ドイツ政府は推定約6.7億ユーロ(約870億円)もの資金を無駄にして保管中だった無人航空機「RQ-4Eユーロホーク」を博物館で展示するため準備を始めた。
参考:Verschrottung oder “museale Verwendung” der Drohne “Euro Hawk”
参考:Der EuroHawk kommt ins Museum
大失敗した無人航空機ユーロホークを博物館で展示するため準備を始めたドイツ
ドイツは対潜哨戒機「アトランティック」を改造した電子情報収集機の後継機として米国製の無人偵察機RQ-4Bブロック20をベースに開発したユーロホーク(RQ-4E)を5導入を決定、この機体にエアバス製のEADSセンサーパッケージを搭載して2012年に運用を開始する予定だったのだが、2009年に取得した初号機の運用テスト中に様々な問題に直面することになる。
まずユーロホークの開発企業であるノースロップ・グラマンは同機の技術データをドイツ側と共有することを拒否したため運用テストの検証が難しくなり、ユーロホークの飛行制御システムにも問題が見つかったため修正に苦労することになるのだが、最大の問題は国際民間航空機関(ICAO)や欧州航空安全機関(EASA)が衝突防止システムを搭載していないことを理由にユーロホークの飛行を認めなかった点だ。
正確に言えば人口密集地帯や民間航空機が頻繁に飛行する空域での運行を許可しなかっただけなので人口の少ない地域の上空を飛行することは可能だが、いちいち人口密集地帯の上空や民間航空ルートを避けながら飛ぶのは非効率過ぎて現実的ではないため新たに衝突防止システムを開発してユーロホークに統合することも検討されたが、そのためには開発・検証費用として新たに約6億ユーロ(約780億円)以上の追加費用が必要と判明したため2013年に当時のトーマス・デ・メジエール国防相がユーロホーク廃止を決定した。
予定されていた残り4機は発注は当然キャンセルされ、初号機も主要部品を取り外されたモスボール状態でマンヒング空軍基地(バイエルン州)の倉庫に保管されることになったが、特に新たな活用方法があった訳でもないので単純に高価で使い道のないユーロホークを持て余していただけと言える。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Juan Torres
このホコリがかぶったユーロホークに再びスポットライトが当たったのは2018年で、北極圏での海洋監視に無人航空機の活用を検討していたカナダがドイツにユーロホーク購入を打診したのだが飛行に必要なナビゲーションシステムや飛行制御システムに必要なコンポーネントが欠けていることが判明、さらにドイツ向けのユーロホークは旧式のRQ-4ブロック20ベースなのでスペアパーツ入手も困難で保管状態の同機を運用状態に戻すには高額な費用がかかることが予想された。
しかもRQ-4はミサイル技術管理レジーム(MTCR)の規制に引っかかるため取引を成立させるには米国を含めた3ヶ国での協議が必要で、特にお買い得と言うわけでもないユーロホークを調達するのに複雑な手続きが要求されるためカナダは同機の購入を諦めてしまった。
ドイツではユーロホークがカナダに売れれば無駄になった約6.7億ユーロ(約870億円)もの資金の一部を回収することが出来ると色めき立ったが、カナダが購入を断念したためユーロホークをこれ以上保管していても買い手が現れることはないと判断、首都ベルリンにある空軍博物館に展示(2022年一般公開予定)するため作業を開始したらしい。
何とも悲しい結末だがRQ-4が開発された当時、民間航空機が飛び交う空域を無人航空機が飛行するとはICAOやEASAも想定していなかったのでルールの整備が後手にまわりドイツ国防省は貧乏くじを引く格好になったが、もし10年ほど遅くユーロホークプログラムを開始していれば状況はかなり異なっていただろう。

出典:public domainRQ-4Cトライトン
因みにドイツ国防省はユーロホークの代わりに衝突防止システムが組み込まれたトライトンベースの無人航空機を25億ドル(約2,700億円)で調達を計画していたが、最終的に本計画を破棄してボンバルディアのビジネスジェット「グローバル6000」をベースにした有人プラットホーム「ペガサス」を3機導入を決定した。
しかしドイツ国防省はペガサスにEADSセンサーを統合するための予算を割り当ていないためドイツ空軍が新たな電子情報収集機を手に入れるのは当分先のことになりそうだ。
※アイキャッチ画像の出典:Julian Herzog / CC BY 4.0 ユーロホーク
博物館送りになったほうが解体処分にあうより幸せかもしれないから良かったのではなかろか。
やらかした過去とこれからも向き合い続ける精神力は偉い
それにしても最近やらかしが増えてるから、博物館もすぐに満杯になりそうで心配だよ
FCASのデモ機を飾る準備しとかなきゃな
他人事じゃないなぁ
自衛隊用のグローバルホークどうすんだろ
調達中止したほうが良いのでは
キャンセル料とか諸々掛かるが長期的な視点で考えれば今すぐ中止すべきだね。
代わりにイスラエル製のドローンを検討すべきかもね。
後F35Aも当初の調達数である42機に戻す事も真剣に考えた方がいいかもしれない。※今さら無理かもしれないけど。
損切りすべきだよなぁ…
F-3の成功する見込みが極めて高いのなら検討の余地があるが、現状では未知数なのでリスクが高すぎる。あと、自分もグローバルホークはキャンセルすべきと思いますが、今まで既に契約済みのアメリカからの装備調達をキャンセルしたことってありましたっけ?聞いたことがないのですが、彼我の力関係を考えると厳しいのではないでしょうか。
いや、F35の調達数が増加するのはあらかじめ折り込み済みだったはずだよ、主力迎撃機を42機で終わらせるのに製造ラインまで立ち上げたりするもんか。公表しなかったのは政治的打算だよ
問題は、グローバルホークみたいに後から疑問符がついても取り消しのできない防衛調達方式、それにアメリカとの関係のほうだね
「もう部品作ってないから調達したいならライン維持費払え」って言われてるんだっけ
成程、失敗の教訓を後世に残す為に博物館に展示するのなら有意義だな(笑)
と言う訳で…MRJの開発に見事失敗した三菱さんも是非、MRJの試作機をセントレアにあるB787初号機の隣にでも良いから展示して「失敗の教訓」にして欲しい(黒い笑い)
俺達ミリオタの人生なんか博物館に飾る価値もないもんな(泣)
おい、どうした。元気出せよ。
自衛隊のはどうなったんだろうか?
