ウクライナはEU軍事支援パッケージを手に入れるためハンガリーに譲歩(戦争支援国・企業リストからのOTP銀行除外)したものの、シーヤールトー外相は「二度と登録しないという保証が必要」と述べ、まだ軍事支援パッケージを承認しないと言及した。
参考:Hungary’s foreign minister hints that Budapest will continue blocking EU military aid to Ukraine
安心できるような結果とは何なのか不明だが、曖昧な目標設定の交渉は幾らでも引き伸ばすことが可能
ウクライナ国家汚職防止庁は5月「ハンガリーのOTP銀行がロシア国内の事業を継続しているため『国際的な戦争支援国・企業リスト』に登録した」と発表、これを受けてハンガリー政府は「リストからOTP銀行が除外されない限り、ウクライナ向けのEU軍事支援パッケージ(5億ユーロ)の拒否権を撤回しない」と宣言、最終的にウクライナは「拒否権の撤回」を期待してOTP銀行のリスト除外を決定したが、ハンガリーのシーヤールトー外相は「二度とリストに登録しないという保証が必要だ」と述べた。
シーヤールトー外相は「ウクライナ国家汚職防止庁がOTP銀行をリストから除外したのは『正しい方向への第一歩』だが、ハンガリーが公の場でウクライナに対する態度を変更するには追加の保証が必要だ。このような決定が二度と下されないことを保証する交渉をブダペストで早急に開始したい。交渉で我々が安心できるような結果が得られれば相応の措置(拒否権を撤回)を検討しなければならない」と語り、リストからの除外だけではEU軍事支援パッケージを承認しないという意味だ。
ハンガリーが要求する「安心できるような結果」とは何なのか不明だが、曖昧な目標設定の交渉は幾らでも引き伸ばすことが可能で、ウクライナはハンガリーに足元を見られているとも解釈(国際外交でこの種の要求や交渉は日常的な光景)できる。
因みにオルバン首相は「ウクライナのEU加盟交渉が12月までに開始される」というニュースについて「交戦状態にある国と加盟プロセスを開始するのは非現実的だ」と、先週の会議でも「ウクライナ西部に住むハンガリー系住民の言語権が回復されない限り、如何なる国際問題でもウクライナを支持することはない」と述べており、ウクライナはEU加盟国としての拒否権(承認権)をもつハンガリー説得に相当手こずるだろう。
追記:ハンガリーはEUの「対ロシア制裁」や「ウクライナ支援」に反対もしくは消極的な姿勢を取り続けているが、最終的に反対票を投じたことは1度もない。しかしオルバン首相は「法の支配への懸念からブロックされているハンガリー向け資金の開放がなければEUの予算増額には応じない」と主張、このブロック解除を巡ってハンガリーに批判的な加盟国や欧州議会と摩擦が発生し、スムーズな議論や承認の妨げになっている。
関連記事:侵攻587日目、戦場に目立った動きはなくウクライナ支援は変化の兆し
関連記事:米紙、スロバキアの選挙結果はゼレンスキー大統領への圧力になりうる
関連記事:露調査メディア、DMG MORIの露法人は軍需産業に製品を売り続けている
※アイキャッチ画像の出典:Derzsi Elekes Andor/CC BY-SA 4.0
ウクライナの外交官の心労や如何に
外交上EUの全ての国に対して圧倒的に不利な立場に置かれるなんてね
ウクライナが欧州でまともに交渉できる国はモルドバ(とアルメニア)ぐらいしかないんじゃないか
ハンガリーには去年欧州最大級かつインターモーダル輸送対応の貨物駅が開設されたこともあり、同国が許容可能な産品のみでも円滑な輸送が行われればウクライナの輸出にとって大きな助けになるでしょう。
しかしEUからの資金を盾にやり合うこの手の交渉は時間がかかるのが常なので仕方ないですね。
ウクライナの立場は、非常に難しいですね。
ハンガリーのような小国に、言語問題について内政干渉を受けているわけですから。
これが認められれば、ポーランドも似たような要求をするかもしれませんね。
>「ウクライナ西部に住むハンガリー系住民の言語権が回復されない限り、如何なる国際問題でもウクライナを支持することはない」
ウクライナの西部は歴史的に民族主義が激しいのです。
ハンガリー系住民の弾圧も少しだけあるのです。東部のロシア系のように虐殺(住民側の視点では)とか武器をとって戦うレベルではありませんが。
それでハンガリーは、ウクライナに対してそれほど良い感情をもっていないようです。
仰る通り、陸の国境を接する地域は、民族問題が複雑ですよね。
外交は交渉ですから、相手が弱っている時に自分の立場(国益)を飲ませやすいと言いますか…。
日本は友好=外交、手と手を取り合ってみたいなのを見かけるのですが、殴り合いも本質ですね。
まことに、おっしゃる通りだと思います。
世界には、歴史問題やおっしやるような民族問題など複雑なものもあります。
だから、日本の進路は、たとえばこのウクライナ戦争に関しても、なるべく複眼的に考えていく方がいいいと思います。
チェコも身内に付いたことだしハンガリーには精一杯頑張ってほしいわ
この調子ならEUが完全に麻痺するのも時間の問題だろうね
ハンガリーの味方になったのは、チェコじゃ無くてスロバキアね……
でも、これだとハンガリーは要求を釣り上げ続けてウクライナを孤立させる戦略をやっているのが目に見えているから、何れEU追放も検討せざるを得ないと思いますが
先ずは誤認指摘に感謝
とはいえ、追放するにもEUは全会一致が原則じゃなかったですか?
スロバキアが頑張ってくれればハンガリーも安泰でしょう
ロシア側の代理人コメントかな?
ハンガリー向けの資金がブロックされているのを指摘事項の改善無しで打破しようとする為にウクライナを生贄にしている訳ですか・・・。
こんなロシアみたいな行動を取っているとEUに残れなくなりませんかね?
要求内容も内政干渉と言われてもおかしくないレベルです。
それこそ指摘されている「法の支配への懸念」を更に持たれてしまう結果になりそうです。
まあ法の支配への懸念・勧告やEU議会との対立が多いという理由で排除していたらハンガリーとポーランドが消えて中東欧におけるEUが崩壊してしまいますので。
名前が出た国、EUに必要ですか?
問題になっている点を挙げられていますが、結構致命的な内容だと思いますが・・・。
軍事同盟ではないのですから、「考え方は違うけど敵の敵は味方」だと無理に取り込む必要は無いと思います。
CSDP,PESCO,EDFといった制度や取り組み、今もEUとして有形無形の軍事も含む援助をしていることや歴史的な経緯を考慮すれば純軍事同盟でないだけで軍事的な面が無いとは言えませんが、ひとまずそれは置いておきます。
そもそも現状での追放は制度上出来ない上に制度を整備しても賛同が得られるのかという問題がありますが、仮にその二か国を追放すれば黒海沿岸の二国は経済的なメリットが大きく削がれるだけでなく、スロバキアも含めてウクライナ関連での支援負担が激増するでしょう。
バルト三国もロシア等との経済交流やそれらを経由するトランジット輸送の激減に苦慮している(穀物問題におけるバルト三国の投資要求、もとい協力提案はこれも大きい)というのに、陸の輸送インフラへの投資まで絶望的となると(離脱のような方向性ではないでしょうが)不満は増すと思います。
場合によっては残った中東欧諸国とウ国との経済的な対立まで(ウ国が穴埋め要員とされた場合は更に)激化しますが、西欧が利害調整や根本的な解決のための莫大な援助をほぼ無期限に与え続けるとは思えないため、中東欧のEUが持続可能だとはとても思えません。スロバキアなどはそれ以前に政治的な主張で抜けるかもしれませんが。
EUは対露を至上とした同盟ではないですし、対立も対露として必要以上に大きく見なければ日常茶飯事です。
そしてEUは各国何かしらの不満はあれど全体的に見れば成功している国家連合であり、一部の分野で意見が違うという程度の反目で縮小や離脱をすることが差し引きでプラスだとは思えません。
少なくとも独仏を筆頭とする各国は(懐疑論という名の利益や権益の要求、もとい改革論であったりガス抜き程度の不満を唱えつつも)そう動いてきました。英国以外。
日本企業では、2023年8月に、JT子会社が登録されましたね。
ハンガリーのような小国に色目を使うなら、日本も当然のように要求する事が外交です。
日本は、ハンガリーよりも多額の与信を行っています。
ロシア人の健康を煙草で奪い、ロシア国内から富を強奪、日本の税収増に繋げているのですから。
>ウクライナ国家汚職防止庁は5月「ハンガリーのOTP銀行がロシア国内の事業を継続しているため『国際的な戦争支援国・企業リスト』に登録した」と発表、これを受けてハンガリー政府は「リストからOTP銀行が除外されない限り、ウクライナ向けのEU軍事支援パッケージ(5億ユーロ)の拒否権を撤回しない」と宣言、最終的にウクライナは「拒否権の撤回」を期待してOTP銀行のリスト除外を決定したが、ハンガリーのシーヤールトー外相は「二度とリストに登録しないという保証が必要だ」と述べた。
二度とリストに登録しないという条件が必要という話ですが
単にハンガリーが支援妨害を目的にゴールポストを動かしたという捉え方もできますが、
ここにウクライナという国をハンガリーがどういう仕草をする国と捉えているのか読み取れると捉える事も出来そうに思います。
ポーランドは今回の戦争が始まって150万のウクライナ難民を受け入れました。
人口4000万にも満たない国が150万の難民を受け入れたわけです。
ポーランドの3倍の人口の日本換算で言えば450万人の難民を受け入れた規模です。
こんなものは寛容以外の言葉では表現できません。
そして積極的な武器支援はご存知の通り。
それだけしてくれた国に対して穀物で揉めたごときで内々の交渉で調整し続ける事をせず
国連という大きな舞台で非難してしまいました。
だからハンガリーがウクライナという国がどういう国かを無抜いてるからこそ、これは支援したくないから
ゴールポストを動かしてる恣意的なものではなく、
戦前からウクライナがハンガリーに対して行ってきた仕草の積み上げに基づくハンガリー側からしたら根拠に基づいた
条件なのかもしれないと考え得るように思えます。