英国防省は「ロシア軍がザポリージャ州での反撃を警戒してヴァシリウカ~オレホボ間の防衛ラインを強化している」と明かしており、ロシア軍は「ウクライナ軍が最短コースでメリトポリ方面に南下してくる」と予想しているのだろう。
参考:Latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 8 January 2023
最短でクリミアとヘルソン州の接続部をHIMARSの射程圏に納めるオレホボ周辺からの南下が最も犠牲に見合う
英国防省は戦況報告の中で「ロシア軍はルハンシク州とザポリージャ州でウクライナ軍が攻勢にでる可能性を危惧、ザポリージャ州に相当量の兵力を保持しながらヴァシリウカ~オレホボ間の防衛ラインを強化している」と指摘している。
これまでロシア軍はメリトポリとトクマクの郊外、トクマク~ヴァシリウカ間に「龍の歯」と呼ばれる防御施設を建設済みで、クリミア経由で新たな装備をメリトポリ方面に運び入れているため、英国防省の指摘通りヴァシリウカ~オレホボ間の防衛ラインを強化しているなら、ロシア軍は「ウクライナ軍がオレホボ周辺から最短コースでメリトポリ方面に南下してくる」と予想している可能性が高い。
ドネツク~ポロヒーの間で特に防御施設が建設されたという報告は無いが、変化のない時間を過ごした当該地域は「両軍が相当量の地雷を埋設している」と見られているため、ザポリージャ州でウクライナ軍が攻勢に出るなら「最短でクリミアとヘルソン州の接続部をHIMARSの射程圏に納めるオレホボ周辺からの南下が最も犠牲に見合う」と思われるものの、当該地域の戦力密度はハルキウ州のようにスカスカではないので数日でメリトポリが陥落するような戦いにはならないだろう。
因みにウクライナのマリャル国防次官は8日「ロシア軍はドネツク州の行政境界線に到達するため相当な力を投入しておりソレダルの状況は非常に厳しい」と明かしたが、どのように厳しいのか触れていないため「ソレダルの状況」は依然として良くわからない。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
クレミンナもバフムトもウクライナ軍は全力で攻撃してるようにはあまり感じないんですよね
冬季攻勢に備えて戦力を隠匿してるんでしょうが
前線の情報がほぼ完全に統制されてるのでOSINTでもよくわからないみたいですね
現在のこの方面の戦闘はシベルスクの突出部をどう処理するかを争っているわけで、ロシアがアルチェモフスクを陥落させるのが早いかウクライナがクレミンナを陥落させるのが早いかが焦点なわけです。
ウクライナ軍がクレミンナもアルチェモフスクも全力で戦っていないのだとしたら、セベロドネツクの時のようにシベルスクから撤退して防衛ラインを再構築すれば済む話でしょう。
そうではないから両軍が戦力を投入して現在のような泥沼の消耗戦が起きています。
それだけの価値がクレミンナとシベルスクにあります。
ロシア軍が本当に経済制裁で経済がひっ迫して、弾薬不足、人数不足で苦しくて崩壊寸前であれば、ウクライナ軍のメリトポリへの攻撃は戦局の不利挽回のための重要な作戦となり得ますが、今の現況を見ると、バフムト、ソレダル、マウリンカなどではウクライナ軍が後退を始めていて、ロシア軍の弾薬、人数が足りないようには思われず、クレミンナやスバトボでさえもいまだに
竜の歯のような障害物や、地雷を大量に設置、埋設しているところに、いくら気温が下がって地面が氷結したとはいえ、ウクライナ軍が虎の子の戦車をここに投入することは、下手をすると1943年のクルクス、ドイツ軍のチタデレ作戦でドイツ戦車が突っ込んだ
「パックフロント」
の再現にもなりかねません。今はそれよりもソレダルや、バフムトの包囲、制圧回避のために戦車を使う方が重要でしょう。
しかしロシア軍の立場からすれば、逆にウクライナ軍に防戦の準備万端なメリトポリを攻撃してもらった方がかえって有利になるかもしれず、ウクライナがそこで戦車を消耗している間に、ドネツク州を制圧できる、という風に考えているかもしれません。
>今の現況を見ると、バフムト、ソレダル、マウリンカなどではウクライナ軍が後退を始めていて、ロシア軍の弾薬、人数が足りないようには思われず
物事の見方って色々あるんですねえ。
自分には「ロシア正教のクリスマスまでにバフムト・ソレダルを陥す」を実現するためにかなり無理して戦力かき集めたけど間に合わず、それどころか押し戻されつつある、様に見えますが…
ロシアは、ウクライナ征服を諦めてはいないでしょう。
それまでの段階として、ドニプロ河東側の割譲を目指しているのでは。
以前にそのようなことを言っていた、と憶えています。
ザポリージャからチェルニヒウにかけては、おそらく、平原なのだと思います。
戦車向きで、一度突破すれば、ノンストップでチェルニヒウまで行けるような。
ウクライナ側もそれは判っていて、突破された後の機動防御のために
戦車を温存しているように思えます。自分の戦車は、質はともかく数が少ないし。
ウクライナにしてみれば、引き続き後方を狙うことにより、ロシア側の戦力を削ぎ、
最終的に自滅に追い込みたいのでは。
それならば、さっさと”あの橋” を落とせば良いのに、と思ったりします。
ウクライナは、素人の予想とは違う思惑があるのかもしれませんが。
めっちゃ遅ればせながら管理人さん、明けましておめでとうございます!
今年もこのサイトで宇露戦争の成り行き、世界の行程を見守りたいと思います。