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軍事的雑学|米空軍が大型爆撃機の運用を諦めない3つの理由

世界的に見れば、衰退する一方の大型爆撃機を、なぜ、ここまでの費用を掛けてまで米空軍は増強するのか、その理由について簡単にまとめみた。

爆撃機が持つ汎用性は、未だ死んでいない

米空軍は議会に対し312個ある飛行隊を、今後10年間で386個飛行隊まで増やすよう要請している。

その中でも、中国の軍事力増強に対応するため、圧倒的に「爆撃機」と「空中給油機」が不足しているとし、爆撃機編成の飛行隊を現行9から14(+5個飛行隊)、空中給油機編成の飛行隊を現行40から54(+14個飛行隊)と、大幅に増強したい考えだ。

出典:Public Domain Northrop Grumman B-21 Raider

米空軍は、ノースロップ・グラマンが開発中のステルス爆撃機「B-21」を100機程度調達し、2030年代までにB-2、B-1Bを退役させ、この新型ステルス爆撃機で更新する計画だったが、爆撃機編成の飛行隊が14個飛行隊編成に増強されるとなれば、この計画の大幅な修正が必要となるだろう。

現在、20機のB-2“スピリット”、62機のB-1B“ランサー”、76機のB-52H“ストラトフォートレス”、計158機の爆撃機を運用している。

もし、B-2とB-1を計画通り退役させ、同時に爆撃機編成の飛行隊を14個飛行隊へ増強させるなら、少なくともB-21が200機以上必要となり、仮に1機5億ドルとすれば1000億ドル(約10兆円)近い、莫大な予算が必要になる。

世界的に見れば、衰退する一方の大型爆撃機を、なぜ、ここまでの費用を掛けてまで米空軍は増強するのか?

これには、少なくとも3つも理由が存在する。

1つ目は、米空軍は航空機が失われる可能性が最も高いのは、空を飛んでいる時ではなく、航空機が駐機している基地が攻撃を受けた時だと考えているため、長距離飛行に向いていて、敵の攻撃を受けにくい基地から攻撃が可能な爆撃機が再評価されていること。

2つ目は、今後、米空軍の主軸となるステルス戦闘機F-35は、ステルス性を維持したたま携行できる兵器搭載量が少なすぎ、大型のスタンドオフ兵器運搬能力に欠けていること。

3つ目は、米空軍が主張する「プロンプト・グローバル・ストライク」を実行する手段として、ICBM、極超音速兵器、巡航ミサイルなど多くの手段がある中、爆撃機がもつ圧倒的な費用対効果(1時間という迅速性については疑問が残る)。

補足:プロンプト・グローバル・ストライクとは、1時間以内に、世界中のどこへでも、精密誘導による通常兵器での攻撃を提供するシステムのこと。

核兵器を使用するならICBMで十分だが、通常兵器に限定された戦争の場合、爆撃機が持つ汎用性は、未だ死んでいないという意味だ。

出典:Public Domain B-2が47発のMark 82を投下しているシーン

米空軍は、開発中のステルス爆撃機「B-21」は、爆撃機としても任務以外にも、偵察任務、電子攻撃任務、戦闘統制任務、対空長距離ミサイルを搭載して迎撃任務にも使用できると言っている。

通常の国家では不必要な爆撃機だが、世界規模で年中、武力を行使し続ける米国にとっては、未だ魅力的に映るようだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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コメント

    • 銀魚
    • 2019年 6月 07日

    素人の感想で恐縮ですが。

    単に自由落下爆弾(GPS誘導含む)を「大量に運搬し、地面に投下する(命中率を気にしなくてすむ)」だけなら輸送機改造ではいかんのでしょうか。現在B1が担っている任務であれば、速達性は犠牲になりますがC130やC17でもなんら問題ないように思えます。
    投下方法は下へではなく後ろへになりますが、MOAB等のC130での運用、ヘルファイアのAC130での運用、かつての核爆弾のA5等での運用といった実績もあります。

    少なくとも地上軍への戦術支援任務には支障がないような。プロの軍人が採用しないからには理由があるかと思いますが。(どなたかご教示・ご指摘ください)

      • バクー油田
      • 2022年 5月 06日

      「大量に運搬し、地面に投下する(命中率を気にしなくてすむ)」だけに関してはB-52が担当していますね。
      B-52は積載量が多いですから大量に誘導爆弾を積んで目的地を指定せずに戦場上空に向かいます。
      そして上空で旋回待機して地上からオーダーのあった場所に爆弾を投下するデリバリーサービスを行っています。
      但し、それが出来るのは戦場の制空権を完全に握っているからであって、まず戦場の制空権を握る際には
      敵のレーダーサイトや対空ミサイル基地や通信網など要所を破壊する必要があります。
      しかしステルス機能の無いB52ではレーダーに丸映りになって爆撃前に全機撃墜されますので破壊する事が出来ません。
      それらを破壊するにはレーダーに映らずに敵地に侵入できる爆撃機が必要になります。
      それがB2になります。B1も元々それ目的だったと思いますがB2に比べてステルス機能が全然甘いので今はB52と同じ用途で使われてるのでは無いでしょうか?
      知らんけど

      1
    • 匿名
    • 2019年 6月 08日

    迎撃機や対空火器を持たない相手を一方的に爆撃するのならば、確かに輸送機改造爆撃機からの投下でも可ですが(実際デイジーカッターやMOABは輸送機から投下される)、B-21がステルス機で有ることから分かると思いますが、米空軍はロシアや中国と言った最高レベルの防空体制の相手に対して使用するつもりなのです

    2
    • 匿名
    • 2019年 6月 08日

    鈍足な輸送機では敵上空に辿り着く前に、あらかた撃墜されてしまうからではないでしょうか。米軍のB1はマッハ1.2くらいは出せる俊足だったはず。
    ちなみに海上自衛隊のP1はマッハ0.6くらいだったはず。上昇限度にも差があり、ましてや輸送機だったら新興国相手でも生きて帰れないと思います。
    先の大戦で一式陸攻(大型雷撃/爆撃機)が米軍の格好の的になって、B29が圧倒的な強さを誇ったのと基本的には同じ構図ではないでしょうか。

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 09日

    戦闘爆撃機でも代替可能な気もするが、その場合離陸重量の問題もあり空中給油機が大量に必要になったりと、やはり費用対効果ではB52が際立つ

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 14日

    ジョン・ポイドがB-1Aで断ち切ったはずのボンバーマフィアの呪いがB-1Bで蘇ってるから米空軍での爆撃機廃止は無理、仮想敵国に爆撃機と邀撃機を用意させるる意味でも。

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