欧州関連

完全に見かけは民間機、英国が空中給油機に派手な塗装を施した理由

英国はVIP輸送に対応した空中給油機「A330 MRTT/ボイジャー(ZZ336)」に派手な塗装を施して注目を集めている。

参考:Ready to fly the flag! Boris Johnson’s RAF Voyager plane takes to the air after its new £900,000 patriotic red, white and blue colour scheme is unveiled for the first time

接近してきた航空機のパイロットの度肝を抜く世界一派手な空中給油機が誕生

英国は首相や閣僚の移動用に米大統領専用機「エアフォースワン」のような専用機を保有しておらず、VIP輸送に対応した英空軍の空中給油機「A330 MRTT/ボイジャー(ZZ336)」1機と民間航空会社のチャーター機でやりくりをしている。

補足:管理人調べでは空中給油機を首相や閣僚の移動に使用しているのは英国のみだ

旅客機ベースの大型空中給油機の機体は空中給油に必要な航空燃料を搭載するタンク増設や空中給油機材を搭載しても民間旅客機並な機内スペースが残っているため、ここに取り外し可能な簡易の座席を設置して兵士を輸送したり物資輸送にも使用できるのだが、流石に首相や閣僚などのVIP輸送に対応するだけのサービスや設備はない。

出典:N509FZ / CC BY-SA 4.0 VIP輸送に対応した英空軍の空中給油機「A330 MRTT/ボイジャー(ZZ336)」

そこで英国政府は1,000万ポンド(約14億円)の費用を掛けて、VIP用のファーストクラス1席、同行者向けのビジネスクラス58席、同行する取材陣用のエコノミークラス100席、会議施設、更衣室、衛星通信システム、ミサイル攻撃に対する防衛システム等を設置してVIP輸送使用できるよう改造したのだが、利用がないときは英空軍の空中給油任務に使用されているのが最大の特徴だ。

補足:英国政府はVIP輸送に対応した空中給油機ボイジャーの導入で年間77万5,000ポンド(民間航空会社から機体をチャーターする費用が減ったという意味)を節約できていると主張している

そのため同機は空中給油機ボイジャーと同じ「ミリタリーカラー」で塗装されていたのだが、ブレグジット(EU離脱)後の外交で英国の存在感を高めるため90万ポンド(約1億2,000万円)の費用を掛けてミリタリーカラーの空中給油機ボイジャーを真っ白く塗り替え、機体後部から垂直尾翼にかけて巨大なユニオンジャックを描いた特別塗装を施して注目を集めている。

これはミリタリーカラーのボイジャーで諸外国を訪問するよりも、巨大なユニオンジャックが描かれたボイジャーの方が外交効果が高い(到着を伝えるニュース映像に映る機体の宣言効果や与える印象の違い等)と言う意味なのだが、民間機旅客機を思わせる派手な塗装に「新型コロナウイルスで国民が苦しい時期に飛行機の塗装に大金を掛けるのは優先順位が間違っている」と労働党が政府批判のやり玉に挙げている。しかし巨大なユニオンジャックが描かれたデザインはメディアも国民も好意的に受け止めているため労働党の批判は的外れ気味だ。

因みに民間機旅客機を思わせる派手な塗装を施したボイジャーは今後も空中給油機として使用される予定(有事の際にはミリタリーカラーに変更)なので、空中給油を受けるため接近してきた航空機のパイロットは確実に度肝を抜かれるのは間違いない。

 

※アイキャッチ画像の出典:Military_Material Public domain

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    そもそも「VIP輸送も出来る空中給油機」と言うのが前代未聞だけど
    そう言えば米軍では近年、空中給油も民間委託しようと言う話があるから、この分だと近い将来「民間企業が持つ空中給油機がANAのポケモンジェットみたいなスペシャルカラーか、何処かのスポンサーカラーを纏って空を飛ぶ」姿を拝む事が出来るかも知れないな

    1
      • 匿名
      • 2020年 6月 26日

      本当に空中給油の民間委託が確立できるなら、国際線もハブ空港を経由せず、空中給油で目的地まで直送するのが一般的になるかもですね。
      空港は着陸料で収益を得ているので、そうなるとハブ空港は壊滅的打撃ですね。
      利用者もより安く利用できて良いかもしれません。

        • 匿名
        • 2020年 6月 27日

        さすがに民間機、旅客機などへの空中給油はないのでは…

        2
          • 匿名
          • 2020年 6月 27日

          経営者の目の付け所は色々ですからね。
          安全性を確保できて収益上がるならなんでもやるでしょう。
          仁川国際空港の水増しも潰れて消えてなくなりますよ。

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    イギリス空軍向けA330 MRTT、旅客機仕様に改修 民間にリースへ
    リンク
    A330 MRTTがトーマスクックの商業路線にデビュー
    リンク
    英国空軍では空中給油機が余っているんだね

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    この塗装格好いいな!

