欧州関連

エンジンが無いトルコ第5世代戦闘機「TFX」、試作機に「GE製F110」搭載

トルコは、国内で開発している第5世代戦闘機「TFX」に搭載するエンジンを募集している。

輸出を諦めない限り、エンジンが無いという笑い話になる可能性が高い

トルコの国防衛産業庁長官、イスマイル・デミル氏は、国内で開発している第5世代戦闘機「TFX」プロジェクトへ参加を考えている、海外のジェットエンジン企業に対し扉は開かれていると話した。

TFXとは、トルコが国内開発している第5世代戦闘機開発プロジェクトのことで、トルコ空軍が運用中のF-16C/Dの後継機需要と海外輸出を狙っている。

先日、フランスのパリで開催されている「パリ航空ショー」で、トルコはTFXのフルスケールのモックアップを公開したばかりだ。

このプロジェクトの支援企業には、英国のBAEが選ばれ、機体設計やシステム開発をサポートし、エンジンに関しては当初、英国のロールス・ロイスがEJ200の技術を移転し、TFXのための新しいエンジンをトルコと共同で研究・開発を進めていたが知的財産権の問題が発生。

開発されたエンジンの知的財産権を全てトルコ側へ譲渡しろ言い始めたので、ロールス・ロイスがそれを拒否し、その後、交渉でも溝は埋まらず決裂し、ロールス・ロイスはTFXプロジェクトから完全に手を引いた状態だ。

そのため、トルコはTFXに搭載するエンジンを、どこからか調達するか、共同開発してくれる企業を見つける必要がある。

ロシアの軍需企業ロステックの子会社、「ユナイテッドエンジン」が、TFXのエンジン開発について“技術提供が可能”だとアプローチしているが、TFXの試作機には、米国のGE製F110を搭載することに決定したと、トルコ国内のメディアが報道している。

出典:public domain トルコ空軍のF-16C/D

トルコはF-16C/Dを導入する際、ノックダウン生産から、徐々にトルコ国内で生産された部品の採用比率を高め、最終的には完全なライセンス生産に切り替わった。F-16C/Dに搭載されているエンジン「F110」も、トルコ国内でライセンス生産を行っていたので、今回、TFXの試作機に「とりあえず」F110を搭載することにしたのだろう。

しかし、S-400導入による米国との関係悪化というリスクがあるため、国防衛産業庁長官のデミル氏が、この様な発言を行ったものと見られる。

但し、デミル氏はTFXプロジェクトへの参加条件として「開発するエンジンに対し、輸出に制限がなく、全ての技術がトルコに帰属し、トルコが全ての権利を所有すること」を挙げ、同じ条件をロールス・ロイスに突きつけ、交渉が決裂したにも関わらず、再び同じ条件で新しいパートナーを探そうとしているのには驚きだ。

この条件で手を挙げる企業があるのか分からないが、例え、ロシアや中国企業でも、第5世代戦闘機輸出で、わざわざライバルを増やすことになるエンジン開発の協力に、ビジネスとして見た場合、意味があるのか非常に疑問だ。

どうしても「海外輸出」が前提になっているため、共同開発の条件がトルコに有利すぎるので、どうしても、実現性は低いと言わざるを得ない。

トルコは、ひとまずTFXの海外輸出を諦めない限り、エンジンの提供・共同開発に手を挙げる企業は現れそうになく、本当に機体だけ完成し「搭載するエンジンが無い」という笑い話になりそうだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Attribution: Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0

戦闘機生産ライン存続の危機? ボーイング、米空軍F-15EX導入「最大の後ろ盾」失う前のページ

V仕様のF-21や、ロシアのSu-35に、F/A-18E/Fはインドで勝利できるか?次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    人道物資の盗難が相次ぐウクライナ、約1万個の米軍応急処置キットが消える

    ウクライナでは人道物資の盗難が相次いでおり、ポーランドと国境を接するリ…

  2. 欧州関連

    独仏西が次世代戦闘機の試作機製造契約を授与、初飛行は2029年を予定

    ドイツ、フランス、スペインは16日「将来戦闘航空システム(Future…

  3. 欧州関連

    ロシアを刺激したくないドイツ、ウクライナへの榴弾砲輸出に必要な許可発行を拒否

    米メディアのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は21日、ドイ…

  4. 欧州関連

    ロシア軍が攻勢をかけるバフムート周辺の戦い、状況的には非常に際どい

    ウクライナ軍東部司令部はロシア軍の攻勢を認めつつ「依然としてソレダルを…

  5. 欧州関連

    トルコ、S-400問題の解決に向けて米国と「クレタモデル」をベースに交渉開始

    トルコはS-400問題の解決に向けて米国と「クレタモデル」をベースにし…

  6. 欧州関連

    フランス国防省の警告、軍隊の無駄を削減すれば危機に対して無力

    フランスは軍の無駄を削減しながら運用効率を向上させる取り組みを実施した…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 19日

    トルコはこれより西の韓国と名乗るが良いぞ

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 19日

    機体すら完成するのか怪しい

    • 匿名
    • 2019年 6月 19日

    レシプロ機のエンジン無しは首なしだけど、ジェット機のエンジン無しは何て言うんだろう?

    • 匿名
    • 2019年 6月 19日

    ロシアからエンジンを輸入する方が現実的じゃない?
    シナ製はゴミだし、ヨーロッパ圏はアメリカから圧力入ってそうだし、

    1
    •  
    • 2019年 6月 20日

    エンジンは核心技術のようで、日本も開発に時間がかかったし、
    ロシアは今も中共に売り惜しみしている。その為に中共はウクライナからも買っている。
    しかし数は揃わない。中共の国産エンジンは現場で評判が悪い
    西側向けの「中国の戦闘機すごいぜ!」という動で出すのは、
    虎の子のロシア・ウクライナ産エンジン搭載機である。よそ行きの一張羅の様なもの。
    金が欲しいロシアとは言え、そんなに大事な核心技術を簡単にトルコに出すとは思えない
    トルコ経由で中共に回ったら目も当てられない

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 20日

    F110の新たなライセンス生産とか今のアメリカが認めてくれるのか?
    敵になった国には多少の利益度外視で徹底的にやる国だぞ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  3. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP