ギリシャ海軍の新型フリゲート導入を巡って米国と熾烈な受注競争を行っているフランスは最近、ギリシャ側が要求していた中古駆逐艦2隻を無償提供すると申し出たらしい。
参考:France offers Greece anti-aircraft and anti-submarine frigates free of charge in new deal
フランスは提案中の中型フリゲート(FDI)採用するならギリシャ海軍が求めている中古艦艇2隻を無償で提供する
東地中海の排他的経済水域(EEZ)問題でトルコと深刻な軍事対立に直面しているギリシャは軍の近代化を進めており、この需要を巡るフランスと米国の戦いは熾烈さを増してきた。
第1ラウンドである空軍の新型戦闘機調達は短納期というギリシャの要求に応えたフランス側が勝利、18機のラファール(中古機12機+新造機6機+関連機器や搭載兵器を含む)を推定25億ユーロ(約3,150億円)で売却する契約を獲得したが、既に両国の戦いは第2ラウンドである海軍の近代化に舞台を移している。
ギリシャ海軍はイドラ級フリゲート4隻のアップグレードに加えて新型フリゲート4隻を導入する予定で、これを受注するためフランスと米国が競っているのだが現在の状況は非常に複雑だ。
米国側はギリシャ海軍が要求するマルチミッション・フリゲートの要求に応えるためロッキード・マーティンがフリーダム級沿海域戦闘艦の派生型をギリシャの造船所で共同建造することを提案しており、実際にロッキード・マーティンの人間が現地の造船所を訪問するなど売り込みを図っているが、ギリシャ海軍が要求する中間ソリューションについて明確な回答が行われていない。
ギリシャ海軍が要求する中間ソリューションとは新型フリゲート導入にかかる期間(発注から引き渡しまで7~8年間かかることを想定している)を埋めるための艦艇のことで、ギリシャ側は状態の良い中古艦艇を2隻売却してくれることを望んでおり、同国のパナギオトプロス国防大臣は海軍の近代化プログラム(イドラ級フリゲートのアップグレード+中古艦艇の売却+新型フリゲートの調達)をパッケージで提供することを求めている。
米国側はモスボール状態で保管しているペリー級フリゲートを改修して提案するのではないかと噂されているが、ハッキリとした中間ソリューションについては言及されていないので良くわからない。しかしフランス側は対空任務を重視したカサール級駆逐艦「ジャン・バール」と対潜任務を重視したジョルジュ・レイグ級駆逐艦「ラトゥーシュ・トレヴィル」を無償でギリシャに引き渡す用意があると提案して注目を集めている。
フランス側は仏海軍向けに建造中の中型フリゲート(FDI)を提案しており、これを採用するなら中間ソリューションとしてギリシャ海軍が求めている中古艦艇2隻については無償で提供するという意味だ。
無償で提供するジャン・バールとラトゥーシュ・トレヴィルは退役済みのペリー級フリゲートと同時代に就役した比較的古い艦艇だが、今でも現役艦として稼働中で同艦を視察したギリシャ海軍の関係者は状態の良さに驚いていたらしい。
ではフランス側はなぜ中古艦艇2隻を無償で提供するいう思い切った手段にでたのかだが、管理人の予想では決定打に欠ける提案をプッシュするためではないかと思っている。
米国側が提案しているフリーダム級沿海域戦闘艦は米海軍が設計上の欠陥を理由に受け入れを停止ばかりで評判が悪いが、フランス側が提案している中型フリゲートも仏海軍向けの1番艦が建造中なので運用実績がなく中間ソリューションとして当初提案していたラファイエット級フリゲート売却はコストが高価でギリシャ側が難色を示していたため、未知数の中型フリゲート採用をプッシュするためジャン・バールとラトゥーシュ・トレヴィルを付けたのだろう。
補足:ジャン・バールは今月初めアキテーヌ級駆逐艦のアルザスで更新され退役したばかりで、ラトゥーシュ・トレヴィルも近い内に退役するため仏海軍の「現役艦」を無償で提供するわけではない。
果たしてモスボール状態で保管しているペリー級フリゲートを引っ張り出して無償で提供出来たとしてもフランスが提供する艦艇ほど状態が良いのか不明だが、ギリシャに提案しているフリーダム級沿海域戦闘艦は評判が良くないので米国側もペリー級フリゲートを無償で提供する言い出すかもしれないので、そうなれば追加の決定打が必要になってくる。
これはギリシャメディアが独自に入手した情報(米国側が公式に発表したものではない)で真偽は不明だが、ギリシャがフリーダム級沿海域戦闘艦を選択すればギリシャの造船企業がコンステレーション級フリゲートの開発に参加させる(主契約のフィンカンティエリにギリシャ企業をサプライヤーとして参加させろと命じるのかもしれない)と言っているので、これが本当ならギリシャ産業界にとっては米国案の方が魅力的に映るだろう。
最後になぜここまで米国とフランスがギリシャの需要に拘るかだが、これは金銭的な利益よりも防衛産業界で働く労働者の雇用を守るため=つまりエコシステム維持が最大の目的(一度自国製のシステムを採用させてしまえば数十年間は弾薬やアップグレード需要で利益が見込める)なので、その辺りを加味して見ていくと武器ビジネスがより理解しやすくなるかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:Naval Group フランスがギリシャに提案する予定のフリゲート艦
トルコと対立してくれて、武器輸出国は内心ほくほくなんだね
ギリシャだって、何を基準に決定するのやら。
他人事の心配など要らぬこと
ギリシャの場合は本当に払えんのかよという思いが真っ先に来てしまう(笑)
軍事の世界では中古を買えば格安で済むとか民間機を改造すれば格安で済むとか言い出すやつは全員詐欺師だと思ってる
経済破綻でバレたように、ここは国家ぐるみで詐欺を働くから
そしてそれを恥じない国民性
米仏の食い物にされるか、中国に喰われるかどっちかしかない
不具合満載の新型より確実に動く物の方がいい場合もありますかねえ、
特にギリシャみたいに一触即発な状態では確実に即戦力になるものの方が良いかもしれないです。
テレビショッピングですらお値段そのままで同じ商品をもう一つつけるぞ
現役か、つい先日まで現役だった艦艇ならば状態は良いでしょうね
アメリカも、いい加減モスボール保管してあるペリー級の在庫も少なくなっているでしょうし、退役してからの期間も経過しているので状態は良くないでしょうし
フリーダム級とインディペンデンス級の退役が決まっから「新古車」が大量に出るから無問題
フリーダム級とインディペンデンス級は戦闘力目的だと、どう考えても使いにくいからなぁ……。
トルコとやり合う可能性の高いギリシャ的にはお断りって感じじゃないかな
サウジアラビアに提案してる重武装型レベル迄に改修するとお値段爆上げだろうしね…
フランスも現役艦を2隻売却とのことですが、それの穴埋めの必要はないというのでしょうか?
