欧州関連

ポルトガル空軍、ドイツ海軍から6機のP-3Cを4,500万ユーロで購入

ドイツ海軍を苦しめたP-3CはP-8Aでの更新が決まり現在売りに出されているのだが、これをポルトガルが4,500万ユーロで購入すると決定、流石に運用目的ではなくスペアパーツ取りとしての購入だろう。

参考:Resolução do Conselho de Ministros n.º 102/2023, de 30 de agosto

空軍が運用するP-3Cを大きな制約なしに運用することを保証し、高い稼働率を維持するためのチャンス

ドイツはアトランティックの後継機を調達するためイタリアとP-3Cの共同調達を計画したが上手く行かず、オランダが売りに出した格安のP-3C(約4億ユーロで8機)に目をつけたが、連邦会計検査院は「20年間も使用されたオランダのP-3Cは状態が良くないのでリスクが高い」と警告、それでも冷戦終結後の乏しい国防予算では他に選択肢がなかったため2004年に購入契約を締結。

出典:MilborneOne / CC BY-SA 3.0 ドイツ海軍のP-3C

2006年に運用を開始したものの予想以上に機体の状態が思わしくなく同機の平均稼働率は37%前後で、最も状態の悪い機体は10年間で150分(2016年時点)しか飛んでおらず、誰の目にもオランダからのP-3C導入は失敗だったと映っていたが、従来の対潜戦に加えて中東海域での対海賊作戦など「長時間の洋上監視」に対するニーズはどんどん増加し、ドイツ海軍は主翼の交換やアビオニクスの刷新など含む大規模な近代改修に着手したものの、新しい主翼はクラックの発生に悩まされ、2018年の火災で約2万個のスペアパーツが消失してしまう。

ドイツはフランスと新型海上哨戒機(MAWS)の共同開発を約束していたため、何とかP-3Cを2030年代まで飛ばす方法を模索したものの、2020年に貴重な稼働機が空中給油の事故で破損してしまい、流石のドイツ海軍もさじを投げてP-8Aを導入することになったのだが、ドイツ海軍のP-3Cをポルトガルが4,500万ユーロで購入するらしい。

出典:U.S Navy photo by Personnel Specialist 1st Class Anthony Petry

ポルトガル政府が30日に公開した文書によれば「ドイツから入手するP-3Cは、空軍が運用するP-3Cを大きな制約なしに運用することを保証し、高い稼働率を維持するためのチャンスだ。そのためドイツとの取引はポルトガルの国益になると考え、空軍に計4,500万ユーロ=約71億円でドイツからP-3C(6機)を調達する権限を与えた」と書かれているため、スペアパーツ取りとしてP-3Cをドイツから調達するのだろう。

関連記事:スリリングな展開を見せていたドイツのP-3C後継機問題が決着、議会がP-8A導入を承認
関連記事:フランス提案のアトランティックIIリースを蹴ったドイツ海軍、米国からP-8A導入がほぼ確定
関連記事:ドイツが問題だらけのP-3C近代改修を中止、新型対潜哨戒機導入へ方針転換

 

※アイキャッチ画像の出典:Olga Ernst/CC BY-SA 4.0 ドイツ海軍のP-3C

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コメント

    • ジュディ
    • 2023年 9月 01日

    現在の他国が少数の対潜哨戒機の運用に四苦八苦してるのを見るに海自があれほどの数の哨戒機をまともに運用していたのは他の国から見れば相当な実力に見えたのだろうと推測が成り立つ

    38
      • AH-X
      • 2023年 9月 01日

      逆に少数だから運用に四苦八苦してるんでは?海自もEH-101の運用は結構苦労してるようですし。

      11
        • hogehoge
        • 2023年 9月 01日

        ですね。大量に調達しているSH60でさえ、J,K,Lと来ても部品の共通性を毎回重要視されていますし、
        DDHには交換用の部品を多種多様にストックしてるみたいなので、安定的に持続的に稼働率を維持した運用するのはかなりの労力が必要なんでしょうね。

        6
    • ナノ猫
    • 2023年 9月 01日

    欧州ではケチで名高いオランダが格安で売りに出した、というだけでかなりヤバそうな物件でしたね。
    penny wise and pound foolish (安物外の銭失い)
    とは言うものの軍事予算削減真っ最中だったドイツには
    選択の余地がなかったのでしょうね。ちょっと気の毒。

    18
    • 匿名希望係
    • 2023年 9月 01日

    米軍のP-3在庫とかの方が良かったんじゃあ>当時

    7
    • けい2020
    • 2023年 9月 01日

    取れる正常稼働パーツ残ってるんかね?

    >2018年の火災で約2万個のスペアパーツが消失してしまう。

    2
    • k.ziro
    • 2023年 9月 01日

    ポルトガルの領海は波も高いし、風も強いから無人機ではちょっと役不足かなあ?

    1
      • ASDF
      • 2023年 9月 01日

      衝動が抑えられずに書き込むのだけど、「力不足」が正しい
      P-3Cで遊覧飛行をするようなことが「役不足」だ
      (目視による海上監視も役割の一つなので遊覧も不可能ではないだろう)

      18
    • たむごん
    • 2023年 9月 01日

    ポルトガルは小国ですが、マディラなど歴史的経緯から、小さな島など海外領土もあることが特徴と思います。
    ヨーロッパ大陸に本国はありますが、少し日本に似ている部分があります。(EEZ世界20位、日本の半分より少ないくらいです)

    日本とポルトガル、人口や経済力だけでなくEEZの面積を比較すれば、日本の対潜哨戒機保有機数は相当高いと思います。
    対潜哨戒機は、潜水艦の哨戒監視・攻撃力が低いと思われがちですが、ハープーンも搭載できますから一定の攻撃力もありますね。

    6
    • nachteule
    • 2023年 9月 01日

     これ最終的にオランダが手放したP-3Cが全部ポルトガルに行くって話で良いのかね。最初にオランダから買った物がドイツが購入した物と機体状態に差違は無いだろうと踏んでの購入になるか。ただドイツの国防費削減した余波ってのが機体にどれ位行っているのか確認してるのかな。

     流石に使い古しの機体にしては価格が高すぎる感じで半額でも十分じゃないだろうか。

    1
    • Natto
    • 2023年 9月 01日

    部品取りにしても危ないよ。

      • 戦略眼
      • 2023年 9月 01日

      自衛隊の機体を売ってあければ。

      1
        • 匿名希望係
        • 2023年 9月 01日

        米軍から買った方がたぶん楽よ。(書類関係で)

        3
      • 戦略眼
      • 2023年 9月 01日

      自衛隊の機体を売ってあければ。

      1
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