欧州関連

世界一激しいギリシャ海軍のフリゲート艦受注競争、米英仏独伊蘭の提案が生き残る

世界一激しいフリゲート艦受注競争に発展しているギリシャ海軍のフリゲート艦選定に動きがあり、ギリシャ政府は9つの提案を6つに絞りこんだと報じられている。

参考:Φρεγάτες για το Πολεμικό μας Ναυτικό. Ποιοι προηγούνται, ποιοι είναι εκτός;

最も勝者を予想するのが難しいギリシャ海軍のフリゲート艦受注競争、政治的要素だけで言えば米仏が勝者に近いかもしれない

当初、米国(フリーダム級沿海域戦闘艦)とフランス(中型フリゲート)の間で争われていたギリシャ海軍のフリゲート艦受注は「より大きな成果」を引き出すため米仏以外の国や企業にも広く門戸が開かれた結果、世界一激しいフリゲート艦受注競争に発展して注目を集めていたが、ギリシャ政府は提案されたフリゲート艦に関する会議を実施して興味深いリストを作成したと現地の防衛雑誌Flight/ΠΤΗΣΗ(正確にはFlightの海軍専門サイトNaval Defence)が報じている。

出典:Public Domain フリーダム級沿海域戦闘

ギリシャ海軍のフリゲート艦需要を受注するには新造のフリゲート艦×4隻、イドラ級フリゲート艦×4隻のアップグレード、新造艦を導入するまでの中間ソリューション(繋ぎのフリゲート艦のことで新造艦である必要はない)の3つの要素に関連費用や現地建造・造船所近代化等のオフセット提案を含めたトータルパッケージを提案(推定プログラムコスト50億ドル/約5,600億円)する必要があるのだが、ギリシャ政府が今回作成したリストは「新造のフリゲート艦のみ」に焦点をあてたもので他の要素の評価は一切含まれていない。

つまりギリシャは最も重視している新造のフリゲート艦の内容に絞って評価を行い提案された9つのパッケージをふるいに掛けたという意味だ。

出典:public domain FREMM級フリゲート

Naval Defenceによればギリシャ政府は提案された9つのフリゲート艦を以下のカテゴリーに分類したらしい。

カテゴリーA:海軍の要求を満たし設計の成熟度も十分
フランス提案の中型フリゲート(FDI)
イタリア提案のFREMM級フリゲート
オランダ提案のシグマ型コルベット(11515タイプ)

カテゴリーB:海軍の要求を満たすには設計の調整が必要
米国提案のフリーダム級沿海域戦闘
英国提案の31型フリゲート
ドイツ提案のMEKO A200型フリゲート

カテゴリーC:海軍の要求を残念ながら満たしていない
スペイン提案のF-100フリゲート
ドイツ提案のMEKO A300型フリゲート
米企業ギブス&コックスが提案したフリゲート

カテゴリーCに分類された提案は次の評価プロセスに進むことが出来ないため事実上の敗退が決定、カテゴリーBはカテゴリーAと共に次の評価プロセスに進むのだがカテゴリーBに分類された提案はフリゲート艦自体の評価がカテゴリーAの提案よりも劣るためイドラ級のアップグレードや中間ソリューションの部分で巻き返す必要があるという意味なのだが、実はこの部分が勝敗の鍵を握っている可能性が高い。

出典:F-100フリゲート

今のところ中間ソリューションは提案済みの国と未定案の国が入り混じっているのだが、イドラ級のアップグレードについて提案を行っている国はいないのでカテゴリーAに分類されたフランス、イタリア、オランダは決して安泰ではなく、新造のフリゲート艦の評価でポイントを落としカテゴリーBに分類された米国、英国、ドイツは「十分巻き返すチャンスがある」とみて間違いだろう。

因みに欧州に拠点を置くNaval Newsは「ギリシャが夏の終りまでにフリゲートの選定結果を発表する可能性は低い」と言っており、中間ソリューションやイドラ級のアップグレード内容が出揃ってない現時点で勝者を予想するのは困難だが、政治的な側面から予想するなら米国かフランスのどちらかを選択する可能性が高いと管理人は見ている。

あとカテゴリーCに分類された米企業ギブス&コックスは日本海軍と交戦したグリーブス級駆逐艦やマハン級駆逐艦、第二次大戦後の米海軍を支えたペリー級フリゲート艦やアーレイ・バーク級駆逐艦などを設計してきた実績をもつ老舗(今年で創業99年)企業なので、どんなフリゲート艦をギリシャに提案したのか気になってしょうがない。

関連記事:フランス、ギリシャ海軍が仏製フリゲートを採用すれば中古駆逐艦2隻を無償で提供
関連記事:ギリシャ海軍の新型フリゲートを巡り5つのNATO加盟国が熾烈な受注競争

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※アイキャッチ画像の出典:Naval Group フランスがギリシャに提案する予定のフリゲート艦

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 02日

    地理的もろもろの制約から、日本が参戦する状況ではないけれど、もがみ級が入っていたらどのようにランキングされていただろうか

    5
      • 匿名
      • 2021年 7月 02日

      トルコとの両国の関係にかんがみ除外する

      1
        • 匿名
        • 2021年 7月 02日

        トルコは軍事で韓国とズブズブだし、ギリシャはチャイナマネーが入っててロシアとも仲良し

        気を遣ってるときりがないよ

        3
      • 匿名
      • 2021年 7月 02日

      船どうこうよりも中間ソリューションにあたる船の提供、イドラ級のアップグレード、現地造船所の近代化等の点で厳しいと思う
      管理人の記事の内容を踏まえるなら中間ソリューションの部分でどれだけ寄せられるかが今後の注目点という事だと思うけど現状すぐにギリシャに提供できる船あるかね?

      9
        • 匿名
        • 2021年 7月 02日

        > ギリシャ政府が今回作成したリストは「新造のフリゲート艦のみ」に焦点をあてたもので他の要素の評価は一切含まれていない。

        こっちの話してるのは明らかなのに、
        なんで後半の話に寄せるのか…

        4
          • 匿名
          • 2021年 7月 02日

          それはね、俺が記事を流し読みしてて気づかんかったからだw

          まさか普通に輸出で重要と思う要素がリストで全く考慮されてないとは思わんかったわ、すまんな

          11
            • 匿名
            • 2021年 7月 02日

            清々しいほど潔いけどさあwww

            4
    • 匿名
    • 2021年 7月 02日

    フランスとイタリアの一騎打ち感があるな

    4
      • 匿名
      • 2021年 7月 02日

      仏伊は艦艇に関しては共同開発してる間柄なので、お互いの手の内をよく知ってるからどんな風に今後展開していくか楽しみ

      7
      • 匿名
      • 2021年 7月 02日

      どちらも”ギリシアは自分のシマ”くらいに思っている

      6
    • 匿名
    • 2021年 7月 02日

    フリーダム級がカテゴリーB(海軍の要求を満たすには設計の調整が必要)なのに政治的配慮を感じる
    それか船自体よりイドラ級のアップグレード及び周辺条件によほど期待してるか

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 02日

     選考に残った国は全てタックスヘブン地域が国内にある国だな…、あっオランダは中継国だった。

     何を要求してるかモロばれじゃないか。

    3
      •  
      • 2021年 7月 02日

      タックスヘイブンって税収が減るので普通の国家にとっては害悪でしかないのにギリシアは何を期待していると?
      あとイギリスやアメリカは自治権の関係で租税回避地に干渉できなくて困ってる
      つまりタックスヘイブンにどうこう指図できないのに何を期待している?

      陰謀論としか思えないが

      4
        • 匿名
        • 2021年 7月 03日

         賄賂の資金洗浄にタックスヘブンを使うやで、ギリシャはドイツの欠陥潜水艦購入疑惑で問題が明るみになってる最中。

        2
    • 匿名
    • 2021年 7月 03日

    ギリシャがアメリカのタイコンデロガ級巡洋艦を売ってくれって話は生きてるのかな?

    1
    • 匿名
    • 2021年 7月 03日

    ギリシャがアメリカのタイコンデロガ級巡洋艦を売ってくれって話しは生きてるのかな?

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