後継艦の建造がすでに行われているとか?
その辺が疎いので気になる所・・・
カサール級駆逐艦の2隻は、記事に有るようにアキテーヌ級の対空型2隻で更新される
ジョルジュ・レイグ級駆逐艦は日本語ウィキペディアだと全艦現役の表記だけれども、実際はアキテーヌ級対潜型6隻の就役と合わせる様に6隻が退役して「ラトゥーシュ・トレヴィル」が最後の現役艦
1隻足りないけれども、その分が純減なのか、記事に有る建造中の中型フリゲートで代替するつもりなのは分らない
しかしフランス海軍の第一級の水上艦艇って、フォルバン級2隻とアキテーヌ級対空型2隻が防空艦、アキテーヌ級対潜型6隻が対潜艦の計10隻しかないのか……。ラファイエット級以下は、対潜装備が無かったり植民地配備の二線級艦艇だし
英海軍といい、核と空母に金を取られると、中々に悲惨な状況になるな……
あまり多くなくて済むのは、NATOのお仲間が沢山いるのもあるかと。
1隻は退役済み、もう1隻も近く退役とありますよ…
どこから原資が出てるんだろう。コロナで基幹産業の観光は酷いはずだが。また新規の国債発行して金融界でババ抜きするのかね。
ギリシャのような国こそ経済的に、ドローンやUAVのような非対称戦争に傾倒すべきなのに、相手がそっち方面の達人トルコじゃ打つ手が後手後手にしかならない
むしろ、トルコ相手に非対称戦用装備で軽くあしらわれない為にも、正規戦用装備の拡充が重要なのではと
それに対して、トルコは正規戦でも非対称戦でも任意に仕掛けられるという軍事的優位
どっちにしてもギリシャには負のループに陥る可能性が
東地中海の未採掘原油・ガス田の採掘権とかじゃないですか。
ちうごくじゃないかな。
ギリシャ企業のコンステレーション級への参画は、コストコントロールをしたい(コスパを良くしたい)コンステレーション級の目的と乖離していく可能性があるから難しいのではないかと…
コンステレーション級はフランスが設計したフリゲート(FREMM)をイタリアの会社(フィンカンティエリ)がアメリカの造船所(マリネッテ・マリーン)で作る計画だから、そこにギリシャがいっちょ噛みしても大して変わらないような…
軍事が政治に引っ張られて七転八倒とか世の常じゃん
政治家ならギリシャへの影響力とトルコへの牽制考えたら普通にやりたいでしょ
ついでにコンステレーションが高騰したとして後から何やってんだと叩くのも政治家ですよ…
ハードを買わせて消耗品で儲ける。コピー機やウォーターサーバーと同じで、商売の基本ですな。命が掛かってるけど
どの国の国防型企業も世知辛いなあ…
景気が良いのは昨今各国で採用が激増している韓国の会社位かね?
安値にして税金で補填して売るダンピング構造だから、韓国の該当企業は多少儲かっても国富が流出する構造だし、本質的には売国奴企業だよなぁ。
もっとも、韓国の兵器産業は経営が危なくて国の手助けが必要だとワーワー言ってるらしいけども、これは韓国人何時もの事だから、経営状況が実際はどこまで危ないのかは不明。
ただ儲かってはないみたいだな。
そもそも兵器輸出って、メーカー目線ならば兎も角、通常は国家戦略上の外交オプションの一環じゃねと
単純な儲け話だけの次元じゃないよね
フリーダム級って武装も無いし機関に問題を抱えているのに良く売り込みかけるなと感心するやら呆れるやら。
悪評凄いのにね。
面の皮厚いなぁとしか言いようがないw
フランスはトルコに煽られたからそれのリベンジ的な面もありそう
ギリシャへの肩入れはかなりの部分がそれだと思う。
ビジネス的な面は当然あるにせよ、ああもトルコにコケにされて黙っているフランスなんて想像もできないし
米海軍が徘徊型UAVを調達するみたいだが、トルコ的に徘徊型UAVを複数使えば艦艇にも攻撃出来るのでは?
トルコの国土の近くで戦闘があれば高価な対空ミサイルを大量消費もあり得る。
能力の高い新造艦辺りは狙われそうだ。
ギリシャとは領土や領海の問題でもめてるのだから、トルコの本土近くで戦うというのは、ギリシャが相当押せ押せの状態でもなっていないと無理だろうし、そこまで来たら周辺国が仲介に出るだろうから、そんな事態はあまり起きないと思う。