インド太平洋関連

インドネシア海軍の潜水艦が消息不明、要請を受けたシンガポール海軍が潜水艦救難艦を派遣

インドネシア海軍の潜水艦「ナンガラ」は21日の午前3時頃(現地時間)、通常の魚雷訓練を実施するためバリ島北部の海域で潜航許可を要求後に連絡が取れなくなり行方が分からなくなった。

参考:Indonesia searching for missing submarine with 53 on board
参考:Indonesian Navy searches for missing submarine with 53 people on board

シンガポール海軍の潜水艦救難艦とレスキューチームはすでにバリ島北部の海域に急行中

インドネシア国防省は直ぐに現場海域に航空機を派遣してナンガラが消息を断ったと推測される海域周辺で油の流出を確認、インドネシア海軍は潜航中のナンガラに何らかの機械的トラブルが発生して艦の制御に必要な電力を失い海底に沈没したとの見解を示したが、同海域の平均水深700mに対してナンガラ(ドイツ製209型/1300潜水艦)の潜航限界は500mしかないので海軍のスポークスマンは「乗員53人(通常は34人だが訓練のため定員よりも多い53人が乗り込んでいたらしい)が無事生きて帰れることを祈ろう」と言っている。

※潜水艦ナンガラが消息を断ったとおもわれる海域

インドネシア国防省は海軍所属の海洋調査船2隻を派遣して海底地形図作成のため使用するソナーシステムを使用してナンガラの位置特定を急いでいるが、インドネシア海軍には浮上不能になった潜水艦の乗員救助にあたる潜水艦救難艦を保有していないため周辺国に支援を要請、これにオーストラリア、インド、シンガポールが応じ模様でシンガポール海軍の潜水艦救難艦とレスキューチームはすでにバリ島北部の海域に急行中らしい。

出典:Rjv25 / CC BY-SA 4.0 シンガポール海軍の潜水艦救難艦MV Swift Rescue

潜水艦にとって最大潜航深度は機密情報に該当するので500mという数値は恐らくウィキペディアの情報(ロイターは250mと報じている)に基づいたものである可能性が高く、仮に500mという数値が正しいとしても設計上の安全マージンが幾らか残されているため700mの海底でも生存可能な艦内環境が奇跡的に保たれているかもしれない。

しかし潜水艦ナンガラは就役から40年も経過(2012年に韓国で大規模なアップグレードを受けている)しているため耐圧殻が設計通りの性能を維持しているのか怪しく、海底で奇跡が起こっていたとしても長くは持たないだろう。

一刻も早くシンガポール海軍の潜水艦救難艦が到着して海底に沈んだナンガラから乗員53人が全員救助されることを祈る。

余談だがシンガポール海軍の対応が素早いのはインドネシアと締結している潜水艦救難に関する協定が存在するためで、恐らくシンガポール海軍は潜水艦事故の一報を受けて準備を始めていたのだろう。

告知:軍事関係や安全保障に関するニュースが急増して伝えきれない=記事化が追いつかないためTwitterの方でも情報を発信します。興味のある方は@grandfleet_infoをフォローしてチェックしてみてください。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain インドネシア海軍の潜水艦ナンガラ

クアッドにも影響を及ぼす米国のインド制裁、トルコが注目する理由とは?前のページ

米中央軍の最高司令官、UAV接近を検出するのは困難で完全な制空権を失ったと告白次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    韓国、国産MLRS「天武」で新型ロケット弾を発射出来ない問題が浮上か?

    韓国が国産した多連装ロケットシステム「天武」が今年6月に新型230mm…

  2. インド太平洋関連

    台湾は2027年までに2隻の新型潜水艦を配備、後期型は対艦ミサイルを搭載

    ロイターは25日、台湾が28日に進水式を行う予定の新型潜水艦について「…

  3. インド太平洋関連

    タイがMQ-1CクラスのDP-20Aを発表、BZK-005のライセンス生産か

    タイ企業がバンコクで開幕した防衛装備の見本市で国産UCAV「DP-20…

  4. インド太平洋関連

    米国の警告を無視するインド、新たに国内でロシア製兵器の製造を計画中

    ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はインドを訪問してジャイシャンカル外相と…

  5. インド太平洋関連

    豪州、3,600億円を投資して長距離攻撃兵器の国内製造を2025年に前倒し

    豪州は長距離攻撃兵器の国内製造を2027年頃に予定していたが、24日に…

  6. インド太平洋関連

    豪前国防相が原潜導入計画を暴露、AUKUSのパートナーシップに悪影響か

    5月の総選挙で政権交代が実現したオーストラリアではダットン前国防相が原…

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP