フランスのコロンナ外相は3日「軍事装備の供給に関する将来の契約についてアルメニアと合意した」と発表、これに対してアゼルバイジャンは「和平協定を話し合うスペイン会談」を拒否する構えで、領土保全に不安を抱えるアルメニアにとって厳しい状況だ。
参考:Азербайджан отказался от пятисторонней встречи в Гранаде
参考:President Ilham Aliyev refuses to visit Spain
スペイン会談を拒否することで「アルメニアとフランスの接近を阻止したい」と考えているのかもしれない
アゼルバイジャンのアリエフ大統領は先月20日「南コーカサスは何世紀も血なまぐさい衝突を繰り返したがもう沢山だ。遠く離れた所から自らの政治的利益を追求し、その道具としてアルメニア人を利用し、搾取し、売り飛ばす勢力、詐欺師、腐敗した政治家に南コーカサスから手を引くことを要求する」と述べ、アルメニアについても「対テロ作戦期間中の立場には希望を感じられる。アゼルバイジャンとアルメニアが問題を解決して和平協定に調印し、南コーカサスの国々が将来に向けて協力を開始する日が遠くないという希望だ」と言及。
対テロ作戦期間中の立場とは「アルメニアがアルツァフ共和国への支援や戦いに介入しなかったこと」を指しており、アルメニアとアゼルバイジャンは5日にスペインで首脳会談を行う予定になっていたが、Interfax Azerbaijanやアゼルバイジャンメディアは4日「アリエフ大統領がスペイン訪問を拒否した」と報じている。
メディアの話を要約すると「最近のEU、フランス、ドイツ、アルメニアの言動は反アゼルバイジャンを増長し、特にコロンナ外相の発言はスペイン会談の幻想を打ち砕いた。そのためアゼルバイジャンは会談への出席を拒否する。我々はフランスが参加する如何なる形式の協議にも参加しない」と内容で、フランスとアルメニアが発表した「軍事装備の供給に関する合意」にアゼルバイジャンが反発したのだろう。

出典:ՀՀ արտաքին գործերի նախարարություն
フランスのコロンナ外相は3日「軍事装備の供給に関する契約についてアルメニアと合意した。これによってフランスはアルメニアが自国領を防衛するための装備を将来提供できるようになる」と述べており、これを「アゼルバイジャンに対する敵対行為」と認識したという話だ。
ナゴルノ・カラバフ地域を巡って争い続けてきたアルメニアとアゼルバイジャンの間には「国境の策定」や「領土の相互承認」が存在せず、両国の軍事力に大きな差が生じると力のバランスが不均衡になり、アルメニア国境でアゼルバイジャン軍の挑発(国境も領土も互いに承認していないため主権の侵害を主張しにくい状況)が頻発し、アルメニアは和平協定を締結しないかぎり「領土保全」に不安定を抱えたままになる。

出典:The Prime Minister of the Republic of Armenia
逆にアゼルバイジャンは和平協定の締結を急ぐ必要はないため、スペイン会談を拒否することで「アルメニアとフランスの接近を阻止したい」と考えているのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:President of the Republic of Azerbaijan
ウクライナを見捨てかねない何処かの欧米諸国とは違って、アゼルバイジャンは筋道立てた主張と巧みな外交手腕による味方作りや石油をバックボーンとした軍備増強で、アルメニアを着実に追い詰める手腕は首尾一貫していて流石やなと感じる
もしかするとアリエフ大統領って、今の世界のリーダーの中でも出色の存在なのでは?
力がなく、信頼できる仲間がいないと一方的にやられ放題のサンドバックになるしかないという厳しい現実…
再三の制止を無視して国際的に他国領とされる地域を侵略したり、旧ソ連諸国の仲間が派遣した停戦監視団の乗るヘリを撃墜してろくに謝罪しなかったり、他国の仲介で成立した平和的解決の合意履行を放置し続けたり、安保の要である同盟国を戦前から批判し続けたりしただけなのに世界は厳しいですね。
アゼルバイジャンはこの勢いのまま飛地のナヒチェヴァン自治共和国とを繋ぐ回廊を実力を持って作る可能性があるみたいな書き込みを見た事が有るけど、流石にそんな事はしないよね?
アゼルはちゃんと、ロシアとイランを含めて、世界各国が非難すれども、武力介入はしてこない温度感測って行動する国だと思いますよ。
具体的には、アルメニア国民を感情的にキレさせて、アルメニアからアゼルに開戦する挑発をしてくるはず。
最終的には、セヴァン湖岸からナヒチェバンを繋いで、アルメニア側を大きく分断する回廊を作ろうとするんじゃないかな。
そこまで内陸寄りだと、イランも武力行使しづらい&イランとアルメニア国境を接するという体面も保てるため。
どんなことでも無いとは言い切れませんが、国際的に認められた自国領土を取り戻すのと、たとえ相手が合意の履行を放置していようと他国領を侵略するのでは国際社会の反応は天と地ほど違います。
内政だけでなく外交も含め30年近く堅実に事を進めてきたアリエフ家であれば、下手な事をする可能性は低いのではないかと。挑発や圧力ぐらいなら多発するでしょうけど。
ロシアが何もしなかったのは、アゼルバイジャンが侵攻したエリアが係争地のナゴルノ・カラバフだからと言われてるし
ロシア自体あの場所のことは認めていないから、中立の立場でいたけど流石にアルメニア本土に手を出そうとしたら何らかの具体的に行動を取ると思うんだよね、ベラルーシにやったみたいに核兵器を供与するとか。
こういうのはさ、先に和平会談を進めてアゼルバイジャンが後戻りできなくなった段階でフランスとの軍事合意を発表して相手を揺さぶるってのがセオリーだろ
そら会談前に手札見せたら相手は交渉の場に出てくるはずがないし、交渉が進まなくて困るのはアルメニアじゃん…
ちょっと外交下手すぎじゃないか
面白がって、キライな国の裏庭にマッチで付け火する国(成果が出るとは遊んでる側も思ってない)と、浮力あるわけねえ稾にすがる溺れた国、という構図にしか見えないんですよね。。。
ザンゲズル回廊を認めた時点でイランとの関係(場合によっては対露にも波及)及びエネルギー政策が破綻しかねないのですが、和平合意を進めて後戻りできなくなるのはどちらなのでしょうか。
仰る通りです。
アルメニアが、アメリカやフランスに最悪のタイミングで接近して、得られるものも大してないのに理解できません。
ロシアが、アゼルバイジャン支持に動くような事を、わざわざ繰り返して何がしたいのかなあと…。
フランスのアルメニア支援表明には驚きましたが、案の定アゼルバイジャン側の態度を硬化させましたね。利益に目がくらんだ浅慮なスタンドプレーで状況を不可逆的に悪化させてしまうのはいかにもフランス外交です。
ですが本当に笑い事ではなく、アルメニア側の抑えが効かなくなったら今度こそアゼルバイジャンはアルメニア本国を削り取る大義を得る事になりかねません。国際社会の放任によって状況が均衡して死人も出ない状態になったのに、なぜ無関係の外国が喚きながら乗り込んでくような真似をするのか理解に苦しみます。カフカスとフランスには何の関係もないですし、フランスの大国コンプレックスがそうさせているのだとすれば、その事によって余計な犠牲や損害を強いられるカフカスの人々が不憫です。
良く分からんがアゼルはアルメニア本国にも侵略する気満々って理解でいいのだろうか
時間稼ぎをしつつ他国を引き込みザンゲズル回廊を含む過去の対話の撤回・放置を目論むのであれば、圧力や挑発を続けることでパシニャン政権(に対する国内感情)を不安定化させるという脅しの意図はあるのではないかと。
望ましい展開かはともかく、最悪アルメニアが暴発したところで対処は可能ですし。