欧州関連

米国に続きNATOとウクライナが「ロシア軍撤退を確認できない」と発表

NATOのストルテンベルグ事務総長は16日、我々が現場で目にしているのはロシア軍部隊や装備の撤退ではなく「ロシア軍が所定の位置への移動しウクライナがサイバー攻撃を受けているというパラドックスだ」と訴えた。

参考:Russia-Ukraine crisis: Moscow creating ‘new normal’ to contest sovereignty in Europe, says Nato

プーチン大統領はウクライナの状況を維持したまま=軍事的な圧力をかけつつ交渉を行うことを望んでいる?

ロシア国防省は複数の動画や画像を提示してクリミア半島やウクライナ東部周辺に展開していた部隊を恒久的な拠点に移動=後方に下げたとアピールしているが、バイデン大統領は「ロシア軍撤退をまだ確認出来ておらず依然として脅威的な立場を維持したままだ」と明かし、NATOのストルテンベルグ事務総長も「モスクワは外交交渉を継続する意思を見せているものの衛星画像によってロシア軍が後方に下がっていないことが確認された」と発表、ウクライナのゼレンスキー大統領もBBCに対して「我々はロシア軍の撤退をまだ目にしてない」と主張した。

つまりモスクワの言い分はどうであれ現実的にロシア軍の撤退は一向に進んでおらず、ストルテンベルグ事務総長は「我々が現場で目にしているのはロシア軍部隊や装備の撤退ではなく、ロシア軍が所定の位置への移動しウクライナがサイバー攻撃を受けているというパラドックスだ」と訴えており、多くの海外メディアは「16日侵攻という予想は外れても依然としてロシア軍はいつでもウクライナに攻め込むことが出来る状態を維持し続けている」と警告を発している。

以上の現実を踏まえるとプーチン大統領はウクライナの状況を一旦緩和した上で米国やNATOと交渉を行うのではなく、ウクライナの状況を維持したまま=軍事的な圧力をかけつつ交渉を行うことを望んでいると解釈できるので「ロシアの要求を米国とNATOが受け入れない限り状況のデスカレーションは望めない」と突きつけているのかもしれない。

関連記事:ロシア国防省、戦車や歩兵戦闘車がクリミア半島から引き上げる様子を公開
関連記事:バイデン大統領、ウクライナ国境地域からのロシア軍撤退をまだ確認出来ていない

余談だがロシア国防省は弾道ミサイルによる攻撃を警戒する管制センターの様子を16日に公開、早期警戒レーダー「Voronezh-DM」や各レーダーがカーバーするエリアを示す図などが登場するため非常に興味深い。

 

※アイキャッチ画像の出典:NATO

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コメント

    • 無無
    • 2022年 2月 17日

    アメリカは実のところ、ロシアによる侵略戦争に持ち込みたいって話が出てるが、そんなもんかねえ
    そんなら発想の根っ子がプーチンと変わらないよ

    1
      • たけやぶやけた
      • 2022年 2月 17日

      その話はどこから出ているのですか?

      14
        • 無無
        • 2022年 2月 17日

        国内メディアがそう主張してる、真偽は別だぞ
        つまりアメリカにはウクライナはどうでも良くて、ロシアの侵略という敵失を狙ってヨーロッパの親米国を増やそうとの策らしい

        2
    • 匿名
    • 2022年 2月 17日

    車両が移動するとこだけ見えるけどじゃあこいつら何週間も車内で生活してたのか?っていう
    イラク侵攻の米戦車みると背嚢と自活物資の成れの果てが山積みなんだよなあ

    7
    • いか
    • 2022年 2月 17日

    動画の方見るとカムチャッカ半島やサハリンががら空きになっている。オホーツク海の北方にはロシアは常に戦略原潜を潜航させてるはずだから、そこに何もないというのはおかしい。このレーダーのカバー範囲は鵜吞みにしない方がいいかもしれない。

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