英国の会計検査院(NAO)が公表した報告書の中で、60億ポンド以上の費用を投じて建造したクイーン・エリザベス級空母が「不確実な将来に直面するかもしれない」と指摘して注目を集めている。
参考:Royal Navy aircraft carriers might face uncertain future – report
空母だけを調達しても補助戦力や搭載航空機が揃わないと役にたたない
英国の会計検査院(NAO)はクイーン・エリザベス級空母建造は大きな遅れも予算超過(予定された予算を3%超過)もなく建造され、年内に予定されている1番艦「クイーン・エリザベス(R08)」の初期作戦能力の獲得は予定通り宣言できるだろうと認めたが、今後40年以上の空母運用に必要になる搭載機や補給艦への投資が不果実なため「効果的な運用は難しいかもしれない」と問題を指摘して3つの課題に対処すること求めた。

出典:Royal Navy / OGL v1.0
1つ目は2隻の空母を40年以上運用するのに必要な「F-35B ライトニングⅡ」調達に国防省が十分な資金を供給していないという点だ。
国防省の計画ではF-35Bを138機調達する予定で48機の発注が確定しているが、残り90機の発注に関しては何も決まっていない上、ジョンソン政権が進めている従来の安全保障政策や外交政策の総合的な見直しに連動して、国防省は調達するF-35Bの数を再検討することを計画しており、元空軍パイロットのデビッド・シンプソン氏によれば空軍は過去、空母2隻を運用するのに必要なF-35Bの数を5個飛行隊分(12機×5個=60機:内1個は訓練部隊)だと考えていたので「現在の調達計画は数が多すぎる」と述べている。
このようなF-35Bに関する不確実性は40年以上予定されている空母の運用や火力投射能力に「制限」を及ぼすことになるので、国防省は十分な資金をF-35B ライトニングⅡ調達に当てるべきだと会計検査院は指摘している。

出典:ロッキード・マーティン
2つ目は計画よりも18ヶ月遅れて問題化した早期警戒システム「クロウズネスト(Crowsnest)」が象徴している国防省のプログラム管理能力が欠如している点だ。
国防省は空母で運用するヘリコプター「マーリンHM.2」に搭載可能な新型の早期警戒システム「クロウズネスト(Crowsnest)」開発をロッキード・マーティンに発注したのだが、クロウズネストの一部である海上監視レーダー開発に手間取っているため1番艦「クイーン・エリザベス」の初期運用能力の宣言に間に合わなくなっている。
これは開発が遅れていること自体が問題なのではなく、開発が遅れていることをロッキード・マーティンも国防省も手遅れになるまで「気づかなかったこと」が問題だと会計検査院は言っているのだ。
問題のレーダーを開発しているのはロッキード・マーティンの下請けに入ったフランスのタレスで、開発したセンサーが敏感過ぎて調整に手間取っているため要員の訓練に使用されるシミュレーターの開発も遅れが生じているため、同機を運用する海軍のシステム操作員は未だにクロウズネストを見たことも触ったこともない。
このような問題に直面しているタレスの状況を国防省もロッキード・マーティンも把握していなかったため事態の深刻さに気づいたときには完全に手遅れ(=開発遅延)で、もし開発の進行を国防省がきちんと管理して把握していれば、この問題への対処方法があったと言いたいのだ。
さらに国防省はクイーン・エリザベス級空母のトータルコストを把握できていないため国防予算に対する「潜在的なリスク要因」になっている指摘、国防省はもっとクイーン・エリザベス級空母の状況に注意を払うべきで、これを怠れば財政的に手に負えなくなると会計検査院は指摘している。

出典:Brian.Burnell / CC BY-SA 3.0
3つ目は2隻の空母運用に不可欠な補給艦の調達計画が不明瞭な点だ。
現在海軍が保有している補給艦だけでは大型のクイーン・エリザベス級空母2隻に十分な燃料や弾薬を補給することが難しく、この問題を解決するため計画されていた3隻の新型補給艦の競争入札は国外での建造を許容してる点が問題視され白紙化されてしまい、老朽化した補給艦の退役が始まる2028年までに調達が間に合うのか危惧されている。
会計検査院の報告書では、すでに不足気味の補給艦戦力の中から空母補給に割けるのは補給艦は1隻のみだと指摘しており、議会も「このままでは海軍の水上艦艇は補給の度に港へ戻る必要が出てくる」と懸念を示しているほどだ。
さらに付け加えると、洋上で補給艦から弾薬等を空母に移送するのに使用される新型輸送ヘリの調達にも失敗しているため、海軍は2021年に退役が予定しているマーリンHM.4に今後も頼らなければならない状況で、このような補助戦力の整備を軽視し続ければ、クイーン・エリザベス級空母がどんなに優れていても能力を発揮することが出来なくなると会計検査院は指摘している。
果たして英国は上記の問題を上手に解決して、クイーン・エリザベス級空母の効果的な運用体制を確立することに成功するだろうか?
※アイキャッチ画像の出典:Royal Navy / OGL v1.0
最悪、港に係留したまま大半の期間を固定滑走路として使わざるを得ないのか?
大戦末期に燃料不足で呉の軍港に留め置かれ米軍航空機の攻撃にさらされ転覆・大破着底していった帝国海軍の軍艦の様だ。
タイやブラジルの空母を連想するところだろ。
その前にインドへ売却(過去に実績あり)するなり、米国へリースか売却(過去に補給艦の売却→リース)するのが定石だと思うけどね。
今回の件の最大の要因は英国が「空母を保有する」事自体に拘り過ぎて、国防計画全体を考えて予算運用する事を怠った結果だと思う。
これを機に、英国は核兵器保有の是非を含めた国防計画全体を見直すべきだろうね…正直、今の英国は国境警備隊に毛が生えた程度の軍事力しか養えないはずだから。
投稿者ですが、誤記が有ったので訂正します。
>米国へリースか売却(過去に補給艦の売却→リース)
→米国へリースか売却(過去に補給艦のリース→売却の実績あり)
以上、大変失礼いたしました。
だが、その日本の帝国陸、海軍によって、イギリスはインドと言う植民地から、追い出されて日本による植民地解放が行われたんだよ。現在のイギリスと当時の日本の切迫した事情とは、根本的に同レベルでは語れない。イギリスはもはや、第二次世界大戦以降、既に日本の敵にはなりえない。軍の練度、ハードウェアが全く違います。
予算不足で平時からまともに空母を運用できないイギリス海軍に対して、アメリカと戦争した結果大戦末期に艦艇を運用できなくなった帝国海軍を例に出すのはなんか違うような気がする
どちらかというとアルゼンチンやブラジルあたりが似ていると思う
そもそもイギリス海軍の方針は1隻運用、1隻予備役、改修工事と公言しているし、以前のインビンシブル級も1隻運用、1隻予備役、1隻改修工事で飛行隊そのものも2隻分しか準備してなかった。
2隻運用、ってのは2隻ローテの事でしょう。
3隻ローテを2隻ローテに縮小して、それでもまだ運用が回らない、というお話かと。
英メディアのFTやロイターって、日本のことを「地域大国」「ミドルパワー」って下に見てる書き方よくするけど、その日本より経済力が低い国が、核戦力を維持したい、空母を持ちたい、他国で地上戦出来る部隊がいる、自国主導で戦闘機開発したいって言ってたらこうなるんだよね。
全てが中途半端。身の丈に合ってない。
記事やコメント欄でよく言われてるように、核戦力の放棄とか思い切った取捨選択しないとこんな記事ばっかり見ることになると思う。
それか逆に核戦力一辺倒化して海軍力をほぼ消滅させるかだね
核戦力一択が正解だね。
そこは、北朝鮮を見習うべきかも。
下に見た呼び方ではないと思いますよ。
「地域大国」以上の存在って「超大国」しかありません。
超大国は今現在はアメリカ以外存在せず、ロシアや中国も地域大国です。
また、「列強」はこの地域大国に相当します。
専守防衛しか持たない現在の日本を指して列強と表現しているのですから、十分な評価かと。
地域大国 Regional power
大国 Great power
超大国 Super power
の区分になっているので地域大国の次は超大国、中露は地域大国、は間違いかと。
加えて問題は未だに自分達を大国(あるいは超大国)だと思ってるっぽい事なんだよなぁ。
EU離脱後の荒波を上手く乗り越えないと地域大国の地位すら危ういのに。
イギリスは補給艦韓国に発注するくらい手がまわらない
空母に追随出来る大型補給艦なんて整備できないだろうな
ロッキード・マーティンってなんか問題多すぎないですか?
受注が多い(信頼されている)割には予算超過とか、開発遅延とか、「致命的欠陥」が日常的なような…
インビンシブル級(小型空母路線)は良いコンセプトだと思ってたのに
何でやめたんだろうね?
ハリアーの後継がF-35Bになったから。離陸重量で2倍以上重いから、母艦もそれだけ大型化する必要が有る
更に、空母3隻+コマンド空母(ヘリコプター揚陸艦)1隻から、コマンド空母も兼ねた空母2隻に隻数も減ったので、1隻当たりに要求される能力も増えたから
すると、いずも型でのF-35Bの運用は、困難かな。
ひゅうが型とセットで運用すれば、いけるかと思っているが。
哨戒ヘリを現状と同じく8~12機搭載した上で、更にF-35Bを1個飛行隊運用するとかは無理でしょう
最も、現在では哨戒ヘリを2機搭載可能なDDが護衛隊群の主力ですし、そちらに哨戒ヘリを割り振ってDDHは哨戒ヘリの重整備に専念させるのであれば、飛行甲板長や面積で米強襲揚陸艦と同等・格納庫面積では上まっているのですから、F-35Bの1個飛行隊を米強襲揚陸艦と同等に運用するのは可能でしょう
そりゃ、イタリアがパスタ・ピザ自慢する西欧の土地柄だもん、小国同士のつばぜり合い、、
論点が違う?
本国防衛はNATOの傘に入ってるから海外へ戦略級戦力を投射する能力が欲しい
EUと袂を分かった(わけでもないが)あとでは本土防衛戦力の増強は喫緊の課題である
しかし予算がないから海自のような大規模な機動戦力を保有できない
母艦と原潜こそないが主力を大型DDGや性能の揃った量産艦で固めている海自は贅沢な部類に入る
ライミーは英連邦の要とはいえ有事に連邦諸国の軍を動員し統一戦力にすることもできない
英国はブルーネイビー「だった」のよ
原子力潜水艦、核攻撃能力を含めて、全体をどうするのか?
って話は出てるんですよね?
国防費は日本と同じぐらいだったはず。
蒸気機関に酔いしれ、核兵器に酔いしれ、ガスタービンに酔いしれ、ジェット機に酔いしれた、
気付いたら、RRやランドローバーもジャがーも他国やインドも持っていかれた、いかれた英国、
旅客機や宇宙の時代と錯覚し、民生品の革命に付いていけず、商行為も疎かさを見せた、
世界が高速鉄道に酔いしれるころ、排煙の高速ディーゼル機関車を作り、成長を止めた風土を見る
貴族・富豪の階級社会が見せる先進性とやる気のなさは、致命的。
英国の格差拡大と、高速鉄道の低い乗客率は、英国経済の未熟さを見せているのかも
殖民地経済というブロック経済の閉鎖性が、内需を貧しくしたと・・
そりゃ、日本のKを欲しがるのさ
そこに、消費税が、消費を上げずにいるという2重の悪弊に
鉄道発祥の地のはずが自力で高速鉄道車両を製造できずにA-trainを輸入
置き換え対象が30年落ちのディーゼル機関車の挙句、置き換え後も支線転用で現役ってのが哀愁漂う
単にWW2でのレンドリースのツケがまわりまわった結果なだけだと思う。
10億7500万ポンド、金利2% で50年間、その結果2006年まで支払いつづけてる。
これじゃあどんな国でも経済が崩れてしまう。
マーリンHC4はシーキングHC4を2016年に代替して4年らしいのだが
2021年退役予定だったの?
補給艦より駆逐艦やフリゲート艦の心配した方がいいんじゃない?
護衛無しで遠征するわけにはいかないよね。
それらの今後の建造費も考えるとどうやっても空母に回す予算がないって事じゃろ?
空母機動艦隊とかタスクフォースとかなんでもいいけどユニットが組めないのが問題なんだろう
素人目の的外れな意見かもしれないけどイギリスに戦力ってほしいの?
大西洋はしっかりアメリカが見てくれているし、ロシア海軍は散々たる有様だし…
やれ予算がない、人員がいない、稼働率が云々でも差し迫った脅威がなくてなんとかなっちゃうヨーロッパが
うらやましくもありますよ
アルゼンチンが再びフォークランド諸島に攻めて来たら空母なしだと撃退できないしな
まさかフォークランド諸島が攻められたからってブエノスアイレスに核撃ち込む訳にもいくまい
素人目の的外れな意見かもしれないけどイギリスに戦力ってほしいの?
大西洋はしっかりアメリカが見てくれているし、ロシア海軍は散々たる有様だし…
やれ予算がない、人員がいない、稼働率が云々でも差し迫った脅威がなくてなんとかなっちゃうヨーロッパが
うらやましくもありますよ
人口が日本の半分の国が、やたら予算のかかる核戦力と空母機動部隊を運用するって、
ベンツとヨットをもってますよの見栄張りリーマンかよ
そもそも、自国で原子力発電も作ろうとせず、自国のエネルギー政策さえ考えない落ちぶれた英国。
元は取れるのに、自由化に被れ日立もドンビキした英国電力事情。
電力ぐらい費用も回収できるんだから、戦争や災害で耐えられる発電所くらい作れよ・・
まぁ、無理にF-35を揃えずともオーシャンの代わりとしてのヘリ空母としてでもやってけるんじゃないか。インビジブル級3隻にオーシャンの4隻をクイーンエリザベス級2隻で置き換え何だから戦闘機足りなくてもヘリ母艦の仕事が充分有るでしょ。補給艦足りんのは何とかしないとだけど…