6月末のNATO首脳会談に向けてトランプ大統領は国防支出の5.0%基準を要求、ルッテ事務総長も26日「総額5.0%という高い目標で合意できるだろう」を表明したため、世界中の主要な防衛産業企業は生き残りを掛けて欧州市場への進出、欧州企業の買収、欧州企業との提携に全力を傾けてくるだろう。
参考:NATO’s Rutte embraces 5 percent defense spending goal
世界中の主要な防衛産業企業は生き残りを掛けて欧州市場への進出、欧州企業の買収、欧州企業との提携に全力を傾けてくるだろう
ロシアの違法なクリミア併合を受けてNATO加盟国は2.0%基準の国防支出で合意し、ウクライナ侵攻の勃発、ロシアによる欧州への攻撃、第5条が役に立たないと証明してくる可能性を危惧し、NATOは「冷戦終結によって希薄していた存在意義の再確認」「第5条の有効性を担保する各国の再軍備」「見せかけではなく有事に機能する戦力と防衛産業能力の再構築」を訴え、特に防衛産業界が安心して設備投資を増やすには「継続的な投資と需要の拡大」を約束しなければならず、加盟国は「最低でもGDPの2.0%を国防予算として支出する」という合意達成に本腰を入れ始めた。

出典:NATO
NATOが4月に発表した年次報告書によれば22ヶ国が2024年まで「2.0%の合意」を達成、まだクロアチア、モンテネグロ、イタリア、ポルトガル、カナダ、スロベニア、スペイン、ルクセンブルク、ベルギーの9ヶ国が未達だが、モンテネグロは2025年予算で2.0%をクリア、ベルギー、スペイン、イタリアは追加資金を調達して年内達成を約束、クロアチアは2027年、ポルトガルは2029年、スロベニア、カナダ、ルクセンブルクは2030年までに達成すると公言しているが、まもなく2.0%基準は過去のものになる予定だ。
6月末のNATO首脳会談に向けてトランプ大統領は5.0%、ルッテ事務総長は3.0%以上の引き上げを提案し、加盟国の大部分は「5.0%という数字は政治的虚勢に過ぎない」「3.0%ですら達成困難だ」と考えていたものの、米国と欧州の対立が深刻化し、ロシアの脅威も高まり続け、欧州の軍事的即応性に注目が集まると多くの加盟国が「2.0%からの大幅引き上げ」を支持するようになり、エストニアとリトアニアは今後2年以内に5.0%を達成すると約束、ドイツやオランダも条件付きで5.0%引き上げを支持、ルッテ事務総長も26日「6月末に総額5.0%という高い目標で合意できるだろう」を表明して注目を集めている。

出典:Ministerie van Buitenlandse Zaken/Attribution-ShareAlike 2.0 Generic
ルッテ事務総長が5.0%達成に言及したのは初めてだが「5.0%の正確な中身」については明言をさけ「従来基準の国防予算は3.0%を大幅に上回る」「追加資金はインフラや兵站にも投資される見込み」と述べ、ドイツやオランダが主張してきた「国防支出=3.5%」と「軍事インフラとしても活用できる分野への投資=1.5%」の合計になる可能性が高い。
純粋な国防予算がGDP比3.5%だったとしても、加盟国全体で見れば記録的な国防支出の増額となり、社会インフラとしても機能する道路、鉄道、港湾、病院、サイバーセキュリティといった分野にもGDP比1.5%もの資金が流れ込むため産業基盤が相当強化されることになる。

出典:European Commission
欧州再軍備計画=ReArm Europe Planを主導するEUは「加盟国が国防予算をGDP比1.5%増加させると4年間で約6,500億ユーロ=約105兆円の財政的余地が生まれる」と説明し、さらにEUが再軍備計画を後押しするため1,500億ユーロ=約24兆円の融資を行うため、世界中の主要な防衛産業企業は生き残りを掛けて欧州市場への進出、欧州企業の買収、欧州企業との提携に全力を傾けてくるだろうし、トランプ大統領も全力で欧州の資金を米防衛産業に引っ張ろうと試みるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:NATO
いいことだ。金は持ってる連中に吐き出してもらうに限る。
日本をはじめ東アジアの民主主義国家はもちろん、米国すらも欧州方面に関わってる余裕は無いので、ヨーロッパはちゃんと身を切って軍を整えてもろて。
逆もまた然りですね。
ヨーロッパはアジア方面に関わっている余裕が無くなったので、日本も更に身を切って軍を整える必要がある。
現状は中国が喜ぶ展開。
誰も得しない路線に入っているのは残念としか言いようがない。
本来は誰かを幸せにできたはずの予算が、それ自体は何の役にも立たない軍事費に転用される。
ロシアだってそうだ。国民福祉基金の積み立てを取り崩して戦争している。
未来が狭くなってる様で嫌になるね。
危惧すべきはトランプの”次”ですね
仮にバイデン路線(従来のアメリカ路線)に戻った時に、欧州諸国が5%を維持し続けるとは思えません
4年の間に増産体制に入った軍需企業は需要を失うことになります
ロシアや中国、北朝鮮のように必要経費として赤字軍事企業を補填し続けてくれれば良いのですが、仮にも営利企業を欧州政府が税金で支えてくれる保証はありません。多国籍ならなおさらです。
余剰生産力は世界中に武器を溢れさせ、世界を不安定にさせると思います。
軍事力のバランスが戦争を防ぐための重要な要素になっており、ロシアなどの軍事優先国家が存在する以上、軍事力強化は必要だと思える
日本の場合は国民の意識を変えることから始めなければならないので、時間が掛かり先の長いテーマになっている
欧州、中東、ロシアあたりは紀元前から戦争してるから仕方ない。
大抵は一神教というかアブラハムの宗教が悪い(※個人の感想です)
”5.0%の正確な中身”
”ウクライナ向けの武器支援/後方支援”は含まれるのかな?。
ロシアの脅威が迫っている以上、ある程度の軍拡は仕方ないと思います。
しかしインフレ、人口の高齢化、国債金利上昇の状況下で軍拡は本当に可能でしょうか?
時間が経てば人々は軍事より社会保障何とかしろと声高に叫ぶのでは?
>時間が経てば人々は軍事より社会保障何とかしろと声高に叫ぶのでは?
世論がそのように変化しないために、ゼレンスキーを支持してウクライナ戦争を長引かせているのでは?
GDP比5%ってエストニアやポーランド並みの水準で、さすがにそれは無理があるだろ…
全加盟国それぞれの5%丸々が対ロシアに割り当てられるわけではないでしょうから…
まあ、数字を捏ねくり回すだけに等しいような国も無くはないでしょうけど。
米中建艦競争だけでも極東情勢を見ていると、中国海軍が圧倒していますから、米軍に余力がなくなっているのが現実だなと。
NATO+EU諸国、独・デンマーク・オランダ・ベルギー・ルクセンブルク・アイルランド・ノルウェー・フィンランド・スウェーデンなど、日本と比較にならないくらい財政が極めて豊かなんですよね。
応分の負担となるのは、仕方ないのかなと感じてしまいます。
ロシアにとってはアメリカの庇護下にあってぼーっとしてたヨーロッパと、アメリカと喧嘩別れして自己防衛高めようとするヨーロッパと、どちらが脅威だったんでしょうか?
なんだかんだ言って後者の方が足並み合わずにポロポロ行きそうな気もするんですが…
しばらくしたら軍事より社会福祉に…ってなるでしょうし
これまでずっとアメリカに頼り続けて、ウクライナ侵攻以降ですら、軍事費増を渋っていた欧州が、トランプ氏にお尻を叩かれてやっと、しぶしぶ自主防衛に舵を切るポーズを付け始めた、って話ですから、バイデン氏路線がどれだけ彼らを甘やかしていたか判明したと言えるでしょう。口で言うことと実行が異なるのがいつもの欧州ムーブですからね。
我が国も防衛関連予算GDP比5%待ったなしですわ
直接的な防衛費を3%、基地の地下施設化・地下格納庫化などインフラ整備に2%
アメリカが日米安保の日本防衛義務をないがしろにするリスクが存在する以上
少なくとも「米軍は日本や台湾の後方支援・側面支援です。正面に立つのは日本と台湾です」という立場をとる可能性がある以上
「まぁアメリカ軍がなんとかしてくれるっしょ」という甘い考えは捨てないといけない
増税もやむなしです
トランプのことですから、「米国製装備品以外は5%に算入しない」とか言い出したりして…。
ここまでしてしまうと、ロシアがなんらかの原因で継戦能力失ってしまって崩壊してしまったらどうなるんだろう
ソ連崩壊で油断した結果が今なので、暫くは兜の緒を締めたまんまなのでは。時代が変わってメルケルMk.2みたいなのが国家元首として持て囃されるようになったら、また同じ事を繰り返すんでしょうけど。
「ロシアのせい」にできなくなった後の欧州。
「中国のせい」にできなくなった後の米国。
どうしても、しょーもない事態に陥る気しかしないような…
それぞれの大陸の中だけで済ませてくれるならまだしも、おそらくそうはなってくれないでしょうし…
彼らに必要なのは合意ではなく、実行する意志だと思います。