トルコはロシア製防空システム「S-400」導入を放棄しないインドに対してバイデン政権が制裁を実行するかどうかに注目しており、中々興味深い主張を展開している。
参考:Will the US sanction India over its Russian S400 missile purchase?
インドへのCAATSA制裁免除は行き詰まった米国とトルコの関係改善に大きな影響を及ぼすか
トルコはオバマ政権時代に米国製防空システム「パトリオット」導入交渉を試みたが条件面で合意に至らなかったため技術移転や現地製造などの条件を容認したロシアから防空システム「S-400」を導入するを決定、これに慌てた米国は再度トルコ側とパトリオット導入交渉を試みたが技術移転がネックとなりS-400導入撤回に至らず、トルコが導入するF-35AとS-400の同時運用は不可能と主張してトルコ側にS-400導入撤回とパトリオット導入をゴリ押しすることになった。
さらにトルコがS-400導入を発表した直後、米国内でロシアの防衛産業企業から1,500万ドル以上の取引を行った国や組織に対して制裁を加える「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」が成立したため話が難しくなっていく。
トルコは米国の圧力に屈することなくロシアからS-400を受け取ったため米国は予告通り2019年にF-35プログラムから出資国のトルコを追放、議会がトルコに対してCAATSAに基づく制裁を要求したためトランプ政権は2020年末に発動を控えていたCAATSAによる制裁をトルコに課してしまい米国は後戻りが出来なくなってしまった。
補足:勘違いしやすい点を説明しておくとトルコがF-35プログラムから追放されたのは建前上F-35プログラム参加国の合意に基づく処分(実質的に米国の都合)でCAATSAに基づく制裁ではない。CAATSAに基づく制裁はトルコ国防省の調達部門に対して実施されており米国から武器や軍需品の調達に関して制限を受けている。
要するに露防衛産業企業を海外市場から締め出すために脅しとして活用していたCAATSAを明確な敵対国以外(中国に対して2018年に発動済み)に初めて発動してしまったため、ロシアからも武器を調達する米国に友好的な国(一部の利害が一致する国)にもCAATSAに基づく制裁を課さなければならなくなったという意味で、制裁をテコに友好国や友好関係を築いていきたい国にロシア製兵器の調達を断念させて米国製兵器(もしくは西側製兵器)購入を強要するやり方はロシアではなく米国の影響力を自ら弱めるだけだと国内からも指摘されている。
さらに問題なのがCAATSA発動の基準が曖昧な点で、建前上1,500万ドル以上の武器をロシアから購入すると制裁発動の対象になると言っているが様々な例外規定があるため、今のところS-400とSu-35に対してのみCAATSA発動を明言しているのだが、これにインドが引っかかっているため問題になっているのだ。
インドはCAATSA発動を明言しているS-400導入に関する契約をロシアと締結済みで年内(11月~12月予定)にインド国内へ持ち込まれると見られており、トランプ政権時代から再三「CAATSA発動の対象になる」と警告してきたがインドは「独自の外交政策と独自のニーズに基づいて安全保障上の決定を下すため米国の圧力には屈しない」と主張してS-400導入を断念する気はサラサラ無い。
今年新しく大統領に就任したバイデン氏はオバマ政権の副大統領時代にインドを訪れ「米印間の制約は過去のもので将来に向けた基盤は整っている」と演説して両国間の関係改善・強化に貢献した実績があるので、米国が進めるインド太平洋戦略=つまりクアッドと呼ばれる枠組みで重要な位置を占めるインドに対してS-400導入に便宜や例外を適用するのではないかと期待されていたが、バイデン政権は前政権の方針を引き継ぎインドに「S-400導入は容認できない」との方針を明確に伝達している。
上院外交委員会のメネンデス委員長も最近「S-400導入を強行するインドの行為はCAATSAの231条に抵触する制裁発動の取引だ」と述べてバイデン政権にインド制裁を要求しており、もはやインド側が望むような例外措置は望めない状況で八方塞がりだ。
ただインドに制裁を課せば対中国戦略の土台とも言えるクアッドの枠組みに不協和音を生む可能性が高く、よりインドをロシアに接近させることにも繋がるためCAATSA制裁免除を決断すると今度はトルコに対するCAATSA制裁も解除する必要が出てくるためバイデン政権のインドに対する決定にトルコが注目している。
トルコはNATO加盟国だからインドとは状況が異なるという意見もあるかもしれないが、CAATSAの制裁根拠はNATO加盟国か非NATO加盟国を区別していないので恣意的に解釈を変更すればCAATSA自体が形骸化して誰も米国の制裁を怖がらなくなり、このまま原則を守ってCAATSAを運用しても米国の外交戦略に致命的な影響を与えだけで敵に利するだけだろう。
しかしCAATSAの影響と新規プレーヤー(中国、トルコ、アラブ首長国連邦、韓国など)の台頭で露防衛産業界の収益は確実に落ちこんでおり、ここで傲慢とも言えるCAATSAに基づく制裁基準を緩和すればロシアが息を吹き返すことにも繋がるという主張にも一定の正しさがあるのでバイデン政権にとっても悩みどころだ。
因みにインドは植民地支配の歴史と経済的な伸びしろを盾に米国の制裁や脅しに屈することはないとトルコは見ており、インドへのCAATSA制裁免除は行き詰まった米国とトルコの関係改善に大きな影響を及ぼすと見ているのが非常に興味深い。
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※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊
まぁ代替にペトリ提案されても、値段が高いし射程が短いしで導入難しいよな。
S350,S400とかは射程400kmのミサイルもあるわけで、対処可能な目標種別や命中率等を抜きにすれば、
1FUでペトリ4FU分ぐらいの範囲を牽制出来るとなればそれだけで価値があると見なされるだろうし。
要求に見合わない性能の兵器を押しつけようと、因縁つけ脅しまでやるアメリカヤクザ
俺らってそのヤクザの身内扱いなんだよね、
徒弟かパシりだな。
せいぜい悪徳防衛業者だな。
まあ官憲と癒着して割と自己都合で法まで弄ってくるからかなりタチ悪いけど。
反社はレッド側だな。古典的な反社と悪徳業者の手口取り入れたインテリ反社とその使いっぱ。
トランプ負の遺産?
