STOVL(短距離離陸・垂直着陸)タイプのF-35B実用化で、カタパルトやアレスティング・ワイヤーなど航空支援装備がない、小型空母や強襲揚陸艦でも、実用的な戦闘機の運用が可能になったため、多くの国がF-35B運用を前提とした、小型空母、強襲揚陸艦の建造や検討を行っている。
日本でもF-35B運用を前提にした護衛艦「いずも」の空母化が決定したが、過去、空母運用国だったオーストラリアも、F-35B運用を前提とした空母保有に動くかもしれない。
2014年に一度、F-35B導入議論があったオーストラリア
オーストラリア海軍は1955年、英国からマジェスティック級航空母艦を導入し、空母「メルボルン」として運用を始めたが、1980年、英国からインヴィンシブル級航空母艦を購入することを決定したため、退役することになった。
しかし、フォークランド紛争が勃発し、スキージャンプ台と垂直離着陸機(VTOL機)のハリアーとの組み合わせの有効性に気づいた英国が、オーストラリアへの売却をキャンセルしたことで、オーストラリア海軍は、空母を失うことになった。
以降、オーストラリアでは、空母の再導入論が何度も浮上しては消えていく、日本によく似た状況だった。
1999年、東ティモールは住民投票の結果、インドネシアからの独立を決定したが、独立反対派がインドネシアの支援を受け暴動を起こしたため、国連は平和維持軍が派遣されるまでの間、東ティモールの平和と治安を守るための多国籍軍派遣を要請し、東ティモール国際軍が送られる事になった。
東ティモール国際軍の主力として派遣されたオーストラリア軍は、この時、両用戦力の必要性を認識し、その結果、建造されることになったのが、キャンベラ級強襲揚陸艦だ。
補足:両用戦力とは、水陸両用作戦が可能な戦力=強襲揚陸艦のような単一ユニットで、上陸用戦力の展開能力と、それを支援するための航空戦力を運用できる船や戦力のこと
2014年に就役したキャンベラ級強襲揚陸艦はスキージャンプ台を備えていたため、当時、アボット政権下のジョンストン国防大臣が、メディアの取材に対しF-35Bの導入を検討していると話した。
その後、アボット首相が、2隻のキャンベラ級強襲揚陸艦に、F-35Bを搭載するオプションについて、2015年の国防白書に盛り込むよう指示を出すも、F-35Bを運用するために必要なキャンベラ級強襲揚陸艦の改造費用が高額であることが判明し、結局、このアイデアは国防白書に反映されなかった。
オーストラリア国内のF-35B反対派の主張としては、キャンベラ級強襲揚陸艦で十分な数のF-35Bを運用するためには、水陸両用艦としての任務を放棄する必要があり、F-35Bの垂直推進力に耐えるためのフライトデッキ強化は、艦体構造自体の強化から行わなければならなず、手間と費用がかかり過ぎる。しかも、搭載されるF-35Bは、F-35の中で最も高価で、最も問題のある機種だと言っている。
再び、盛り上がりを見せてきたF-35B導入・空母保有論
現在のオーストラリアは、2009年当時のラッド政権が、今後20年間で、巡航ミサイルを搭載した潜水艦の整備(12隻体制)、100機のF-35A導入など、空海軍を中心とした軍備増強計画を盛り込んだ国防白書を発表し、その後を引き継いた政権も、この計画を継続しているので、オーストラリアの国防費は増加し続けている。
2019年2月、オーストラリアはフランスの国営造船企業「Naval Group」と、12隻の潜水艦建造契約を締結した。この契約の総額は355億ドル(約3兆8400億円)で、オーストラリアの1年分の国防費よりも大きな金額だ。
潜水艦の新規設計及び、12隻の潜水艦建造、フルサポートの費用として1隻あたり約3200億円という、馬鹿げた金額の良し悪しについては置いておくとしても、5年前、キャンベラ級強襲揚陸艦へのF-35B搭載を費用の問題で否定したオーストラリアも、2015年に始まった南シナ海での米軍による「航行の自由作戦」を見て、国防費をケチっている場合ではないと思ったのかもしれない。
source: tradingeconomics.com
最近では、再び、F-35B導入を主張するオーストラリアメディアも増えてきた。
キャンベラ級強襲揚陸艦へのF-35B搭載は技術的にも難しくなく、日本の護衛艦「いずも」の空母化など取り上げ、費用負担の意思さえあれば実現可能だと主張し、さらに一歩踏み込んだ意見としては、F-35Bを運用するための専用艦、強襲揚陸艦ではなく、軽空母建造の主張も出てきた。
F-35Bを運用する専用艦の導入は、それを支援するためのサポート艦(空母を守るための艦艇)の需要も呼び起こすことになり、F-35Bの導入は、オーストラリアに設置される国際整備拠点MRO&Uを通じて、オーストラリアの産業界へ、多くの利益をもたらすだろうと分析している。
この様に世論が盛り上がりを見せていれば、近い内に、オーストラリアの政界でも、再びF-35B導入・空母保有への議論が再開されるかもしれない。
F-35開発パートナー国で、自国にF-35サプライチェーンを抱え、改修さえすればF-35Bの運用が可能なプラットフォームを持ち、国防予算の面でも高い伸びを見せるオーストラリアにとって、F-35Bの導入を決断するのは、もはや時間の問題だろう。
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain
スキージャンプ台つけてF-35搭載前提で建造したのに艦体構造レベルで改修が必要って
一体どういうつもりだったんだろう?
あのジャンプ台はネタ元のファン・カルロス・1世の時点で上からポン付けではなく船体構造そのもので造られてるから、オーストラリアでの導入に際して『ジャンプ台無しで』ってやると再設計の必要が出てきて余計な金がかかるから「じゃあそのままでいいや」であれになってるんですわ。
ファン・カルロス一世もF-35Bの運用が困難という事か。
西側諸国の200m超級+F-35Bの運用は、政治的に成り立つ限りは増えるでしょうね