TACOMなんて基地に野ざらし展示
実験機なんて展示されるだけましな気がする。
大体スクラップ行きじゃね?
自衛隊のグローバルホーク君も維持費高くてコスパ悪いから博物館に送って新しい無人機研究して作るなり導入するなりしよう
個人的にはこれからの戦いは無人機が主力になっていくと思うから何とか国産してほしいな
まぁ現実はアメリカ産兵器に統合許可がなかなか降りずアメリカ産購入するはめになると思うけど♥️
グローバルホークも米軍じゃ「レガシー」に入れられてるんだったか
中国やロシア相手じゃステルスもなく鈍足な無人機なんてカモでしかないからな…
日本は陸海空共同運用で3機導入だったはず
使い道は北朝鮮の瀬取り監視ぐらいになってしまうか
いや単純にコストがかかるから新しいの作ろうって話なんだが…その理屈でいくと中露も開発中の大型UAVを中止してなくちゃおかしいぜ?
開戦後なら使い道は限られるでしょうが、逆にいえば開戦一歩手前の状況までは対応できるので、決して無駄ではないかと。ただコスパを考えるとどうなのかなって疑問はあります。
レガシーか・・・先駆者なのだから仕方ないですね。
アメリカが先駆者になってガンガン実践投入して実績を上げたはいいものの、結局鹵獲されてしまって。
イランに位置情報の偽装で綺麗なまま鹵獲されたのは笑いましたね。
そりゃ参考にされて欠点が分かれば後続は改良してきますよね。
高価だろうがなんだろうが世代遅れ・・。
登場人物みんな頭悪くて草も生えん。
ドイツさんは何やってるんですかね…
日本も(グロホ)人のこと言えない定期
詳しい方にお聞きしたいのですが
ドイツはギャグを実戦配備したのでしょうか?
ユーモアの資源に乏しいと聞いていたのですが・・・
第2次大戦ではイギリスのギャグやジョークにひどい目に合ったから
第3次大戦に備えて研究は怠っていないんだろう
ここ初めて来たけど、こんな軍事情報だらけのサイトが日本にもあったのね。しかもコメントの書き込みも多いし毎日更新されるみたいでちょっと驚いてる。
ようこそ沼へ
二次裏にここのことを書くと凄い反応をされるぞ
因みになんと言われるんですか?ちょっと興味が、、、
ドイツ人は一見すると賢そうに見えるが、対局的には馬鹿。
日本人も似たようなものかもしれませんが。
対局的ってなに?大局的のこと?
馬鹿が他人に馬鹿って言っちゃ駄目だよ。
たっかい買い物だなぁ
国民はこの事知ってるのかな
ドイツ人もエコが好きなら
分解して希少金属とか回収した方が良いんじゃないの?
ドイツ人はエコだけでなくエゴもゴネも大好きなのは、一連の記事読んでたらわかるよ
・ドローンキット
・raspberry pi
・GPSモジュール
・4Gモデム
・SIMカード(SMSのみ)
・制御ソフトウェア(OSSのものをかなり改造)
こんな感じで、スマホからSMSでGPS座標送るとそかに飛んでいく簡単なものなら誰でも作れる。
リモコン操作じゃないところがポイント。
ホビーの世界ですらこんなに簡単に作れるのだから軍事の世界が無人機当たり前なのはよくわかる話。
そりゃ、安いわけだわ
自衛隊に導入予定のグローバルホークはどうなったの?って人多いからつい最近のNHKの記事貼っときます
中止を検討という情報も去年の夏頃ありましたが、予定通り導入されるようですね
対中戦では役に立たんからなぁ〜
>三沢基地は18日、「グローバルホーク」の配備に向けて準備にあたる「臨時偵察航空隊」を発足させたことが、航空自衛隊への取材でわかりました。
無人機の運用経験と、北朝鮮の瀬取りの監視とかになら有用かも。
我々はグローバルホーク撃墜の報道で開戦を知ることになるだろう
悲劇の国境警備隊員みたいな役目だな
人の代わりに墜落してくれんだぞ?
人だったらその国の労力が減っちゃうじゃん。
リンク
最初のコメ主です
あれ?URL貼ったはずなのに
もう一回貼ります
NHKの元記事です
こんな使えないのを作ったのはどいつだ
ぶっちゃけRQ-4とMQ-4C の互換性ってどんなもんだろうか、見た限り装備の違いと低空飛行対応の細々とした物だから維持費って極端に変わるのかね。互換性確保されているなら運営費は極端な話でも無いし、P-1とかで監視するより人道的だとは思うけどな。