アメリカは自己を縛る法案を廃止して仕切り直ししたほうがいい、ロシアの空いた取引先は他国に奪われるばかりで意味ないから
これからはとくに中国が出てくるぞ
署名がトランプ前大統領ってだけで元々は超党派の上院議員グループで次に民主党提出となった法案。しかも議会の承認だかが必要でそれまでのような大統領令に基づいた柔軟な対応が不可能になったことについてはよろしくない的なお話ししてましたな。
アメリカがついでに儲けようとするのをやめりゃいいんだよね
傲慢に一挙両得を狙わず、優先順位を考えろよと
いまアメリカがやるべきは儲けることじゃなく、値引きして自陣営を増やすことだろうと
自陣営増やしてアメリカが勝って覇権を維持することに成功し、
それで基軸通貨ドル体制・アメリカ兵器体系・アメリカIT体系が維持できりゃ
引き込み合戦でサービスしてやった分を全部帳消しになるくらいのアメリカの利益になるんだから
結果として米国も冷戦的な考えから脱却出来てない……の……か?
いまでも対立する存在を想定することで敵味方を峻別し、自国の利益となす構造を続けている。
冷戦後は中東やテロリストを敵に想定してたのが、いまは中国という強敵に押されぎみ。
長期的に見れば、やがてインドとアメリカが対立し抗争する構造も生まれかねない。
すでに危ういクアッドすら、実現してもひとときの夢さ
「人種のるつぼ」が叶わなくて「人種のサラダボウル」に変更した米国も、こと国際関係に至ってはそこから何も学んではいないのかと問いたくなるくらいに「価値観同盟」とか言い続けているしね
俺は逆に、冷戦構造に戻るしか大戦回避の道はないと思うけどね
意見の隔たり以外にも民族紛争とか領土問題とか色々有るのに、無理に一緒にやっていこうとするから余計に反発が大きくなるんだよ
米中露あたりが先頭に立って各国何処に付くのかはっきりさせてお互いの陣営毎に睨み合っていたほうが安定するだろう あれ俺って三国志に毒されてる?読んでいるのはキングダムなんだけどな
逆説的で面白い
もちろん冷戦構造だと、そのボーダーにあたる場所でいろんな悲劇が起こっていたんだが、いまは悲劇の場所と内容が変化しただけでとくに平和に近づいてるわけでもないしね。
良き対立という構築が可能なのか、研究の余地は感じる
そうなるとやっぱりソ連って必要なんだなって
兵器の共同開発ひとつとってもそうだよね。
アメリカ(に限らず先進各国)は自国利益・自国優位を優先し過ぎる。
言い出しっぺがやりたい事(どこぞの半島の空母みたいに根本的に思想が間違ってる場合は除く)を適切な対価で真っ当に支援して、最適な体制で最適な兵器を開発・生産して成果を適切にシェアすれば、陣営の総合力と結束力が上がってくのに、
個々の事業で過剰に自国利益・自国優位を優先するから揉めるわコケるわ続かないわ競合するわでグッダグダ。
この辺の協力体制や信頼関係が商業系と同程度にでも構築出来てりゃS-400の購入が問題になった時点で(あるいはそれより前に)、「しゃーねぇ、じゃあ手伝ってやるから作ろうか」で代替兵器が出来てとっくに片付いてただろうに。
振り上げた拳の持って行き場がないとはこのことか。
まったく、やってることは恫喝と一緒じゃないか。
アメリカやロシアだけではなく、インドやトルコの動きも米露関係の足元を見て利益の最大化を図ったものだし
アメリカの影響力が相対的に弱化している証ですな
やりすぎれば意図しない色分けに進んでいきそうな、チキンゲームのようだ
アメリカももう先は無いな…
THAADを90%OFFくらいで売るかパトリオット1つ買ったら1つ無料でついてくるくらいの出血大サービスやらないとインド説得するのは無理だろ
パトリオットをS400並みに改造して、将来は海外販売する権利も寄越せって、
インド商人ならそこまで押し出してきて、かつ折れない
あーもーグダグダだよ
対中は行き詰まってんね
元はといえば、旧西側が中東とかで暴れまくって中国をほっといたから沢山の不穏分子が浸透してんでしょ。
まあ、戦争を徹底的に起こして親米国家増やしまくってたら状況が変わってたかもしれんが。
>「F-35AとS-400の同時運用は不可能」
問題の本質は、この部分だったのではないのか。
CATSAの制裁はロシア製兵器を購入する点で、F-35AとS-400の同時運用は関係ない。
インドのS400導入に制裁免除を容認するならトルコに対して課してるCAATSAの制裁も免除しないと整合性が取れないでしょ。
まぁ制裁が解除されてもF-35プログラムへの復帰はS400を放棄しない限り認めないと思うけど
売れば真似されるし性能ばれるし、考えもんだなぁ
国防を依存させる意味合いは大きいと思うが
トルコとインドとではそもそも軍事同盟の質が違うわけで、当然供与する兵器の質もNATOと非NATOと全く違うからCAATSAで云々というのも無理があるのだは?
インドと米国は軍事同盟を結んでないよ。