・陸越えを基準排水量5000t以上の艦船はできるのだろうか?トルコからアゼルまで陸送可能?
今のロシアなら7000t級艦船の陸上輸送も行いそうで怖いですよね。
トルコで揃えた部品をアゼルバイジャンの造船所で組み立てるのが一般的ではないでしょうか。
必要があれば造船所の近代化もすれば良いだけですしね。
ザンゲズール回廊に立体交差なり地下道でくぐれる様にすればいいだろうが…
余計な事に首突っ込むとロシアのお仲間認定されるぞ。
ロシアのことを擁護する気はありませんが、ロシアが押さえつけていたものが溢れ出してきていますね
ロシア崩壊後の世界では火種を誰が抑えるのでしょうか
現在進行系で増えてるじゃないですか
ちなみに面白いと言うと大分不謹慎てすが、火種を吹いてるのがCSTO諸国とその関連国なあたりロシアの押さえつけ方がかなり雑だったのが伺い知れますね
ロシアは文字通り押さえつけてただけなので、いずれ問題は噴出してたでしょうね。
噴出の仕方がロシア自身のやらかしと言うのが何とも言えませんが、、、
イランも国内で女性がデモを起こしてるのに、そんなことしてる余裕あるのか・・・・?
イランも結局は、ロシアや中国みたいに従わない自国民なんて全員KOROしてしまえくらいにしか思ってないのかな・・・?
いやむしろ、国内がそんな状態だからこそやるんですよ。
内憂を外へ向けるのは政治家の常套手段です。
アルゼンチンによるマルビナス紛争も、タイとカンボジアのプレアビヒア紛争も、ホンジュラスとエル・サルバドルのサッカー戦争も、韓国で反日運動が盛り上がる時期も。全部そう。
だいたい国内に問題が起こると民衆の目を逸らすために外に敵をわざと作るんです。
イランは2000年代にも民主化運動のデモ隊に実力行使して大勢殺傷してますし、かつてのイラン・イラク戦争では旧王政時代の人間を大量に粛清したり、地雷原を突破するのに動員した民兵を歩かせたりもしました。
だから「そういう国」なんです。イランの宗教政権が「ならず者国家」と揶揄されるのはそれだけの理由があります。
ザンゲズール回廊で懺悔する。
国境での演習は威嚇とは思うが威嚇と見せかけて全面侵攻した事例がすぐ近くで起こってるので怖いねえ
アルメニアの強硬派が「イランと挟み撃ちにできれば一発逆転」とか言い出して終戦交渉をひっくり返してくるかも