欧州関連

果たして売れるのか? トルコ製UAV「バイラクタルTB2」が衛星通信による遠隔制御に対応

トルコメディアは9日、国産化に成功した小型の走行追尾型衛星端末(SOTM)を戦場を猛威を振るう「バイラクタルTB2」などの小型無人航空機に搭載すると報じている。

参考:Turkey develops domestic satellite terminals for drones

戦場を猛威を振るうバイラクタルTB2を通信衛星に対応させきたトルコ、果たして海外市場で受け入れられるのか?

戦場を猛威を振るうバイラクタルTB2などのトルコ製無人航空機(UAV)に弱点があるとすれば、それは見通し線(LOS)での通信に頼っている点だろう。

一般的に無人航空機(UAV)の制御には地上通信アンテナを利用した方法と通信衛星を利用した方法があるのだが、これはUAVの用途に合わせて選択されるため一方が特に優れているという訳ではない。

地上通信アンテナを利用した方法でUAVの制御を行うと通信距離が見通し線(飛行高度に左右されるため一概には言えないが100km~200km)に限定される点と、作戦地域に前もって移動式の地上通信アンテナや制御コンソール一式を展開させておく必要があるのだが、衛星通信を利用する方法に比べてコストが安いという特徴がある。

出典:Bayhaluk / CC BY-SA 4.0 バイラクタルの制御用コンソール

逆に通信衛星を利用した方法でUAVの制御を行うと通信距離の制限(但し通信衛星に通信範囲に左右される)が事実上無くなり、UAVの制御を安全な後方で集中的に行えるため運用効率と柔軟性が向上するのだが、通信衛星を整備したりUAVに走行追尾型衛星端末(SATCOM On-The-Move:SOTM)を搭載する必要があるためシステム全体のコストが高価になりがちだ。

ただトルコ製無人航空機(UAV)はLOS通信に頼っているため長時間の飛行に耐えられる=航続距離に余裕のある大型UAVを開発しても結局、見通し線での通信距離に作動範囲が限定されるせいでMQ-9リーパーのような長距離ストライクといった運用ができないという弱点を抱えており、この問題を解決するためトルコは欧州から中東までをカーバーする通信衛星(NATO通信規格に準拠)を整備、中高度を長時間飛行することが可能な大型UAV「アンカ+A(離陸最大重量1.6トン/最高高度9,140m/航続距離1,480km/兵器搭載量200kg)」を通信衛星による制御に対応させたアンカ-Sの開発に着手した。

出典:Mustafa.KarabasTUSAS / CC BY-SA 4.0 無人航空機アンカ

2018年に衛星通信を使用して制御されたアンカ-Sが実戦で空爆に成功、さらに海外からの輸入に頼るSOTMの国産化とトルコのUAV事情に合わせてSOTMの小型化にも目処がたち、今年7月から国産SOTMの出荷が始まったとトルコメディアが報じている。

トルコメディアによれば出荷された国産の小型SOTMは、戦場を猛威を振るう「バイラクタルTB2」や偵察・監視用途の「カラエル」などの小型UAVに搭載され通信衛星による遠隔制御が可能になると説明しており、つまり見通し線に制限されていた作動範囲や、作戦地域に前もって移動式の地上通信アンテナや制御コンソール一式を展開させておく手間から解放されることを意味しており、トルコ製UAVの運用効率と柔軟性がさらに高まることになるだろう。

補足:バイラクタルTB2の最大航続距離は明かされていないため不明だが、同機の最大滞空時間は24時間34分(巡航速度130km/h)と発表されているため少なくとも3,000km前後の飛行が可能ではないかと推測されいる。

国産の小型SOTMを開発したトルコ企業「CTech」の関係者によれば、小型SOTMは衛星通信を通じてUAVに20Mbpsを超える通信環境を提供でき、このシステムを使用すれば数十機のUAVを同時に制御することが可能らしい。

出典:public domain MQ-9に内蔵されている走行追尾型衛星端末のアンテナ

問題は衛星通信による制御に対応した小型UAVが価格面で競争力を失わないかだが、バイラクタルTB2の輸出向け機体単価は推定約500万ドル(約5.3億円)と言われており、関連機器(地上管制装置2基・地上データ端末3基・遠隔映像端末2基等のコンソール一式と搭載弾薬)を含めても1機あたりの導入コストは1,150万ドル(約12.2億円)前後なので、仮にSOTMを搭載することでコストが1.5倍になったとしても機体単価は750万ドルだ。

因みに衛星通信による遠隔制御が可能な無人航空機MQ-9の平均調達価格(機体のみ)は約2,000万ドル(約21億円:2020会計年度発注分)と言われているおり、遠隔制御が可能な無人航空機市場でバイラクタルTB2がどのような評価を受けるか興味を惹かれる。

勿論、バイラクタルTB2の性能(最高速度220km/巡航速度130km/兵器搭載量55kg)はMQ-9(最高速度482km/巡航速度280km前後/兵器搭載量1.7トン)と比較すると低スペックなので、正面から勝負すればMQ-9に軍配が挙がるだろう。

しかし無人航空機1機に2,000万ドルも支払える国は多くないため低スペックでもバイラクタルTB2が売れるのか?

それとも衛星通信による遠隔制御の場合はMQ-9程度の性能がないと相手にされないのか?

管理人的には非常に興味深い。

 

※アイキャッチ画像の出典:baykarsavunma

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    実戦で実力を証明したから無理しててでも欲しがる国は出てくるでしょ

    4
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      高価な戦闘機を使うまでのないレベルの攻撃、そして貴重なパイロットの損失を考えなくて良いからには、少々値上がりしても結果的にはお得という見方もできますね
      ただ、今のトルコの立ち位置を考えると、導入に踏み切る国は多くないと思う

      6
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      これは大きいわな
      具体的な運用例と性能的には問題ないだろうけどトルコから兵器を買うという事の政治的リスクもまた大きい

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    この場合、通信衛星はどこのを使うのでしょう? 「NATO規格ならどこでもOK」でも借りる場合は絡むのが嫌だったら止めるのも可能なわけで、自前で衛星通信網を確保できる国でないと、有事での運用は難しいと思いますが。インターネットみたいにダークWebがあれば可能と思うが、衛星通信でもそんなのがある?

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      日本は自前で軍用通信衛星揃えてるし測位衛星も持ってたりと
      何気にドローン運用基盤は整ってるからなぁ
      そういうのが無い国にとっては色々悩ましいだろうね

      10
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      トルコは自前の通信衛星網トゥルクサットを1990年代中頃から運用してますよ。
      打ち上げは委託です。欧州から中東をカバーしているようです。

      5
      • 匿名
      • 2020年 10月 14日

      ダークWeb並の速度で処理落ちするUAV想像してワロタ

    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    これが売れるかどうかはさておき少なくともUAVが自由に飛べる状況では練度の低い陸軍なんぞただの的でしかないということが証明されたのは日本にとって朗報
    日本は航空優勢を取れるんだからこれは敵対的大陸国家の陸上兵力の優位が消滅したに等しい

    あとやっぱドローンを落とすには何らかの空対空兵器が必要だと分かったのも収穫かな
    役に立たなかったロシア製対ドローン兵器がどの程度ダウングレードされてたかは分からんが
    そもそも航空兵器相手に地対空装備は主導権を取れなさ過ぎて辛いは
    あると便利なんだろうけど有力な航空戦力と組み合わせて運用することを前提にすべきもの

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      今回は飛び地での戦闘だから航空優勢をとれてるのであって、かなり特殊ケースと思いますけどね。

      国境を接する2か国が戦争状態になった場合に一方的に航空優勢が取れるならUAVなんていらないんじゃないだろうかと思います。

      エアカバーのもと前線を押し上げていくはずだし、そこに効率の悪いUAVの出番が本当にあるのか?という疑問です。
      なんせラジコンで一機当たり一人の操縦者が必要で、出撃回数=発射ミサイル数ですから。
      「超小型移動航空基地」としては有効でも「戦線」が動くような環境では使い物になるかどうか。

      これは今回の状況ではわからないと思いますね。

      1
      • oominoomi
      • 2020年 10月 13日

      リビア国民軍は、リビア政府軍のバイラクタルTB-2を何度も撃墜したと発表しています。
      イラン革命防衛隊は、アメリカ軍のMQ-9リーパーとMQ-4Cトライトンを撃墜していますが、トライトンについては国産対空ミサイルを使用したと主張しています。
      そもそもこれまでもドローンは標的機として使用しており、訓練においてSAMでドローンを撃墜しています。
      今回は、ドローンが「貧者の陸軍」にとって大きな脅威となり得る事が示された、というだけであり、有力な防空システムを持つ陸上兵力に対してどこまで通用するかは疑問だと思います。

      4
    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    驚異的、を証明したバイラクタルのコスパ。日本は手など出せないだろうが、本質をつかんで国防に活かす強かさを持て。

    8
    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    中国の翼竜もそうだけどこの手のUAVってアメリカのMQ-9に似たようなデザインばっかりだな

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      ステルス機も併せて、やはり収斂進化なんでしょうね

      2
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      時期と状況と目的が同じならば、出てくる正解も似かよってくる
      あまり楽しい話ではないけど。
      ジェット黎明期に、スホーイの機体が米国の機体に似すぎるってスターリンから疎まれた話があったけど、そりゃそうなるほうが当たり前

      3
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      工業製品てぇのは有用性が高ければ最初はデザイン含め真似するのが安直に自前開発する方法です。
      リバースエンジニアリングの一種ですが今はパクリの時期てえことじゃないでしょうかね。
      用途によっての現時点での最適解てのはあるので、今後独創的なデザインの機体も出てくるんじゃないかと思います。

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    戦場で猛威を振るうかな

    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    滞空時間と搭載量を稼ぎたければグライダーのように長い主翼を持たせ、ステルス性を上げるにはひし形断面の胴体とV尾翼。
    レーダーやカメラの邪魔になるプロペラは胴体後部に置く、低速なUAVは必然的にこの形になる。
    確か30年ほど前のラジコン機にそっくりなデザインの機体があった。
    ある程度金と技術がある国なら、制御電波を発信してる車両を発見して空対地ミサイルを撃ちこめばいいが残念ながらアルメニアにはそれが無かった。

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    UAV、通信切れたら只の標的、なので
    攻撃側の遠隔操縦を妨害するために信号解析、妨害信号生成の技術開発が必要とされるようです。

    我が国でも粛々と先行研究が進められており期待されています。
    リンク

    10
    • 匿名
    • 2020年 10月 13日

    日本はグンカクガーに目を付けられずに、ひっそりと軍事衛星を増やしているから
    ドローン導入をひそかに狙っているのではと勘繰りたくなるが
    そうであってほしいな

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 13日

      巡航ミサイル・滑空弾用が第一だろうけど
      まぁF35B入れると言い出す前から全通甲板護衛艦がなぜか4隻揃ってたのと似たようなもんだ

      2
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