    まあ、空中給油機なら敵機に目視される位置まで侵入する事は無いだろうし、問題ないんじゃないかな

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    英国面全開だね

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    格好いい ユニオンジャックがいい味出してる
    しかしなんで専用機ないんですかね?

      • 匿名
      • 2020年 6月 26日

      経費削減が目的なんでしょうね。
      もともと頻度の少ないVIP輸送のためにわざわざ専用のVIP輸送機(政府専用機)を維持・運用するのは金のかかる贅沢だという批判もあるでしょうし、その国の財政に負担がかかるのも事実でしょう。費用はその国の税金でしょうから、いくら先進国でも「見栄を張る」には高い出費だと感じている国民もいるでしょう。
      であれば、今回の英国の措置は他の国も見習うべき「良い前例」になるかもしれませんよ。
      大統領専用機に巨額の大金を投入するようなアメリカのやり方はさすがに「愚行」ではないかと、アメリカ国民ですら疑問に思うのではないでしょうか。

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    さすが伝統と歴史のRAF()

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    なるほどちょっと面白いな
    これなら遠距離のVIP護衛任務でも戦闘機の航続距離をある程度無視できるもんな
    欠点は火事や銃弾で大きくドカンといきかねないところかな

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    > 「新型コロナウイルスで国民が苦しい時期に飛行機の塗装に大金を掛けるのは優先順位が間違っている」と労働党が政府批判のやり玉に挙げている。

    本当にサヨクってのは世界共通でバカですねえ・・・。
    ケチの付け所が日本の野党と全くレベルが変わらない・・。
    ソ連の崩壊で、頭のいい人たちは皆見切りをつけて去って行ったのは大きいですね、ほんと。

    1
      • 匿名
      • 2020年 6月 27日

      心昂る程に同意。
      同じパヨクでも、国旗掲げる分まだマシかと思ってましたが、根底の部分は変わりませんな。

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    こういうのは外遊の時にマスコミに撮影されればイギリスの印象が強く残るしいいアイデアだと思うな
    目くじら立てるほどでもないと思う

    確かに1億2000万円はちょっとびっくりするけど…
    たぶん文字とか国旗の柄無しならもっと安いんだろうな

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    A330 MRTTってKC-46Aとの比較はどうなんだろうな
    ちょい欲しいといえば、欲しいけど

      • 名無し
      • 2020年 6月 27日

      KC-767と勝負して、KC45として一旦採用が決まったくらいには優秀。

      ただし、ベースが767より大きい飛行機を使っているから勝っている訳で、米空軍の格納庫に入らないとボーイングから指摘されて不採用になった。

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    4機の尾翼を4か国(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)の旗でつくって欲しいなぁ。ウェールズなんて士気高揚にぴったりと思うけど。

    で、それを極東某国が真似て萌絵尾翼を… (これも士気上がるな)

      • 匿名
      • 2020年 6月 27日

      自衛隊の空中給油機の尾翼はでっかく旭日旗書こう
      相当目立つぞ

        • 匿名
        • 2020年 6月 28日

        空中給油機は航空自衛隊所属だぞ
        P-1の尾翼に描くならともかく給油機に描くのはあり得ん話

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    河野防衛大臣が外務大臣だった頃に外務省専用機が欲しいって言ってたが、この方法ではだめかな?

    外交に(あくまで)軍用機を使うのは緊張を高めるだろうが…英国並みの宗主力(?)が有れば問題ないのか…

      • 匿名
      • 2020年 6月 27日

      自衛隊のU-4を都度借りるとか、駄目ですかね。

        • 匿名
        • 2020年 6月 29日

        それもいいですけれど政府専用機とは別にもう一機種小さいのがあってもいいのではないでしょうか。
        大臣皆で使えれば無駄にはならないかと。

    • 匿名
    • 2020年 6月 27日

    VIPの外遊中は、本国で空中給油の訓練はできません。ってこと?
    外交日程に左右される訓練プログラムとか、冗長性はどこいっちゃったの。

      • 匿名
      • 2020年 6月 27日

      空軍が運用している9機のうち1機だけVIPようにするって話やぞ。
      英国はこれに加えて5機の給油機を民間にリースしてるから、VIP機を除いても最大13機あるから冗長性は十分あるやろ。

    • 匿名
    • 2020年 6月 27日

    > 有事の際にはミリタリーカラーに変更

    さらっといってるけど、ラミネートシールを剥がすだけなのかな?

    • 匿名
    • 2020年 6月 28日

    昔は大きいA-3を電子、給油、VIPにして使ってたな
    塗装だけど海軍や海兵隊のCAG機は派手なままで実戦するんでしょ?

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